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[2] 創作講談 『和装美人の装い』 平山猿織
- 2009年04月16日 (木) 15時47分

『和装美人の装い』 平山猿織

 男性が憧れる女性の装い、それは和服、制服、チャイナ服。

 私たち女性にはとうてい理解はできませんが、日本の男性のロマンは「チラリズム」だと言われております。

 男性が制服と聞いて、まず頭に思い浮かぶのはやはり“セーラー服”。どうやらどの男性もお好きなようです。どういうところがお好きかというと、夏服のすがすがしい姿も良いのだけれど、突然雨に降られて下着が透ける、という困った事態に胸が高鳴るようでございます。ちっとも理解ができません。
 続きましてチャイナ服。一見完璧に体を覆っているかと思いきや、あの太ももから足首まで深〜く切り込んだスリット。あれこそがチャイナ服の命だそうです。何が命???さっぱり意味がわかりません。
 やはり、ここは和服とまいりましょう。和服はすなわち日本の心。和服美人のうなじに悩殺された男性は少なくはありません。しかも綺麗に着飾った和服女性よりも、着崩れした和服女性の方にググッとくるのだそうです。ん〜〜着崩れか〜〜。やっぱり理解はできません。

 話は変わりまして、何を隠そうこの私。こんな黄色い頭をしたなりをしておりますが、こう見えて劇団一の着物好き。和服美人を目指し、常日頃芝居の勉強はそっちので着付けの勉強ばかりしております。(と、まぁこれは冗談なんですが。)劇団にも着物姿で出勤したいのですが、それでは確実に足手まとい。いつ、何時(なんどき)でも動けるよう、毎日仕方なしにスッピンでジーパンで、重い荷物と、かわいいけれど手のかかる後輩たちを背負っております。

 そんな私が着物を装おう場と言えば、正月はもちろん、デートに飲み会、二次会、三次会、忘年会、新年会。(あらあら、飲み会ばかりですが。)と、まぁ、休日どんな場所も問わず、いつでもめかしこんで行きます。

 先日、友人たちとの飲み会がございました。もちろん私は着物。1人でも着物。必ず着物。着物を装った際には短い髪を無理矢理結い上げ、お化粧は普段の三倍増し。小さな眼(まなこ)は目張りを入れすぎてパンダ状態。居酒屋では毎回店員と間違えられますが、そんなこともおかまいなし。めげずに同席している気になる殿方に上目遣い。「なぁなぁ、この着物かわいいと思わへ〜ん?」「ていうか、着物の時って、下着つけてるん?」違う!そういうことを聞いてるんじゃない!

 そうなんですね。どうやら気になさるんですね。
 男性のみなさん、みなさんの本音は和服美人の女性に興味がおありではなく、その着物の中がどうなっているのかが、ものすご〜くお知りになりたいのではないでしょうか。世の男性の多くは着物の下は全裸だと思われておりますが、本当にそうなのかどうか、本日ここで共に確認いたしましょう。

 ここにあなたの愛する女性が着物を身にまとって立っていることを頭に思い浮かべてみて下さい。

 まずは女性に羽織を外してもらいましょう。はらり、はらり。羽織を取ると着物が出てまいりました。さぁ、一体どうやって脱がせましょうか!
 着物を脱ぐ前に帯をほどかなければいけません。きました、帯です!まずは、帯です!男性のみなさんの一番の夢、「あ〜れ〜」です。さぁ、本日はその夢を叶えましょう!せーの、くるくるくるくるくる〜。はい、そこまでです。現代の帯の長さは約一丈二尺。(三メートル六十センチ)「あ〜れ〜」をするほどの帯の長さはございません。夢を見ている男性、まずはここで現実をしっかりとみましょう。
 帯を取ったら、あら?ひもが出てきました。「伊達締め」という太い幅の紐です。
くるくるくる。あら?伊達締めを取ったら、また紐が出てきました。「腰紐」という細い幅の紐です。
くるくるくる。あら?腰紐を取ったら着物みたいなものが出てきました。着物みたいなもの、これを「長襦袢」と言います。まだまだ裸は出てきません。
くるくるくる。あら?また伊達締め。くるくるくる。あら?また腰紐。
一体何本の紐が出てくるの?
長襦袢を脱いだらタオルと腰紐。着物の着付けは着崩れを防ぐため、体をずんどうにいたいします。そのため腰にタオルを巻くのであります。

 ひも!ひも!ひも!ひも!ひも!ひも〜〜っっ!

 何と愛する女性の体から六本もの太い紐やら、細い紐!と、ババシャツ!
 着物の下は全裸・・・なんてものはとんだ勘違い。これがれっきとした真実の姿。
 できれば脱がされたくなかった着物。できれば見られたくなかったババシャツ。
 ここまで脱がせてしまった男性のみなさん。責任を持って着付けてあげて!
 着付けはたった今脱がせた順から着せていけば・・・あぁ〜めんどくさい、めんどくさい。どうかそんなことは言わないで。
 着物の着付け、慣れれば五分。
 着物人口を増やすため!世の男を虜にするため!今日も私は着物をまとう。
 いつでも着付け教えます。
 以上、「和服美人の装い」の一席、これを持って読み終わりといたします。


[3] 創作講談 川上真紀
- 2009年04月16日 (木) 15時48分

川上真紀

今や名古屋の名所のひとつといっても過言ではない「うりんこ劇場」
そこで楽しめる演目は、劇団うりんこのお芝居はいうまでもなく、人形劇・コンサート・講演会・寄席・・・などなど非常にバラエティー豊か、劇場の扉を出る頃には大満足、お客さまの心はきっとお腹いっぱいになっていることでしょう。
そんな折、ぐう〜っとなるのが正真正銘の「腹の虫」でございます。
「何か食べたいな」「どこかに気の利いたお店はないかしら?」とお悩みのあなた!
本日私がご紹介しますのは、うりんこ劇場周辺のおいしくて、何度も足を運びたくなるランチのお店です。

まずは喫茶「うさぎとかめ」
♪もしもしかめよ、かめさんよ〜幼い頃一度は口ずさんだことのあるフレーズではないでしょうか。なつかしい思い出とともに扉をぎいいっと開きますと、そこは昭和を思わせるレトロな空間が広がっております。
ぬくもりのある木の机に木の椅子・ヤクルトの瓶に生けられた草花・壁にはクラシカルなデザインのポスターの数々・・・
年配の方にはなつかしく、若い子には新鮮な店構えになっております。
そこで食べられるのが、3種類のパスタ、ハヤシライス、ふんわりオムレツののったカレーライスの5つから選べるランチ。
メインを注文しますと、まずサラダとくるみパンのトーストが出てきます。このくるみパンが香ばしくてとても美味しい。
そうこうしているうちにお待ちかねのメイン、これが結構ボリュームがあり満腹になります。締めは季節ごとに変わる手作りプリン。チョコレート・抹茶・黒糖などどれが出てくるかはお楽しみ。
これがたったの750円!
その安さと美味しさに惹かれて、うりんこの女優さんたちも、最近は代表も何度か訪れているようです。ここに来れば、舞台を下りた後の素顔の女優さんに会えるかもしれませんよ。

続いてご紹介しますのは、地下鉄一社の駅から歩いてすぐ、「ポランの広場」。
もともとは子どもの本・こだわりの書籍を扱う本屋さんでしたが、農薬や化学肥料を使用しない有機栽培の野菜を使った料理を食べさせてくれるカフェへ進化しました。
私はここで南知多産のゴボウカツを食べた時、これまでのゴボウ感が打ち砕かれました。そして思いました、ゴボウは立派に主役になる!と。
ここの野菜たちはどれもしっかりとした存在感があります。
平日は、季節の野菜をメインに使ったベジタブルランチとポランの広場名物の玄米キッシュランチがございます。
お値段は玄米コーヒーつきで1200円と少々お高めですが、有機栽培は大変手間のかかる作業だと聞いております、農家の方の苦労を思えば、また未来の農業に投資するつもりで一度味わってみてはいかがでしょうか。


まだまだご紹介したいお店は山ほどございます。ご近所のよしみで是非とも紹介しておきたいお店もたくさんございますが、それはまた次の機会に。
うりんこ劇場にお越しの際は、ぜひともこれらのお店にお立ち寄り、お腹も心もいっぱいにしてお帰り下さい。ご静聴ありがとうございました。


[17] 金の張り扇
- 2009年06月10日 (水) 13時54分

    子供用新作講談(ただし対象年齢不明)「金の張り扇」        

これからお話する作品はおじさんが作りました。
みなさんもおもしろいお話を作ったり、覚えてみてください。
学校の勉強は後回しにしましょう。
学校の成績が悪くてもおもしろい話をしゃべることが出来ればいいんです。
そうすると周りの人が、君を指差して「あっ、落語(落伍)者」と言ってくれます。
これを「くすぐり」と言います。
聞いてる人が笑わないからといって、腋の下をくすぐることはルール違反です。
でもあまり笑ってもらえなければ、時には本当にくすぐってもかまいません。
それが可笑しいと言って、笑ってくれるかも知れませんから。
今までのお話を「枕」と言います。
「枕」が出たからと言って寝ようとしないで下さいね。
これからが本編なんですから。
それではお話です。
お話の題名は「金の張り扇」。
どこかで聞いたことのあるお話だと思ったあなた。
これはおじさんが作ったんですよ。
パーン、パーン、パパン、パーン。
ひとりの前座が稽古場で釈台を張り扇で叩いておりました。
大きな声を出しては張り扇を、振り上げてはおろし振り上げてはおろし、一生懸命です。
稽古をしていたのは「三方が原の合戦」というお話でした。
これは皆さんも良く知っている戦国の武将徳川家康の唯一の負け戦の模様を語ったものです。
このお話は前座になったら最初に覚えて舌の回転を良くしたり、声が出るようにするための基本中の基本のお話とされています。
さわりを少しお話してみましょう。
「頃は元亀三年?飯田多々羅の両城へ攻めかかる」(位までを修羅場調子で読む)
今落語ブームですから「寿限無、寿限無」と例の長い名前を言える子供も多いようですね。
でも「三方が原の合戦」を言える子供は一人もいませんよ。
これを覚えたらもう君はクラスのスターになれることは間違いありません。
どうですか、君覚えない?覚えてみたい人には後で「合戦」を書いた用紙を差し上げます。
それに「寿限無」のような人の名前を覚えたってなんの役にも立ちません。
「三方が原の合戦」は歴史の勉強にもなりますよ。
このことは昔から「講談聞くとためになる、落語を聞くとダメになる。」というように言われているんです。
どこまでお話をしてましたっけ。
そうでした、前座が大きな声を出して張り扇を、振り上げてはおろし振り上げてはおろし、一生懸命稽古していました。「あっ」。
前座の手から張り扇が飛び離れました。
くるくる、くるくる、くるくるボッチャーン。
落語だったら「前座は女の子だったのにボッチャーン。」なんてつまらないギャグを言うところです。
それはともかく、張り扇はマンションの一室の稽古場の窓を飛び出し近くに流れていた荒川の中へ落ちてしまいました。
ちなみにこの稽古場は埼京線の「浮間舟渡」という駅の近く、荒川沿いにあったのです。
皆さん知っていますか、私も初めて聞く地名です。
前座はあわてました。
早速稽古場のあったマンションの6階からエレベーターも使わずに駆け下り、川の淵へ駆け寄って覗き込みました。
川は連日の集中豪雨のあとで増水して、濁っており張り扇は深く沈んでしまったのか見えません。
ここで「張り扇は軽いから流されているに決まっているよ」と思った人はいませんか?
又「斧なら沈むのにね」なんて憎らしいことを思った人はいませんか?
物事はあまり科学的に考えてはいけませんよ。
今の科学では割り切れないことがこの世の中にはたくさんあるんです。
テレビのゴールデンタイムに「オーラの泉」が堂々と放送されるのもそのためです。
マンションから駆け下りても、息ひとつ乱れていなかった体育大学出身で体力に自信のあるこの前座も、さすがに川に飛び込んで張り扇を探すことはできませんでした。
前座は泣きたくなりました。
「ああ。こまった。たった一つの大事な斧・・ではなく張り扇をなくしては、明日から稽古が出来ない。」
前座は腕組みをしたまま、ため息をついていました。
まもなく、急に、川の淵にざわざわと波が立ち始めました。
「おやっ。」と前座は驚いて目を丸くしました。
波の中から、煙のようなものがゆらゆらと立ち上りました。
見るみるうちに煙は川の神様の姿に変わりました。
「前座よ。お前の落とした張り扇はこれではないか。」と、一本の張り扇を差し出しました。
前座は驚いたまま首を突き出して、じっと張り扇を見つめました。
きら きら、きら きら。
美しい金の張り扇です。(張り扇に金の折り紙を張り付けたものを用意する)
前座は驚いて首と手を振りました。
「違います。違います。そんなりっぱな張り扇ではありません。そんなりっぱな金の張り扇は人間国宝の貞水先生も講談協会会長の馬琴先生も使っていません。
そんな華やかな張り扇が似合うのは講談界広し(あまり広くありませんが)と言えど神田香織先生をおいて他にはおりません。」
これを「よいしょ」と言います。
なぜならこの前座の師匠は香織先生だったからです。
川の中から神様が現れる、といった信じられない状態の中で師匠を「よいしょ」することを忘れない弟子の鏡と言える前座ですね。
すると神様は再び川の中に消え、今度は銀の張り扇を持って現れました。
「お前が落としたのはこの張り扇か」
「いいえ、そんなりっぱな銀の張り扇ではありません」
「よし、わかった。」
神様はもう一度川の中に消えると、前座が落とした古びた紙で出来た張り扇をもって現れました。
「お前が落としたのはこの張り扇か」
「神様それです。それです。ありがとうございます。」
神様はにっこりうなずきました。
「お前は本当に正直な人間だ。金の張り扇も、銀の張り扇も褒美にあげよう。」
「ほ、本当ですか。」
前座は大喜びで、自分の張り扇のほかに金と銀の張り扇をもらいました。
この張り扇は宝物にして「真打」目指して頑張ろう、と元気に稽古に励むのでした。
ちなみに真打とは講談師の一番高い位のことで、その前を二つ目と言います。
この前座は前座の人たちだけの勉強会でこの話をしました。
勉強会でその話を聞いた前座の一人が自分も金と銀の張り扇をもらおうと考えました。
そして神田香織先生にお願いをして、同じ稽古場で一人で稽古をすることが出来ることになりました。
その前座はわざと窓から荒川目がけて張り扇を投げ込みました。
ところが折からの強風に煽られ、張り扇は川の中に落ちずに道を歩いている人にもう少しのところでぶつかりそうになりました。
神田香織先生に油を絞られ前座は青菜に塩の状態です。香織先生はそんな前座にやさしく
「昔から芸は人なりと言うのよ。芸にはそのひとの人柄がにじみ出るの。人格をみがくことが大事ですよ。」
それからというものその前座は、金銀の張り扇をもらった前座にも負けず劣らずの努力をして講談界を去ることもなく、無事二つ目になることが出来ました。
少しぐらいつまづいてもやり直せばいいんです、人生一回や二回嘘ついても構いませんという、ウソップ物語「金の張り扇」これをもちまして読み終わりといたします。




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