精神のバブル (869) |
- 日時:2011年04月28日 (木) 17時44分
名前:歴史
2.「バブル景気」が生み出す「精神のバブル」
しかし、時代は昭和天皇のお気持ち通りには進まなかった。 大正10(1921)年、大正天皇のご病気により20歳にして摂政宮となられた時、 すでに日本国民は「精神のバブル」期に入っていた。
京都大学教授・中西輝政氏はこう述べる。
大正時代を以降を振り返ってみると、日本がおかしな方向に進み出すのは 「精神の膨張主義」に傾いたときであった。
それは、対外政策上の膨張主義よりも深刻なものである。 成功や繁栄のなかから生まれる、日本人の宿痾(しゅくあ、JOG注:持病)としての 「精神のバブル」のことである。
それは必ず、過度の物質主義、性急な進歩主義、そして模倣の個人主義をもたらす。
大正時代、第一次大戦によって起こったバブル景気により、日本人は未曾有の経済的 豊かさに酔う。そして政治的には、日露戦争の余韻が冷めやらぬなか、「世界の一等国」 として、さらにはアメリカやイギリスと「三大大国として肩を並べた」と考えるように なった。
この錯覚が、日本の進むべき道を誤らせたのである。
この様子は、1980年代後半から1990年代初頭にかけて我々の経験した「バブル景気」と そっくりである。当時、世界最強の経済大国として、日本企業はありあまるカネに物を 言わせてアメリカの高層ビルや大企業を買いあさった。
そして未曾有の経済的豊かさから生まれた「カネがすべて」という「過度の物質主義」、 グローバリズム・ゆとり教育・フェミニズムなど歴史伝統を無視した「性急な進歩主義」、 家族や共同体を軽視し「他人に迷惑をかけなければ何をしてもいい」という「模倣の個人主義」。
まさに「バブル景気」が、「精神のバブル」を生み出していた。
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