【広告】Amazon.co.jp コカ・コーラが最大20%OFF玄関までお届け開催中

小説掲示板

ホームページへ戻る

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[126] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 19時59分

私の父と母は再婚している。
私は父方についていて、14才のときに今の母親と再婚した。
母親…お母さんじゃなくて、詩織さんと呼んでいる。
詩織さんは本当に良い人で、まだ40いっていないし、話しも合う。
本当の母親ってものを私は知らないから、詩織さんを本当の母親って思う様にする。
本当に良い人ー…。

本当にー…。。

「葵ちゃん、貴方には弟が居るの」

は…??

突然の詩織さんからの一言。
意味が分からなかった。

「ほら、私達、再婚してるじゃない。それで、私の息子なの。」

…。
全然聞いてませんけど?!

「何で…言ってくれなかったんですか??」

「や、言おうとは思ったわよ??でも、息子、アメリカに留学中だし会うことはにないと思ってたから…」

「はぁ?!会う会わない関係なく言うでしょう!!」

「ごめんなさい、でもアメリカから帰ってくるのね。アメリカって飛び級制度があるから、大学卒業しちゃったの。だから帰ってくるのよ。」

「えぇ?!」

私の義弟はエリート…。

「まあ、そういうワケだから、5日後に帰って来るから。そして、6日後に私達、新婚旅行に行くからぁ!!」

「…」

新婚…??どこがぁ?!今、私は16才。再婚してから2年も経つのにぃ?!なーぁにが新婚だぁ!!旧婚じゃないの?!旧婚旅行…や、そんなのどうでもよくて…

「急過ぎ!!そういうことは、早めに言って!!」

「ごめんね。あ、私、将司(父)さんと荷造りしてくるわぁ」

「…」

私の母親は…いや、父親も予て…本当にバカな人たちです。

[127]
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時00分

「ぶ…っ…あっはははっはは!!」

「笑わないでよ!!こっちは真剣に話してるのに!!」

「だってぇー葵に弟??信じらんない!!葵っていかにも、一人っ子タイプじゃない??親からちやほやされて、温室育ちのメロンちゃん!!って感じじゃない。だぁーから、葵はなーんにも知らないのよねぇ…。あーんなこと…ぶっ…」

「葵、翔子のことは気にしなくていから。」

「美苑さん…」

今は放課後。そしてあと、4日で弟が来る。
その弟のことを話していたのだ。
口が悪い方で、大人の階段どんどん駆け上がちゃってる方が親友の翔子。
そんで、みんなから尊敬されてて、冷静沈着、知的美人なのが美苑さん。
翔子も美苑さんも小学校からの付き合いだ。翔子は明るく、みんなのムードメーカー。美苑さんは小学校からの付き合いと言っても、オーラから自然に『さん』付けに。翔子は只今、彼氏募集中。美苑さんは5つ離れた大学生の彼氏が居る。

「んー…でもねぇ…相談したって来ちゃうモノは来ちゃうでしょ??仕様がないでしょー。」

「そうよねぇ…でも虐めとか、嫌なこと言うようなら私に言いなさいよ」

…あと4日。あと4日で義弟が来る。
今日は詳しく義弟のことを詩織さんに聞こう。

ー家。

「詩織さん」

学校から帰宅後、詩織さんの部屋へ真っすぐに向かう。

「あらぁ〜葵ちゃん、お帰りなさぁい」

「…詩織さん…。あの…私の義弟のこと…聞こうと思うんだけど…教えてくれない??」

「言うと思ったぁ!!良いよー教えてあげるね。
んーと、葵ちゃんの義弟になる…まあつまりは私の子ね。
悟(さとる)って言うのね。葵ちゃんより…一つ年下。
葵ちゃん、高2よね??日本じゃ、高1の学年ねぇ…。」

「へぇ…そうですか。
で、悟くんは大学卒業しちゃったんでしょ??日本ですることないじゃないですか。そのまま就職すれば良いのに…」

ボソリと呟く私を片目に詩織さんはクスッと笑った。

「まあ、それもそうよね。でもアメリカに飛び級制度があるからって言って、あまり飛び級する人は少ないし、まだ15よ??就職先も中々見つからないのよ。
だから帰って来て、暇つぶしにでも葵ちゃんと同じ高校に行くんですって。」

「えぇぇぇぇぇぇ??!それ、それ!!それが一番重要なトコでしょおぅ?!先に言って下さいよ!!!」

「あはは。まあ良いじゃないのぉ。仲良くしてやってね」

「はぁ…分かりました…。」

私はヨロヨロと自分の部屋に戻る。

「襲われても責任取らないわよぉ〜??」

後ろからのんきな詩織さんの声が聞こえた。

[128] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時00分

「血の繋がらない、姉弟同士が一つ屋根の下で棲む。これはまさに…禁断の恋…」

「翔子??」

美苑さんに睨まれ、口をストップする。

「…あと3日ね。一つ年下なんだ。しかもエリート」

「美苑さんには勝りませんよ」

ハハッと交わして美苑さんは急に真剣な顔つきになる。

「…だって葵には…」

「うん…」

私は俯き加減に言う。

「私には…高橋君が居るっていうか…高橋君が好きなんだ…。」

翔子が私に目線を注ぐ。

「アンタも長いわねぇ…いつから好きなんだっけ??」

「そんなに長くないよ。それに好きなら関係ないよ…。」

「中1の頃からよ」

美苑さんが私の代わりに答える。

「長いって…」

ブツブツ言う翔子。

「良いじゃない。学級委員、貴方たち一緒なんだし。チャンスはあるわよ」

「でもさ…本当は美苑さんがなった方が良いのに…。内申悪くなっちゃうよ…。
ごめんね…」

「大丈夫よ。私、生徒会に所属してるし。生徒会、兼、委員は出来ないから、最初から無理よ」

「ありがとう〜…」

涙ぐむ私に翔子がぼやく。

「私、会話参加してないじゃない。」

[129] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時02分

あと…3日かぁ…。
私の義弟が来るまで。
そんな、深刻なことじゃないんだけど…でも大丈夫だよね。詩織さんの息子だもん。それに私の義弟。

「嘉納さん??」

「へ…っ?!」

「あの、大丈夫??悩みありそうな顔してる」

ドアップ!!
高橋君の顔が超近い!!

…今は放課後。
学級委員(私と高橋君)で日誌を付けている。
付け終わったら先生へ提出。

「あ…ありがと。だ…大丈夫だから」

全然大丈夫じゃない。
高橋君が…目の前に居る!!
週一回この日をどんなに待ちこがれてたことか。

「そっか。良かった。」

ニコッと笑ってくれる顔もまた素敵で。
黒髪に黒い瞳。
長過ぎない髪。
ハンサム!!
クールと言ってはダメ。優しい。たまにそういうトコロを見せてくれるのがまた、ツボ。

中1の頃から、誕生日プレゼントとバレンタインは必ずあげている。普通気付い

てくれるはずなんだけど…。『ありがとう』といって笑顔で受け取ってくれる。

だから、ホワイトデーなんかは貰える。なのに、まだ『君』『さん』で呼び合っ

てるなんて!!哀しすぎる…。

「嘉納さんてさ…優しいよね」

「へ…?!」

なにをいきなり言い出すの??!!

「だって、俺なんかに誕生日とかバレンタインとかくれるでしょ??
好きでもない男子にあげるなんてよほど気の良い人ってことだよ。
ありがとうね」

「あ…うん…」

そうやって解釈するかぁ?!

「あ…あのさ…高橋君…」

「何??」

「高橋君って…好きな人とか…居るの??」

「え…?!」

高橋君の顔が急に赤くなる。

「や…あ…まあ居るけど…うん…」

「…」

居るんだ。
目線を落とす私に高橋君が目を向ける。

「でも…相手も俺のことどう思ってるか分からないんだ。
長いよな…俺も。中1の頃からか…。」

ふーっと息を吐く。

私と…同じ…。

涙が出そうになる。

「そう…なんだ。頑張ってね…。」

それしか言えなかった。
涙を堪えることで精一杯だったから。


「あの…さ!!嘉納さん」

「何??」

「俺…ね…。俺、美苑さんのことが好きなんだ…。」

「え…??」

「だから…協力してくれない…??女々しいけど…俺…本当に…あ、でも嫌なら良いんだ…。」

「あ…良いよ??全然。協力する!!」

「ありがと」

その笑顔は私に向けられた物ではない。

何で…

何でこんなに哀しくて…哀しくて…

高橋君が好きなんだろう…。

愛おしくて…愛おしくて…仕方なかった。

もう…叶わない恋…。

[130] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時03分

「え…高橋君、美苑さんが好きなの…??」

「…うん…」

翔子がそっか…と呟くと、私の頭を撫でてくれた。

「葵は…どう思った??」

「…哀しかった…。美苑さんを恨むとかそういうんじゃない。只…もう哀しかった…。」

「そっか…。」

「…」

「どうするの…葵は…。高橋君のこと…。」

「諦められるワケないじゃん…こんな簡単に…」

「だよね…頑張れ」

翔子が私を何とも言えないような顔で見る。

「そんな顔しないでよ…泣きたくなるでしょ…」

「…泣けば良いんだよ。泣いちゃいな。枯れるまで…ね??」

「翔子…」

私は泣くことしか出来なかった。

高橋君と美苑さんの恋を応援することなんか出来ない…。

当然のことでしょ??

[131] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時04分

あと2日…。
そんなの関係。

「あの…高橋君…」

「あ、嘉納さん。」

「美苑さんのことなんだけど…」

「え…っ?!あ…場所、移動しない??」

「放課後だから、誰も居ないじゃん」

クスクス笑う私は表面上だけの人間。
ありのままの私を高橋君に出せない。

「あ…そうだね。で…教えてくれない??」

「あ…うん。あのね…美苑さんにはー…。」

ー大学生の彼氏が居るんだよ。

言える訳がない…。

「あ、何でもない…。ごめんね…」

「なんだー…期待してたのに…なーんてね。これから宜しく」

「うん」

お互い笑う。
私の笑顔は貴方に向けたものだけどー…
貴方の笑顔は私に向いた物じゃないんだねー…。
最初から、高橋君は私のことなんか目じゃないこと、分かってた。
私以外の誰かを見てたことも薄々感づいてた。
だから焦った。バレンタインも誕生日プレゼントも有り触れてる。
そう思ったから、緊張しながらも高橋君に思い切って話しかける回数も増やした。
だけど、そんなことしても無駄だったんだね。
貴方の目線は私には絶対向かないんだから。

「ー…っ…」

「え…嘉納さん?!」

「…う…っ…ひっく…」

「え…ちょっと…大丈夫??どっか痛い??」

心配そうに私を見下ろす。
バカ…最低…。こんなんじゃないのに…
こんなことで高橋君、心配にさせて…バカみたい…。
泣いて…泣いて…
翔子の前で泣ききったのに…まだ涙は後から…後から…どんどん溢れ出してー…

「何でー…高橋君…」

「どうした…??」

「高橋君…」

私はそのまま高橋君の胸に飛び込んだ…。

「ちょっ…嘉納さん…??」

「ごめん…」

ちょっとだけで良かったのに…
ちょっとだけ高橋君と触れていたかったのに…
それさえ許されてないんだね…
その胸はー…誰の為にあるの…??
分かってる。
私じゃないってことは。
そこに触れることさえ許されてないんだね…。

「ん」

えー…??

高橋君が私を抱きしめてる。
夢みたいー…

「高橋君…??」

「どうした??何かあった??」

「…大丈夫」

そう言いながらも私は高橋君の胸で泣いた。

[132] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時05分

「へー…高橋君に送ってもらったんだ。良かったじゃん」

「うん…でも…やっぱ高橋君が美苑さんのことをどれだけ好きか分かる…。やっぱさ…入る隙なんかないのかな…」

また泣きそうになる。

「葵…」

「ごめ…っ…最近、涙腺弱くなちゃって…」

「無理しないでよ…」

「んっとに…ごめ…いつも翔子には…頼ってばっかだね…」

「良いよ…」

言う言葉がない…。
高橋君には泣き顔見せちゃうし…
好きでもない女を家まで送ってくれて…本当に優しい。
期待なんか出来ない。
高橋君がどれだけ美苑さんのことを好きか…ひしひしと伝わって来るから…。

「明日なんでしょ??弟来るの。また変わるかもよ??元気出してよ」

「…うん…分かった…」

私が最初にカフェの席を立つ。

「家、帰る。」

「そっか」

「バイバイ」

翔子に手を振って前に歩き出す。

一歩ー…

一歩ー…

一歩前に踏み出せば、未来が変わるかもしれないー…

そんな少しの可能性に一歩。

この一歩に全身全霊を掛けながらー…

[133] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時07分

ついに来たー…今日…。
私の義弟が来る…。

「今日の4時ぐらいに来るのよ〜。空港まで迎えに行くって言ってるのに、一人で良いって言うのよぉ〜…何なのかしらねぇ…このぐらいの年齢は良く分からないわぁ…」

「そうなんですか…」

なんか…もうどうでも良い…。
高橋君のことが頭から離れない…。

「何か元気ないわねぇ…どうしたの??」

詩織さんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「…大丈夫です…」

私はそう言って自分の部屋に閉じこもった。

「高橋君…」

独りでに言葉が溢れて来る。

美苑さんが悪い訳じゃない…。
誰が悪い訳じゃない…
こんなに哀しくなるのは叶わない恋だから…。
どんなに思っても叶わないなら…
いっそ思うことすらやめてしまいたい…
でもやめれないのは…
高橋君が好きだから…。

誰にも言えない…

誰にもー…??

「翔子だ…」

そう言って私は翔子に電話をした。
1時から遊ぶ約束を取り付け、そのままベッドにダイブする。

「あー…もう…」

私は涙を流して眠りについた…。









ガバ…ッ!!

「え、今何時…??」

時計を見ると、12時45分。

「ヤバ…ッ!!」

私は大急ぎで支度をし、待ち合い場所へ急いだ。

「…はぁ…っ…翔子!!」

「あ、葵。」

「ごめん…っ!!遅れた」

「えー全然。大丈夫」

ハハッと笑って、行こうか、と、カフェへ先導する。

「どうしたの??いきなり約束なんか取り付けて」

「うん…何かさ…もう私…どうしたら良いのか分かんなくなって来て…」

「…そう…」

「高橋君に会いたい…」

「………会う??」

「え…???」

「会いたいなら会おうよ。」

「どうやって…」

「会えば良いのよ」

「翔子…」

「葵…逃げてばっかじゃダメだよ。例え高橋君が美苑さんを好きでも…諦められないなら逃げちゃダメ。ずっとそのままになっちゃうよ??」

「…翔子…私…告白する…」

「うん」

笑顔で答えてくれる翔子に私は微笑ましい気分になった。

「…体育祭あるでしょ…1週間後に…あのときに告白する。
今会うのはちょっと酷…だから絶対…」

「そっか。良く言った!!じゃあ映画でも観にいこっか!!」

「うん!!!」

その後に起こる恐怖なんて気にしながら私は軽快な足取りで翔子の後を追った。

[134] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時08分

「え…もう…5時…??」

翔子と映画を観終わり、ケータイを取り出すと、着信18件。
全部詩織さんからのだった。

4時に来るんだよね…。
ヤバイじゃん!!
とにかく…家に帰ろう!!

私はダッシュして家に帰る。
ヒールのサンダルを履いていて足が痛くなる…。
本当に失礼なことしてる…私…。
ごめんなさい…。

息が切れる…。

しかし私の足が止まった。

「高橋君ー…??」

高橋君が散歩をしているのかブラブラ歩いている。
高橋君も私に気付いてみたいで、「嘉納さん??」と言ってくる。

「偶然だね。嘉納さんは何してたの??」

「あ、翔子…小林さんと映画観てたの…。」

「そうなんだ。俺は散歩。特にすることないから」

お互い、少し笑う。

「あ…あのさ…っ…高橋君、体育祭のとき…時間空いてる??」

「俺??うん、空いてると思うよ。何で??」

「や…あの…言いたいことがあるの、高橋君に。」

「嘉納さんが俺に??…そっか。うん、空けとくよ。」

「ありがと」

「体育祭か…もう少しだね…1週間後かぁ…お互い頑張ろうね!!」

「うん」

じゃあと言って高橋君は私に手を振っていってしまった。

ー…高橋君が誰を見つめていても構わないー…。
只貴方のことが好きだから。
この思いは叶わなくても…見つめていることだけは分かって下さい。

「もう…本当に…好き…」

[135] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時10分

「た…っただいま…っ」

ヤバイ…
知らない靴がもう玄関にあるし…
リビングの方は明かりがついていて、知らない男の人の声が聞こえて来る。

「お帰りぃ〜もう来てるわよぉ〜」

詩織さんが私の所に来た。

「早く!!」

私を急かす詩織さんは何故か笑顔。
そりゃそうだ…自分の息子が帰って来て…
明日は旧婚旅行だからね!!

「悟、こちらが葵ちゃん。お姉さんよ」

『悟』と呼ばれた男の子…人が私に視線を注いだ。
うわ…っ…めっちゃカッコイイ…でも高橋君には負けるな…ふっ…。
黒髪に黒い目。日本人と言わずに何人と言います??って感じの男の子。
ルックスも凄い良くて、サラサラのヘアスタイル。

「こんにちは。葵さん」

『悟』が私に手を差し出して来た。

「あ、こんにちは。」

私はその手を握り返した。

「葵です。これから宜しく…えっと…悟…君??」

「はは…っ、何で疑問系??悟で良いよ。」

「あ、ごめん。じゃあ…悟で…」

「そうそう、それで良い。」

つーか…いつまで握ってるわけ??この手…。

「よっし!!悟と葵ちゃんは仲良くなったことだし!!外食にしましょ!!今日。」

単に作ってなかっただけでしょ…って言いたくなるけどツッコミはやめておく。

「じゃあ、あたし、着替えて来るから。」
そう言って詩織さんと父は2階へ上がっていった。


居間には悟と私の二人きり。
何か…気まずい…




ちゅっ…





「え…??」

今、悟、何した??
キスした??
私に。
しかも口に。
おいおい、ふざけんなよ…ガキ!!!!!!!!!!

「あはは、葵、可愛い」

あはは…じゃねぇよ!!
しかも呼び捨て!!!
私の方が年上だってこと、お忘れ??
しかーも、何でキスすんのっ!!

「アメリカでは挨拶代わりなんだよ。知らなかった??」

バカにしたような口調。

「だからって…することないでしょ??挨拶代わりなら、さっきしたじゃない!!」

「だって、母さん達に怪しまれるだろ??」

「意味分かんない。怪しまれるも何も…

「葵ちゃぁ〜ん。行くわよぉ〜」

詩織さんののんきな声とは裏腹に…
私は音程で言うと…『バス』
そんな気分だった。









ーレストラン

「葵、何にする??」

呼び捨てだよ…コイツ。
親の前で怪しまれるとか言っときながら呼び捨て!!

「別に…何でも」

「…連れないなぁ…じゃあ葵は僕と同じカルボナーラで…」

…『僕』?!僕っつった…??こんな大の男が…僕?!
何なんだ…コイツは。

5分ぐらいして悟と同じカルボナーラが運ばれて来た。

「美味しい??」

「普通」

悟が聞いて来るのに対して私は冷血に返す。
こんなのに構ってちゃ、それこそ怪しまれる!!
私は高橋君一筋なんだから。

「ふーん…そっか。アメリカのはもうちょっと美味しいけど、これもいい味してるじゃん。」

独りでブツブツ言ってる奴はほっといて私は食べることに専念する。

「そんなに一生懸命食べちゃって。本当は美味しいくせに。」

「…」

ウザイ…。

「まあ良いや。」

そう言って悟も食べ始める。

ここの店での席の配置は…。
私と父が隣同士。
悟と詩織さんが隣同士。
私の前に悟が、父の前に詩織さん。となっている。
父と詩織さんはお互い甘い言葉を投げ合ってるし、悟は独り言言ってるし。

何なのよ!!この家族。

[136] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時14分

「葵」

「…」

帰宅後、何故か知らないが私より先に悟は私の部屋に居た。
相手にしないのは勿論のことだが、うっとおしい。
頭が良い悟には分からないだろうが日本の高校生はとても不安定な場所に立っているのが現状。
大学に進学して、それから就職。まさに『一寸先は闇』の世界なのだ。
私はもう高2。来年高3でもう受験。こっちのことも考えて欲しい。

「葵ちゃ〜ん」

うるさいなぁ…。気が散る。
高橋君はこんなことしないだろうな…。
今では高橋君を思い出すと、美苑さんに繋がるのも…これまた現状….
辛いなぁ…。

「葵ぃ〜何で無視すんのぉ〜??」

いちいち伸ばすなぁ!!と言いたいがこれも無視。
勉強に集中しなきゃいけないんだから。
悟なんかに負けてられない。

「葵!!」

「だぁーッ!!!!うっさーい!!黙ってよ!!勉強してんの!!出てって!!」

それだけ言うと私は悟に背を向けた。

「つまんねぇ〜だってさー勉強つっても簡単じゃぁ〜ん??」

**な…。

「葵…」

急に甘い言葉で私を誘う悟。
仕方なく後ろを向いたら、すぐそこに悟の整いすぎた顔。

何で…こんなことしてんの??






ー悟視点


僕は壁にもたれかかる葵を、そのまま押し付けてキスをした。
急なキスに葵は相当驚いたようで、舌を入れたらビクっと肩が上がった。
「悟…」
「黙って」
葵が嫌がって僕の手を振るい祓うおうとする。
そんなのお構いナシに、僕は葵の舌に自分の舌を絡める。
自分でも驚くくらいのキスに、僕は密かに心の中で一人、発情していた。
葵の顔を両手で包んで、何度も愛しむようにキスをする。
キスの合間に葵の唇から漏れるため息のような吐息。
ああ、こういう気分なんだ、悪いことしてるときって。
僕たち仮にも姉弟だ。
ドキドキして、悪いことしてるってわかっているけど、それでも、だけど、そんなのよりもずっと…

「…っ」

唇を離すと、葵の顔は驚くくらい赤かった。
よく見ると涙目になっている。

「何やってんの…」

涙目の葵からは想像出来ない強気な発言が返って来た。

「え…」

「こういうことしないで。本気でもないくせに、迷惑。」

吐き捨てるように言う葵には僕は何故か腹が立った。
こんなこという女は始めてだ。
『迷惑』??
何でだよ。意味が分からない。
『本気』なわけねぇだろ。
『本気』じゃなかったらキスもアレも出来ねぇのかよ。
どんなに堅い女なんだ…??

『本気』…じゃないのか??

本当に…

あんなにドキドキしたのは…何なんだ??

罪悪感か??

きっとそうだ。

さっき僕がやったことは世間から目を背けるような行為だったからだ。

きっと…そう。

僕は無理矢理解釈した。












ー葵視点

「あ、ごめん…」

言い過ぎた…いつも自己嫌悪にかられている私のいつもすること。
言いたいことも言えない。高橋君が良い例だ。

「葵は…そういう気持ちなんだろ。」

悟が怒ったような呆れているようなどっちともつかないような顔で私を見る。

「…そうだよ。」

「なら謝ることねぇじゃんよ」

「…うん…」

「ごめんな。ビックリしただろ??」

悟がポンポンッと私を頭を軽く叩く。

「出来心なんだよ…葵のこと本気でもないくせにさ…本当にゴメン!!」

悟は手を合わせて私に謝る。

「良いよ、こっちこそ…嫌がってごめん。」

悟はホッとしたように胸をなで下ろした。

「これからこんな仲悪くちゃやってけないもんな。」

最高の笑顔で私を包んだ。

[137] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時16分

「悟!!良い加減起きてよ!!!」

「ん″〜……」

「さと…っ」

いきなり私を悟がベッドに押し倒した。

「葵…」

悟がキスしようとする。

「ちょっ…悟!!」

パンッ!!!

私はいきおい余って悟の頬を思い切り叩いてしまった。

「いって…こりゃ目ェ覚めるわ」

くすくす笑いながら私を抱きしめる。
180はある身長が160ある私を抱きしめる。
首痛そ…ってそんなのどうでもいいんだってば!!
この状況!!把握出来ない…

「あったかい…葵…」

ふーっ…と悟が息をするのが分かる。
ヤバイ…すんごいドキドキしてる。
『緊張』じゃなくて…高橋君といるドキドキじゃなくて…何か良くわからないけど…。

「このまんまが良いねぇ〜…」

寝ぼけなまこで言っているのか私に甘い言葉を掛けて来る。

「すー…っ」

え…また寝てる?!

「悟ぅ!!」

耳元で大声を出し、やっと起きた悟。

「おはよう…葵」

ちゅっ…と甘い音を立てて私の耳にキスをする。

「????!!!!!!!」

「あはは…っ…葵可愛い」

そう言って悟は私に背中を向けた。

大きいなぁ…

外国で長年暮らしてるとその外国人ぽくなっちゃうって言うけど、悟の場合は身長だけだ。あとは絶対日本人。日本人的な日本人。まあ態度は外国人かもね…

くすりと一人で私は笑う。



ー登校時


「Sports festival??」(体育祭)

「そう。体育祭。1週間後にあるの。」

「へぇ〜…アメリカじゃ、そゆことあんましなかったし…」

「そうなんだ。じゃあ今年が始めてか…。記念になるじゃん」

「そうだね。楽しみかも」

楽しみね…この体育祭が良い方に転ぶか、悪い方に転ぶか…まあ悪い方だとは簡単に予想出来るけど。

「葵、どうした??」

私が考え込んでいると下から悟が覗き込んだ。

「や…何でもない。」

やば…高橋君のこと考えると泣けて来る…。

「大丈夫かよー何かあったら言えよ??」

「うん。大丈夫だから。」

そう言った物の全然大丈夫じゃない。

「あ」

悟が独りでに声を出す。

「どうした??」

「今日、朝礼あるだろ??何か紹介されるんだよね、僕」

「そうなんだ…ってさ。ずっと思ってたんだけど…『僕』って…変じゃない??言葉使いからして…」

「あーそうだねー…でもさ、今時の日本の高校生って『俺』使う奴が多いじゃん。『僕』って言った方が印象付けられるって感じ…そう思わない??」

「そうだね…」

全部計算積みか…嫌な奴。

「それよりさぁ、早く行かないと遅れるんじゃないの??」

悟が私に言う。

「あ、そうだった。」

ぐいっ…

「え」

悟が私の手首を掴み走り出した。

「ちょ…っ悟??」

「遅れるも〜ん♪」

呑気な声…。

学校に着くか着かないかの瀬戸際の時ー…。





ちゅぅ…





いつもより強烈なキスを浴びせて来る悟。

「んー…っ」

やっと口を離したと思ったら悟が私の顔をガン見している。

「さと…っ…悟さぁ…昨日言ったよね…??本気じゃないくせに迷惑だって。ふざけてんの??本当にやめてって。そしたら悟はごめんって何回も謝ってたくせに。それって…アメリカンジョークってヤツなの??ねぇ、そんなの日本じゃ通用しないの。お願いだから本当にやめて。迷惑。私…好きな人がー…

「嘉納さん??」

校門の方を見ると、そこには高橋君があっけに取られてこちらを見ている。
もしかしてー…キスしているの見られた??!

ヤバイヤバイと焦っているとまたしても悟からの爆弾発言。

「好きでもない奴にキスなんかしねぇよ」

そう言って私を置いて校門を潜っていった。

[138] 義姉弟
夕暮 - 2006年09月30日 (土) 20時17分

「あ…あの…嘉納さん…」

「…高橋君」

「ごめん…見るつもりはなかったんだ。ほら…あの…嘉納さん、学級委員だろ??だから遅いなって…思って…んで…ちょっと外出てみたら……本当、ごめん!!ごめん…」

「…んで…何で…高橋君が謝るの??…何で…」

あー…また泣きそうだ。
私はいつも高橋君にカッコ悪い所ばっか見せてる。
美苑さんは…カッコいいから…だから私なんか見向きもしない。
仕様がないよ…自業自得。

「嘉納さん…本当に大丈夫??あの…何か悩みあるなら打ち明けて…」

「高橋君…」

打ち明けられる訳ないでしょ??
悩みは高橋君なんだから。

「同じ学級委員だし…協力してやってかなきゃなんないだろ??だから…本当に嘉納さんが居なくなると…俺も困るし…。」

「でも…一番居なくなって困るのは…美苑さんでしょ??」

「え…」

ほら。
やっぱそうだ。
そうなんだよ…。


「嘉納さん…」

「高橋君はそればっかだよ…私が居なくなって困るのはさ…美苑さんの情報がなくなるからだよ。私なんか…クラスメイトで単なる同じ学級委員でしか過ぎないの!!」

いきなり大声を出したせいだろう…高橋君はかなり驚いている。
しかし高橋君は一呼吸置いて私を見下ろした。

「つまり…それ、どういう意味??嘉納さんが言ってること…いまいち俺には分からないんだけど…」

もう良いよ…って言いたくなる。
だけど言えない。
中1の頃からだよ…??
高橋君も…私と同じ思いをずっとしてて…。

「…ずっと言おうと思ってた」

そこで私は一呼吸置いてまだ涙が溜まっている目で高橋君を直視した。

「中1の頃から高橋君が好きなの」

後悔なんかしない。

「高橋君が美苑さんを好きだって聞いたとき正直驚いたよ。中1の頃から薄々気付いてたけど絶対高橋君は私じゃない人を見つめてるって分かってた。だから当然の結果だと思うけど…いざ聞くと本当にショックだった。ずっと好きだったのに…って。でもそれは高橋君のせいでも美苑さんのせいでもないんだよ。私が勝手に思ってることだから。日曜日、高橋君と会って、体育祭時間空いてる??って聞いたじゃない。あの内容はコレ。だから…体育祭は時間空けなくていいから。その時間…美苑さんに告白して。叶わない恋だって始めから分かってるから…断られるのなんて当然のことだから…だから…あぁー…違うの…。何かおかしい…変なの今日…」

私は目を伏せた。

高橋君は私を直視している。
驚いているのか、呆気にとられているのか、唖然しているのか…
何とも言えない顔で。

そんな顔で私を見ないでよ…。

[139] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月01日 (日) 01時19分

「変…じゃないと思うよ…」

数分の沈黙を破ったのは高橋君だった。

「俺はそう思う…」

何も言えない。
高橋君がそう思たって、高橋君は美苑さんのことが好きなんだから。

「でも…ごめん。やっぱ俺はー…美苑さんのことが好きだから」

ためらいがちに、でもハッキリと言われた。
当然の結果だけど…何故か哀しい…だけど、何故かスッキリもした。
やっと思いを伝えることが出来た。
達成感って言うのかな…ううん、何か違う。

「ありがとう」

独りでに言葉が溢れる。

「え、何で??」

「だって、ちゃんと返事してくれたのに大感謝だから。」

クスッと笑って高橋君を見上げる。

「頑張ってね。応援は出来ないけど」

私の言葉が面白かったのか、高橋君もまたクスッと笑った。

「ありがとう」

今度は高橋君が言った。

「気持ち伝えてくれてありがとう。」

笑顔。
今だけは分かる。
この笑顔は私に向けられた物だってことが。

「行こうか。今日朝礼だよ」

「うん」

そう言って私と高橋君は校舎へ歩き出した。


「本日、この我が校に転入生が来ました。嘉納悟くんです。」

校長が言い終わると同時に悟が朝礼台の上に立った。
悟を見た途端に女子からの騒ぎ声。

「静粛に」

司会を努める教頭が発言するものの、女子からの歓声は止まない。

校長も教頭も諦めたのか悟に何か話しかけている。
校長等と何か話し終えた悟は校長が使っているマイクを手に持った。

「おはようございます。本日、この高等学校に編入してきた嘉納悟です。」

悟の一言で辺りはシーンとする。
女子共は騒ぐより悟の声を聞きたいのだろう。
校長も教頭もホッとし、校長がまた話し始めた。

「嘉納君は今までアメリカに留学していて、飛び級制度を使って大学を卒業しています。」

校長の発言にまたもや女子共が騒ぎ出す。
校長は悟に話し手を変わった方が良いと思い悟にマイクを手渡した。

「しかし」

悟の声が体育館に響き渡る。
女子共の歓声がピタッと止まった。

「いくら大学を出ていても、15で就職先が中々見つからないのが現状です。なので、日本に戻り同じ年の人たちと違った意味での勉強を学びたいと思います。」

これだけ言えば充分だろう。
悟は朝礼台から降りた。
前の列の奴が悟に手を振っている。
悟も軽く微笑んで手を振替すと前の奴はキャーッと叫ぶ。
まるでアイドルみたいだ。

「嘉納君は1-Cに入ります。」

1-Cであろう者がキャーッと手を取り合って喜んでいる。(女子のみ)
男子は女子とは裏腹に悟のことをブツブツ言い合っている。

ポイント高ーいッ!!

とか

超カッコイイ!!背ェ、高いねぇ!!

とか。そんな声があちこちから聞こえる。

「へぇー…確かにポイント高いかも」

横に居る翔子が呟いた。

「良いなぁ〜葵。羨ましい!!」

翔子が言うことに対して私は軽く笑う。

「まあ頑張りなさいよ」

ポンッと軽く肩を叩く美苑さんに何故か苦みを感じる私が居た。


朝礼が終わり、一人シュンッとしている私に美苑さんがいち早く気付いた。

「どうしたの、葵。顔色悪いわよ」

そんな美苑さんの心配にも答えない私って…何なんだろう…。

「葵??」

翔子も近くに寄って来て、ますます気まずくなる私。

「…美苑さん、翔子…話しがある」

暗いムードで言う私に美苑さんも翔子もゴクリと唾を飲む。

「私…高橋君に告白したよ…」

「えー…??」

二人の声が同時にぶつかる。
翔子は考えているのだろう、高橋君が美苑さんのことを好きだということ。
美苑さんは…何を思う??

「そっか…」

翔子が第一声を口にした。
翔子は何を言って良いのか分からない。それは私から見ても分かることだ。

「よく、頑張ったね」

美苑さんは私の頭を撫でてくれた。
誰も結果を聞こうとはしなかった。
そういう面での友情って凄いな…と実感してしまう。

「春日さん」

生徒会の人だろう。美苑さんに寄って来た。

「今日の放課後、体育祭についての打ち合わせがありますので…」

「分かりました」

それだけ言うといってしまった。

「ごめん、葵。生徒会長と話して来るわ」

美苑さんが居なくなり、翔子は安堵したようだ。

「本当に…頑張ったねぇ」

崩れそうな笑顔で私を抱きしめてくれる翔子。

「うん…」

目を瞑って告白の時のことを思い出す。

「もうね、良いの。あ、高橋君を諦めた訳じゃないよ??叶わなくても良い。叶わなくても良いから…高橋君を好きだから。絶対諦めない。」

今の私の思いはどんな意思より強い物だと思う。

[140] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月01日 (日) 01時21分

「じゃあ、各委員会の仕事に移って下さい。委員会の仕事がない人は、運動場のゴミ拾いをお願いします」

スピーカーから通して高3の生徒会長の声が聞こえる。
横に立っているのは美苑さん。
美苑さんは書記なんだそうだ。

あと1週間…なんて言っていたけど、あと3日で体育祭。
夜に行う、花火大会や、体育祭に来るお客さんへのサービスのお茶。
運動場をほうきで履くなど、大変だ。
高1はあまり仕事をせず、帰る人がほとんどだが、高2や高3はそうはいかない。特に高3は最後の体育祭ということで準備から張り切っている。
私は整備委員会…学級委員は関係なく、仕事をしなくてはならない。
『整備』だから誰よりも仕事が大変な委員会。
普段何もやることがない委員会だから、このときだけは体力を消耗する。
高橋君は体育委員会。ラインを引くらしい。1ミリでもずれてはいけないんだそうだ。

「ゴミ捨てて」

巨大なゴミ袋を先輩から渡される。

「はい」

こういうときは素直に従っていた方が良い。
虐めの対象になるから。
例えパシリだと思っていてもだ。

あー疲れた…などと弱音は吐けない。
思い切り先輩や先生に睨まれるから。





「終わった…」

運動場に残っているのは整備委員と担当の先生。
もう日は落ちていて18時を回っているんじゃないかと思う。
ジャージから制服に着替え、昇降口へ急ぐ。
同じクラスの委員会の子はもう帰っていた。

「あーおいっ!!」

「え…??」

靴を履きながら見上げると、そこには悟が立っていた。

「帰ろ」

「待っててくれたの…??」

「うん」

可愛いな…母性本能がくすぐられる。
朝あった出来事なんて忘れてしまいたいぐらい…。

「ね、葵。手ぇ、繋ご」

愛らしく微笑む悟に私は静かに首を振った。

「ダメ。」

「何で??」

「仮にも姉弟だから。それにね…」

「高橋陸」

ボソッと高橋君のフルネームを言う悟。

「え…??」

「高橋陸…朝、校門の前で僕等がキスしているのを見た男。」

「何で知ってるの…??」

「調査済みだ」

真っすぐ、どこかを見つめている悟。

「好きなんだろ、アイツのこと。」

「ー…っ…」

「葵の態度を見れば手に取るように分かる。」

「…何が言いたいの」

悟は冷たい目線で私を見下ろした。

「まだ、分からない??オレは葵のことを好きでもなんでもない。只、その場しのぎで言っただけ。」

冷たく見放され、悟は私を置いて早足で歩き始めた。

「ー…それだけ言いに来たの??」

悟は足を止め、振り返った。

「そうだよ」

「…だから何??私、貴方に何も期待なんかしてない。そんなこと言われてもどうってことないし…それとも、何??貴方、何か勘違いしてる訳??私が貴方を好きってこと。」

「ー…」

図星のようだ。
なんて自意識過剰な奴なんだろう。

「悪いけど」

遠くに居る悟にもハッキリと聞こえるような大きな声で言った。

「アンタの言った通り、私は高橋君が好きだよ」

はーっ…と一呼吸置いて全部喋ろうと決意した。

「アンタがいった後、私、高橋君に告白した。予想通り振られたよ」

悟はこちらをじっと見つめている。

「でもね、私、振られたからって諦めるような、そんな落ちぶれた女じゃないから。アンタみたいな自意識過剰な奴でもないの。だから、アンタが何て言おうと私は構わないで前を向いて歩くから」

そう言って早歩きで悟を通り過ぎようとする自分ー…

「さっき、僕からオレに変わったね」

笑い混じりの言葉を残して、私は家へ向かった。


「あら、葵ちゃん、お帰り〜遅かったわねぇ」

台所からのんきな詩織さんの声がする。

「まあね」

言葉だけ返し、私は自分の部屋へと向かう。
ベッドに身を投げ、一人考える自分が居る。
悟に何であんなことを言ったのか分からない。
悟は私の好きな人を当てながらも、自分を好きだと自意識過剰なことを言った。文節的に合わない…。悟は頭が良いから自分で勝手に解釈してしまう所があると短い期間で分かった。何を言いたい??疑問が募るばかりだ。

「はぁー…っ」

もう全然分かんないよ…。

「葵ちゃん??ご飯どうする??」

「いらない。」

無愛想に呟く私に詩織さんは何も言わなかった。年が近いと私が思ってることとか、今の状況とか分かるのかな??

「ー…っ」

私は枕に顔を埋めて泣いていた。

[143] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月01日 (日) 17時25分

悟とヤッてから、ふと思うのは…高橋君はあのこと覚えてないんだな…ってこと。なんか哀しい感じがする。初のお相手が高橋君ってことは嬉しいけど、覚えてないってことは哀しい。

「嘉納さん」

「へっ?!」

「ボーッとしてんねー。あ、これ、野口(担任)が、選手名簿つけとけだって」

そう言って紙を渡す。

「分かった。えーと…じゃあ…高橋君は…リレーだよね??」

上目遣いに高橋君を見る。
今は放課後。
教室には私と高橋君の二人しか居ない。
私の前の席の椅子に高橋君が座る。

「そうそう、何で知ってんの??」

「そりゃあ、好きですからね。調査済みです」

胸を張って言う。
明らかに分かっているのは、告白前の私と告白後の私が違うってことだ。

「あはは、そっか」

苦笑しながら、高橋君はリレー選手の所に『高橋陸』と名前を記す。

「『陸』なんて似合わないだろ??俺、体育系じゃないし…。よく言われるんだ。でも、走るのは好きだよ」

ニコッと笑う所が、またツボで…。

「そんなことないよ。高橋君、足速いし。」

「ありがと」

あーあ…リレーの話ししても思い出さないのかぁ…と高橋君を盗み見る。

「って…頭いてぇ…」

いきなり高橋君が頭を抱え込んだ。

「大丈夫??!」

もしかして…なんて。そんな期待はしない。

「俺…中3んときのリレー…」

え?!もしかして…思い出す??

「ー…っ…ごめん。何でもない…。何なんだ??よく分かんねぇ…」

クソッ…と悪態をつきながら…それでも鉛筆を動かす手は止まない。

「嘉納さんは…アレだよね。借り物競走。」

「そーそー…知ってたんだね。」

「まあねー」

軽く笑いながら『嘉納葵』と借り物競走の覧に記した。

「下の名前…知ってたんだ」

「そりゃ知ってるよ。中1の頃からクラス一緒だったし。今だって同じ学級委員だろ??」

「そっか」

知ってたんだ…良かった。





バンッ!!!





「葵!!」

いきなり教室の戸が開いたと思ったらそこに立っていたのは悟だった。

「帰ろ」

高橋君は呆気に取られているのか、悟と私を交互に見ている。

「あ…まだ、終わってないんだ」

悟に紙を見せる。

「へぇ〜…」

そう言いながら私と高橋君に近寄って来る。

「じゃあ、待ってる」

私の横の席の椅子に座る。

「あの…嘉納さん…どういう…」

「えっと…義弟ー…

「彼氏です」

ニコッと高橋君に笑いかける。

「違うの。私の義弟なの」

「えー…??」

「両親が再婚して、そんで義母の連れ子なの」

「あ、そうなんだ…。そう言えば苗字…嘉納だもんね」

高橋君は納得したようだ。

「…それよりさぁ、早く終わらせてくれません??僕、待ってるんですけど」

高橋君を睨みつける。

「あぁ、ごめん。じゃあ、嘉納さん、帰って良いよ。後は俺一人で出来るし」

「や、良いの。悟、待たせとけば良いから。」

私の発言にますます悟が高橋君を睨みつける目が鋭くなっていく。

「え…あ、良いんだ…じゃあ早めに終わらそう」

ビクビクしながら高橋君は紙面に目を写す。

「えーと…徒競走は…全員参加だっけ…」

悟が居るからだろう。
自然に高橋君の声が弱まっていく。

「あ…そうだよ」

私も声が小さくなっているのは…気のせい??

[144] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月01日 (日) 23時13分

「じゃ、じゃあね」

高橋君はビクビクしながら、それでも手を振ってくれた。
高橋君が昇降口から出終わったら、私と悟だけが取り残された。
気まずい…。

「葵??」

ひぃぃぃぃ!!!!

「僕が葵のこと好きなの知ってるよね??」

殺気を感じる。
背後から物凄い殺気を。

「見せつけてんの??」

そんなつもりはありません!!
てか、私は高橋君とベタベタしたいってのは知ってるでしょ?!
心で叫ぶが口では言えない。

「…で…でででも…さぁ…私が高橋君のこと好きなの…知ってるでしょ??」

「まあね」

ケロッとして私の手をひいて昇降口を出る。

「まあ、家に帰ればヤレるだけヤレるけどね」

私は握っていたてに力を強めた。

「いって…てか、そんなに握って欲しいんだ」

意味が違ーう!!!!!!

「お袋とか居ねぇじゃん。だから、どんだけ声だしてもOK!!」

そんな明るく言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

「僕だってね、男なんだよ??」

人気のない路地に入り、妙にいやらしく響く悟の声。
と、その瞬間、握っていた悟の手が急に強くなり、体ごと引っ張って来た。
私の腰に手を当てて、キスを浴びせて来る。

「ふ…ぁ…っ…」

何でこんなに気持ちいいんだろうー…
何でこんなに悟の中は気持ちいいんだろうー…
でも一番気持ちいいのは…中3のときの高橋君の腕の中ー…。

「どう??感じた??」

やっと口を離され、上から降って来た言葉に私は眩んでしまった。
ああー…何て気持ちいいんだろう…

[146] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月06日 (金) 23時02分

もう…口も訊きたくないない。
私も私で凄くバカだ。
高橋君が好きなくせに、何で悟にあんな快感を求めてしまうのだろうか。
体だけ…体だけのお付き合い。
私はそう、無理矢理解釈するしかないのだ。




「ふぁ〜…っ…今日が体育祭かぁ…あっという間だな〜」

悟が寝ぼけなまこで私に話しかけて来る。

「そうだね」

私はとっくにジャージに着替えていて、リビングには悟の朝食。

「葵はもう朝食終わったの??」

「うん」

「随分早いんだね」

「まあね。学級委員だし色々やんなきゃいけないことがあるから」

「へぇ〜…高橋陸とあんまりイチャつかないでよ」

「そうしたくても、できません」

悟の質問に簡潔に答えていくうちに私は玄関へ向かっていた。

「はぁ〜?!もう出るの??」

「うん」

靴を履き、ドアの取っ手に手を掛ける。

「いってらっしゃ〜い…」

悟が私の頬にキスを落とす。

「ん、ちゃんと食べてよね」

慣れた。
そういった感じで私は玄関のドアを開けた。




「嘉納さん」

そのまま校庭へ出るとすでに高橋君が居た。

「今、名簿に丸つけといたから。あ、嘉納さんの分もつけとくよ」

そう言って高橋君が鉛筆を持つ。

「ありがと」

まだ7時代だからだろうか…肌寒い。
学級委員や、委員長、生徒会は普通の生徒より30分早く学校へ行かなくてはならない。

「えーっと…どうせ俺等がすることなんて人数確認だけだろうし…暇だね」

「そうだねぇ〜…」

私も進歩したな…。
あんな告白をしといて、今では普通に高橋君と話してる。

「あの…っ…嘉納さん…」

高橋君が戸惑いながら私の名前を呼ぶ。

「何??」

高橋君は目を泳がせ、そして意を決したように私に視点を合わせた。

「嘉納さんには悪いけど、俺、美苑さんに告白する。」

[147] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月08日 (日) 16時11分

えー…??
一瞬私の視界から高橋君がぼやけた。

「…そうなんだ!!頑張ってね!!」

高橋君は私の返答に戸惑ったようだ。

「あ…うん。頑張るよ。」

「…な…何で??何で…あの…ううん、何でもない」

口から言いたいことが溢れ出すようにー…でも私はそれを抑える。

「…嘉納さん…ごめん」

「何で??何で高橋君が謝るの??」

「だって…ほら…嘉納さんは俺のことー…アレだし…俺が美苑さんに告白すること、嘉納さんに言うー…って…ごめん…」

「良いよ。大丈夫だから」

大丈夫なんかじゃない…

全然大丈夫じゃないー…。

「あ…美苑さん!!」

高橋君がとっさに叫ぶ。
美苑さんは軽い反応を見せる。

「あ、高橋君。」

「あの…おはようごさいます。」

「おはよう…。葵、私生徒会だら人数確認のとき遅れると思うの。先に丸つけといて。じゃあ」

そう言って私達に手を振り、いってしまった。

「ー…はは…っ…全然相手にされないや…」

高橋君は落ち込んだように愛想笑いを浮かべる。

「高橋君さぁ…」

言いたいことがー…ぶちまけるー…。

「高橋君、私が貴方のことを好きだということ知ってるのに、何で見せつけようとするの??そりゃ好きな人に話しかけたいのは分かるけどー…何でよ。何で??」

何言ってんだろ…。
こんなこと言いたいんじゃないのにー…。

高橋君は少し考え込むようにしてー…そして言った。

「ー…それはー…嘉納さんに俺を諦めて欲しかったから。」

「ー…っ!!」

「嘉納さんはー…俺なんかよりもっと良い奴居るって。」

今までためてきたもの全てが爆発するー…。




パンッ!!




私は高橋君の頬を思い切り叩いた。

「最悪!!」

これで高橋君と話すことはもうないだろう。

これで良いー…。

これで良いんだー…。

「葵??」

走り去ろうとしたそこにー…悟が立っていた。

[148] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月08日 (日) 23時08分

今は悟なんか関係ない。
今日が体育祭だってことも関係ない。

私は悟を突っ切ってどこかへ走り去ろうとした。

だけどそれを阻止する者が居た。

そうー…悟。

「葵??何かあった??」

あったよ。
ありましたよ。
大有りですよ。

でも言える訳がない。

悟は私から私の後ろに立ってる高橋君へ目を向けた。

「…」

悟は無言で高橋君へ近づいていく。

高橋君と直面したかと思うと悟がいきなり高橋君の胸ぐらを掴んだ。

「テメエ、何やってんだよ!!ふざけんな!!俺の姉貴の嫌がることすんじゃねぇよ!!」

悟は吐き捨てるようにそう言い、高橋君を地面に突き倒した。

「ちょー…っ…悟…何してんの!!ごめん!!高橋君…」

私は高橋君に近寄ろうとしたが、またしても悟が止めた。

「じゃあ何で泣いてんの」

棒読みで私を見下ろす。
返答に困る私は高橋君を見つめた。
高橋君は痛そう…という顔をするんじゃなくて、ただ無表情でいた。

「それはー…っ…良いじゃない。悟には関係ない。」

私の一言でカッときたのか、悟が私の腕をきつく掴んだ。
ここで『痛い』などと泣き言を程私は女々しくない。

「葵はいつもそればっかだ。俺には関係ないって言う。そりゃ葵から見りゃあ関係ないかもしれねぇけど、俺は葵が好きなんだからこっちの言い分としては関係ありすぎだろうが!!」

さらにきつく悟が私の腕を掴む。

高橋君は呆気にとられている様子もなく…只…無表情で私たちのやり取りを見ていた。

「だから何なの?!私が嫌だって感じたことをなんで悟にわざわざ言わなきゃいけない訳?!私のことなんだから悟につべこべ言われるなんて変だよ!!」

高橋君が立ち上がり、私と悟の間に入って来た。


「もう良いだろ、嘉納悟。俺たちはクラスの人数確認しなきゃいけないんだ。行こう、嘉納さん。」

そう言って悟が掴んでいた手を意図も簡単にはらい、私の腕を優しく掴んだ。




悟から私達が見えない場所へ行くと高橋君が手を離した。

「ごめん、あんまり嘉納さんが嫌そうにしてたから…つい…」

「良いよ、ありがとう」

もうなんの情もこもっていない言葉。

これ以上好きで居続けたら私が壊れるー…。

壊れる前に対処しなきゃ…。

そう思っていた。

[153] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月28日 (土) 15時53分

「美苑さん…」

俺はもう、嘉納さんへの罪悪感と美苑さんへの…何と言うのだろう。そう、早く俺の気持ちを伝えたいという気持ちでいっぱいだった。

「何??」

いつもの笑顔で俺を見返して来る美苑さん。

「話しがあるんですけど」

もうこれで終わりだ。

「話し??何??」

俺は一呼吸置いて美苑さんを直視した。

「俺、美苑さんが好きです」

美苑さんは呆気に取られたようだ。
でもすぐにいつもの冷静さを取り戻し俺を直視した。

「そう」

落ち着いた声だ。

「…付き合って下さいとは言いませんけど、美苑さんから見て俺はどう…ですか??」

「…恋愛対象には思えない。ごめんなさい」

そう言ってくれてよかった。

「そうですか。ありがとうございます」

俺は美苑さんに一礼し美苑さんに背を向けた。
向かうは…嘉納さんの所。

[154] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月29日 (日) 18時58分

「…っ…嘉納さん!!」

俺は本部に居る嘉納さんの腕を掴んだ。

「あ、高橋君」

どうしたの?という目で俺を見上げる。

「あー…」

何俺は嘉納さんの腕を気安く掴んでるんだろう。

「嘉納と高橋!!ちょっと来い」

担任が俺たちを呼ぶ。

「小林がな、具合悪くて保健室に居るから見て来てやってくれないか。多分帰ると思うから荷造りも。次の競技まで後かなりの時間があるし。頼む」

そう言って担任は近くの教師と喋り出した。

「行こうか、高橋君」

嘉納さんが俺の手を掴む。

「そうだね」

そう言って俺は腕を引き抜くことが出来なくなったにも関わらずそのまま歩き出した。

靴を脱いで靴下のまま保健室へ向かう。

嘉納さんが保健室の戸を開けると2つあるベッドの1つに小林さんが寝ていた。

「翔子」

嘉納さんが小林さんに声をかける。
小林さんは薄く目を開けた。

「気分悪い?熱計ろうか。」

そう言って嘉納さんは体温計を小林さんに渡す。

数十秒間の間を開けて体温計がピピピッと鳴る。

「38℃もある!!翔子、制服で来た??」

「あ、うん」

「じゃあ教室行って取ってくるよ。」

嘉納さんは保健室を出て行った。
残された小林さんと俺。
気まずい雰囲気が流れる。

「アンタ」

低く小林さんが俺に言った。

「え?」

俺が小林さんの方を振り向くと小林さんが凄い形相で俺を睨みつけた。

「何がしたいわけ。アンタは美苑さんが好きなくせに葵にも期待を持たせてる。そうやってこのままずっとその関係を維持してく訳??美苑さんが好きなら好きだって葵に言えよ。そうやって葵に期待を持たせるな。遠のけろよ。お前バカ??あたしの親友に傷つけたらあたしがお前を殺してやる」

早口で言う。
喋っている間中、小林さんは俺を睨みっぱなしだった。
喋り終わるともう俺の顔なんか見てくないように俺に背を向け布団をかぶった。

「翔子!!制服持って来た。」

嘉納さんが小林さんの制服を持って小林さんに渡す。

「ありがと。家には連絡してあるから大丈夫」

「そっか。お大事に」

小林さんが制服を着ている時は俺は目を伏せていたけど小林さんが出て行くと、小林さんと保健室へ残されたとき以上に気まずい空気が流れた。

[155] 義姉弟
夕暮 - 2006年10月30日 (月) 21時25分

もう耐えられない。
こんな状況をいつまで続けるのかと考えるだけでー…俺は嘉納さんを襲いたくなる。

「…嘉納さん」

「え?」

嘉納さんが返事をするかしないかのうちに俺は嘉納さんの腕を強引に掴んでベッドに押し倒した。
今からすること…嘉納さんだって分かっているはずだ。

頭の片隅でさっき小林さんが言ったことが甦る。

 ーそうやって葵に期待を持たせるな

分かってる。俺は期待を持たせているんじゃない。

 ー美苑さんが好きなくせに

もう振られたんだ。

 ーそうやってこのままずっとその関係を維持してく訳??

そうじゃない。そうじゃないから俺はー…
「ごめん、嘉納さん」

俺はそう呟くと同時にー…

「ーーーんぅっ…―――!?」

いきなりの口付けに、嘉納さんは必死で逃げようとするが、
両頬を手で固定し、さらに口づけを深くする。

「…っーや―…。」

逃げる舌を絡めとるように舌で弄り、口内を掻き回す。

そうして口内を侵すうちに、少しずつ体に広がる、新しくも古い感覚を覚えた。

中3のあのとき…酔った勢いで俺はー…。

感覚があのときと全く変わらない。
俺をゾクゾクさせるようにー…。

「ごめん、嘉納さん」

そうまた呟いた。

[156] 義姉弟
夕暮 - 2006年11月01日 (水) 21時53分

「…ふぁっ―――…っ―――!?」

胸の先端を熱い口に含み、嘉納さんは反射的に甘い声を洩らした。
すぐに我に返り、口を手で押さえるものの、体は間違いなく、火照り始めていた。
ふと、顔を上げた嘉納さんと視線がぶつかり、俺は恥ずかしそうに目を逸らす。

「高橋…君?」

「嘉納さん…本当にごめんな…」

―嘉納さんの顔を見たまま、液で濡れた胸の先端を指の先でやさしく押しつぶす。

「っあ…。」

抗議する為、抑えるのをやめた口から、また甘い声が洩れた。

「…可愛いね…嘉納さん。」

「…―――っ…!?」

濡れた先端を再び口に含み、舌先で弄んでやると、口の中で少しづつ硬くなっていくのが分かった。
もう片方の胸は手でやさしく解す様に揉んでやり、空いているほうの手で太腿を撫でる。

「ひぁっ…ダ…メぇ…っ―――。」

嘉納さんの肌がしっとりと汗で包まれ、体の熱が増していく―――。

胸の愛撫は続けたまま、ショーツの上から、くりくりと軽く刺激を与えてやと、
その部分の水分が増した。

「…っふぁ!?…―――っ―――あぁっ…―――。」

胸を弄んでいた舌は、胸から腹へと、ゆっくり移動していく。
そして腹から下腹部へとなぞっていくかと思えば、焦らす様に戻っていく。
スカートを捲り、ショーツを脱がせると、白い太腿と、下腹部が露になった。

「…やだっ…―――ダメ…―――だ…って…。」

溢れそうな蜜を蓄え、どこよりも熱を持ったその割れ目の中心に軽く指先を沈ませると、つぷっと抵抗なく入っていった。

「ひゃあんっ――――――!」


俺はすぐにその指を引き抜くと、嘉納さんに見せ付けるように濡れた指を舐める。

「な…んで…っ…高橋君?」


「嘉納さんー…」

俺は、顔を沈めると、太腿にきつく吸い付いた。

「っ―――ぃ…たっ…―――。」

紅く色づいた跡から舌を移動させ、今度は指で広げた其処の中心の蕾を、ぺろ、と軽く舐める。

「ぁ―――。」

ビクンっと、大きく嘉納さんの体が反応する。

指先で軽く円を描くように弄られ、敏感になった其処は快感を何倍にもして体全体に伝え―――。



それを見越したように、ギリギリの所で舌は焦らすように横にそれ、襞に触る。


―――もう、今だけでもいい。



「―――ん…?」



いつの間にか顔を上げた俺は、嘉納さんの頬に伝う涙をぺろっと舐めた。


何か、熱いものが嘉納さんの濡れているそこに押し当てられる。





「悪い、嘉納さん。」








――――そして、一気に最奥まで―――――貫いた―――――。






「!?―――っひぁっ―――あぁぁぁ…。」

「―――っく…。」











「―――ぁ…―――っ―――ふっ…―――んぅ…。」


最奥を容赦なくぐいぐいと突き上げているのに、まだ奥へ奥へと捜し求めるようなその甘い刺激に、嘉納さんの体は歓喜に震える。


「ふぁっ…やっ…―――こん…な…。」


不定期なリズムで突かれ、強弱を付けながら抜き差さしされると、嘉納さんの意識は快楽だけに支配されていったはず―――。




「―――あ…高橋君…?っ…私…―――。」


―――少しだけの息をつく暇の後、再び腰を掴み、角度を変えて押し入ってくるものに、また嘉納さん息もろくにできないほど強く突かれる―――。

未知数の、今まで感じたことのない快感に、嘉納さんはただただ、俺の体にしがみ付いていた。

「高橋君…。」
耳元で名前を呼ばれると、ぞくぞくと鳥肌が立つ。




もう、俺は限界に、近づいていた―――。



近づいてきた終わりに、俺も、また一段と嘉納さんを深く求める。






「―――っぁ…――――…だめぇ…ぇ――――!」



「―――っ…―――!!」











そして…



境界線の曖昧な二人の間で、

熱いものが―――弾けた―――。

















俺は、ふわりとやさしい口付けを嘉納さんに交わすと、

意識の薄くなっていく嘉納さんの耳元で―――囁いた―――。







「好き…です。」

[160]
夕暮 - 2006年11月03日 (金) 16時43分

私はー…何をやっているの?

高橋君に…何を言われたの?

一瞬の出来事のようで…何もかもが嘘のよう…。

だけど隣で高橋君がすやすやと寝息を立てているー…。

ああ、現実なんだって。

何だか嬉しいようなー…悲しいような。

あー…美苑さんは?

これが最大の疑問。

美苑さんを好きでー…だけど私にこんなことをする。

高橋君ってこんなに軽い人だっけ?

ううん、違う。

中1の頃からずっと見てる。

高橋君のことは充分分かってる。

じゃあ…何なの?

「あ、嘉納さん…」

高橋君がぼんやりと目を開けた。
私はばっと目を逸らした。

「嘉納さんー…話したいことがあるんだ」

ドキッとしながらも高橋君に目線を戻した。

高橋君が口を開ける前に私は高橋君の口を手で抑えた。

「私も話すことがある。」

キッパリとそう言った。

「全然嫌じゃなかった。私は高橋君が好きだから。でも疑問はー…美苑さんは?てこと」

高橋君は目を伏せた。

そして静かにこう言った。

「ー…美苑さんに振られたよ」

「えー?」

長い沈黙の後私が口にした言葉。

高橋君が何を言っているかが分からなかった。

最初から分かってたことなのにー…。

美苑さんには彼氏がいるから振られるってー…。

でも高橋君ならOKしてくれるって…心の中で思ってた。

だけど悲しい現実。

私には喜ばしいことなのにー…。

「そう…」

私が俯き加減に言う。

「嘉納さん…俺気付いたんだ」

「え?」

私が顔を上げると高橋君が触れるだけのキスをした。

「嘉納さんが好きなんだ」

「ー…」

何と答えたら良いんだろうー…。

今までずっと望んで来たことなのに素直に喜べない。

「本当に?美苑さんのことはもう良いの?」

私がそう言うと高橋君は俯いた。

「それ以上にー…俺には嘉納さんが必要だって気付いたんだ…。」

「…そっか」

私は静かに言い、高橋君を抱きしめた。

「私も…高橋君が必要だよー…。」

高橋君は私をきつく抱きしめ返した。

「付き合おうー…?」

「うん」

これでー…私の夢が叶ったんだね?

ずっと望んで来たことがー…。

嬉しいー…。



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】Amazon.co.jp コカ・コーラが最大20%OFF玄関までお届け開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板