[581] 機動戦士ガンダムSEED CHAOS |
- ヴェイア - 2006年05月20日 (土) 23時09分
SEEDDESTINY最終話(オリジナル)
「お前はジャスティスを、今度こそあいつを討つんだ」 レイはそう言い通信を切った。 「ああ、わかった」 シンのディスティニーはフリーダムとレジェンドを残しAAへと向かう。 「そうだ、シン・・・。それでいい。キラ・ヤマト…お前だけは許さない」 それはもうすぐ現実となる。 自らの手によって、現実となるのだ。
「ジャスティス?アスランなの?」 ルナマリアのインパルスの目前に真紅の機体が現れる。 「インパルス・・・ルナマリアか?」 そう言いつつ、足のサーベルをONにしインパルスに蹴りかかる。だが、ジャスティスの蹴りが空を切る。 「ルナマリアにこんな動きは・・・。別のパイロットか?」 アスランは一人ぼやき気持ちを切り替える。 「はっ!」 ジャスティスの二回目の蹴りを受け止めたインパルスの右腕が吹き飛んだ。 「あんな所にサーベルが・・・」 衝撃と慣性に耐え、姿勢を立て直そうとするインパルスの右足が吹き飛ばされる。 「邪魔を・・・するなっ!」 止めを刺すべく距離を詰め寄るジャスティスと満身創痍のインパルスの間をビームが遮断する。 「ルナァァァァァァァァァァッ!!」 「シン!?」 「ディステニー、シンか!」 二体の間に割ってはいるディスティニー。 ディスティニーはジャスティスに組み付いた。 「この裏切り者・・・、よくもよくもよくもっ!!」 ディスティニーがビームブーメランで切り掛かり、アスランはビームサーベルで受け止める。 「なんで・・・、なんであんたって人はぁっ!!」 「やめろ、シン、もうお前も過去にとらわれたまま戦うのは止めろ!」 「え・・・」 「そんな事をしても、何も戻りはしない」 戻りはしないんだ、シン。 ニコルも、母上も、父上も・・・取り返しがつかないんだ、シン・・・。 衝撃とともにディスティニーが弾き飛ばされる。 シンは隙無く体勢を立て直す。 ジャスティスは接近戦に特化した機体。 逆上して相手の得意分野に踏み込むべきではなかった。 あんな奴に負ける気はしないけど、な。 ディスティニーはアロンダイトを構え、ジャスティスを捉えようとした。 「う、腕が・・・」 ジャスティスが弾き飛す瞬間に、左腕も持っていったのだ。 「こんな、こんな・・・こんなっ!あんたなんかにぃぃぃぃぃぃぃ!」 残った右腕で左肩のビームブーメランをジャスティスに向けて投げつける。 ジャスティスは難なくそれを叩き落した。 「なのに未来まで殺すつもりか?お前は。お前の欲しかったのはそんな力か?」 ステラ・・・マユ・・・俺は、何をしているんだ・・・。 アスランの問いにシンは戸惑いを見せる。 『俺はクローンだ』 幾多の戦場を共に駆け抜けてきた戦友が言った。 『お前ならやれる、誰もが平和に暮らせる世界を勝ち取る事が出来る』と。 「力を手に入れるんだ。約束したんだ・・・」 ディスティニーのスラスターONにし、光りの翼があらわれる。 同じに右掌にパルマ・フィオキーナの光りをやどらす。 タイミングも速度も最高だった。 パルマ・フィオキーナはジャスティスのコクピットをその蒼い炎で焼き尽くすはずであった。 だが、アスランはその上をいっていた。 渾身の力を込めた右腕すら弾き返される。 「この馬鹿野郎!!!」 ジャスティスはビームサーベルを逆手に構え、ディスティニーの頭部に振り下ろす。
シンとアスランは止まった。 「あ・・・」 ジャスティスのビームサーベルが二体の間に割り込んだインパルスの胸部を貫いていた。 「・・・ルナ・・・」 「まさか・・・、ルナマリア・・・、だったのか・・・?」 ジャスティスがゆっくりとインパルスに突き刺さったビームサーベルから手を放す。 思わずトリガーからも手を放してしまった。 「なんで、止めなかった・・・」 シンの言葉から全ての感情が伝わってくる。怒り、悲しみ、悔しさ・・・。 「あんたなら、止められたんだろ・・・?」 「 シン、俺は・・・」 シンの答えは無い。 ディステニーとジャスティスの間でビームサーベルに胸部を貫かれたインパルスがゆっくりと月面に落ちて行く。 「ルナ・・・」 その後を追うようにディスティニーも落ちて行った。 「俺は・・・止められなかった・・・止められなかったんだ・・・」 両手が小刻みに震えている。 あるはずのない肉を貫いた感触にアスランは嘔吐した。
「ルナ・・・」 シンはそう言い、インパルスのコクピットを後にした。 「帰らなきゃ・・・」 ゆっくりとシンはディスティニーへ歩きだす。 「また・・・また、守れなかった・・・」 『ミネルバの皆が待ってるよ』 ルナマリアの声が聞こえたような気がした。
「ミネルバが・・・あんな姿に・・・」 シンは愕然とした。 幾多の戦場を切り抜けてきた女神は、両翼をもぎ取られ、メインスラスターには穴があき、無残な屍をさらしている。 「艦長は・・・ヨウラン達は・・・」 『全滅』 シンはその言葉を飲み込んだ。 恐ろしい想像を大仰に首を振って辺りを見渡す。 「あ・・・あのランチ・・・」 ミネルバと同じ、黒く塗られたランチ。 大勢の人があふれんばかりに乗っているランチ! 陽気な顔が大きくディスティニーに向けて手を振った。 「ヴィーノ・・・、皆!」 いち早く気づいたランチのヴィーノが、ランチの中のメンバーに声を掛けたらしい。 ランチの中からも、こちらを伺っている懐かしい顔が見える。 「ヨウラン、マリク・・・マッドのおっさん・・・皆無事だったんだ・・・」 駆けつけようとディスティニーのスラスターをONにする。 だが、エネルギーはすでになくそのランプが点滅すると、それすらも消えた。 「あはは、空っぽか」 シンは苦笑いをした。 でも、急ぐ事はない。 彼らはあそこで待っていてくれている、こんな俺を。 「レイは・・・いないよな」 グラディス艦長も姿が見えない。まさか・・・。と考えていた時、『ガイン』と何かに押される衝撃が襲った。 「な、何だ」 シンの視界に飛び去っていく一機のザクウォーリアーが見えた。 残骸だと思われたのだろうか。 「・・・何をする・・・?」 残骸と間違われた事に腹を立てたわけではなかった。 一瞬の出来事だった。 ランチを認識したザクがビームライフルの照準を合わせるのが見えた。終戦が気にくわない一般兵だろうか?腹いせに・・・ランチを落とす気だ。 「嘘だろ?やっとみつけたんだ。俺の、俺の・・・帰る・・・帰る場所を!」 ガチャガチャとレバーを動かす。 「動け、動け・・・あんなやつ俺の敵じゃないだろ?ディスティニー?動いてくれ、動いてくれーーー!!!!!」 シンの涙声にディスティニーは応えない。 ザクのビームライフルからビームが放たれる。 そして、ビスケットが割れるようにランチが四散した。 「何で・・・な、なんで・・・なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 シンが叫ぶ。 そして、この声も誰にも届かない。
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