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□ お題掲示板 □

現在メインはロマサガMSとTOS、サモナイ3です。
他ジャンルが突発的に入ることもあり。
お題は10個ひとまとまりですが、挑戦中は順不同になります。
(読みにくくてすみません…)

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幼い頃・02 葉笛の思い出 (アーク2・ポコ&ちょこ)
長山ゆう | MAIL | URL
 ポコが口元に当てた葉に息を吹きかけると、素朴な音色が辺りに響いた。

 ――ほぉ、上手いもんじゃな、ポコ。

 初めて葉笛を鳴らした時、隣に座っていた祖父は目を丸くしたものだ。
 それまで、人に自慢できるような特技が孫に見られなかったせいもあるだろう。
 隣で祖父が鳴らした葉笛が羨ましくて、見様見真似で葉を摘み、吹いてみたのである。
 まだひとつも楽器を知らなかった頃、彼が音楽を知ったきっかけの出来事。
 それが、祖父から学んだ葉笛だった。

 懐かしい過去を思い起こしつつ葉笛を吹いていたポコの耳に、軽やかな足音が聞こえてきた。
「ポコ、なにしてるのー?」
 赤い髪を黄色いリボンで結んだ愛らしい少女が、座っているポコの顔を覗き込む。
 ポコは葉笛を口から離して顔を上げた。
「葉笛を吹いていたんだよ」
「ちょこにも教えてなの!」
「うん、いいよ」
 満面の笑みを浮かべるちょこが隣に座ると、ポコはやや幅の広い葉を一枚摘んだ。
 期待に満ちあふれた瞳の少女へ、葉を渡す。
「この葉を口にあてて、こう、息を吹くんだ」
 ポコの口元から、葉笛の音が響く。
 短い旋律を吹き終えたポコに促され、ちょこは両手で葉を持つと、大きく息を吸って勢いよく吹いた。
 奇妙な雑音が大きく響き渡り、ちょこは目を丸くする。
「ちがう音なのー」
「えーと、息の吹き方が強すぎるかな。もっと静かにやってみて」
 音量は下がったものの、やはり葉っぱが擦れる音しか出ない。
「ちがうのー!」
 ちょこは口を尖らせると、言葉に窮するポコへ右手を伸ばす。
「ポコの葉っぱがいいの!」
 結果はわかっていたが、ポコは苦笑と共につい先程吹いた葉をちょこの小さな手に載せた。
 改めて、ちょこがその葉を吹く。
 ……しかし、結果は変わらなかった。
 眉を寄せて自分を見上げるつぶらな瞳に、ポコは何とか説明を試みる。
「えっとね、じゃあ、葉っぱを少しずつずらしながら吹いてみて」
「ずらす?」
「そう、こう、少しずつ動かしてみるんだ」
 新しく摘んだ葉を吹きながら、ポコは手をほんの少しずつ右から左へ動かして見せる。
 ちょこはポコの手をじっと見つめ、その動作をなぞった。
 ……相変わらず、掠れた音しか聞こえて来ない。
 葉笛は感覚的なものだ。コツさえつかめばすぐに吹きこなせるが、それを会得するまでが難儀なのである。ポコは天性の才能があったためにさほど苦労はしなかったが、それゆえ感覚を伝えるのが却って難しい。
 敢えて言うなら、竹馬や玉乗りなどのバランス感覚の会得方法を教える難しさに近いだろうか。
 ──ちなみに、ポコは竹馬に乗れないのだが。
「ダメなのー」
 ちょこは悲しそうに俯いた。
 時間をかけて何度も試したが、どうしても音を出すことが出来ないのだ。
 ちょこの瞳が潤んでゆく。
 今にも泣き出しそうな少女の頭を、ポコは優しく撫でた。
「残念だったけど、頑張ったね」
「ポコ……」
「今日は出来なかったけど、明日は吹けるかもしれないよ」
 意外な言葉に、ちょこの涙が乾いた。
「ほんとう?」
 ポコは優しく頷く。
「明日はダメでも明後日や明明後日、いや、もっと先になるかもしれないけど……毎日練習していたら、きっと出来るようになるから。僕のおじいちゃんも、なかなかできなかったって言ってたんだよ」
「ポコは?」
「……うん、僕は何故かすぐに吹けたんだけど」
 一生懸命練習しても葉笛を鳴らせなかった少女へ応える声は、少し小さかった。
 なんとなく、後ろめたい気持ちを抱いてしまうのだ。
 しかし。
「ポコ、すごいのー!」
 彼の躊躇いを吹き消すような、明るい声。
 その声で我に返ったポコを、ちょこは目を輝かせて見つめていた。
 純粋な賛辞に、ポコは一瞬戸惑いを覚える。
 だが、ちょこの態度は変わらない。
 無垢で優しい心根の少女は、必要以上の遠慮を吹き飛ばしてしまうのだろうか。
 ポコの肩から力が抜けた。そして、にっこりと笑みを返す。
「うん、ありがとう」
 言葉は自然と口をついて出た。万感の想いが込められているのだが、少女に知る由はない。
 ──否、感じ取っているだろうか。この少女ならば。
 右手に持っていた葉を改めて見つめると、ちょこはその場に座り直した。
「ちょこもれんしゅうするの。吹けるまでがんばるのー」
 屈託のない微笑みを彼に向け、少女は再び葉笛の練習を始める。
 そんなちょこの姿が、ポコにはとても嬉しく感じられた。


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 元ネタは「モリゾーとキッコロ」です(笑)。
 ポコは気が弱くて引っ込み思案ですが、音楽にかけては飛び抜けた才能を持ってますよね。なら、こういうこともあったんじゃないかと思いまして。
(2では鍛えられたのか、ツッコミ系になってますが…(笑))
 また、ちょこは人の素直な心を引き出せる子ではないかと。本当に良い子です。


2005年05月30日 (月) 22時12分 (21)

冒険・04 森 (サモナイ3・アティ&ソノラ)
長山ゆう | MAIL | URL
 午前の修理ノルマが片づくのを待ち構えていたソノラに誘われ、アティは彼女と共に散歩に出かけた。
 陽射しは少し強すぎる感があったが、森の中を歩いていると、さほど気にならない。
 木々に遮られて、やわらぐせいだろう。
「今日もいい天気だよねー」
 木漏れ日に手をかざすソノラは上機嫌である。
 梢を揺らす風に木々がざわめく。
 水音に似たそれに耳を傾けつつ、ふとアティはソノラの雰囲気が違うことに気が付いた。
「あれ?」
「どしたの、先生?」
「ソノラ、髪切りました?」
 風を受け、軽やかになびいている彼女の前髪の長さが、少しだけ変わっていた。
 いや、前髪だけではない。耳にかかる髪の流れも変わっている。
 全体的に、昨日よりも身軽になった雰囲気だ。
 ソノラが嬉しそうに笑った。
「あ、わかってくれた?やっぱり女の人は違うよねー。男共なんて全然気づかないんだから」
 最後に加えられた一言に、ついアティは笑ってしまう。
「自分で切ったんですか?」
 尋ねてから、後ろの髪も整えられている事に気が付いた。
 一人でここまでは出来ないだろう。
 案の定、ソノラはちらと舌を出した。
「残念、ハズレ。スカーレルに切ってもらったんだ」
「スカーレルが?」
 目を丸くするアティに、ソノラはウインクを返す。
「うちで一番の器用者だからねー。編み物だって得意だし。……実際、アタシ立場ないなって思ったこと、一度や二度じゃないんだもん」
 言葉とは裏腹に、表情は明るい。ソノラの気性から察するに、あまり気にしてはいないのだろう。
 確かに、スカーレルは多くの女性が好む作業を得意としている。
 以前アティも彼に編み物を教わったのだが、歴然とした腕の差に、影でこっそりへこんだものだ。
「スカーレルに比べられちゃうと、厳しいですよねぇ……」
 思わず本音が口をついて出たのは、相手がソノラだったせいかもしれない。
 実際、編み物を例にとっても、スカーレルの腕には感嘆してしまう。趣味が高じて得意技になるという典型なのだろう。
 羨ましい反面、やるせないというか、少しばかり妬ましいというか……。
 ここで、ふと、アティは我に返った。
 小首を傾げたソノラが、まじまじと自分を見ている事に気づいたのである。
 アティは慌てた。
「あ、だって、スカーレルの編み物の腕なんて女性顔負けだと思うんですよね。お裁縫も上手だろうし、お菓子作りも得意らしいし、そう、お菓子作りって体力勝負な所があるから、力があるのは羨ましいし……」
 言い訳の内容がズレ始めているのだが、そこまで頭が回らない。
 しかし、ソノラはにっこりと笑った。
「先生はさ、そんなこと、気にしなくていいと思うよ?」
「え?」
「人間向き不向きがあるんだし」
 ……それはフォローになっていない。
 肩を落としかけたアティへ、ソノラは屈託なく続ける。
「スカーレルは家事全般得意だったりするけど、苦手なこともあるわけだし。先生だって、得意なことと苦手なことがあるでしょ?アタシもそうだもんね。覚えたいなら習えばいいんだし。大体、みんな同じじゃつまんないよ」
「そう、なのかな……」
「そうそう。気にしない気にしない」

 ――それに、スカーレルはそんなこと望んでないだろうし。

「え?」
 ソノラの呟きを聞き逃したアティが、聞き返す。
 しかし、ソノラは笑って右手を振ると、さっさと先に立って歩き出した。


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 虫騒動でのやり取りが気に入ったので、二人だけの話を書いてみました。
 ソノラはある意味、勘の鋭い子だと思います。
 カイルやヤードが気づかない部分を察しているのではないかな、と。

2005年05月07日 (土) 20時21分 (20)

冒険・09 湖 (サモナイ3・クノン&アティ)
長山ゆう | MAIL | URL
 親愛なるクノン

 変わりはないかしら?
 こちらは秋も深まってきたわ。ラトリクスではあまり気づかないけれど、風雷の郷やユクレス村を訪れると、季節の移り変わりが顕著だと改めて気づくわね。
 つい先達ても……

 聴覚センサーが背後の小さな異音を捕らえ、クノンは読んでいた手紙から視線を上げた。
 そのまま背後を振り返る。
 視界を覆うように生い茂る木々の向こうから、微かな、草を踏み分ける音が届いた。
 学内の建物群からやや離れた寮の更に裏手に位置するこの場所は、滅多に人が訪れることはない。
 しかし、寮の奥、生い茂った木々の向こう側には、申し訳程度の泉があるのだ。
 整備された噴水や泉が余所にある為、普段から賑わう場所ではないが、この静寂を好んで訪れる者もいる。クノンも、その一人だ。
 どこか島の泉と似た雰囲気を持つこの場所は、クノンのお気に入りの場所だった。
 時折この泉を訪れては、アルディラからの手紙を読むようになったのである。
 平日の昼下がり、午後の授業が始まって間もない時間。ここへやってくる人間は限られている。
 普段ならば彼女も講義を受けているのだが、今日は休講となったため、こちらへ足を向けてみた。
 ……この場所を訪れる者は、大抵が一人になりたいと望んでいる。
 クノンは、今、どうしても一人の時間が欲しいわけではなかった。
 泉へ一時の憩いを求める者は、孤独な時を好む。
 故にこの場所で複数の人間が鉢合わせする場合、より孤独を望む者が優先されるようになっていた。
 同じ感情を抱く者の間に通じる何かが、その不文律を作っているのだろう。
 クノンは手紙を素早く封筒に収めて立ち上がった。スカートについた草を払い、新たな訪問者の憩いを妨げぬよう、寮へ足を向ける。
 と。
「やっぱりここにいましたね」
 意外な人物の声に、クノンが勢いよく振り向いた。
「アティ様!」
「こんにちは、クノン。元気にしてました?」
 トレードマークの赤い髪を太陽にきらめかせながら、アティはにっこりと微笑んだ。

 現在、クノンは帝国の学校のひとつに籍を置いている。
 アティ達との出会いをきっかけに、彼女は自身もまた外の世界を学びたい、と強く望んだのだ。
 確かにアティ達からも色々な事を学んだが、人間社会の仕組みを知り、人間の抱く感情を間近で感じ取るには、その世界に身を置くことが一番の早道である。
 留学に関してアルディラは難色を示したが、アティの後押しもあり、結局はクノンの願いを受け入れてくれた。
 ナップの入学の件も併せて、最初の数ヶ月はアティが世話をすると約束した事も、アルディラを納得させる一因になったようである。
 アティが編入試験用のカリキュラムでクノンの勉強を見るようになって半年後、無事試験をパスした彼女は、晴れて帝国の学校に身を置く事となった。
 最初こそ環境の違いに戸惑いもしたが、慣れれば日常生活に不便はない。
 アルディラの笑顔が見られないのは、寂しかったけれども。
「とても静かな所ですね。ちょっとした息抜きにもってこいかも」
 水辺に佇んでいたクノンの隣へ歩み寄り、アティは周囲を見回していた。
 そんな彼女へ、クノンは不思議そうに問いかける。
「どうしてここがおわかりになったのですか?」
 先程の第一声からして、アティはクノンがここにいると確信していた様子だった。
 しかしこの場所は、敷地内とはいえ校舎などの建物からはずいぶんと外れた場所なのだ。
 訪問者がすぐに気づける所ではない。
 しかし、アティは楽しそうに種明かしをした。
「前に言ってたじゃないですか。寮の裏手の小さな森に、お気に入りの場所があるって。校内の掲示板に休講だと書いてありましたから、寮かここのどちらかだと思ったんですよ」
 予感的中でしたね、と言いつつ、アティはにっこりと笑う。
 言われてみれば納得できる話だった。
 得心がいった様子のクノンを見やり、アティはコートのポケットから一通の手紙を取り出す。
 差し出された手紙を見つめるクノンの瞳が輝いた。
「アルディラからです」
「ありがとうございます、アティ様」
 手紙を受け取り、宛名と差出人を確認する。
 封筒には、整った文字で彼女の名前とアルディラの名が綴られていた。
 クノンは手紙をそっと胸に抱く。
 幸せそうな彼女の表情を見やるアティ視線は、優しく、暖かい。
 『忘れられた島』は地図上に存在しない場所である。当然、手紙でのやりとりは望むべくもない。
 そこでカイル一家の登場と相成った。
 『島』と行き来できる彼らならば、クノンとアルディラの手紙を仲立ちすることができる。
 アティの提案をカイル一家は快く引き受けた。
 この一件も、クノンの留学をアルディラが承諾する後押しとなったのである。
 不定期ではあるのだが、二、三ヶ月に一度は必ずアティがやって来る。
 そして、クノンへアルディラから言付かった手紙を渡してくれるのだ。
 クノンの留学の意志を知ってから、我が事以上に親身に世話をしてくれたアティへは、どれほど感謝しても足りないほどである。
 彼女と共に寮へ戻る道すがら、クノンは問いかけた。
「アティ様。夕方から、お時間がありますでしょうか?」
「ええ、大丈夫です」
「おいしいレストランを教えてもらったんです。ご一緒していただけますか?」
 夕方には今日の授業も一通り終了し、自由時間を持つことが出来る。
 寮で同室になった情報通の級友に感謝しつつ、クノンは提案を持ちかけた。
 彼女の学校生活が順調らしいことを察し、アティは安堵に頬をゆるめる。
「もちろんです。みんな喜びますよ。学校での出来事も色々聞かせて下さいね」
「はい」
 静かな笑顔は自然で暖かい。
 本人は自覚していなかったが、クノンもまたそんな笑みを浮かべられるようになっていたのである。
 一方で、クノンは日々の充実した生活を、アルディラへしたためる手紙にどう記すかを、あれこれと考えていた。


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 手紙を読むクノンが書いてみたかったのですが、2本に分けた方が良かったかも。
 実は未見のクノンエンディングです。(このパターンが多い…(汗))
 ナップと同じ軍学校への入学は無理がある気がしたので、クノンは他の学校へ留学中。
 アティとのやり取りが書きたくてアティサイドとなりましたが、レックスサイドなら様子を見に来るのはスカーレルかな?

2005年04月28日 (木) 21時58分 (19)

冒険・06 ハープ (巌窟王・エデ&伯爵)
長山ゆう | MAIL | URL
 館の一室で、竪琴が奏でられていた。
 奏者は一人の少女である。
 ほっそりした指が竪琴の弦をつま弾き、音色を奏でる。
 流れるような動きは優美で可憐。
 その身に纏う衣装と相まって、異国情緒溢れる調べが室内に満ちてゆく。

 伏した瞳に浮かぶのは、今は亡き人々の優しい笑顔。
 懐かしい曲を奏でながら、少女の心は過去へと飛んでいた。
 母に手ずから娘に竪琴の基礎を教わり、初めて短い曲を拙い手つきながらも弾き終えた時の暖かな拍手は、未だ耳に残っている。
 耳に残る音階。母の穏やかな表情。父の笑顔。
 母の奏でる曲を聴きながら眠ってしまったことも幾度かあった。
 満ち足りた生活が、永遠に続くと信じていた、幼い頃の自分……。

「母様は、たてごとをひいているときに、何をかんがえているの?」
「父様や貴女の事よ。大好きな人を想って弾いているの」

 母の優しい笑顔が脳裏を過ぎった刹那、指が硬直しかけたが、かろうじて弦をつま弾き次の音が響く。
 いつしか全身を緊張させながら、エデは耳に残る調べを必死に追いかけていた。
 痛みを堪える中に、祈りにも似た表情を覗かせながら、ただ一途に。
 ……そして。
 最後につま弾かれた弦が余韻を残し、室内は静寂に満たされた。
 エデは深く吐息を漏らす。
 ──初めて、この調べを最後まで奏でられた。
 竪琴に触れる手が震えていたが、時間が経つに連れ、それも少しずつ収まってゆく。
 幾度か危ういところがあったが、音色が途切れることはなかった。
 両手の震えが収まると、硬直しかけた音の流れをさらってみた。
 二度三度と繰り返すうちに、指の動きはなめらかさを増してゆく。
 音色が自然な流れに感じられるまで幾ばくかの時をかけた後、エデは竪琴を奏でる手を止め、居住まいを正した。
 館を離れている主の姿を心に描く。
 再び、エデの指が、先程の調べを奏で始めた。

 懐かしい曲を奏で終え、エデはぼんやりと竪琴を見つめた。
 幾度も試みながら、どうしても最後まで奏でられなかった曲。
 その昔、母親がよく聴かせてくれた調べだった故に、奏でようとする度、あの瞬間を思い起こしてしまったのだ。
 しかし、今は……。
 不意に、彼女の耳へ拍手が届いた。
 エデは目を見開き、顔を上げる。
「素晴らしい演奏だった」
「伯爵!」
 外出していたはずの主の姿に、少女は驚きに満ちた表情を隠せない。
 そんな彼女へどこか楽しげな笑いを見せ、男はもう一つの感想を口に乗せる。
「初めて聴く曲だな」
「幼い頃、母が良く弾いておりました。名も知らぬ曲ですが、耳に残っているのです」
「そうか」
 短いいらえには、あまたの感情が滲むように思われた。
 少女はそっと目を伏せる。
「エデ」
 艶やかな深い声が、少女の名を呼んだ。
「はい」
「今一度、聴かせてもらいたい」
 彼女へ向けられるその表情は穏やかだった。かすかに、笑みすら含んでいる。
 エデの顔に控えめな微笑みが浮かんだ。
「仰せのままに」

 大切な人のために、懐かしい音色をつま弾く。
 それが何物にも代え難い喜びだと知った今、彼女の願いはただひとつ。

 ――この方のお心を癒す事ができるなら。

 描く想いを調べに乗せて、エデは懐かしい曲を奏でてゆく。
 その表情は、澄んだ水面のように凪いでいた。



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お題がハープで今この時期ならば、この二人しかいないでしょう!
23話を見ると、エデにとって伯爵は本当に全てだったんだなぁと…。
額のキスがもう切なくて。
幸せになって欲しかった…(泣)。

2005年04月13日 (水) 20時45分 (18)

冒険・05 鳥 (サモナイ3・レクディラ)
長山ゆう | MAIL | URL
「アルディラ、散歩に行かないか?」

 ちゃんと都合を合わせてくれるけど、その実、強引な所があって。
 でも、私のことを考えてくれてるのは、わかるから。
 一緒にこの景色を見たいんだなんて照れ笑いを浮かべられたら、一緒に笑うしかなくて。
 底抜けにお人好し。
 涙もろくて、一生懸命。
 こんな人がいるなんて、想像も出来なかった。
 リィンバウムでも珍しいタイプの筈。
 喜怒哀楽だって、手に取るようにわかってしまう。
 子供みたいな人。
 だけど何にも縛られない、鳥のように自由な人。
 どうして私を、とも思ったけれど……。

「一目惚れだったんだ」
 絶句、してしまった。
 頬が赤らむのが、自分でもはっきりとわかってしまう。
「あなたって……」
 融機人には持ち得ない感情で、彼は行動する。
 目が離せない。
 そして、私に笑顔をもたらすの。
「融機人とは正反対よ。私の予想を軽く超えてしまうんだもの」
「だから惹かれるのかな?お互いに、ね」
「……そうね」
 予測不可能な行動は、とても興味深いもの。
 論理的な説明が出来ないから、あなたから目が離せない。
 おそらくは、これから先も、ずっと。


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アルディラ独白。短いです。まさにSS。
彼女から見たレックスを書いてみたくなりまして。
現在2度目の機霊ルート。主人公はアティなので、キー護人ファリエルや生徒アリーゼと女の子の会話を楽しんでいます。
しかし。アルディラの好感度を上げなかったので、11話の泉での会話が切なすぎて…!(涙)
次に機霊ルートを選ぶ時は、絶対に主人公レックスでアルディラED行きます!


2005年04月10日 (日) 20時34分 (17)





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