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□ お題掲示板 □

現在メインはロマサガMSとTOS、サモナイ3です。
他ジャンルが突発的に入ることもあり。
お題は10個ひとまとまりですが、挑戦中は順不同になります。
(読みにくくてすみません…)

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冒険・10 流浪 (サモナイ3・ファリエル+キュウマ&ヤッファ)
長山ゆう | MAIL | URL
 ――本当のことを知られるのが、怖かった。
 これまで一緒に過ごしてきた狭間の領域の住人たちに、疎まれるであろう事実。
 否、それだけではない。憎しみの目を向けられ、島にはいられなくなる。
 行き場を失い、転生もかなわず、たださすらうだけの存在になってしまう……。
 だからこそ、全てを覆い隠し、正体を偽ってきた。
 これまでで唯一、島の住人が受け入れたリィンバウムの人間は、ハイネルだけだろう。
 ハイネル・コープスは特別なのだ。

「みんななら、きっと本当の君を好きになってくれるよ。そうしたら、楽しい思い出だっていっぱい作ることができるんじゃないかな」

 偶然「ファリエル」として出会った彼は、ファルゼンの正体に驚きつつも、秘密を守ってくれた。
 むしろ、正体を偽るファリエルの身を気遣い、助言をしてくれたのだ。
 実現出来るはずのない提案だったけれど。
 島を訪れた青年の言葉は、優しさに満ちあふれていて……。
 ――兄を、思い出す。
 無色の派閥の召喚師であったにも関わらず、召喚獣たちと心を通わせ、慕われていたハイネルを。
 不慮の事故で島を訪れた彼らならば、島人との交流で、友好的な関係を築くことができるかもしれない。
 だが。自分は、無色の派閥の人間だった。
 過去に、この島で実験を行った派閥の一員だ。
 犯した罪が消えることはない。
 だからせめて、兄の夢を守りたかった。
 何者に代えようとも、島の平穏を守らねばならないと。
「確かに、貴女の素性を知れば、護人として集落をまとめる事などできなかったでしょう」
「殺しても飽き足りねぇって奴が出てこないとも限らねぇな」
 ヤッファとキュウマの指摘に鋭く胸を突かれ、ファリエルは目を伏せた。
 遅まきながら今回の経緯を知らされた二人にすれば、寝耳に水だったろう。
 遺跡封印の顛末も、死んだはずの人間が生きていたという事実も。
「そんな……!」
 傍らでレックスが何かを言い募ろうとし、言葉を飲み込んだ気配が伝わる。
 けれども、心優しい彼が見かねて抗議しようとした、それだけでファリエルには充分だった。
 断罪を待つ少女へ、再びキュウマが口を開く。
「貴女が常に前線に立ち、その身を盾にして皆を守っていたのも、罪悪感故ですか」
 明確に答えを返すことができず、ファリエルは項垂れる。
 ――私は一度死んでるから、平気なんですよ。
 以前、レックスにそう言ったのは、嘘ではない。身勝手な自己満足だとわかってはいるけれど。

「だがな、ファルゼンは長い間、護人としてよくやってきたと思うぜ」

 一瞬、耳を疑った。
 思わず顔を上げたファリエルは、ヤッファの表情が普段と変わらないことに気づいた。
 嫌悪の感情は欠片も見られない。
「え……」
「ファルゼンのこれまでの功績は消えるもんじゃねぇ。中身が誰であってもな」
 ヤッファの口元に笑みが浮かぶ。
 驚くファリエルへキュウマが静かに言い添えた。
「貴女が一人で罪の意識を背負い続ける必要は、ないのですよ」
 彼の微笑みもまた穏やかだ。
 全くの予想外だった二人の反応に、ファリエルは戸惑いを隠せない。
 だが。
「今までよく頑張ってくれたな。ありがとうよ、ファリエル嬢ちゃん」
 ハイネルの妹であり彼の護衛役でもある少女を、ヤッファはいつもそう呼んでいた。
 からかいながらも、親しみを込めて。
 視界が滲む。肉体は失われたが、その記憶は残っている。霊体となった今も、感情の発露が涙という形になるのだろうか。
 安堵と嬉しさの涙を浮かべながら、ファリエルもまた感謝の想いを口にする。
 自分を受け入れてくれた仲間達へ。
 自分を守ろうとしてくれた集落の住民達へ。
 そして、勇気をくれた青年へ……。

 すべては、この一歩から始まるのだ。


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ファルゼンをキー護人にして進行中。
久しぶりの機霊ルートは、ファリエルが可愛いけれど切なくて。
フレイズが身近にいたとはいえ、集落の住人すら偽っていた事実は重くつらいものではないかと。
長い間、精神的に流浪していた部分があった気がします。
真実を打ち明けた時のヤッファとキュウマのセリフは本当に嬉しかったです。
私的に「ファリエル嬢ちゃん」がツボでした。


2005年04月10日 (日) 20時32分 (16)

冒険・03 野宿 (アーク2・シュウ&エルク)
長山ゆう | MAIL | URL
「シュウはオレを拾うまで、どんな生活してたんだ?」
 太陽が空から姿を消し、月が世界を支配する時間帯。
 普段は気兼ねをして口に出せない事も、尋ねられる雰囲気がある。
 木々の生い茂る森の中、シュウが起こした焚火を挟んで横になりながら、エルクは前々から気になっていた疑問を投げかけた。
「語るほどの事はなかったな……。変わらぬ日々の繰り返しだ」
 問われた側にも、つい応じてしまうのは、夜がもたらす何かのせいだろうか。
 夜空に浮かぶ月は細い。月明かりが淡いせいか、煌めく星の数は普段よりも多かった。
 シュウの口元に微かな笑みが浮かぶ。
「だが、お前を拾ってから一変したな。子供というものがあれほど賑やかだとは知らなかった」
 思い至る点が多々あったらしく、エルクは視線をさまよわせた。
 やがて地面の一点を見つめると、ぼそりと呟く。
「そりゃあ、色々迷惑かけたけどさ。オレが知りたいのは昔のシュウの事で……」
「名と腕を得た、それだけだ」
 風のような口調。飄々としたそれは、言外に重い何かを含んでおり、エルクに沈黙をもたらした。
「知らねば不安か?」
「いや。オレだって昔のこと覚えてないしさ」
「……そうか」
 過去の記憶を持たないエルクを、シュウは無条件で受け入れた。
 自分自身を除いて、何も持たなかった少年は、その行為に救われたのだ。
 とはいえ、恩人である青年の生い立ちが気にならないと言えば嘘になるだろう。
「……いずれ、話せる時も来るだろう」
 低い声に、エルクは目を見張る。
 面白い話でもないがな、と呟いたその顔は、相変わらずの鉄面皮だった。
 しかし、少年は全開の笑みを見せる。
「うん」
 安堵の笑みを浮かべるエルクの頭を撫で、シュウが眠るように告げる。
 エルクは頷き、目を閉じた。
 ほどなく、その口から規則正しい寝息が洩れ始めた。
 まだ小さいエルクには焚火を囲む二人の間は離れて見えたが、シュウにとっては腕を伸ばせば届くだけの距離でしかない。
 庇護していた子供が、仕事に興味を覚え、見習いとして同行するようになったのはつい最近のことだ。
 好奇心旺盛な子供の行動は、時として彼の予想の範疇を遙かに越える。
 表情には出さないが、幾度頭を抱える羽目になった事か。
 だが、子供の天真爛漫さは、彼の心に、それまで無かった何かを芽生えさせた。
 ……よもや、自分のような人間が、子供を育てる事になろうとは。
 エルクを拾ってからの日々を思い返し、シュウは苦笑を漏らす。
 人生、何が起こるかわかったものではない。
 シュウは焚火から寝息を立てるエルクへと視線を移した。
 本格的にハンターを目指し、独り立ちするつもりならば、覚えることは山ほどある。容易い道ではない。
 シュウの視線の先の少年は、ぐっすりと眠り込んでいる。
 日中の強行軍でも決して音を上げなかった。その根性は見上げたものである。
 エルクならば、目指す道を越えて行けるだろう。
 不思議と、そう確信できる。
 初めての野宿で熟睡したエルクを見守るシュウの瞳には、優しい光が宿っていた。


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シュウとエルクのコンビも好きです。
でも二人だけの話、というのはなかなか難しくて。
あまり主張しませんが、一番好きなのはシュウなんですよー(笑)。
アークは贔屓キャラです(笑)。ある意味別格かな?


2005年04月05日 (火) 20時40分 (15)

冒険・08 ランプ (サモナイ3・スカアティ)
長山ゆう | MAIL | URL
 気が付いた時には、周囲は闇に包まれていた。
 一面を暗がりが支配する中、自分だけがその空間に存在している。
 他には、何もない。
 だが、自分はつい先程まで一人ではなかった。たくさんの人と知り合い、日々を過ごしていたはずだ。島にはこんな場所はない。
 最近の出来事を回想していた彼女は、すぐに解答に思い至った。
 ――夢?
 そういえば、覚えがある気がする。
 ずいぶんと昔、世界を拒絶していた頃、時折こんな所でうずくまっている夢を見ていたような。
 でも、どうして、今更……。
 心の奥底から言い知れぬ感情が、忍びやかに浮上してくる錯覚を覚えた、刹那。
 遠くに微かな光が見えた。
 一面を覆う闇は変わらない。だが、光の周囲だけは、闇が薄らいでいる。
 彼女は、誘われるように、そちらへ進んだ。
 光は小さな灯火だった。
 何故生じたのかはわからない。けれども、安心できる。
 光は人の心をも照らす。暗闇の中に灯るそれは、温もりを感じさせるのだ。
 彼女は灯火へと手を伸ばした……。

 アティがゆっくり目を開くと、傍らにいた人物はすぐにそれを察知した。
「目が覚めた?」
 彼女の顔を覗き込み、そっと尋ねてくれたのは……。
「スカーレル?」
 名を呼ぶと、彼は微笑んだ。
「おはよ、センセ。でもまだ夜なのよ。だからもう少し眠っていてくれるかしら」
「……私……」
「覚えてない?風邪でコロリ。ナップが心配してたわよ」
「あ!」
 一気に目が覚めた。
 そう、朝から頭が重いなと思っていた。だが、単なる睡眠不足だと納得して、いつも通り青空教室で授業、ナップには昨夜用意した試験問題に取り組ませ、解答用紙を受け取って歩き出した途端、妙に足元がふらついて……。
「でも流石は男の子。ちゃんとセンセを支えてくれたんだから」
 アティの表情で回想の流れを理解したらしく、スカーレルはタイミング良く合いの手を入れた。
「あうう……」
 赤面するアティへ、スカーレルの思い出し笑いが追い打ちをかける。
 しかし、すぐに彼は笑いを収めると、口調を改めた。
「だけどセンセ、体調悪い事黙ってるなんて、水くさいんじゃない?」
「単なる睡眠不足だと思ったんですよ。こんな大事になっちゃうなんて」
「そうね、みんな心配してたわ。子どもたちなんてすっ飛んできたんだから」
「…………」
 いきなり倒れたと聞けば、驚きもするだろう。ましてや少し前に授業を受け、別れたばかりなら尚更だ。
 しょげるアティの様子に、スカーレルの口調が和らいだ。
「もっと自分の身体を気遣ってあげなきゃダメよ。センセ一人の問題じゃないんだから」
「はい……」
「ともかくしっかり眠らなきゃね。お腹は空いてない?」
「あんまり空いてないです」
「じゃ、とりあえずこれだけ飲みなさい。薬を飲む前に何か入れておかないとね」
 スカーレルがマグカップに用意したスープを飲み、アティは薬を飲んで再び横になった。
 そして、マグカップや水差しを片づける彼を見るうちに、思ったことが口をついて出る。
「スカーレルってお母さんみたいですね」
 一瞬、彼は絶句した。
 しかし、すぐに苦笑を浮かべると、子供をあやす口調になる。
「じゃ、スカーレルママの言うとおり、ちゃーんと休みなさい。いいわね?」
「はーい」
 アティは含み笑いをしつつ、素直に応じた。
「あ。灯り、そのままにして下さい」
 壁に掛けたランプに手を伸ばしたスカーレルへ、彼女の声が飛ぶ。
 思いの外強い声音に、スカーレルはやや怪訝そうな表情を見せた。
「眩しいでしょ?」
「いえ、むしろ安心だから」
「そう?」
 結局灯りを絞らず、スカーレルはベッドの傍らの椅子に戻ると、ベッドサイドに伏せていた本を手に取った。
 何故、という質問は出ない。それがアティにはこの上なくありがたかった。
「暗くないですか?」
 声に出しては、やや意味の異なる質問をする。と、スカーレルは小さく笑った。
「平気よ」
「……眠くないですか?」
「まだ大丈夫。アタシ夜は遅いから。……心配いらないから、ゆっくりお休みなさい」
 言いつつ、スカーレルは優しい笑みを見せた。
 アティの肩から力が抜ける。そして、小さく頷いた。
「はい。お休みなさい、スカーレル」
「お休み、センセ」
 静かな声を耳に、アティはそっと目を閉じる。
 閉じた瞼の向こうで揺らめく光に彼の暖かさを感じ、アティは穏やかな眠りに誘われた。


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実はスカーレル視点で書き始めたのですが、まとまらなくてアティ視点に変更。
暗がりには心細さがつきものだと思います。
気が弱くなっている時は輪を掛けてしまうのではないかと。
出来ればスカ視点も書いてみたいですね。


2005年04月05日 (火) 20時34分 (14)

冒険・02 長い道 (サモナイ3・キュウマ)
長山ゆう | MAIL | URL
「ミスミを頼む」
 最後の言葉は、淡々としていた。
 状況は悪化の一途をたどり、生還かなわぬであろう事は、誰の目にも明らかだった。
 しかし、彼の笑顔は力強く。
「お前にしか頼めねぇ。ミスミと腹の子に、シルターンの景色を見せてやってくれ」
 主君を守って死ぬことこそが、シノビの最期であるはずだった。
 なのに。

 あの剣を持つのは、一人の娘である。
 軍に所属した経歴があるという話だったが、それが信じられないほどに、お人好しな、心優しい女性だ。
 外からやってきた人間であるにも関わらず、島の平穏のため、住人と共に努力を重ねている。
 剣の力を使いながら。
 ――彼の望むままに。

 そう、彼女は知らないのだ。剣を使い続けることが、どのような結果を導き出すのかを。

 おそらく、障害となるのは、ユクレスの護人ヤッファだろう。
 彼はハイネルの護衛獣として召喚された。
 過去に島で起こった戦の全てを知っている、数少ない住人の一人なのだ。
 ましてや、核識となった彼の末路を目の当たりにしているのだから。

 主君の最期の願いを叶えられるなら、この命なぞ惜しくはない。
 そのために、生き恥をさらしてきたのだから。

 夫の死を知ったミスミの悲嘆を、生涯忘れられはしないだろう。
 妻と生まれてくる子を案じながら、それでも配下の者を生きながらえさせ、死地に向かった主君の最期を、思い出さぬ時などない。あってはならないのだ。

 他者にどれほど誹りを受けようと、外道と蔑まれようと。
 ――心優しい娘を生け贄にしようとも。
 もはや、後には引けぬ道なのだから。

 一度は姿を消した人影が、再びこの場へと現れた。
「キュウマさん」
 声をかけれられる以前からその気配に気づいていたが、自身の名を呼ばれてから、キュウマは閉じていた目を開く。
 遺跡への同行を一度は躊躇ったアティだったが、再び泉へ戻った彼女の表情になにがしかの決意を見て取り、キュウマは笑みを浮かべた。
「お待ちしていました。参りましょうか」
「……はい」
「よいお覚悟です」
 ――賽は投げられた。
 主君の末期の願いが叶う時は近い。
 キュウマは遠目に映る喚起の門を見やり、脳裏に亡きリクトの最期の笑顔を思い浮かべた。


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初めて鬼獣ルートのイベントを見たときから、キュウマの内面を書いてみたかったんです。
彼も、ここに来るまで、何度も自分に言い聞かせるようにしていたのではないかなと。
アティを知るにつれ、鈍る決意もあったのでは…と思えたので。
ただ、キュウマの好感度が高い時は、遺跡での態度が却って冷酷に見えましたが…(苦笑)。
泉での抵抗が無かった分、余計にそう思えたり。

2005年03月22日 (火) 21時59分 (13)

冒険・01 地図 (デビチル・刹那&未来)
長山ゆう | MAIL | URL
「刹那、ちょっとヴィネコン見せてくれない?」
 帰宅してからすぐに隣家を訪問した未来は、開口一番にこう切り出した。
「構わないけど。どうしたんだ、突然」
 頼まれるまま部屋からヴィネコンを持ってきた刹那は、起動させつつ問いかける。
「ちょっとね、気になることがあって」
 未来は慣れた手つきでヴィネコンを操作すると、目的のプログラムを立ち上げた。
「……やっぱり刹那のマップも簡易版なのよね」
「作りは同じなんだから、当たり前だろ」
 簡易版という単語にややひっかかりを覚えたものの、刹那は応じる。
 未来は腕を組み、画面を凝視していた。
「ま、そうなんだけどね。物足りないって思わない?」
「は?」
「もっと精密にマッピングができれば、俄然ダンジョン攻略にも意欲が沸いて来るじゃない」
 デビダスコンプリートを成し遂げたくせに、なにをかいわんや、である。
 部屋の片隅で二人の様子を見守っていたクールは、何とも言えない表情を浮かべている。
 その視線に自分の気持ちに通じるものを感じ取り、刹那は苦笑を返した。
 ある意味、刹那の心情を一番理解しているのは、パートナーである彼かもしれない。
「決めた!」
 突然、未来が声を上げた。
「私、もっと精密なマッピングプログラムを自分で作るわ!」
 ……ちょっと待て。
「そうよね、欲しいものがないなら作ればいいのよ。ヴィネコンについて詳しそうな人に話を聞いてみればいいし、プログラムならこの世界で充分勉強できるもの」
「具体的に誰に聞くんだよ?ヴィネセンターのジャックフロストはデータ管理専門みたいだし」
「あ……」
「送り主だってわからないままだろ」
「……そういえば」
 刹那の元に届いたヴィネコンとデビライザーは、送り主を確認する前に伝票ごと箱が滅茶苦茶になってしまった。
 また、未来の元に届いたそれらは、セントラルランドの少年の幽霊が運んだもので、再度セントラルランドを訪れた時、少年は既にいなかったと聞く。
「パパはヴィネコンについてどのくらい知ってるのかしら」
「どうかな。デビホンならゼットだと思うけど」
「物知りっていうならラハブが何か知ってるかも」
「言い伝えなんかには詳しいだろうけど、コンピュータは専門外じゃないか?」
「うーん……」
 未来が思案顔で腕を組み、頬杖をつく。
 特に不思議に思わず使っていたデビライザーとヴィネコンだが、こうして考えてみるとその由来は謎が多い。
 ただ、デビルチルドレンが扱うべく用意されたものであるならば、ルシファーが何らかの関与をしているはずなのだが、それを敢えて未来に教える気にはなれなかった。
 制作者が不明であれば、システムの解析も難しいだろう。
 個人でプログラムを作ることも、そう簡単にはできないのではないだろうか。
 ――要は、未来が先程の思いつきを諦めてくれればいいのだ。
 プログラムの製作過程で巻き起こるであろう厄介ごとを想像し、軽い頭痛を覚えた刹那としては、円満見送りを希望したい所なのである。
 大事件も解決した今、しばらくの間は平穏無事な生活を満喫したいと思うわけで。
 しかし。
「ま、動く前からあれこれ気を回しても仕方ないわよね」
 あっさりと、未来は結論を出した。
「ともかく魔界に行ってヴィネコンの事調べてみるわ。制作者はどこかにいるはずだもの、捜せば見つかるだろうし」
 ――甘かった。
「そんな簡単に出来る事じゃないだろ」
「あら。やってみなくちゃわからないわよ」
 未来の果てしなく前向きな姿勢は、誰もが評価する点である。
 一度言い出したら聞かない事も。
 走り出したら止まらない、というのは、彼女を指す言葉だと刹那は確信を抱いているのだから。
「そうと決まれば善は急げよね!魔界に行って来なくっちゃ」
 元気一杯宣言する未来は、朗らかで屈託がない。
 ……こんな顔を見せられては、応援するしかないだろう。
「ま、頑張れよ」
「ありがと!プログラムの改良が出来たら、もちろん刹那のヴィネコンにも入れてあげるわね」
 いや、別に気を回さなくてもいいんだけど。
 という言葉は敢えて飲み込み、刹那は未来を送り出す。
 部屋の片隅から、聞こえよがしな溜息が漏れた。
「おまえ、最近本っ当に未来に甘いよな」
「一応自覚してるさ」
「それはそれは」
 刹那は苦笑を返したのだが、その表情に彼女への気持ちを見て取ったのだろう、クールは処置なしと言った体で、あらぬ方向を見やったのである。


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 いつの間にやら、うちの刹那は未来大好きになっていた模様です(笑)。
 これまでも「未来のことを放っておけない」とは思っていましたし、彼女にちょっかいをかけるゼットへ穏やかならぬ感情を抱いていましたが。
 ゲーム設定なのでカップリングにはなりませんが、未来から目が離せないという刹那の気持ちは、ある意味ルシパパより強いかも。

2005年03月20日 (日) 00時28分 (12)





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