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□ お題掲示板 □

現在メインはロマサガMSとTOS、サモナイ3です。
他ジャンルが突発的に入ることもあり。
お題は10個ひとまとまりですが、挑戦中は順不同になります。
(読みにくくてすみません…)

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冒険・07 虫 (サモナイ3・アティサイドオールキャラ)
長山ゆう | MAIL | URL
 無限界廊を進む中、そろそろ最下層に手が届くかという所までやってきた、その時。
 悲劇は起こった。
「きゃああああーーっ」
 その界廊へ全員が足を踏み入れた途端、黄色い悲鳴が全員の鼓膜を刺激する。
 咄嗟に、数名が両手で耳を塞ぐ羽目になった。
「ななな何でこんな所にアレがいるんですかー!?」
「や、やだやだちょっと動いてるよ!?」
 手を取り合って青ざめる者、約2名。
「ったく、何だってんだ、いきなり!」
「だだだだってアレ、ちょっと動いてるし!!」
 カイルの文句など聞こえていないらしく、ソノラは震える指先でこのフロアに陣取る大型の虫――ジルコーダの女王3体を指し示す。
「ほぉ、無限界廊ってのはこんなヤツまで出てくるんだな」
「女王も動くんですか!?」
「オレも巣穴以外で見るのは初めてだ」
 ヤッファは興味を引かれているらしいが、アティやソノラはそれどころではない。
「せ、先生、悪いけどアタシ今回パスね。うん、ちょっと休ませてもらおっかなー」
「あ、ずるいですよ!じゃあ私も」
「ちょっとセンセ、召喚術の要の貴女が抜けてどうするの」
「だ、だって……」
「ソノラの代役はヤッファのおっさんに頼むにしてもだ、あんたの代わりはいねぇんだぜ」
 スカーレルとカイルの二人がかりで諭され、アティは今にも泣き出しそうな顔で周囲を見回す。
 しかし、助け船を出してくれそうな人物は見当たらない。
「せ、先生、ほら、魚釣りの時は虫だって平気じゃないか」
「サイズが全然違います!」
 ナップのフォローも逆効果である。
「じゃが、あの時一番奮戦したのはそなただと聞くぞ?」
「ええ、貴女が率先して進んでくれたおかげで、女王を送還できたんですもの」
「あの時は無我夢中だったんです!ミスミ様やアルディラは平気なんですか!?」
「大きすぎるきらいはあるけれど、連れて帰るわけでもないし」
「確かにちと見目は悪いがの」
「スカーレルは、あの時苦手って言ってましたよね?」
「見ていて気持ちのいいものじゃないけど、センセほどじゃないかしらねぇ……」
 スカーレルも虫の類は苦手だが、目の前でここまで大騒ぎされると、却って冷静に対処できるものだ。
 半泣きのアティを見るに見かねて、キュウマが助け船を出した。
「これほど嫌がっておられるのですから、今回アティ殿には待機していただいては」
 アティの顔に希望の光が射す。
 しかし。
「あの女王たちを物理攻撃だけで倒せると思うか?」
 沈黙。
「……申し訳ありません、アティ殿」
 唯一味方になってくれた人間があっさり退いてしまうと見るや、アティは背後の大柄な鎧姿の人物を振り仰いだ。
 一見大柄な男性のようだが、鎧の中身はまだ少女らしさを残す女性である。
「フ、ファリエルは?あれって怖くないですか!?」
「……じ、実は私もちょっと。でも私は物理攻撃専門だから今回は遠慮させてもらおうかと……」
「まぁ、ファリエルの場合、魔法防御にも問題があるものね」
「ああ、今回必要なのは召喚術者ゆえ」
 すんなり待機が決まった事に安堵したものの、ファリエルは済まなげな声でアティへ詫びる。
「すみません……」
 こうなるとまさに孤立無援、救いの主は現れそうにない。
 アティは悲愴な面持ちで女王たちを見やった。
 そこへ、ことさらに明るい声が掛けられる。
「はいはいセンセ、こうなったら覚悟を決めてちょうだいな」
「スカーレル……」
 瞳の端に涙を溜めた顔で見上げられ、スカーレルは苦笑する。
「大丈夫、アタシたちが絶対アレをセンセに近づけさせたりしないから」
「……本当に?」
「もちろんよ。だからちょっとだけ辛抱してちょうだい。ね?」
 スカーレルの励ましに、アティの表情が少しだけ和らぐ。
「……あちらは彼に任せておくとして。全員アクセサリを変えておきましょう」
 二人からやや離れた位置にさりげなく移動したヤードが小声で提案する。
「何でまた」
「今回必要なのは魔法防御力です。特に前衛は注意しなくては」
「笑えねぇな、おい」
「『抗魔の領域』を持つミョージンとペコは必須じゃな」
「『召喚災害保険』も入れておくべきね」
 既に今回の対策相手は変わっているが、全員本気だった。

 そしていざ戦闘開始。
「いきなり抜剣するか!?」
「来るわよ、ヴァルハラ!」
「は、早すぎます!」

 機界の最強召喚術の光が、ゴルゴーダを始めとする魔獣たちを包み込む。
 我先にミョージンへ駆け寄る前衛組にとって、召喚獣の姿は後光が差して見えたという。


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 サモ3初のコメディに挑戦。楽しかったです(笑)。
 ……実はまだ無限界廊深層へ入ったことがありません。
 が、女王3体が迫ってくると聞きまして、ついネタにしてしまいました(笑)。
 アティでなくても、あんな大型の女王アリが3体も出てきたら、逃げたくなるでしょう。ええ。

2005年03月14日 (月) 22時44分 (11)

06 おしゃべり (サモナイ3・ミスミ&アルディラ)
長山ゆう | MAIL | URL
「そなたがこの屋敷を訪れるのも久方ぶりじゃな」
 一口茶を啜ると、ミスミは隣に座る女性に微笑みかけた。
 折しも午後の昼下がり、二人がくつろぐ鬼の御殿の縁側は、ひなたぼっこには丁度良い頃合いである。
 郷の主の視線を受け、アルディラは軽く肩を竦めた。
「護人がそう簡単に土地を空けるわけにはいかないもの。だけどレックスが突然、家庭訪問に同行して欲しいなんて言いだして……。そのくせ、本人はスバルたちと遊びに行ってしまうんだから」
 言葉はそっけないが、表情は穏やかである。
 ふふ、とミスミは袖で口元を隠して笑った。
 そんな彼女をちらと見やった後、アルディラはゆっくりと庭の景色を一望する。
「ここは、変わらないわね」
「そうじゃな。日々の暮らしはそう変わらぬ。平和な証拠じゃ」
「そうね……」
 目を細めるアルディラの表情に旅愁の色を感じとり、ミスミは懐かしい人物の名を口に乗せた。
「良人も、安堵しておるじゃろう」
 アルディラは一瞬目を伏せ、ミスミを見る。
「本当はね、今の島の姿を見て欲しかったの……」
 口に出さずとも、それが誰を指すかは明白だ。
「最後に一目、会うたのじゃろう?」
 アルディラは頷く。
「もともと、シャルトスに一部の意識が残っていたらしいわ」
「あの剣と共に在ったということか……。ならば確信しておったろうな。この島の今の姿を」
 笑みを浮かべ、ミスミは静かに言葉を継ぐ。
「良人も常々言うておった。あやつは理想が高すぎると。けれど、共に叶えたくなるともな。その眼鏡に適った者に後を任せたのじゃ、当然であろう?」
「……ええ……」
 遺跡は機能を失い、二本の剣はそれぞれに姿を変えた。
 ハイネルと連なったものが全て消え去った事で、その存在もまた、永遠に失われたのである。
 ──彼の望んだ夢だけを遺して。
 遠くから、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。
 どうやら、遠出から戻ってきたらしい。
 ミスミはそちらを見やり、目を細めた。
「集落の間では必要以上の行き来をせぬと取り決めておったが、子供らには通用せなんだな」
 スバルがパナシェやマルルゥと仲良くなった当初の騒動を思い出し、ミスミは小さく笑う。
「だけど、本当は交流が必要だったのね。今ならわかるわ」
 島の中で諍いを起こさず平和に暮らすためには、同族同士が集うのが一番である。
 故に、集落が成立し、その代表者たる護人の集いが数少ない他集落との交流手段となって久しかった。それが共存だと島の住人の誰もが思っていたのだ。
 しかし、それはあくまで大人の論理である。
 発端は、ミスミの息子スバルだった。
 しかし、スバルが周囲の制止も聞かず、ユクレス村に出入りするようになっても、集落間ではさほど大きな騒ぎにはならなかった。
 ユクレスの護人ヤッファが、細かなことにこだわらない性格だったせいもあるだろう。
 しかし何より、子供の行動として大目に見られた点が大きかったのかもしれない。
「知らぬが故にわだかまりを持たぬ、なればこそ見えぬ垣根を越えられるのやもしれぬな」
 鬼の子スバルはユクレスの少年パナシェや妖精マルルゥと仲良くなり、島中を一緒に遊んで回るようになった。
 ──大人達が築いていた集落間の壁は、子供たちには何の力も持たない。
 それを知った時、ミスミは子供の順応力に未来への可能性を見た気がしたのだ。
 不意に、アルディラが立ち上がった。
 目を丸くして、近づいてくる人影を見つめている。
「レックス、どうしたの!びしょぬれじゃない」
「あはは……ちょっとね、池に落ちちゃってさ」
 彼女へ照れ笑いを返しつつ、派手なくしゃみをする赤い髪の青年こそが、この島を変えた当人である。子どもたちの教師をつとめる優しい人物であり……。
「先生、大丈夫?」
 彼を取り囲むように一緒に戻ってきたスバル、パナシェ、マルルゥの三人も、心配そうにその姿を見上げている。
「今日は変だったよ、いつもならひょいひょいって飛んじゃうのにさ」
「ごめんごめん」 
 口を尖らせているが心配そうなスバルに小さく微笑み、直後レックスはくしゃみを連発する。
「すぐに湯を用意させよう」
 ミスミは奥へと指示を出すと、アルディラを呼び寄せて用意させた大判の手ぬぐいを手渡した。
「ありがとうございます」
「ごめんなさいね」
「気にするな。どうせスバルが強引に誘ったんじゃろう?」
 駆け寄るアルディラ手ぬぐいを受け取り、レックスは大雑把に水分を拭き取った。
 部屋を濡らしては悪いからと遠慮する彼を強引に畳に上げ、アルディラと共に湯殿へ案内させる。
 二人が奥の間へ姿を消すと、子供たちは居心地悪そうにもじもじしていた。
「一体何をしておったのじゃ?」
「蓮飛びだよ」 
「それで濡れ鼠というわけか」
 ミスミは苦笑した。
 大蓮の池の蓮の葉は「お化け水蓮」と呼ばれる程大きく、子供が乗って遊んでもさほど害はない。
 だが、大人の体重を支えるには無茶がある。池に落ちる確率も格段に増すだろう。
「でもさ、いつもならおいらよりずーっと早くに渡っちゃうんだぜ。なのに今日はぜーんぜんやる気なし」
「そうですそうです、先生さん、ぼんやりしてましたよねぇ」
 二人の話を聞いたミスミは、ころころと笑った。
「おぉ、そうであったか。それは先生に悪いことをしたの」
 名目上は家庭訪問だったのだが、アルディラも誘って屋敷を訪れるよう頼んだのは、ミスミ自身だったのである。 
 アルディラと二人、屋敷でゆっくり語り合いたいと思っての事だった。
 普段、彼女が他集落へ出向く際の、用件を持った訪問ではない、茶飲み話の相手として。
 だが、レックスとしては、やはり彼女のことが気がかりで仕方なかったのだろう。
 納得した様子のミスミに、子供たちは顔を見合わせる。
「母上、どういうこと?」
「先生はアルディラが心配でならぬだけじゃ」
 スバルは瞬きをした。母親の答えの意味がわからないらしい。
 パナシェやマルルゥもきょとんとした顔でミスミを見上げている。
「でも、アルディラさんはミスミ様とお話ししてただけですよね?」
「別に危険なことなんてないじゃんか」 
「そうじゃなぁ。あと10年もすればそなたらにもわかるやもしれん」
「なんだよ、それ」
 口を尖らせるスバルを見やり、ミスミはゆったりと微笑んだ。


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 ちょっとまとまりに欠けてしまいました。反省。
 アルディラとミスミって似てる所があるんですよね。
 本編でほとんど触れられませんでしたが、この二人は結構親しい間柄だったと思います。
 ミスミは彼女を気に掛けていても、島の掟によって会話する機会が無かったんじゃないかと。
2005年03月13日 (日) 23時25分 (10)

10 恋人 (サモナイ3・ファリエル&アリーゼ)
長山ゆう | MAIL | URL
 「異境の水場」。その名の通り、狭間の領域に満ちるサプレスの神秘的な輝きを映し出す水辺を指す。
 この地において住人が集うのは夜、月明かりが大地を照らす頃合いだ。
 故に、太陽の光が差し込む今の時間は、生物の気配はあまり感じられないのが常である。
 だが。
「あら?」
 水辺に小さな人影を見つけ、ファリエルは小さな声を上げた。
「アリーゼ。どうしたの?」
「あ、ファリエルさん」
 近づく鎧姿の彼女を認め、少女がその名を呼ぶ。
 以前はファルゼンと名乗っていたが、今は護人たちも皆、彼女の正体を知っている。
 ただ、日中の消耗は変わらないので、正体を明かした今も普段は鎧姿なのだ。
「ええと、その、ちょっと一人になりたくて」
 曖昧な笑顔で応える少女の様子が気になった。
 狭間の領域は他の集落よりもマナの力が強い。
 せっかく知り合いに会えたのだからと、ファリエルは本来の姿に戻ってアリーゼに歩み寄った。
「お邪魔だった?」
「いえ!……あの、良かったらここにいてもらえませんか?」
 遠慮がちに言う少女へ安心させるように頷くと、ファリエルは彼女の隣に座った。
「どうしたの?」
 少し時間をおいてから問いかけてみると、アリーゼは膝を抱え込むように両手で引き寄せ、小さな声で呟いた。
「アルディラさんが羨ましくて」
「え?」
 意外な言葉だった。
 しかし、ひどく寂しげな少女の様子に、ファリエルはひとつの考えに思い至る。
 ――過去に自身が経験した出来事だ。
「レックスの事でしょう」
 アリーゼが勢いよく顔を上げて、ファリエルを見る。
 しかし、すぐに瞳は伏せられ、少女は再び膝を抱え込んだ。
「……先生はとても嬉しそうですし、アルディラさんも幸せそうだから……いいなって思うんです。だけど、ちょっと寂しくて」
 授業だってちゃんと続けてもらってるし、釣りの時は誘ってくれるし、海賊船にいる時は、大抵一緒にいてくれるけれど。
 とつとつと語るアリーゼを見るファリエルの視線が、我知らず優しい色を帯びる。
「あ、でもアルディラさんが嫌いな訳じゃないんですよ!」
 不意に、アリーゼはファリエルに顔を向けた。いつの間にか丸まっていた背中を伸ばし、力一杯主張する。
 そんな少女に、ファリエルは優しく微笑んだ。
「うん、わかってる。私も同じだったから」
「え?」
 目を丸くするアリーゼへ、ファリエルは静かに続ける。
「昔の事は前に話したでしょ?私もね、兄さんとアルディラの事を知ったとき、寂しかったもの。元々兄さんの側にいたくて、護衛役として一緒にこの島に来たから……。兄さんは変わらないってわかってたけど、遠い人になった気がしちゃったな」
「そう、ですか……」
 優しかった兄は、護衛役として同行した妹の身を常に案じていた。
 事が起これば、誰よりも先に立とうとするのがハイネルという人間だ。
 日常での些細な事なら構わない。だが、戦いとなれば話は別である。
 兄は類い希な召喚師だったが、召喚術に長けていても、武器を取っての戦いが得意だとは限らない。
 だからこそ、いざ争いごとが起こった時、真っ先に飛び出すのはファリエルだった。
 それが、ハイネルにとって心配事の種でもあったのだろう。 
「二人きりの兄妹だったし、私は昔からお転婆だったから、いっつも心配かけてばっかり」
「ファリエルさんが、お転婆ですか?」
「ええ」
 思い出し笑いをしたファリエルを見つめるアリーゼの瞳は、意外な驚きに満ちていた。
「だから、いつも私を見てくれてた兄さんに、一番大切な人ができたって気づいたときは、やっぱりショックだったな」
「…………」
 ――誰もが仲良く暮らせる場所を作りたい。
 大好きな兄の望んだ夢は、あまりに現実離れしていたけれど、一緒に信じたいという魅力があった。
 そう、惹かれたからこそ、島で召喚された彼らも協力してくれたのだ。
 兄の親友だったリクトが、彼を主と仰いでいたキュウマが。
 護衛獣として召喚されたヤッファも、馬鹿馬鹿しいと言いながら協力を惜しまなかった。
 そして、マスターである兄を心から慕っていたアルディラも、また。
 そんな彼女とハイネルがいつしか恋仲になったのも、今思えば自然な出来事だった。 
「でもね、私もアルディラの事が好きだったから、やっぱり良かったって思えたの。だって、二人とも本当に幸せそうだったから。……言葉にするには、勇気が必要だったけど」
 アリーゼは湖に瞳を向けた。
 穏やかな水面を見つめる少女の胸の内を去来する想いは、おそらく、過去に自分が抱いた感情とどこか似ているのだろう。
 ファリエルも澄んだ湖を見やりながら、懐かしい思い出をゆっくりと回想してみた。
 懐かしくて暖かな、優しい記憶。
 ハイネルが生きていた頃は、アルディラよりも兄のことが気になって仕方なかった。
 ちょうど、今のアリーゼのように。……けれど。
 ――兄の死を境に、めっきり表情を失ってしまった、アルディラ。
 一方のファリエルは、本来の姿を偽る事でしか島の住人に受け入れられないと思っていたが故に、すぐ近くにいた筈の彼女にすら真実を語ることが出来なかった。
 護人という役割を負うことで日々を過ごしていたアルディラが、豊かな感情を垣間見せるようになったのは、島を訪れたレックスの存在あればこそだった。
 幸せに、なってほしい。
 今を生きる大切な人に。
 ファリエルは顔を上げた。そして、アリーゼに明るい調子で話しかける。
「さて。せっかく来てくれたんだもの、お茶をご馳走させてくれない?」
「え?……あ、でも」
 物思いに沈んでいたアリーゼは、やや遅れて、ファリエルの言葉を理解する。
「もっとも、用意してくれるのはフレイズだけど」
 悪戯っぽく付け加えた言葉に、アリーゼが笑顔を見せた。
「はい。ありがとうございます」
「良かった。フレイズもね、自作のケーキを披露する相手ができて喜んでるの」
「そうなんですか?実は私、今度是非作り方を教えて欲しいなって思ってたんです」
「ふふ。彼が聞いたら喜ぶわ」
 少しだけ、元気を出した少女の様子に安心する。
 ――大丈夫。
 時間が必要かもしれないが、この子なら、レックスとアルディラの二人を心から祝福してくれるだろう。
 ファリエルは改めて、大切な人たちの幸せを心から祈った。


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 予想以上に長くなりました…。
 恋人達を見る人々、ということで二人の身近なファリエルとアリーゼの会話となりました。
 アリーゼはやはりレックスが初恋なんだろうな、とか。
 ファリエル視点なので、ついハイネルの事に触れてしまい、レクディラというよりハイネル×アルディラ要素が強くなったかも…(苦笑)
 ヤッファの時もそうだったんですが、今回のファリエルもED未見なので言葉遣いがきちんと把握できてないのが難点です(汗)
 でも、彼女視点で書いてみたらますます好きになりました。ファリエルって可愛いなー。

2005年03月09日 (水) 21時34分 (9)

07 お菓子 (サモナイ3・フレイズ&クノン+アルディラ)
長山ゆう | MAIL | URL
 珍しい人物の訪問に、フレイズは少し驚いた表情を見せた。
「こんにちは。どうしました?」
 相手は本来、必要最低限の言葉しか交わさない、機械人形の少女である。
 彼女がラトリクスを離れることはまずあり得ない。急を要する用件で、狭間の領域を訪れたのだろう。
 どこかで何らかの異変が起きたのかとフレイズが考えた、その時。
「実は、貴方にお願いしたいことがあるのです」
「お願い、ですか?」
「はい」
 一途な瞳を向けながら、クノンが応える。
「お菓子づくりを教えていただけないでしょうか」
 意外な申し出に、フレイズはまじまじと相手の顔を見返してしまった。
「……お菓子、ですか?」
「はい。レックスさまから、フレイズさまがお菓子づくりを得意としていると伺ったのです」
「得意という程では。好きな事が長じただけですよ」
 こう応じたものの、相手の顔に浮かんだ不審げな表情を見て取ったフレイズは、この少女に照れや遠慮は不要と悟り、改めて質問をする。
「どうしてお菓子づくりを学びたいと思ったのですか?」
「食べていただきたい方がいるのです」
 意外な返答だったが、その意味は納得できた。
 彼もまた主と呼ぶ存在を持つ身である。
 フレイズは頷いて笑みを浮かべた。
「わかりました。私で良ければお教えしましょう」
「ありがとうございます」
 感情の起伏に乏しいはずの少女・クノンが微笑みを浮かべた事に驚きを隠せず、この時フレイズは思わず目を丸くしてしまったのである。

「嬉しいって感情は人それぞれだから、型にはめられるものじゃないんだよ」
 レックスは一生懸命考えながら、自分の言葉で『嬉しい』という気持ちを説明してくれた。
 解決方法は自分で探すしかないんだよ、と。
 クノンにとって、初めて知り得た、極めて難しい問題だった。
 ――相手に喜んで欲しい、という気持ち。
 『嬉しい』をそれぞれが感じる方法……。

 数日後、休日の青空教室を借りて、フレイズ主催のお茶会が開かれた。
 臨時で設置された大がかりなテーブルには、彼の教室で作られたお菓子が所狭しと並べられ、紅茶やコーヒーなどの飲み物も用意されている。
 あの日、フレイズがクノンの申し入れを受けた事がカイル達の知るところとなり、まずソノラやスカーレルやアリーゼがお菓子づくり講義の参加を希望したのである。
 更にマルルゥやミスミが加わり、島の女性達の参加希望者を受け付けるうちに、教室と言えるほどの規模になった、その結果だった。
 大半の参加者が女性であった為、フレイズのフェミニストぶりが遺憾なく発揮され、彼のファンも増えたらしい……のだが、これはまた別の話である。
 好天に恵まれた休日の午後、お茶会を訪れた島の人々は、出されたお菓子に舌鼓を打ちながら、思い思いに楽しんでいる。
 今日は一日仕事を休んでこちらに専念していたクノンは、準備から始まる段取りをこなしていたものの、内心全く落ち着いていなかった。
 新しい客人が訪れる度、顔を上げては微かな息をつく。
 そのせいか、思い描いていた待ち人が姿を現すと、我知らず、肩の力が抜けてしまった。
 いつしかひどく緊張していたことに、改めて気づく。
「アルディラさま。お待ちしておりました」
「大盛況ね。なんだか圧倒されちゃうわ」
 アルディラの感想通り、実に多くの人々が、このお茶会を訪れていた。
 お茶会という名目上、ユクレス村や風雷の郷の住人が大半を占めるが、雰囲気を楽しみに訪れる狭間の領域の住人の姿も見られたし、その中には親しい顔も混じっている。
「これ、母上が作ったのか!」
「ああ。どうじゃ?スバル」
「おいしい!」
 すぐ側でのやりとりに、アルディラが笑みを浮かべた。
「クノンが作ったお菓子はどれなの?」
「こちらです」
「あら、可愛い」
 クノンが皿に取り分けたのは、果物をふんだんに使ったタルトだった。
 最近果物を好むアルディラの嗜好を考慮した一品である。
 彼女がすこぶる興味を抱いた事が伝わってきた。
 早速、アルディラはケーキをフォークで切り分けて、口に運ぶ。
 そして、クノンに微笑んだ。
「おいしいわ」
 アルディラの笑顔が、クノンの心に染みわたった。
 ――嬉しい。
 アルディラの喜ぶ顔を見ることが、この上なく。
「ありがとうございます」
 クノンもまた微笑みを浮かべる。
 控えめだが、見る者に幸せを感じさせる笑みだった。


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メインはタイトル後者側、クノンとアルディラの話…なので、フレイズ話を期待された方ごめんなさい。
フレイズのフェミニストっぷりは主人公を変えると覿面ですねぇ。
レックスの時はあんなに冷たかったのに(苦笑)。
クノンは、登場人物紹介で一番惹かれたキャラです。
感情を学ぼうとする彼女がいじらしくて、サブイベントはとても印象的でした。
少しずつ、感情が豊かになっていく所が良かったです。
こういう形でアルディラを喜ばせようとするのもありかなと思うんですが…。
甘いもの好きはむしろレックスの方かも(笑)
2005年03月07日 (月) 21時08分 (8)

05 買い物 (サモナイ3・スカアティ)
長山ゆう | MAIL | URL
 店を訪れた客人たちを、店主メイメイは満面の笑顔で出迎えた。
「あらまぁ先生、いらっしゃーい。さぁ、今日のご用はなぁに?」
「あの、毛糸はありますか?」
「毛糸?もちろんあるわよぉ。ふふふ。意中の人へプレゼント〜?」
 言いつつメイメイは、彼女の隣に立つ青年をちらと見やる。
 しかし、彼は悠然と笑みを返すのみ。
「ち、違いますよ!ナップ君にセーターを編んであげようと思って」
 頬を染めてかぶりを振ったアティが、メイメイの視線に気づいたのかはわからないが。
 メイメイは店の奥に入ると、籠を二つばかり運んできた。どちらにも、色とりどりの毛糸が溢れんばかりに積まれている。
「セーターなら毛糸の太さはこんなものでしょ。じっくり選んでちょうだいねぇ」
「ありがとうございます」
 礼を述べ、早速アティは毛糸を手にとって見る。
 そんな彼女へ、スカーレルが問いかけた。
「色味は決めてきたの?」
「ええ。暖かそうな黄色系にしようかなって思ってるんです。ナップ君にも似合いそうだから」
「成程ね」
 言いつつ、スカーレルは淡い桃色と黒の毛糸を選び出す。
「スカーレルも何か編むんですか?」
「ええ。せっかくセンセに編み物教えるんだもの、一緒に作ろうかなーって」
「わ、嬉しい。楽しみです」
「そうね」
 にっこり笑うアティに笑みを返し、スカーレルは編み棒を選び始めた。
「だけど、どうして急に編み物なんて考えたの?」
 はっきりした黄色とやや薄みがかった黄色、二つの毛糸を見比べるアティに、ふとスカーレルが問いかける。
「最近少し寒くなってきたでしょう?ナップ君はいつも薄着だし、風邪引かないようにと思って。……あと、やっぱり私も小さい頃、お手伝いのご褒美にって手編みの帽子を貰ったことがあったんです。それがすごく嬉しかったから」
 屈託のない笑顔を見せるアティに、スカーレルは頷いた。
「そう。確かに、手作りのプレゼントは嬉しいものね」
「上手くできるか、心配なんですけど」
「大丈夫。アタシがばっちり教えてあげるから」
 スカーレルの悪戯っぽいウィンクに、アティはつい笑ってしまった。
「はい。よろしくお願いしますね」

 メイメイの店で毛糸を購入し、スカーレルからノウハウを教わりつつ、夜更かしすること二週間。
「できました!」
 最後の毛糸の始末を終え、アティは編み上がった黄色いセーターを目の高さへ持ち上げた。
「お疲れさま。ん、良い感じに仕上がったわね。これならばっちりよ」
 セーターを検分したスカーレルは、一つ頷いてアティに拍手を送った。
 アティの肩から力が抜ける。
「ありがとうございます〜。途中で目が増えたり減ったりするし、袖と身ごろも本当に繋がるのか、どきどきしました……」
「なかなかにスリリングな体験だったわね?」
 アティが一つ失敗するたびに、ちょっとした騒ぎになったものである。
 時間が時間だったので、声を潜めてはいたものの、実に賑やかなひとときだった。
 スカーレルの声に赤面したアティだったが、出来たばかりのセーターをラッピングすると、満足げに大きく頷いた。
「よし、完成です」
「間に合って良かったわね」
「本当に。思い立ったのが遅かったから、その意味でも焦っちゃいました。これで安心して眠れますよ〜。でも、毎日遅くまでお邪魔してすみませんでした」
「いえいえ。とっても楽しかったわ。それじゃ……」
 スカーレルはベッド脇に置いていた袋を手に取ると、アティに差し出した。
「今日まで頑張ったセンセに、アタシからプレゼント」
「え!?」
「開けてご覧なさいな」
 目を丸くしていたアティだったが、袋を受け取ると、スカーレルに促されるままに開けてみた。と。
 中から出てきたのは、桃色と黒を織り交ぜた、手編みのマフラーと手袋。
 見覚えのある色合いだ。
「これ、あの時買った……」
 スカーレルが我が意を得たりと微笑んだ。
「センセにね、似合う色だと思ったのよ」
 驚いていたアティの瞳が、染み入るような幸せに満ちてゆく。
「……ありがとうございます。嬉しい……」
 アティは顔を上げると、天真爛漫な笑顔を浮かべた。
「本当に嬉しいです。ありがとう、スカーレル」
「喜んでもらえて良かったわ。さ、明日に備えて今日はもうお休みなさいな」
「はい!」
 微笑むスカーレルに元気良く返事を返し、アティは幸せな気持ちで彼の部屋を後にした。


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サモナイ3、スカアティ。現在アティで一押しカップリングです。
3週目にして初めて手編みのご褒美がスカーレル直伝と知り、思わず書いてしまいました(笑)
本編後半のシリアスな雰囲気もいいのですが、こういう話もありかなと。
一緒に編み物をしていたのに、スカーレルが作っていた物に気づかなかったのは、それだけアティがセーターに集中していたと言うことで(笑)。
2005年02月25日 (金) 22時42分 (7)





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