[3] 相談させてください |
- 大学・研究機関 - 2008年09月01日 (月) 10時27分
元民生委員(Aさん)の方が認知症になり、家族(主たる介護者は娘)と宅老所(介護保険事業所)との接点ができました。Aさんは、民生委員のまとめ役的な存在で、民生委員仲間や地元商店街でもよく知られている人でした。しかし、同じ敷地内に住む娘さんを悩ませたのが、徘徊でした。当初は、家族だけで探していましたが、宅老所と共に探すようになりました。 しかし、最大13時間の行方不明を契機に、宅老所のソーシャルワーカーの手配でAさんを知る学習会を開催。認知症のこと、交通事故で亡くなる高齢者などの生活を擁護する必要があること、そして何より地域の安心に取り組んできたAさんの問題を地域はどう考えるかが議論されました。ソーシャルワーカーは、Aさん、娘さんと顔写真入りのチラシをもって徘徊時の協力要請を行いました。皆さん、地域の世話役だったAさんの現状に驚かれましたが、協力には積極的でした。そして、30分で見つかるようになりました。Aさん宅の左右に位置するクリーニング店と警備員さんが早期発見に貢献してくれたのです。 この取り組みから認知症高齢者の徘徊を発見することと同時に、Aさんが地域の中でどういった人脈を持ち、人と人とのつながりに貢献してきたか。Aさん自身の人柄を知り、出会った時にも落ち着いて対応する、何よりAさんの人つながりを知り、再組織化することが大切だと感じました。 この学習会を発展させ、地域支援ネットワークを組織しました。会議には毎回Aさんも出席され、商店街の若手店主や元民生委員、介護保険事業所・施設や障害者関係施設、社会福祉協議会や地域包括支援センターも加わりました。最近では、介護歴10年になる娘さんの検査入院(10日間)の泊まりをネットワークメンバーで支える取り組みを行いました。夕食を囲みながらAさんと夜を過ごし、介護保険サービスを利用せずに乗り切ることができました。Aさんの人柄は、専門職か否か、自分の事業所の利用者か否かに関わらず地域でケアすることを学ぶ機会を与えてくれました。そして、今、別の方の徘徊問題も浮上し、お人柄を知ることから学習しています。 認知症を学ぶ学習会は、Aさんの人柄を知る機会となり、認知症の○○さんをどう捉えたらいいか。つまり、ネットワークメンバーの視点及び対象認識を共有化させ、生活問題を具体的にどう支え、行動するか、その価値基盤を与えてくれています。これはまた、認知症の方の生活を変えずに支援することを、家族や一事業所だけで考えず、何かあったら行動する協働関係の中で議論するしくみとして定着しつつあります。以上のようなことを大切にしながら積み重ねた実践は三年目を迎えています。 認知症の方と地域との関係、その両者に関わるネットワークのあり方についてご助言などいただければ幸いです。
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