『この手紙はあなたが犬または猫になる事を警告するものです。
（１）全く同じタイトルと文面のメール（コピペで構いません）をメール到着認識後７２時間以内に５人の知人に出せば今回は犬または猫にならずに済みますが、新たに５人が被害者になります。
（２）もしも運悪く犬になった場合、５人の飼い主に最低１週間ずつ忠実に仕えたら人間に戻る事が出来ますが、その場合飼い主が同じ手紙を受け取る事になります。また、人に戻った後に犬体験を親戚知人大衆を問わず他人に知られた場合、今度は野良犬になって一生戻れません。
（３）いずれの選択も潔しとしない場合、犬のまま一生を終えます。その場合、せいぜい来世は猫になるように祈って下さい。
（４）もしも運良く猫になった場合、５人の飼い主に最低１週間ずつ忠実に甘えたら人間に戻る事が出来ますが、その場合飼い主が同じ手紙を受け取る事になります。この場合も猫でありつづける選択はありますが、来世は猫になるとは限りません。また、人に戻った後に猫体験を親戚知人大衆を問わず他人に知られた場合、今度は野良犬になって一生戻れません。
幸運を祈ります。』

メールを貰った俺は少し考えた。というのも、このところ、活動家の失踪事件が世の中を賑わしているからだ。新興ねずみ講宗教として切り捨ているには不気味過ぎた。俺が犬に変身するファンタジーは無視しても、メールがモニターされていて誰かに拉致される可能性は捨てられない。アメリカで赤狩りが猛威を振るった頃、同じ手法を赤狩り委員会が使ったという。だから、沖縄で活動している俺にもとうとう目をつけられたのではないかという不安を感じたのだ。

散々迷った末、俺はおのれ可愛さに顔も行動も良く知っている５人に出した。もっとも、相手はいずれも俺を知らない大金持ちだから、きっと、スパムとして目に付かないうちに処理されるだろう。

それから１ヶ月、最近気がついた事がある。それは、やけに馴れ馴れしい輩が増えている事だ。魅力的な野良犬、もっと魅力的な野良猫、そして、抗い難い若い女。俺は一体我慢出来るのか・・・。