第123回グランパ句会 二〇一〇年四月五日(月)
1春嵐目を凝らしては見失う
2まっすぐに歩けない人春の路
3老残のおき場所探して桜闇
4晩年は長しピンクのスェーター
5下萌えにショパンの調べ草千里
6花摘むや悔いることあり遠賀川
7スタートに色めき立てば酔い桜
8花冷えてたましい蘇る涙
9ブルームーン母の秒針ゆっくりと
10花咲いて見知らぬ町を歩きけり
11菜の花に豆腐売りの喇叭する
12雲もなき空からさえずり降り続く
13同じ名の銭湯のあり桜かな
14奥阿蘇は梅と桜の競い咲き
15春の日は死んでいるわと桜言う
16満開であればあるほど春の冷え
17春眠の眠気くすぐるフリージア
18更衣(きさらぎ)や形見の服はそのままに
19満開やよみがえるもの胸の奥
20頬白む菜萸(ぐみ)はな冷えのぽつりぽつ
21膝抱え痛みを内にくるむ夜
22美追えば蜃気楼との別れくる
23原稿用紙ああもう桜の時分かな
24山菜や食は久しく賑やかし
25分葱とりみそ汁食べて忘れ物
26黒土が息を吸い込む春の庭
27啓蟄に蝉は静かに声を聞く
28花冷えの肩を抱いて君を待つ
29あ と云いて春の疾風の早合点
30愛されて裏切って桜貝に償い
31菜の花や 雨に打たれし ウォーキング
32黄の花の視界に飛び込みやっと春
33異国女(め)の死を満開の闇に聞く
34人は風花を惜しんでさようなら
35ことことこと羽釜がうたっている朝
36春宵やゼラチン質が増えていく
37踏青や風と光の仲間たち
38雨に泣き風に迷いし桜かな
39俗世より生まれし花の見る夢は
40酒満たすグラス春めき氷鳴く