↓「じゃかるた新聞」11/1号より
「自分だけが発見する世界」−ダイバーにとって究極の海を探し求めていた潜水士の樅山幸三さん(もみやま・こうぞう・五一)が、南スラウェシ州マカッサル南東にあるスライヤール島に、このほど、ダイバーのためのホテル「タカ・ボネラテ・リゾート」をオープンした。幅三〇〇メートルの海岸と沖合二〇〇メートルまでの海をスライヤール県から買収し、六棟のコテージを建て、日本やジャカルタからのダイバーたちを待っている。
東京出身の樅山さんは、子供のころ、勝浦にあった父の別荘に通ううちに海が大好きとなり、房総や湘南の海でマリン・スポーツの虜になった。
一九七四年、日大経済学部を卒業し、米国へ。ニューポートビーチ(南カリフォルニア州)などに住んで職業潜水士のライセンスを取得、サーフィンやダイビングの記事を日本の雑誌に書いた。日本の若者が、ようやくダイビングに注目し始めた頃だ。
一九七九年に帰国し、東京でサーフ・ショップやサーフボートの製造販売店を開業。調査潜水、ダイビング指導、ライセンス・スクールを経営する一方、ダイビング・ツアーを組織し、世界の海を調査してきた。
ダイビング・パラダイスを建設したいとの夢が膨らみ、五年前から、スマトラ、マナド、バリ、ロンボクを拠点に、「究極の地」を探し回った。海図を入手し、潮流、さんご礁、魚群の特徴などを調査、南緯六度で赤道に近く、ジュゴンが住むスライヤール島を選んだ。
広さ一・五ヘクタールの海辺にコテージを建設。地元の若者たちに潜水技術や調理法も教育し、今年四月にオープンした。
これまで訪れたダイバーは日本とジャカルタから合計二十数人。その一人、ダイビング歴が長く、現地を二回訪れた朝日新聞ジャカルタ支局長の真田正明さんは「海がとても素晴らしかった。和風と洋風のボリューム満点の料理も気に入った。経験者向きだが、二、三日でライセンスも取得できる」と評価している。
スライヤール県は南北八十キロの細長い本島を中心に約三十の島から成り、人口十万人。「南十字星とジュゴンの島」と樅山さんが名付けたように、人魚のモデルといわれる希少動物ジュゴンが生息し、手付かずの環礁や島が無数にある。
近くに世界第三の広さを誇るタカ・ボネラテさんご環礁(国立公園)、ボートで五時間の場所に、だれも潜ったことがない未知の海域・ランバエナ環礁がある。
樅山さんによると、日本のダイバー人口は百二十万人。このうち常時活動しているダイバーは一〇%ぐらい。「ダイバーの夢は誰も知らない海で、自分だけの世界に浸ること。世界的なダイビング・スポットは数多くあるが、どこも、ダイバーの数が多く、自然との触れ合いを邪魔され、失望することが多い。スライヤールはアジアに残された最後のビッグなダイビング・ポイントです」と樅山さんはライフワークの拠点を見つけたことに誇らしげだ。
■費用と交通
宿泊(三食付き)は一泊八十五ドル。ダイビング・パッケージ(三食付き一泊とボート代含む二回の潜水)百七十ドル。マカッサルから四十五分、月水金の午前八時半発の小型機で現地入りするか、リゾート側がマカッサルのホテルに出迎え、車と船で約六時間。小型機は片道三十ドル、車と船は片道七十五ドル。
■研修生募集中
樅山さんの仕事を手伝いながら、ダイビング・インストラクター、ガイド、ダイブ・マスターの資格を取るための訓練が受けられる研修生を募集中。
樅山さんの連絡先は、電話・FAX0414・22589、Eメールselayar@indosat.net.id、住所は、PO BOX105 Baloiya Beach Selayar 92855 Sulawesi Selatan
近海に住むジュゴンを保護して世話する樅山さん