避けられない日　いつか来るとは思っていたけれど　
でも、まだ先と思ってた。来てしまった。
突然の父の余命宣告　本人はまだ知らない。
父はかかりつけの医者で久しぶりに血液検査をした。
内臓の機能がかなり落ちているので詳しく調べたほうがよいといとわれた。
具合が悪かったわけではない。ただ、いつもの薬をもらいに行っただけだ。
本人は健康だと思っていた。
そして、調べた結果はとんでもないものだった。
癌ができていて、他の臓器やリンパにも転移している。
余命2ヶ月。

職場に電話が来た、初めは頭が受け入れない。何？
私は時々鼓動が高くなって頭が働かなくなって体が反応する。でも、気付かれないように仕事をこなす。
その繰り返しで午後は頭痛になった。
両親との旅行を思い出しては　辛くなる。
秋にも一緒に笑顔で旅行したのに、胸が痛くなる
短い　辛い　涙がこぼれそうになる
でも、職場ではいつもの私・・・を装う
だけど全然仕事に集中できない。

一昨日までは、暖かくなるのがうれしかった。春が待ちどうしかった。
でも、今は違う、時間が止まってほしい。
最後の桜になるのか。桜が咲き終わった
ら・・・先のことなんて　
暮れに帰らなかったこと後悔
あと何回会えるのか
一緒に行った旅行の写真を探し出す。
こんなに楽しそうに笑っている。

だめだ。こんなこと書いてると・・・

宣告を受けてから4日目の父に会った。
父はすでに、余命の事実を兄から告げられていた。
私はとても不安な気持ちで父に会った。
父はいつも道理の様子で家にいた。不安そうな様子もない。
でも、「おまえが来てくれて本当にうれしい」と何度も言ってくれた。

父は、この3日間で、後に残る者のために伝えなくてはいけないこと、書類の伝達など必要なことをほとんど済ませていた。

そして、驚いたことに父はアルバムの写真をもとに自分の学生時代から今までの自分や家族や孫のことまで、DVD2枚に動画としてまとめてあった。しかも解説も自分の声で付けてあった。
2年ほど前に作ったのだそうだ。相当な時間をかけて作ったのが分かった。
そして、私にそのＤＶＤを出してきて、自分史をまとめたのだが、作ったきりまだ一度も見てないのだと話した。もとにした自分の分のアルバムは必要なければ捨ててよいからといった。
夜遅くまで、父はいろんなことを私に話した。時には笑って、時には残していく母を頼むと真剣に、自分の状態についても冷静に私に話してくれた。

そして、今朝、父の動画のＤＶＤをテレビで一緒に見た。見ながら懐かしそうに説明してくれる。
私の生まれる前の父、母、家の建設、父と母が行ったたくさんの旅の記録、私たち子どもの成長、孫の成長
卒業証書まであった。年代を追ってきちんと整理してある。
見終わって、帰らなければならない時間になった。
心を残しながら帰らなくてはいけない。
父は笑顔で、優しく「来てくれてありがとう。話せてよかった」と言って送り出してくれた。とても明日から入院する人とは思えない。
父は普段道理に、たんたんとやるべきこと出来るだけのことをこの数日で進めた。
を前にしてこの落ち着きをすごいと思った。こんなに父がすごいと思わなかった。

私は何度も泣きそうになった。帰るときにはとうとう泣いてしまった。でも、父は泣かない。「来てくれてありがとう。会えてよかったよ。また来てね。」と言ってくれた。
私は帰りの車の中、ずっと泣いていた。
父に比べて、私は泣いてばかり。
母もいつも道理だった。みんなすごい。

90歳の父があんなＤＶＤを作っていたなんて。
父は編集のためのデッキをもうひとつ買ってあった。新品だから必要なら持って行っていいよと言った。
どうして同じものをもうひとつ買ったの?と聞くと、自分の部屋でも作業できるように買ったんだよと答えた。
もう自分には必要ないからと答えた。
もっともっといろんなものを作るつもりだったんだ。
私はもう、泣きそうで、返事ができなかった。
そして、やっと欲しいから頂戴と言った。
父は、編集のこつを教えてくれた。

これを書きながら、息が苦しくなるくらい悲しい。
後、何回父に会えるんだろう。
父はを知らされてから家にいられるこの数日間を、淡々と後に残るもののために使った。
すごい、私が同じ状況だったら同じことができるだろうか。

家にいる父に会えてよかった。

どうかもう一度父が帰宅できますように。

少しでも時間がゆっくり進んでほしい。
後、2ヶ月ではあまりにも短い。

嘘であってほしい。

朝起きると目が痛い。
目が腫れあがっている。まずいな〜
仕事に集中できない。
一人になると、涙がにじんできてしまう。
こんなんじゃだめだな。
しっかりしろ　自分！
なるべく忙しくして過ごした。