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二匹のモグラがおりました 人里離れた森の中 雄のモグラは東の丘に 西の丘には雌のモグラ 二匹は仲良く愛を育んでおりました
それは或る日の事でした モグラの手の何倍も大きなシャベルをつけた 大きな車がやって来たのです 毎日 毎日 土を掘り返し 辺りに人の姿が増えました
やがて二匹のモグラの間には 高速道路が出来たのです 灯は夜の闇を照らし 車はもうスピードで走り抜けて行きます 二匹のモグラは会う事が叶わなくなりました
雄のモグラは思います 会って伝えなければいけないと 肩を寄せ合って歌を唄うのだ 雄のモグラは決めました 僅かに残った野原から花を摘んでは花束に お洒落なタキシードも用意しました 片手にはシルクハットも持ちました 雄のモグラ決めました 今度の月のない夜に雌のモグラに伝えよう
朝陽が上り始めます 高速道路の上にも明るい陽射ししが降り注ぎ 車は勢いよく走り抜けて行きます でも ドライバーは見るのです 高速道路の片隅に 妙にめかしこんだ雄のモグラが死んでいるのを
こないな歌をご存知の方はいてへんやろか 関西方面で流行っていたと ギターを抱えて唄うお方に聞きました
昔々のお話でやんす
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2023/04/10(Mon) 19:01
No.296
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