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[625] 米国の診断基準2014年5月改定予定 宮本 05/01(水) 12:19
 
自閉症、アスペルガー・・・「ASD」に統合 米精神医学会、基準を改訂

関連カテゴリ >> こども, 脳・神経










自閉症の臨床・研究に携わる約500人が参加したキャサリン・ロード博士の講演=福岡市の九州大医学部百年講堂






 米精神医学会が定めた精神医学の世界的な診断基準「DSM」が19年ぶりに改訂され、第5版の「DSM−5」として来年5月に発行される。神経発達障害の分野では、自閉症やアスペルガー障害などを包括的に「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と新たに定義したのが大きな特徴。改訂の中心メンバー、キャサリン・ロード博士がこのほど、福岡市の九州大医学部で講演し、改訂の考え方を解説した。

 ロード氏は、米ニューヨーク州の「自閉症−発達脳センター」所長。開発した自閉症の診断法2種は、海外に広く普及している。

 自閉症の原因は、決して親の子育てによるものではないなど、明らかに原因ではないことを排除できるようになっている。ロード氏は「早期診断、早期介入は効果がある。診断は複雑化する中、迅速さも求められている」と現状を話す。


 自閉症スペクトラムは、自閉症の傾向が強い人から社会的な困難がほとんどない人までの連続体(スペクトラム)を意味する概念。


 自閉症は、現行基準では(1)対人的相互作用(社会性)の障害(2)コミュニケーションの障害(3)行動と興味の範囲が狭く限られる、の3領域について診断。日本では、知能指数(IQ)が70以上あれば高機能自閉症、知的障害と言葉の遅れがなければアスペルガー障害とされてきた。


 DSM−5の草案では、これまで自閉症、アスペルガー障害、非定型広汎性発達障害(PDD−NOS、以下PDD)、小児崩壊性障害と分類されている診断名を、ASDに一本化、統合する考え。従来の三つの診断領域は「社会的コミュニケーション」「限定した興味と反復行動」の二つに絞った。



■あいまい


 ロード氏は現行基準について、「PDDの診断基準が非常にあいまいで、精神科的な問題のある子どもは、すべてPDDに入ってしまう」と指摘。さらに「アスペルガー障害と高機能自閉症をきちんと区別できる信頼性ある科学的根拠がない」という。


 サービスの利用しやすさも考慮したという。「米国ではアスペルガーやPDDなど診断名の違いで、州によっては、早期療育や教育を受ける機会があったり、なかったりする。新基準では、いずれもASDの中に含まれ、サービスを受けられないことはない」とした。



 米国とカナダの12大学がASDの子ども2700人余りを診断した結果も紹介。大学間で診断スコアの分布がほとんど変わらないものの、ある大学はほとんどがアスペルガー、別の大学は、半数以上がPDDと診断した。「だれが診断したかによって、診断名が異なった。これでは正しい診断ができない」と改訂の意義を語った。



 草案に対しては、米エール大が今年1月、「多くの自閉症の人が除外されてしまう」とする分析を公表。当事者や家族の団体も懸念を表明した。だが、ロード氏は分析対象のデータが古く、誇張していると批判している。


■体制づくり

 講演は佐賀県の自閉症早期診断モデル事業10周年を記念し、実行委員会が企画。自閉症の臨床・研究に携わる約500人が聴いた。


 実行委員長の黒木俊秀・国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部長は「当事者や家族への支援が遅れないよう配慮されている」と評価。ほかの専門家からは「日本は診断を細分化することに慣れており、新基準を共有するには何年もかかるだろう」「診断する側への教育や診療の体制づくりを急ぐ必要がある」などの意見が出た。(高本文明)



(熊本日日新聞 2012年6月6日朝刊掲載)
 
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