現在『ナナシノハナシ』という連続短編童話を定期更新中です。

定住する村も国も、家族も親もいない。
それを探す旅をしている。
旅人の出会いの物語。

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　ナナシはくるりと振り向きました。笑い声が後ろから聞こえたように思えたのですが、壁に切り取られた日溜まりがぽつりとあるばかりです。首を傾げ不思議に思っても、笑い声はもうぴたりと止まっていました。
　ナナシはまた歩き出します。
　するとまた、クスクスと笑い声が聞こえてくるのです。そしてまた振り向くと、声は止まります。何度も何度も振り返っても、そのたびに声は聞こえなくなりました。
　しばらくの間、ナナシは声を無視して歩きます。太陽の傾きと前だけを見てひたすら歩いて行きました。
　どれほど歩いたことでしょう、ナナシは大きな広場に出ました。とうとうと流れ出る水飲み場があるだけで、出口ではないようでした。
　疲れたナナシは水飲み場に近づきました。たっぷりと水の入った桶に顔を近づけますが、そこにナナシの姿は写りません。驚いて足元を見てみると、空には太陽が輝いているのにナナシの足元は明るいだけです。
「ボクの影が無くなっちゃった」
　ナナシは驚きに声を上げました。


【離れないより】
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現在１５話までアップいたしました。（毎月第２・４土曜日）