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[568]雪夏
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2008年01月13日 (日) 02時30分
創作FT・童話風の小説メイン、児童文学・YA小説・童話好きな方 に。 コミティア83 け30b 「N書房」
ナナシノハナシ 第2クール 「燃えあがる」「楽の音」 +++++++++++
「ナナシさん、音楽は好きかい?」 弦の楽器を持つ髪の短い青年が、旅人に聞きました。 旅人は少し首をかしげ考えましたが、肯定を示すように笑って頷きました。それを見て青年も、にこりと笑い弦を鳴らしました。 「今から宴だ、旅人さんも好きに踊ったり歌ったりするといいよ。音は、ぼくらの生命だ」 青年が少しかしこまったように旅人にお辞儀をします。それから指笛を空高く鳴らすと、その合図を聞いたかのように、周囲の人々がそれぞれの楽器を鳴らし始めます。それは次第に繋がって、漣のように広がり、リンクして、大きな音の洪水になりました。吹き上げる音の飛沫が、旅人に降りかかります。 打ち鳴る太鼓の音、さえずる笛の声、空気を振動する弦のさざめきは、天を貫くようにくるくると上っているように、旅人には見えました。空の虫食いたちが、呼応するように輝きました。
【楽の音】より
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