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[569]雪夏 [ Mail ] [ HOME ] 2008年01月30日 (水) 23時22分
創作FT・童話風の小説メイン、児童文学・YA小説・童話好きな方に。
コミティア83 け30b 「N書房」

【ナナシノハナシ】 第2クール 「たべもの」
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 1匹のライオンが、おんおんと泣いていました。ライオンはとてもとても悲しくてしかたありません。ライオンは盛大な声を上げて泣きました。道の真ん中で、夜も昼も雨の日も泣き続けました。ライオンの涙はいつまでもいつまでも、たてがみを濡らし続けました。
 そんなライオンの下に、1人の男がやってきました。男は道の真ん中で泣いているライオンを遠くから恐る恐る見ていたのですが、ライオンがずっと鳴き続けるもんですから、ついに近づき聞きました。
「ライオンよ、何をそんなに悲しんでいるのだ」
 ライオンは男の言葉に、おんおん泣きながら言いました。
「俺はとても罪深いライオンなんだ。さっき食べたウサギが俺の中で泣いているんだ、だから俺は悲しいんだ。ウサギだって俺に食われなければもっと長生きできただろうに、もっと野山を駆け回りたかっただろうに」
 ライオンは大きな鼻水をずるるっとすすり上げて言いました。ライオンのたてがみは、すっかり鼻水と涙で固まってカチコチになっています。男はこっそりと、これではライオンの威厳もないなと思いました。男はライオンを自分よりも弱いと思いました。なので、ライオンに向かって優しい声音で言ったのです。

【たべもの】より





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