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[ No.248 ] 高齢糖尿病患者の薬物治療の実際と注意点 投稿者: 2014年07月01日 (火) 10時50分
江戸川区薬剤師会エリア研修会に参加しました。
平成26年6月28日(土)17:30〜19:00
パールホテル葛西

高齢糖尿病患者の薬物治療の実際と注意点
〜SGLT2阻害薬の位置づけを含めて〜
順天堂大学付属順天堂東京江東高齢者医療センター 小沼富男先生

ポイントを箇条書きにします。

* 処方せんを応需する保険薬局では患者さんとの対話時間が病院よりも長いことが多いようで、診察だけでは得られない情報も得られることがあり、その情報が治療を左右するようなものであればその情報の共有など、医療連携が重要になることを知ってほしい。

* 日本糖尿病学会が平成26年6月13日付けでSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommenndationを出し、注意喚起を行ている。

* 一昔前のDM治療は40〜50歳台を中心に、いわゆるメタボ糖尿病の患者さんを中心に治療を行ってきた。若くして心筋梗塞などで命を落としていく症例が多かった。

* 現在のDM治療は高齢者DMが中心となり、脳梗塞を発症して寝たきりとなる症例が多くなってきている。

* 「DMを持つ高齢者を診る」ということは前述のようにチーム医療が大切になってくる。

* 「虚弱・フレイル」という概念を知る。平成26年5月に日本老年学会がステートメントを発している。以下概略を転記。→ 要介護状態に突然移行することは、脳卒中などのケースでみられるが、今後人口増加が見込まれる後期高齢者(75歳以上)の多くの場合”Frailty”という中間的な段階を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられている。Frailtyとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。(中略) Frailtyの日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われているが、「老衰」、「衰弱」、「脆弱」といった日本語訳も使われることがあり、“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与えてきた。(中略)日本老年医学会はFrailtyの社会における認知度を上げるべくワーキンググループを形成した。そのワーキンググループにおいて最初に行ったのが、Frailtyの日本語訳の検討である。関連学会にも呼びかけ、様々な案について検討を行った結果、「虚弱」に代わって「フレイル」を使用する合意を得た。

* 高齢者の低血糖症状は、若年者で起こりやすい冷や汗や動悸が表れにくく(交感神経の低下?)、また、うつ状態や認知症のような状態になることもあり、周囲から見て低血糖状態であることがわからないことも多い。また、夜中の低血糖にも注意が必要。

* 高齢者は食後高血糖のタイプが多い。

* 血糖値の変動の大きさにも注目していくべき。MAGE(mean amplitude of glycemic excursions )が大きくなるほど認知機能が低下するようだ。

* 「熊本宣言2013」 あなたとあなたの大切な人のために Keep your A1c below 7%  高齢者では、7.4%未満。低リスク患者(DMだけの患者)、高リスク患者(認知機能低下、フレイル状態の患者など)に分けて考えていく。低血糖を起こさないよう、6.4%くらいで止めておく。

* 食事については、ご飯とおかずは減らさなくてよいことを指導。甘いお菓子や果物(果糖、砂糖はダメ!)は治療中には取らないようにしていく。A1cが目標に達成したら、「さあ、何が食べたいですか?」というやり方で。7%を超えないように食べる。お酒はコントロールが良くなってから。

* A1cが7%を超えるということは、細胞が壊れている状態。(?)血糖値が悪いのとA1cが悪いのとでは意味が全く異なる。

* 前述の食事指導などを行って、尿糖を自己チェックしてもらうようにすると、3日目程度でその効果が表れ始め、結果を患者さんに知ってもらうことで治療の励みにしていく方法がある。

* トレシーバ®は2日に1回、場合によっては3日に1回の投与でも治療効果が出ることもある。外来通院でインスリン治療が可能。

* 体から糖を抜いてしまうSGLT2阻害薬の作用機序を考えると、飢餓状態を作ってしまうということと同様になり、何が起こるかわからないというのが演者の感想。少量から使ったらいいのかなあとも考えている。太っていて元気な若い人向けという印象。

* 高血糖で外来受診した患者さんに5単位ほどのインスリンを投与して帰宅させることがある。血糖値が下がらなくても、ケトアシドーシスにならないことを目的に行っている。

* 少量のインスリン投与で高次機能障害を含めた多面的効果が得られるかもしれない。認知症罹病期間が短い患者さんにはインスリンの投与を考慮してみる価値がある。



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