[ No.255 ]
第25回日本医療薬学会年会参加報告
投稿者:
2015年12月04日 (金) 10時25分 |
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平成27年11月22日(日) パシフィコ横浜
<インスリン使用患者におけるlipohypertrophy(LH)に関する調査> LHとは同一部位にインスリンを繰り返し注射することで注射部位の皮下組織に局所的に発生する良性の腫瘍状の腫脹。 この部位への注射はインスリンの吸収を不安定にし、血糖コントロールにも影響を与える。 そのため、LHの発生を予防、回避することは良好な血糖コントロールを行う上で必要である。 済生会西条病院薬剤部にて、インスリン治療を行っている患者65名に対し、インスリン投与部位と皮膚状態の確認、注射部位ローテーションに関する知識の確認を行った。 その結果、あざや内出血など何らかの皮膚病変を有している患者は30名(46%)、LHは18名(28%)に認められた。 また、LHは使用年数と関連し、使用年数10年以上に有意に多く認められた。 注射回数、インスリン投与量とは相関は見られなかった。 注射部位ローテーションできていない群でのLH発生群が有意に高かった。 LHのあった患者の勘違いとして、診察時に医師に注射部位で硬くなったところがないかと確認されていたが、柔らかいしこりであったので違うと思っていたということがあった。 また、2種類のインスリンを使用している患者において、デバイスAは右、デバイスBは左という方法で左右の同じ部位に投与しているケースもあった。 注射部位ローテーションできていない患者の多くは左右の同じ場所に交互に注射しているだけであった。 また、大腿部にLHを認め、インスリンの吸収に影響を与えていたと考えられる患者の注射部位を大腿部から腹部へ変更した例において、入院時には65Uであったが、退院時には43U、外来では33Uと必要インスリン量が著明に減少した症例も報告された。
考察 インスリン導入時において、注射部位ローテーションに関する指導も重要であるが、インスリンを継続している患者に対して、再度投与部位やしこりの有無の確認を行うことの重要性を実感した。 そして、使用年数とLHの相関があることからも、長くインスリンを使用している人にこそ、繰り返しの指導が必要であると考える。 また、インスリンの投与量の増加時などの投薬において、検査値の確認だけでなく、LHの有無なども考慮にいれるべきだと考える。 よって、インスリンの継続患者における投薬時の指導において、チェックすべき項目への追加を考える。 また、LHが認められている患者においては、投与部位の変更の提案も考えるべきである。 そして投与部位変更の提案に際しては、インスリンの吸収の変化における低血糖にも留意すべきであり、合わせて患者指導を行うべきであると考える。
(渡辺ゆりか) |
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