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[ No.269 ] 第70回日本アレルギー学会学術大会参加報告 投稿者: 2021年10月18日 (月) 09時51分
日程:2021年10月8日(金)・9日(土)・10日(日)
会場:パシフィコ横浜 ノース

【食物アレルギー】
 食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」である。
20世紀後半から増え始め、最近30年で最も変化しているアレルギー疾患である。
 小児期の食物アレルギーの多くは発症にIgEが関与する即時型である。即時型食物アレルギーは乳児期から幼児期で5-10%、学童期で3-5%と非常に多い。新規発症の多くは乳児期と幼児期前半に集中しており、原因食物は鶏卵・牛乳・小麦アレルギーが多勢を占める。幼児前半は魚卵(イクラ)、幼児後半は木の実(クルミ6割、カシューナッツ2割)落花生、果物類が新規に発症してくる。学童期には果物類が多くなるが、これはPFAS(花粉―食物アレルギー症候群)の発症の増加に関連している。
 
 特殊型食物アレルギー
・花粉―食物アレルギー症候群:花粉アレルゲン感作後に交差反応する果物や野菜などの植物性食物を経口摂取してアレルギー症状を呈する。主にIgE抗体を介した口腔粘膜を主体とするOASを呈する。(カバノキ科のシラカバ等→バラ科のリンゴ、モモ等)
・ラテックス―フルーツ症候群:ラテックスアレルゲンと果物や野菜アレルゲンが交差反応し、アナフィラキシーを含む即時型症状やOASを呈する。(ラテックス→バナナ、アボカド、キウイ等)
・調理業従事者における職業性食物アレルギー:調理師や食物を扱う業務に従事している人が、扱っている食物に感作され、食物アレルギーを発症(手湿疹等経皮感染より発症)
・化粧品使用に関連した食物アレルギー:化粧品やヘアケア製品等に含まれる食物由来成分や食物と交差抗原性を有するタンパク成分に経皮感作されることにより、食物アレルギーを発症。
・納豆アレルギー:納豆の粘稠物質PGAが原因抗原とされ、納豆摂取後に症状が誘発される。
・獣肉アレルギー:マダニ咬症によって、牛肉や豚肉を摂取した数時間後に症状が誘発される。
・アルブミンアレルギー:ペット等の血清アルブミンに感作され、獣肉アレルギーを発症する。
【舌下免疫療法】
 疾患の原因となるアレルゲンを患者に投与するアレルゲン免疫療法は、免疫寛容を誘導することにより、寛解も含めた自然経過を改善することができる可能性がある。近年、皮下投与(SCAT)の代替経路として、舌下免疫療法(SLIT)が、安全性が高く、自宅での投与が可能であることから注目を集めている。
 SLITは舌下錠を用いたアレルゲン免疫療法で、病因アレルゲンを投与することで、アレルゲンに暴露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療法である。スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎に有効であり、副反応の多くは口腔粘膜に限局した症状である。副反応の発現率は高いが、2か月で約7割が消失、抗ヒスタミン薬の併用で軽減が可能である。舌下錠は年齢や体重の区別なく同一の用法・用量で使用されているが、小児では体重がSLITに与える影響は少なく、成人と同一の用法・用量で治療可能な結果が出ている。
 我国はスギとダニの重複感作が多い特徴があり、この2つの主要抗原に対し免疫療法を低年齢層から積極的に導入し、早期導入・早期寛解を目指すことがアレルギー疾患増加に歯止めをかけるのに有効である。

【アトピー性皮膚炎】
 アトピー性皮膚炎とは、「皮膚のバリア機能低下やアレルゲンに対してアレルギー炎症を起こしやすいアトピー素因という遺伝的な素因を背景に、種々の悪化因子が加わって慢性的に皮膚炎が生じる疾患」である。バリア機能強化のための保湿剤、免疫機能を改善させるためのステロイド外用剤、かゆみに対して抗ヒスタミン剤などが処方される。
 近年、難治性の症例に対しては、デュピルマブ、デルゴシチニブ外用薬、バリシチニブ内服薬が登場し、アトピー性皮膚炎の治療が大きく変わりつつある。
 寛解導入後は、抗炎症外用薬の間欠療法と毎日の保湿剤外用によるプロアクティブ療法が寛解維持に有用である。

・デュピルマブ(デュピクセント皮下注):IL-4/IL-13共通受容体サブユニット抗体。適応はアトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
・デルゴシチニブ外用薬(コレクチム軟膏):JAK阻害剤。JAKファミリー(JAK1,JAK2,JAK3,TYK2)を阻害することにより、アトピー性皮膚炎のアレルギー炎症、皮膚バリア機能障害、痒みを改善する。成人0.5%製剤、小児0.25%製剤を1日2回塗布
・バリシチニブ内服薬(オルミエント):JAK阻害剤。JAK1/JAK2を阻害する。ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬等の抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られない成人アトピー性皮膚炎に対して用いることができる。本剤投与中も保湿外用剤等を併用し、1日1錠経口投与する。



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