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No.278 巨石観察ノート 福島県福島市立子山 鯨石 投稿者:滝おやじ     投稿日:2015年07月16日 (木) 23時25分 [返信]

花崗岩の巨石地形事例を集めるため、各地の花崗岩露出地を廻っています。
 いままでいろいろ廻りましたので、、備忘録代わりに簡略まとめをします。
 福島県福島市立子山地区の鯨石を見てきました。
 旧飯野町発行の「飯野町巨石探訪」という冊子で訪れたのですが、それによると、近くに、船石、太鼓石、一円寺境内には方位石(未見)があるとのこと。この冊子は、千巻森の中腹にあるUFOふれあい館で売っていました。
 鯨石の位置は図1参照。図は、国土地理院2.5万「月館」図幅に加筆。
 鯨石の緯度経度は、北緯37°41′27.60″ 東経137°31′32.27″。
 阿武隈山地の西部にあり、付近の名山、千貫森と一貫森の円錐形の山体の山麓にあります。
 鯨石は、図2のように、旧国道沿いにあり、阿武隈山地の広い谷底に、花崗岩の大きな岩塊が、ポツンと地表に出ています。 マッコウクジラの背中のようなので、鯨石というとのことです。
 長径7m×短径4.5m×高さ2.5m程の長方形で、角が丸くなっています。
 花崗岩は、地下では、本来は節理の割れ目によって直方体の形の岩塊に分かれています。それが、地下で深層風化により、全体がマサ砂に変わる際に、未風化の岩塊では、直方体の角が丸くなって、球面になったコアストーンと呼ばれる岩塊ができます。鯨石の形は、このコアストーンそのものです。
 ただし、この岩塊は底に根がなく、地表面に乗っている浮き石状態です。さらに、岩塊頂面の平面と、石底の地表面は平行です(図3、下から見上げた景観参照)。また、右手からの扇状地状地形の末端にあり、長径が扇状地の傾斜と直交します。こんな形から、地下にあったコアストーンが、土石流で流されてきて、土石流扇状地の末端で止まったものと思われます。
 古くは、平地にポツンと孤立した、巨大で特異な丸石であることから、不思議なものとして巨石信仰の対象になっていたと思われます。
 さらに、江戸時代天保年間の石碑が石上に建てられています。石碑には、一円寺の開祖、日尊上人がこの石の上で説教をした説法石として信仰された旨が述べられていて、中世・近世、仏教が土着化して、地域に寺院が建てられる際に、地域の聖地であった鯨石の信仰が、寺院宗教に取り入れられたのでしょう。
 なお、寺にも盛衰があり、石碑も、一円寺が荒廃した後、再興された記念に建立されたものとなっています。この寺の荒廃は、年代から見て天保の飢饉によるものではと想像しました。



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