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No.324 巨石紹介:福島県郡山市西田町 鹿島神宮神体石 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年01月27日 (金) 21時49分 [返信]

花崗岩の巨石地形事例を集めるため、福島県の阿武隈花崗岩露出地を廻っています。
 この地方の巨石の事例は、インターネット上のyo-hamada氏のブログ「巨石!私の東北巨石番付」 (http://hamadas.exblog.jp/ 20130522現在)から所在情報を得ています。
 あわせて、HP「巨石巡礼」の「鹿島大神宮のペグマタイト岩脈」
http://home.s01.itscom.net/sahara/stone/s_tohoku/020_kashima/kashima.htm 20130805現在 も参考にしました。
 この巨石はペグマタイトからなり、両氏の画像で見ても、普通の花崗岩とは異なった微地形をしていることは明らかですので、他に事例の無いペグマタイト巨石の微地形として、ついでに訪れてみました。
 結果は、花崗岩マサ砂中に、残存していたペグマタイトの露岩が、尾根先端の小峰として残っていました。岩脈としては線で露出してなく、個別の小岩体として点で残存しており、峰の山頂付近にのみ露出していました。
 露出岩体の表面微細地形は、岩体に多数の割れ目が入り、それに沿って割れた、角張った細かい破断形が卓越し、風化には抵抗性があるが、侵蝕には余り強くない岩石と思われます。
ここでは岩脈の厚さが10m以上ありますが、未風化花崗岩体の中に薄層としてある場合は、侵蝕弱線となると思われます。
 また、花崗岩コアストーンのような、特有の風化侵食形を示すこともありません。

画像1 社殿脇の神体石
画像2 ペグマタイト岩塊
画像3 巨石位置鳥瞰図

<諸元> 
20130809  調査・撮影 単独
名称 郡山市西田町丹伊田 鹿島大神宮 神体石(屏風石) 
   「鹿島神社ペグマタイト岩脈」として国の天然記念物指定されている。
所在 福島県郡山市西田町丹伊田字宮作239  鹿島大神宮境内の本殿裏
   丘陵性山地の尾根先端小峰〜山腹
地形図 2.5万「三春」 郡山市の地図はない。
緯度経度  N37°28′37.39″ E140°27′58.28″
標高350+m  (つづく)

No.325 <位置と周辺の地形> 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年01月27日 (金) 21時54分

 鹿島神宮の場所は、2.5万地形図「三春」で、「鹿島神社のペグマタイト岩脈」の注記がある。
 国の天然記念物で案内看板が各所に立っていて、鹿島大神宮の入口(Pの位置)まで簡単に行ける。
 周辺の山は、阿武隈山地の花崗岩のマサ砂でできたなだらかな砂山です。
 稜線は、標高350m+、東の山は標高380m+。
 岩脈の露出地は、そのなだらかな山並み稜線の枝尾根先端の小峰頂上です。
 図は、鹿島大神宮の山の鳥瞰図です。
 グーグル地図・写真から作ったので、2.5万地形図と標高が少々違いますが、まあ、気にしない。(^_^)
 社殿が山の頂上の直下にあり、ペグマタイトは、南北方向の岩脈の形で山頂に露出しています。あとは、全てマサの山。
 指定物件なので、岩石は割れないですが、境内に境内の造成工事でできた、割れたペグマタイト断片がたくさん落ちているので、岩相の観察には不自由しませんでした。
画像1 地質+位置図
画像2 境内のペグマタイト破片
画像3 境内のペグマタイト破片

No.326 ペグマタイト岩脈の産状 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年01月28日 (土) 17時42分

 ペグマタイト観察場所は、社殿脇の境内地で岩脈の下部を、踏み跡で登れる社殿裏の峰頂上で岩脈上部を見ることが出来ます。
 山頂は、地下の岩脈に沿って4面の露岩塊が散在し、山腹では、幅14mの岩脈断面が3面露出しています。

画像1 社殿脇のペグマタイト
画像2 山頂のペグマタイト
画像3 山頂の峰地形とペグマタイト露岩

No.328 <ペグマタイト岩脈の地質的説明> 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年01月29日 (日) 23時10分

画像1 ペグマタイト案内銅板解説
画像2 郡山市の文化財解説看板
 ペグマタイト岩脈とは、ということで、郡山市の出している文化財解説書と境内の看板の文面を出します。
 岩石・鉱物学的説明が主で、地形学的説明は、ほとんどなく、太字の部分ぐらいです。まあ、地形が指定されているわけではなく、岩石の露出が指定対象なので、無い物ねだりなのですが・・・。
 ペグマタイト岩脈の巨石とは、どうゆうものかについては、この次の書き込みで、私の観察を書きます。

最初は、境内の露出脇の銅板解説。地向斜が出てきたりして、内容は古いですが、一番詳細です。

(1) ペグマタイト案内銅板解説
コンクリートはめ込みの銅板に線刻。全文読めました。
以下、翻字結果。

碑裏の、建立年月日、建立者等を撮影し忘れ。(^_^;)
鹿島神社ペグマタイト岩脈 案内板銘文
ペグマタイト岩脈
 この岩脈は花崗岩の一種で巨晶花崗((ママ))ともゆう、
この種の岩石は、地球上において地向斜といわれる凹地を形成し、そこに厚い堆積岩を堆積したような地殻の比較的不定な地域すなわち造山帯の弱線に沿って迸入した。
 阿武隈山地は日本でも最も有名なペグマタイトの産地であるが、このような弱線は高原西縁部に稍南北に、北は宮城県伊具郡大張村より 福島県伊達郡白根村、霊山町 川俣町 東和村を経て郡山市西田町、高瀬を過ぎ 宇都峯山を通り 須釜村に達し 更に南下して野木沢 石川町を通って山橋 鮫川村を貫き 塙町に至るときはその勢が弱まり、二つに分離 その一つは茨城県多賀郡高岡村に、他は久慈郡賀美村に達する。その全長は一四〇粁に達す。多くのペグマタイトはこの弱線に沿って迸入し、その大さ 形状は種々様々である。構成鉱物は石英 長石 雲母等を主とするがその上部は又は縁辺部は長石 雲母 等 の外に電気石紅柱石ザクロ石キンセイ石モナズ石サマルスキー石 ヘルグリン石等ウラニウム、トリウム、イットリウム等の稀元素を含む鉱物を含有するも((ママ))のが特徴である。
 現在見られるこのペグマタイトは、岩体下部に相当し 主として石英の結晶の集合体であるが、一部に長石も残存する。 この岩石が生まれてから約一億年の時が経過し その間に地殻の変動、風化 侵蝕のために地表に突出したものであるが、その間の歴史は岩肌に強く刻み込まれている。これらの岩石を構成する石英及び長石は、光学レンズ 陶磁器等の重要な原料であるために、殆ど採掘し盡され このような雄大な自然の状態を示すものは稀である。従って このペグマタイトは学術的研究資料として貴重なるものである。
                       福島県文化財専門委員
福島大学教授 理学博士 三本杉己代治〔印〕

(2) 郡山市の文化財解説書
 神社入り口の、ペグマタイト岩脈看板にも同文が載っている。
 郡山市教育委員会編:郡山市の文化財 保存版 p104

94 鹿島神社ペグマタイト岩脈
郡山市西田町丹伊田字宮作239 昭和41年6月11日指定・・・1966年
所有・管理者 鹿島大神宮 tel 971-3276

西田町丹伊田の県道沿いに、杉の古木でおおわれた鹿島大神宮があります。
西田町丹伊田の県道沿いに。スギの古木でおおわれた鹿島大神宮があります。この境内のいたるところに純白の巨岩があります。これが石英や長石を主成分としたペグマタイトの岩脈で、露出している面の延長は約40m幅14mにおよび、地下10mまでこの岩石があるものと推定されています。
 現在見られるこのペグマタイトは、長い年月をかけての地殻の変動・風化・侵食のはたらきで地表に表れたものです。
 阿武隈山地の隆起運動にともなって花崗岩が貫入し、その末期にペグマタイトが貫入し、ゆっくり冷えて、非常に大きな結晶となったもので「巨晶花崗岩」とも呼ばれます。
 かつて、西田町から安達郡白沢村にかけての阿武隈山地は、ペグマタイトの産出地でしたが、その多くは、工業用原料として秤堀|されました。
しかし、ここには約14,000tと推定される量が、現在でも保存されており、大変珍しく貴重なものです

No.329 <ペグマタイト露岩の地形的記載> 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年02月01日 (水) 19時44分

画像1 岩脈の平面図と岩脈方向から見た正面図
画像2 岩脈方向から見た縦断図
画像3 再度掲示:岩脈末端の押し出し破断地形。破断岩塊が木に倒れかかっている。
 前回の岩石鉱物学的説明は、地下で出来ているペグマタイト岩脈の紹介であるわけですが、それが地表に露出して巨石となっている状態、その巨石化の過程については、何も書いてありません。つまり、巨石の材料としてペグマタイト岩脈を考えると、どんな性質であるかということが、地形学的説明ということになります。
 しかし、私の管見によれば、こんな特殊な稀な地形について、調査などした方はいず、まだ誰も述べたことがないのではと思っています。
 勿論、私も知りません。(^_^;)
 実際に露出しているペグマタイトの微地形・微細地形を観察して、一般化していく作業が必要です。
 以下は、この作業の第一歩としての、この露出地の事例観察です。 

 まず、岩脈オーダーの微地形について。
 上述のように、ペグマタイト岩体の露出は地表1カ所で、標高350m+の小峰の山頂部から、神殿境内まで比高13mぐらいの露岩列をなしています。
 露岩と周辺の微地形の関係をスケッチし、まとめてみました。
(1) ペグマタイト岩脈が露出するところは、突出して、山頂では四面露岩、山腹の境内では三面露岩となっています。あとは、ローム混じりのマサ砂です。マサ砂よりも硬いので侵食に抵抗して峰になっているのは明白です・・・正面図参照。
(2) 峰と言っても小さなもので、周辺マサ山の方が高いので、ペグマタイトがそんなに侵蝕に強いわけではありません。岩質は硬くても、割れ目が非常に多く砕けてしまうためでしょう。

岩脈の崩落微地形
 山頂まで登り、岩脈の上に立ってのぞき込んでみると、山頂直下で、岩体が割れて、ブロックが下にすべって、山頂直下に小さな段地形を作っています・・・平面図参照。
 ペグマタイト岩脈が地表より突出しているため、自重により境内地側へすべり出したためで、すべり面はすでに沢山ある岩脈の横断方向の割れ目を境に滑ったものと思われます。
 岩脈の見学者に印象的な、境内の大木の幹に、岩脈の前面の岩塊が分離して、倒れかかっている光景は、この動きの結果と思われます。
 すなわち、この滑り出しによって、山が膨らみ、岩脈が全体的に境内地に向かって押し出し、岩脈前面が割れて、その一部が倒れ、境内の木の幹に倒れかかったものです。
 この倒れかかりは、ごく最近のことと思われ、境内地の整備により岩脈の下方の支えの地山が削られたことによる可能性が高そうです・・・縦断図山椒。
 このへん聞き取り調査をしたら面白そうです。

まとめ・・・ペグマタイト岩体の露岩の地史
(1) 地中のペグマタイト岩脈とその周辺のマサ砂が、侵蝕により地表に露出。
(2) 岩脈は均質・巨晶の風化しにくい石英からなるので、周辺のマサより硬く地表に露出する   と露岩となり、露岩の脈に沿って尾根に細長い小峰が形成される。
(3) ペグマタイトの露岩は、硬いが、そもそも割れ目が無数に入っているのでポロポロ割れて   しまい、峰の高さは低下する。
  露岩の白銀色の輝く地肌は他に無い景観で、信仰を集め、鹿島神社が作られる。
(5) 鹿島神社社殿が整備され、境内地が地山を掘り込んで形成される。
  岩脈下方の地山の除去により、支えを失った岩脈が滑り出し、境内方向にすべり、岩脈前  面の一部が分離して倒れる。(続く)

No.330 4.ペグマタイト岩脈露岩の表面形 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年02月09日 (木) 00時59分

画像1 ペグマタイト破片
画像2 ペグマタイト岩塊表面
画像3 ペグマタイトの破断

岩脈の表面形など微細な形についてみてみます。

(1) ペグマタイト岩脈露岩の外見(岩肌の色)
 岩肌が白い岩石には、チャートの一部あるいは石灰岩などがありますが、巨晶の白色半透明の石英からなるペグマタイトは、それらとはかなり違った肌の色に見えます。
 チャートや石灰岩とは違って、露岩表面の岩肌が、均質で硬そう、磁器のように白く・・・私は牡蠣の殻の内側の色を連想しました・・・かつ、新鮮な割れ口は、白銀色にギラギラと輝いて見えます。こんなギラギラの岩石はありません。すごく、特殊な石の肌色だと思います。⇒画像参照。

(2) ペグマタイト岩脈露岩の外見(割れ方と岩塊の形)
 岩肌の形についていうと、岩質は硬いのですが、無数の割れ目が入っていて、非常に割れやすい岩石だといえます。
 四角い網目状に冷却節理割れ目が発達していて、それを境にポロポロと崩れています。4〜5cm幅の割れ目が一番卓越していますが、その割れ目形の中に、また、より小さな割れ目が縦横に入っていて、より細かく割れており、最終的には一辺5mm位のサイコロ状のかけらになるようです。⇒画像参照。
 岩脈には、より大きな幅で、互いに直交する割れ目群が2〜3mの幅で入っていて、そのぐらい大きさの直方体の岩塊に分離しています。
 それら、大きなサイコロ状岩塊の露岩が、更にその表面が4〜5cmの小さなサイコロ状に割れているといえます。 ⇒画像参照

No.331 ペグマタイト露岩の微地形・・・まとめ 投稿者:滝おやじ     投稿日:2017年02月10日 (金) 13時54分

(1) ペグマタイト岩脈の露出により形成される地形
 地表に露出せず、地中にある状態では、ペグマタイト岩脈は、岩脈周辺の花崗岩体がマサ化していくのに対して、、マサ化せず、岩脈そのままの形を保つと考えられます。その結果、岩脈が地表に露出した段階では、周辺のマサ砂より硬く、地表での突出部分になります。
 地表露出後は、岩脈内部に元々割れ目が大小無数に入っているため、それに沿って破断し、露岩表面サイズとしては、縦割れの割れ目によって分離した小岩峰・岩塊の集合体となります。
 小岩峰は平面は方形で、上面は小サイコロ状の岩片が破断して角錐形、屋根型になっています。
 岩塊・岩峰の表面形は、一面に凸凹で、イコロ状の小破片が抜けた跡の表面形となる。

(2) 巨石地形の中での、ペグマタイト地形の位置づけ
 巨石としてみますと、地中で形成されたコアストーンのような、特有の風化形を作らない。また、地表露出後は、一応特徴的な岩塊微地形を作るが、細かい割れ目が多いせいでどんどん崩れてしまい、大きな巨石にはならない。
 火砕岩のように丈夫な岩体でなく、大きな露岩を作りません。また、花崗岩のような特徴のある形をも作りません。そんなわけで、一言で言えば、巨石調査対象としては取り柄がない岩種だと思います。
画像1:ペグマタイト岩塊(現地性)の表面形
画像2:ペグマタイト岩塊(小移動)の表面形



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