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地形(主に、滝・巨石・山地地形)の掲示板

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No.142 巨石観察ノート2014年版01 花巻市丹内山神社胎内石 投稿者:滝おやじ     投稿日:2014年02月04日 (火) 00時31分 [返信]

花崗岩の巨石地形事例を集めるため、阿武隈・北上山地の花崗岩露出地を廻っています。
2013年中いろいろ廻りましたが、冬ごもりで、備忘録代わりに簡略まとめ。
 第1回は、胎内石(アラハバキ大神の巨石)です。
 岩手県花巻市東和町谷内、丹内山神社境内に所在。
古代からの創立伝承のある神社の神体石ですので、1000年間以上動いていない石ということになります。
 いろいろの巨石HPや、巨石本に紹介されている有名な巨石です。
 それらのHPや本の画像で見ますと、移動されてきた巨大な岩塊のようであり、胎内くぐりは、移動岩塊が再破断してできたのでは・・・という興味で訪問しました。
 所在地の地質は、北上山地西部の白亜紀に貫入りした人首(ひとくび)花崗岩体。地形は、低い花崗岩山地と、その山麓の山麓緩斜面との境界部にあたります。
 「山麓緩斜面」とは、ただ緩い斜面ということでなく、たとえば「扇状地」と対応するスケールの地形の形態用語で、氷期の周氷河作用で作られた地すべりや泥流・土石流などによる礫層の堆積地形面をいいます。まあ、東北地方の山地なら、至る所にみられる地形ではあります。
 神社境内は、やや古い山麓緩斜面地形の上にあります。胎内石は境内最奥の本殿裏にあり、山麓緩斜面の最上部にある大きな露岩の岩塊です。・・・図参照。 

No.143 胎内石、石の下方から見上げた画像 投稿者:滝おやじ     投稿日:2014年02月04日 (火) 00時34分

 現地で新しい破断を復元して以前の形を想定復元して見ますと、胎内石は一部を除いて表面が花崗岩の岩体が地表近くで風化して作られる、未風化花崗岩の大きな塊・・・コアストーン・・・・の風化球面がよく残っています。
 本来、すぐそばの花崗岩山地基盤中にあったものですが、現在は、山麓緩斜面の堆積面上にあり、明らかに根石ではありません。つまり元の場所から動かされてきたもので、花崗岩山地の地表下に埋没していたのが侵食により掘り出されたものではなく、移動してきたものです。
 さらに、岩塊下部が埋没していず、全体が露出している状態で、完全な浮き石です。これは移動が地史的にはごく新しいことを示します。
 また、胎内石は、岩塊の大きさでみますと、周辺の山麓緩斜面上や、神社境内地に人工露出している、以前埋没していた岩塊に較べて、際だって巨大です。つまり、山麓緩斜面を形成した周氷河環境下での営力では運べないような巨大岩塊と思われます。
 また、岩塊の上流側がほとんど埋没していず、土石流的な水流の多い移動形式で無く、滑落・地すべりのような水流の無い移動形式による移動です。
 以上から、氷期の山麓緩斜面の形成後に、それまで花崗岩山地の斜面地表下に埋もれていた大きなコアストーンが、斜面の崩壊。地すべりで滑り落ちてきて、平坦な山麓緩斜面上に乗っかったものと解釈できます。
 落ちてきた方向は、地形図からですと、胎内石のNE方、N40°E方向の斜面からということになります。長さ50m弱、比高25mぐらいの斜面です。落ちてきた時代はもちろん古代以前、岩石の露出年代が測定できればわかるわけですが、金がないので・・・。
 さて、滑り落ちてきた岩塊を見ますと、概形は菱餅のような形で、平面が約10×8mの菱形、高さ4mぐらいで、上面が山側に傾いています。
 上流側2面・下流側右面の3側面と上面には、コアストーンの風化球面が残っていて、下流左面だけは、平坦な節理面に沿って割れた破断面となっています。そのことから、現在の形は、コアストーンが、縦方向の節理面で2つに割れた残りであることがわかります。
 画像は、下流側からとったもの。右側が節理に沿って割れた破断割れ目です。
 割れ目の右側にあった岩塊は周囲には見当たりません。より下方に移動し、バラバラになったか埋没したものと思われます。
 すべり落ちてきた後の、木の根開口や胎内くぐりの形成等の件は後述 (つづく)

No.144 胎内石を後側から見た画像。 投稿者:滝おやじ     投稿日:2014年02月05日 (水) 12時02分

 山側・滑り落ちてきた側からみた胎内石。
 下の図の右から左に辷ってきた。左側の割れ目が
割れた破断面です。
 辷ってきて、割れ残った残存岩塊は、地すべりで落ちてきたブロックでよくあるように、移動方向に逆傾斜した形(画面の左から右に下がる)で止まって安定しています。
 その後、岩塊の上部で、旧コアストーンの上面に表面に平行した風化破断面が生じ、表に平行して剥離するような割れ目ができていき、その割れ目に沿って、木の根が入りこんで、層状に開口し破断しました。
 破断した頂上部は平面的には2つに割れて、底面の割れ目の方向に沿って、北東側と北西側2方向に滑動し、北西側岩塊が下の動かないでいる岩塊との間で隙間を作り、胎内くぐり形となっています。
 図では、北東側岩塊が右から左に辷って動いたのが見てとれます。

No.145 胎内石の胎内くぐり部分 投稿者:滝おやじ     投稿日:2014年02月05日 (水) 12時05分

 上画像:岩塊全体の移動方向上流側からみた画像です。丸みのあるコアストーン上面が、層状に剥離破断して落下している状況が見て取れます。
 右側部分で、岩塊間に隙間ができて胎内くぐり形が作られています。
 下画像:胎内くぐりの隙間を反対側の下流側から見た画像です。
 なお、この層状の剥離は、岩の上に生えている大木による木の根開口によるものと解釈しました。
 ・・・・木の位置と剥離した岩塊の想定復元位置との関係によります。
 そうすると、層状岩塊の剥離と移動=胎内くぐり隙間の形成時期は、岩の上の大木の年齢と同じということになります。ということは、そんなに古いことではなさそうですね。(以上)



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