[63] 無 |
- まっつーでいいや - 2005年07月05日 (火) 17時45分
無?
本当の無を知ってるかい?
有?
本当の有を知ってるかい?
無と、有。
どちらも、本当はありえない事なんだ。
本当に無いんんだったら、俺は存在してない。
本当に有なんだったら、俺は死なない。
無と有、5:5の関係、バランスが崩れたとき、
有ではなく、無がやってくる。
そう、殺ってくる。
『無』
あたり一面の砂漠、雲無き空、そして、大地に潜む白骨。
今、5:5の関係が崩れた。
食物が減り、あたりは死体と骨だけ。
老人、子供、若者、年齢を問わずに皆死んでいく。
バッサバッサと。
異常気象、洪水、食物不足、人口の増加、そして、減少。
俺は当てなく歩く。
歩く。
歩く。
俺の親友、先輩、親、もうすべてが残っていない。
残っているのは、俺の肉体のみ。
生きる屍と化した俺は、もうすでに精神など無かった。
いや、少なかった。
この世に無など無い。
今、無に限りなく近づいているだけ。
人間が絶滅しても、まだ大地が残っている。
星が残っている。
宇宙が残っている。
無が残っている。
無を超えたとき、それは誰にも予測できない。
だから、俺は歩く。
死にたい、でも死ぬ気力も無い。
バキ!!
自分の顔を殴った。
別に痛くもなんとも無い。
バキ!!!
もう一度殴った。
さっきより強く、さっきより力を籠めて。
バキ!!!!バキ!!!!!バキ!!!!!!
連続で、殴り続ける。
生きるという事を実感するまで、殴り続ける。
「ああああァぁぁぁぁ・・・・」
声にもならない叫びをあげる。
それでも殴り続ける、
骨が露出する。
血が出てくる。
刹那、俺の手は赤く深紅に染まり、頬をその手で撫でる。
目から滴がこぼれる。
水滴、涙ではない泪。
それが、深紅に染まった手を、頬を薄く染めた。
もう、眠るか・・・・。
泪、それは生きている証。
それが涙では無いとしても俺にはそれだけで十分。
ソレダケデ・・・・。
静かに、眠りにつくとした。
皆の後を追って。
スタートは遅れた。
でも、すぐにゴールはある。
人生、というゴールが。
俺は、白い空間にいた。
皆はいない。
何処に行ったんだ・・・・?
「君には、やってもらう事がある。」
ふと、声がした。
空間全体を振るわせるような、太い、低い声。
でも、優しい、そんな感じの声だった。
「今、人類は滅亡の危機だ。そこで、君にまだやってもらう事がある。」
また、声がした。
後ろを振り向いても、右、左、上、下、全てを向いても何処にも声の主はいない。
「もう、地球には君を抜いて190人しかいない。それを上手く人類滅亡回避へと向かわせる人が君だ。」
「なぜ、俺が・・・・、ほかに頭がいい奴なら、もっといるだろう」
「現在人が残っている国は、アマゾン、パプアニューギニア、その他文明開化していない国ばかりだ。」
頬の血が固まり、引きつる。
「つまり、『優秀』な日本人にリーダーを取ってもらうと。」
「それだけではない。君には、器というものを十分に満たしている。そこで最初にやってもらうのは・・・。」
そこで俺はことばを制した。
「まてよ、俺はまだやるとは行ってないぜ。」
190人から人類滅亡回避?
ふざけた事抜かしてんじゃねぇよ。
「君が、その条件を満たすまで、君は永遠の命を手にする。」
「!?」
「但し、原型がとどめられないほどの怪我などはもう無理だ。そして、一部分の臓器を失った場合、必ず代償が起こる」
「・・・・・・・」
「・・・もう・・・・時間だ・・・・・・さ・・・行け・・・」
「!?・・・ちょっとま・・・・」
刹那、俺の目の前が光で包まれた。
希望、というベールで。
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