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[20] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月24日 (金) 20時02分


※この物語はフィクションです


白球

それは投げる人それぞれのクセに微妙に反応しどんな変化をもし得る
なら、あの時魅せた球は・・

〜〜〜 プロローグ 〜〜〜

外角低めの直球。そこはいい選手でない限り完全にとらえることのできない場所。
キャッチャーはそこにサインを出してきた。
俺は首を横に振らず、モーションにはいった。
9回裏2アウト2ー3グラウンド中に緊迫した空気が流れる。
そして、手首からボールが放たれた。サインどおりの場所にボールがいく。

気づいたらグラウンド中に歓声が響き渡っていた。前を見るとキャッチャーミットに白球が入っていた。

ゲームセット!!

審判の声が響く。歓声はもっと多きくなりナインがよってくる。
おれは無意識にガッツポーズをしていた。

続く

[21] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月25日 (土) 09時40分

〜〜〜  第一話 黄金バッテリー 〜〜〜

「・・春か・・。」
校庭に植えられた桜の花びらがグラウンドのあちこちに転々と散らばっている。
風にのって草木の甘いにおいが鼻腔をくすぐり、もう春だということを実感させてくれる。

「おい、永田!なにたそがれとんじゃあー。はやく投げろやー。」
永田「悪い。」

注意された永田は投球モーションに入る。
足をあげ腰を捻り、肩、肘、手首をしならせ白球を放つ。
放たれた白球はミットに吸い込まれるかのような軌道を描きミットに収まった。
ミットの破裂音がグラウンド中に響く。この音が心地よい。嫌なことを忘れさせてくれる。

永田「倉野、もうやめようぜ。6時だ。校門も閉まっちまう。」
倉野「そうだな。でも部活後の投げ込みもいいなぁ。」
永田「あぁ。」

空は紅く染まっておりカラスが飛んでいる。
二人は荷物を持ち誰もいないグラウンドを去った。

倉野「じゃあ、また明日の部活でなぁー―!!」

やがて、空は暗くなりさっきまでにぎやかだったグラウンドも暗闇に染まっていった。

続く

[23] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月25日 (土) 11時13分

〜〜〜  第二話 麻川中学野球部 〜〜〜

キーンコーンカーンコーン・・

すべての授業の終わりを告げるチャイムがなった。

倉野「今日は新入部員が来るんだよな。楽しみだなぁ〜!」
永田「新入部員ねぇ〜・・」

俺たちは、気づいたらもう3年生なんだった・・。

早速グラウンドに出てみると緊張してがちがちの新入部員の姿があった。

倉野「・・3人か・・」

新入部員は3人しかいなかった。

永田「・・少ないな・・。」


倉野「え〜、では自己紹介から。」

吉光「ぼ、ぼくは永田さんに憧れて入りました、吉光といいます。投手です。」
永田「・・・・・」

服部「ぼくは服部です。ポジションは捕手です。できれば吉光とバッテリーを組みたいです」

四条「ぼくは四条です。ポジションはライトです。お願いします!」
みんな「ひゅーひゅー!」

ザッザ・・

「たった3人か・・これで全員が13人か。寂しいなぁ・・」


倉野「あ、監督!」
堀田監督「これじゃ先が思いやられるなぁ・・」

真中「ま、こんだけの人数でも十分やろ。何とかなるわ。あと、わいは真中やついでにレフト守っとる。よろしくな。」
山口「な、愚民のクセに僕よりも先に自己紹介しやがって!!・・えー申し遅れた。愚民よ、耳をかっぽじってよく聞け。僕の名前は山口。ま、馴れ合うつもりはないがよろしく頼むよ。」

服部(なんかかっこいいけどキザな人だなぁ・・)

谷田「俺は谷田。4番でファーストだ。」
大野「俺は大野だ!ファーストでいまだベンチだ!パワーには自信あるんだが、何故ベンチなんだろうなぁ?がはははは!!!」

永田「パワー意外がダメだからだろ。」

大野「うぅ!!!」

一瞬シンと静まりかえった・・

田宮「え、えと、俺は田宮。センターだ。よろしく・・。」
倉野「っと、ここまでが3年だ。あとは、2年。そして、俺がキャプテンの倉野だ!よろしくな!」

永田「・・・・?」
何故か俺にみんなからの視線が当たる。

永田「おれは・・永田。ピッチャーだ。・・・よ、よろしく・・。」
永田(・・・なんで俺が・・)

堀田監督「・・じゃあ、いろいろ教えなきゃならんな。まず・・」

堀田監督のいろいろな説明があり1年3人は俺たち麻川中学野球部にはいった。

続く

[29] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月25日 (土) 20時09分

???「・・ここが麻川中学か・・。」
??「・・まだ中で練習してるようだな・・行くのか?」
???「・・あぁ、行こう」

〜〜〜  第三話 皇坂中学 〜〜〜

永田「・・ふぅ、今日はこのぐらいでいいだろう。」
堀田監督「うむ。じゃあ今日の練習はこのぐらいにしておくか。」

やっと練習が終わった。気づけばもう5時になる。

と、そのとき、大野は何かを感じたのか校門に向って指をさした。

大野「・・ん?なんだあれは?」

大野が指をさしたのは校門のほうだった。
よく見てみると、見知らぬ二人が立っていた。制服などからして違う中学の連中らしい。

堀田監督「こんなときに誰だ?ワシは誰も呼んでないぞ。」

二人はこちらへ向って歩いてくる。
やがて、2人は俺たちの目の前に来て動きをとめた。

???「こちらは麻川中学でよろしいでしょうか?」

謎の男が口を開いた。
声は野太く、雰囲気も大人っぽい。

堀田監督「いかにもそうだが?どこの連中だ?ここに何しに来た?」

布袋「申し遅れました。俺の名は布袋と申します。皇坂(すめらざか)中学の者です。たまたま通りすがりましたので学校関係とは別に、よければここのエースと3球勝負させていただきたいのですが。」

九十九「同じく、皇坂中学から来ました、九十九と申します。」

あたりは2人の突然の申し出に唖然とした。
見るところによると、なにやら危険なにおいを感じる。

堀田監督「・・ワシは学校関係とは別ならかまわんが、永田はどうだ?」

永田「勝負したいというのであれば引き受ける。こいつらに麻川中のエースの力を見せ付けるチャンスだからな。倉野、準備しろ。」

倉野「・・や、やる気か。・・俺は別にかまわんが。」

布袋(・・さて、ちゃっちゃとやって帰るか。)
九十九(・・ふ、単純なものだな。「白い稲妻」はどれほどのものか。)

やがて、バッターボックスに布袋が入り、永田がマウンドに立った。バッテリーは倉野。

三人の間に妙な緊張感が漂う。辺りは緊迫し誰もしゃべるものはいない。

布袋「さぁ、こい!!!」

このときはまだ、この勝負で永田の運命を大きく変えることになることはまだ誰も知らなかった。

続く

[38]
ファイア - 2005年06月25日 (土) 22時44分

なんか緊張感が伝わってきますね。
ぼくもこんな小説を書きたいなぁ・・・

[41] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月26日 (日) 10時27分

マウンドに永田、バッテリーは倉野、そしてバッターボックスには布袋

グラウンド中が緊迫に包まれる中倉野がサインを出した。

〜〜〜  第四話 白い稲妻 〜〜〜

倉野は、まず布袋の構えを見た。

倉野(バッターボックスよりに構えてるな。少々クラウチングっぽい・・やはりここは内角高めでびびらせるべきだな。)

倉野は内角高めに直球というサインをだしてきた。
ボールをしっかりと握り、布袋と目をあわす。
鋭い眼差し同士がにらみ合う。

しばらく無言のにらみ合いが続いたがゆっくりと永田は投球モーションに入った。

布袋「さて・・「白い稲妻」はどんなものか・・見せてもらうぜ。」

倉野「!!!!!「白い稲妻」だと!?・・・こいつ・・まさか・・」

そして、永田の手首からボールが放たれた。

放たれたボールは凄まじい球速、球威、そしてノビて布袋に迫ってきた。

布袋「・・こ、これが・・」

顔面すれすれをとおった球は倉野のミットの中におさまった。

吉光「おぉぉぉぉーー!!!すごい!!むちゃくちゃ速かった!!!」

九十九「・・さすがだな。」


布袋「これが「白い稲妻」か。」


永田「・・な!!!!!」

あたりはしんと静まりかえった。

吉光「白い稲妻・・」

永田「ふ、久しぶりに聞いたぜ、そのあだ名。」

布袋「ふ、お前のその球のノビ、その球威、一瞬でバッテリー間を走りミットに収まるその球のことを人は「「白い稲妻」」と呼んだんだよな。」

永田「確かにな。でも、そのあだな知ってんならその力をとくと見せてやる。」

堀田監督「ワシも久しぶりに聞いたなぁ。しかし、あの布袋とかというバッターなにやら凄い威圧感を感じるが・・・只者ではなさそうだな。」

真中「・・か、勝つんやろうなぁ、永田の奴。えらく緊張しとるで。」

またしても緊迫した空気が流れる。誰もが真剣に二人の勝負を真剣に見ていた。
だから、声がでない。

布袋「さぁ、こい!!」

倉野は布袋の構えを見た。
倉野(今度はさっきの球に恐れてかやや外で構えている。ここは外角低めしかないな。)

倉野は外角低め直球とサインを出した。永田は無言でうなづく。

バシュウゥゥ!!!!

布袋「・・・・・」

ミットからは張り裂けんばかりの音がした。

大野「あと一球だぞ――!!がんばれぇぇーー!!!」
永田(あいつ・・空気読めよ・・。)

ツーストライク。あと一球でけりをつける。

倉野(こいつには、釣り球は効かない)

倉野は構えを見た。

倉野(今回は真ん中か。なら、外角高めだ。これでけりをつける。)

サインは外角高め。

まだ大野はなにやら言葉にならん奇声を発している。

永田(・・大野うぜぇぇ・・。)

堀田監督「大野、黙れ。」

大野は、悲しそうに口を閉じた。何故か涙目だ。
ま、関係ないが。

永田(これで、終わりだ。)

布袋「こい!!!」

永田「がぁぁ!!!」

永田は全力でボールを投げた。
倉野はそこで構えている。
そう、ここで布袋が空振り、倉野がボールを捕る、それで終わり・・



ガキィィィー―――ン!!!!


凄まじい打球音。
打たれた、ボールは・・・・・


永田「!!!!!!!・・ぐはぁぁぁぁぁぁーー!!!!!!」


無残にも鋭すぎる打球は永田の右肩めがけて飛んできたのだ。
もちろん永田は右投げ。
永田の体は、崩れるように倒れた。

倉野「な、永田ぁぁぁーー!!!」

吉光「永田さあぁー―ん!!!」

大野「!!うがぁぁぁーー!!!のあうあおあうあー!!」

みんな永田に駆け寄り言葉をかけるが、返事はない。

布袋「・・これでいいのか。」
九十九「あぁ、これで俺たちの任務は終わりだ。帰るぞ。」

布袋と九十九は校門に向って歩き出した。

続く

[43] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月26日 (日) 18時03分

人生、何があるかわからない。
さっきまで、普通に動いてても、1分後には骨折してしまって一生動けなくなることだってある。
この先に起こることは誰もわからない。

〜〜〜  第五話 絶望 〜〜〜

???「ーーーーーーーーーーー」

なんだ・・何を言ってる?
まったく聞こえない。ここは、どこだ?

あたりは暗闇。誰かが何かを言っている。
でも聞こえない。

くそ!なんだってんだ!ここはどこだ!?

???「−−−−−−−−」

くそ!何を言ってやがるんだ!?早く夢なら覚めやがれ!!


???「ーーーー・・・ん?永田!起きたか!!」

永田「・・うぅ・・こ、ここは・・どこだ!?」

目の前には倉野と堀田監督と医者らしき人がいた。
体に違和感を感じて体を見る。上半身が裸で右肩には包帯が巻かれている。
薬のきつい臭いが鼻腔を揺らされる。
辺りを見回す。どうやらここは病院らしい。

永田「・・病院か。・・でも、どうして俺はここにいるんだ?」
倉野「覚えてないか。お前は右肩に打球を当てられたんだ。それで、ここに来たんだよ。」
永田「ふ、でも大丈夫、右肩はこの通り・・」

永田は肩を動かしてみせた。
すると、突如肩が割れるように痛んだ。

永田「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!!!」
堀田監督「馬鹿野郎!右肩を動かすな!!」

倉野「・・・・・・」

永田「お、俺の肩はどうなんだ?どうなってる?折れてんのか?」

医者「いや、骨に特に異常はない。普通なら複雑骨折でもおかしくないんだが、さすが投手なだけはある。肩は強い。」

永田「じゃあ、なぜ肩がこんなに痛む?折れてないならどうして?」

医者「骨に異常はないが、神経とかがイっている。もう、球を投げること自体難しい。」


永田「・・・・・え・・・・・!?!?!?」


倉野「・・・永田・・。」
永田「・・俺は3年だぜ?しかもエース。な、夏の大会は?」
堀田監督「こればかりはどうにもならん。あきらめるしか・・」

涙も出なかった。
堀田監督やら医者やらがなんかを言ってるが、俺にはもう聞こえなかった。

そして、気づいたら1週間がたち俺は退院した。

近所の公園にある壁にボールを投げてみる。
が、投げるたびに肩が痛みたった3球でもう投げられない状態になった。

倉野「・・永田。」

後ろに、倉野が立っていた。
気づかなかった・・。

永田「な、なにしにきやがった。俺はもうお前とバッテリーでもなんでもない。俺は、もう投手はできないんだぜ?」

倉野「・・そのことなんだがな・・」

永田「・・・・??」

倉野「俺の知り合いに自称「何でも治せる医者」という奴がいるんだが。・・そいつに会ってみたらどうかと思ってな。ちょっと怪しいが。」

永田「・・そ、そいつはどこにいる!?教えろ!」

倉野は、びっくりしながらも冷静にどこに住んでるかを教えてくれた。
そして聞いたとたん、俺はそこへと向かって走り出していた。

永田「なんだよ。治るかもしんねぇじゃんか。」

続く

[44] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月26日 (日) 20時25分

永田「・・ここが、何でも治せる奴がいるという病院か。」

〜〜〜  第六話 Dr、ピエール 〜〜〜

永田は走り続けた末、ついに何でも治せる奴がいるという病院に着いた。
いや、城とでも言ったほうがいいか。
外見はまるで城だ。かなり怪しい。

永田「・・怪しいが・・頼むぜ!」

永田は、扉の取っ手に手をかけた。何故か手は汗ばんでいる。
虫の知らせというやつか?
そんな事どうでもいい。とにかく取っ手を持ち直した。

扉は木の軋む音をたてながらゆっくりと開いた。

周りを見回してみる。
部屋は狭く、あちこちに蜘蛛の巣がはってある。
漫画にあるような朽ち果てた様子だ。
よく目を凝らすと、目の前に部屋があった。

永田「ここか・・。」

永田はその部屋のドアを開けた。

???「だ、だれじゃ!?!?!?」

目の前には小柄なクソジジィが一人小さな椅子に座っていわゆるエロ本を読んでいた。
部屋の中は棚があり怪しげなな薬がある。
目の前にはでかいベッドがあり、ベッドの周りには変な機械がついている。

怪しすぎる。

???「お前は誰じゃ?何しに来た?」

永田「まずお前から名乗れ。」

Dr、ピエール「そ、そうきたか・・。ワシはDr、ピエール。何でも直すことができるのじゃ。」

永田「・・ほ、本当だったか!俺は永田。倉野っていう奴に紹介されてここにきた。」

(Dr、ピエール)改め(ピエール)「倉野じゃと!なつかしいのぉ。で、なにしにきたんじゃ?」

永田「俺は、投手をやっていて、右肩を故障した。・・で、右肩を元通りにして欲しい。・・やってくれるか?」

ピエール「やだね。」

永田「元通りにしねぇと殺す。」

ピエール「やってみるかのぉ。」

このジジィ、おれをおちょくってんのか?

ピエール「ちょっと右肩をだしてみろ。」

ピエールの手には怪しい注射器みたいなものが握られていた。
永田は無言で右肩をだした。が、やはり痛みがする。でも、我慢した。
このジジィに自分の右肩を託したのだ。
こいつしか頼れる奴はいねぇもんな。

ピエール「じゃ、刺すぞ。」
永田「おいおい、なんか展開早いぞ。本当に大丈夫か?」
ピエール「えい!」

ジジィは注射を永田の右肩に刺した。が、その瞬間、肩の痛みは消えた。

永田「あれ?・・肩が痛くねぇ。治ったぁぁ!」
ピエール「あ、言うのを忘れとったがこの薬には副作用があってのぉ。その右肩を使いすぎると体中が痺れだすから注意しろよぉ。」

永田「・・・な!なんだとぉ!!」

ピエール「確か、野球やっとるんじゃろ?じゃあ、今年の地方大会、優勝しろ。なんでも今年から優勝したら賞金500万でるそうでな。ちょうど、その肩を完全に治すことができる薬の開発費と同じなんじゃよ。」

永田「で、その金をもってきたらこの肩は完全に治るのか?」
ピエール「あぁ、副作用も何もなくなる。」
永田「そうとわかれば早速練習だぜ。じゃあな。一応感謝するぜ。」

ピエール「永田とかいったか・・。注意せぇよぉ。肩を使いすぎると命にもかかわるからなぁ。」

永田「あぁ・・。」

永田は、嬉しそうにこの病院?をあとにした。

続く

[45] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月27日 (月) 19時42分

〜〜〜 第七話 復活? 〜〜〜


倉野(大丈夫かなぁ?あいつ・・。)

倉野は一人、公園のベンチに座っていた。

ついさっきまでそこに永田がいた。

倉野(もし、永田がこのまま復活できなかったら・・俺たちは終わりだ。)

倉野はそんなことを一人で考えていた。空はもうとっくに紅色に染まっている。

もう公園にはさっきまでブランコなどで遊んでいた子供は母親に連れられて帰っていった。
辺りには、もう人の気配はない。

もうそろそろ帰るか。

そう思ったその時、公園の門に見慣れた雰囲気を醸し出した少年がこっちにむかってきていた。




倉野「・・な、永田ぁぁぁ!!!!!!!!!」




そこには、輝いた目をしている永田の姿があった。
さっきまで右肩に巻かれていたはずの包帯がもうなかった。


永田「・・倉野・・・・・キャッチボール、できるか?」

永田は、安定したテンションで倉野に問った。

倉野「・・か、肩は?」

永田「大丈夫だ、もう・・何ともない。」

その言葉を聞いたとたん倉野の目が変わった。
わかりやすい奴だぜ。

そして、2人はグローブをはめ、永田のボールが倉野のミットに入る。

バシィィィ!!っと心地よい音がする。

もう、痛くなかった。
普通のようで、なんだかうれしかった。
この感覚、一週間ぶりだ。
懐かしい。

しばらく2人の間をボールが行き来する。

2人とも、無言だった。

が、二人の目は輝いている。


2人とも、うれしくてたまらなかった。

やがて、副作用とやらが、わずかに出だし体がほんのり痺れてきた。

倉野には、副作用のことは言っていない。

倉野のことだ。心配し、同情し、思い切ったリードをしてくれなくなるに決まっている。

そんなのは、絶対に嫌だ。
いつものように接し、いつものような思い切ったリードをして欲しい。

そんな思いからだった。

が、倉野は
ずっとバッテリーを組んでいる永田のことは何でもお見通しと言ったところか、倉野は永田がおかしいのに永田が放った一球目で気づいていた。


倉野(・・やはり俺には言ってくれんか・・。俺は何でもお見通しだというのに・・。隠しても無駄だというのに・・。)

気づけば、空は完全に暗くなっていた。永田の体は微妙に痺れている。

永田(これ以上投げればちょっと危ないか・・。)

永田「・・そろそろやめるか。悪いな、つき合わせちゃってよぉ・・。」

倉野「・・あ、あぁ・・。」

倉野(・・やはり最後まで言わないのか・・。俺をそこまで信用できんのか?)

そして、永田はどこか満足げに帰っていった。

倉野は、自分の信頼されてなさに呆然としていた。

続く

[46] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月28日 (火) 19時37分

〜〜〜  第八話 エース復活 〜〜〜


真中「な、なんやて!!肩が治ったやとぉぉ!!?」

教室中に真中の声が響いた。

永田「相変わらずうっさいなぁ・・・。」

耳が痛い・・。

真中「やっふーーーい!わい、不安やったんで。もう戻ってこんかと思ってん。でも戻ってきてくれてもう最高やわ。」

真中の大きな声にみんながいっせいにこっちを向いた。

前の席で居眠りしていた山口もびっくりして約5センチほど飛んで目を覚ました。

山口「なんだなんだ?愚民のクセに何を騒いでいる?せっかく気持ちよく夢の世界に浸っていたというのに。」

居眠りしてたくせにを自慢げに言うな。

※ちなみに、永田と真中と山口は同じクラスである。が、ストーリー上、覚えていても意味はないが。


その後、真中は先生に怒られ、廊下行きとなった。


キーンコーンカーンコーン・・・


永田「久しぶりだな、部活。」

永田は久しぶりの部活に興奮しているのか、一番にグラウンドに出ていた。

みんな、真中のせいで俺が復活したことは知っている。
真中の話によると、みんなとってもうれしそうにしていたらしい。


大野「ぬぅぅわゎぐぁあとぅぅあぁぁぁぁーーー―!!!!!!!!」


永田「ぬぅぅぎゃぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」

永田の体は大野の体に押しつぶされた。
大野は俺を見るなり急に俺に抱きついてきやがった。

永田「・・・死・・死ぬぅぅぅぅ・・。」

大野「あぁぁ、悪い!つい興奮しちまってよぉぉ!がははは!真中から話は聞いたぞ。復活したんだってぇ?」

永田「あ、ぁぁ・・でもよ、h 大野「がはははは!!いやぁよかったよかった。これで明日からよく寝れるぜ。」

永田の声は大野の声にかき消された。
話を最後まで聞けよ・・。

その声を聞いたほかの野球部の奴らはこっちに猛スピードで迫ってきた。

みんな「「「「「「永田ぁぁーーー!!!!!」」」」」」


あぁ・・もううぜぇ・・・・

倉野「おーーーい!!!みんなぁぁ〜〜〜!!!」

真中「お、倉野も永田と抱き合っちゃうか?」

永田「殺す・・!」

真中「・う、嘘やて・・。でもえらく張り切っとるなぁ。どうしたんやろ?」

確かに、いつも冷静な倉野があんなに取り乱している。
どうしたんだ?

倉野「よ、喜べ、練習試合だ!明後日ここで練習試合を行う。」

一瞬グラウンド中はまったく無音になった。

永田「・・な!?」

真中「なんやt 大野「なんじゃとぉぉぉぉーーー!!!!」

またもや真中の声は大野によってかき消された。
さっきまで静かだったグラウンドには大野の声が響いた。
なんか大野がしゃべるために地面が揺れるような・・。
・・気にしないことにしよう。

永田「・・で?相手はどこだ?」


倉野「・・・驚くなよ?あの、有名な「寛永中学」だ!!」


みんな「「「「えぇ!!」」」」

寛永中学。ここらへんでは強いということで有名だ。
特にピッチャーの柳田は要注意といわれている。
が、永田に比べるとたいしたことはないだろう。
というか、永田を上回るピッチャーはここらへんにはいないが。

倉野「よし。じゃあ早速練習しよう!永田は俺とピッチング練習をするぞ。いいか?」

永田「あぁ。」

永田と倉野はブルペンに向って歩き出した。



そして、ついに対戦の日が来た。

続く

[47] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月29日 (水) 17時35分

〜〜〜 第九話 寛永中学 〜〜〜

今日はただの練習試合。
が、やけにみんな張り切っている。
集合時間1時間前にはもうみんなきていたのだ。

どうせ早くみんな来たんだ。練習でもするか。という倉野のアイデアにみんな賛成し練習を始めた。

各自さまざまな練習をした。永田と倉野はブルペンにて投球練習。吉光と服部もだ。

あと、真中はフライの練習、大野は筋トレ、田宮はひたすらグラウンド中を走り、谷田はティーバッティングをしている。

あとの奴ら(2年も含む)は勝手に走りこんでいる。


そして、1時間がすぎた。


そのとき、突然校門に巨大なバスが入ってきた。

バスの外に「寛永中専用」と書かれていることから寛永中が来たというのは間違いない。

やがてぞろぞろとユニフォーム姿の青年?たちがバスから降りてきた。

永田「・・あれが・・。」

寛永中の奴らはグラウンドに入り荷物を置いたりしていた。



そして、試合開始まで1分をきった。
そのころ麻川中ベンチではスタメン発表が行われていた。

堀田監督「では、スタメンを発表する。

    1、矢咲 遊 
    2、手塚 二
    3、山口 三
    4、谷田 一
    5、倉野 捕
    6、田宮 中
    7、永田 投
    8、四条 右
    9、真中 左

そしてベンチ、

     吉光、服部、大野

以上だ!
いいか、練習試合といっても絶対勝つんだぞ!いいな!」


みんな「「「「おおおぉぉーー!!!!」」」」


矢咲「ぼ、僕が一番かぁ。どきどきするなぁ・・。」

手塚「・・・・矢咲・・出塁する。俺・・バントする。・・それだけ。」

山口「ふん、俺がいる限りこっちの勝利は決まっている。」

谷田「っしゃあぁぁ!やるぞぉ!!」

倉野「せっかくの練習試合だ、やるしかない。」

田宮「ま、適当にがんばりゃいいだろぅ。」

永田(・・肩がどうなるか心配だが倉野のリードどうり投げてりゃ勝てるだろう。

四条「お、俺、一年なのにスタメンだよぉ・・。ま、13人しかいないから当たり前か・・。」

真中「ま、レフトはわいやで。鉄壁やで。」

大野「くそぉぉ!またレギュラーになれなかったぁ!!もう三年なのによぉ!!」

吉光&服部(気づけば俺らって個性強ぇぇ・・。)

審判「さぁ、試合を始めたいと思いますので選手の皆さんはグラウンド中央に集まってください!」

永田「・・ふぅ・・いくか!」


審判「これから、寛永対麻川の試合を始める。互いに礼!!」


みんな「「「「「「おねがいしゃぁぁっす!!!!!」」」」」」

じゃんけんの結果俺たちは後攻になった。


倉野「行くぞ、永田!」

永田「・・あぁ!!」

そしてナインはグラウンド中に散った。

永田は深く深呼吸をしてマウンドに立った。

続く

[48] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年06月30日 (木) 18時53分

永田「いいか倉野、この試合は完全試合で締める。」

倉野「ほぅ、えらく強気だな。」

永田「そのため、この回の打者は三者連続三球三振で終わらせたい。頼むぜ。無駄に球数を多くして疲れたくないからな。」

倉野「・・あぁ、わかった。じゃあ、いこうぜ。」


〜〜〜 第十話 打てるわけがない! 〜〜〜

この試合、麻川のスコアラーは大野。

大野「1番、センター 坂上!!」

大野が大きい声で打者の名前、打順、そして守備位置を言う。

ナインのみんなは後ろで声をだしている。ほとんど声になってないが・・。

柳田「・・さて、初球はどんな球を放るのかな?ま、観察でもするかな。」

坂上(こ、こいつが噂の「白い稲妻」か・・。)

審判「プレイボー―――ル!!!」

審判の手が高々と上がった。
試合開始だ。

倉野はバッターの構えを見る。

倉野(左でややオープン気味か・・。が、まず初球はここかな。)

ここで倉野が出したサインは「ど真ん中直球」だった。

永田(信じてるぜ、相棒!!)

永田の第一球!!

シュウゥゥーー!!!


坂上「は、速い!!!!」

柳田「な!なんだとぉぉ!!!速い!!」


ズバァァァ―――ン!!!!!


審判「ス、ストライクワン!!」

審判は自信満々に、そして永田の球の速さにびびりながら手をあげた。

倉野「・・ふ。」

坂上「て、手が出なかった・・。これが「白い稲妻」なのか・・・。」

坂上は手がでずピクリとも動かなかった。

吉光「す、すごいや。さすが、永田さんだ。」

吉光の声は興奮のせいか震えている。
あの、おしゃべりな大野でさえも目を大きく見開き唖然としている。

倉野「いいぞ永田!その調子で投げてこい。」

そう言いながら永田に返球する。
永田はうなづきボールを捕った。

倉野(・・・次はどうするか・・。三球で終わらすんならここか?外角の高めに直球。)

永田はうなづきボールが放たれる。

が、無情にもバットのわずか3センチ程度上だ。

審判「ストライクツー!!」

坂上「く、くそぉぉ!!速すぎる。打てるわけがない。」

柳田「さすがに速いなぁ・・。」

倉野(これで終わらせる。内角低めに直球だ!)

永田は投球モーションに入る。

みんなは緊張しているのか、永田の球に見惚れたのか声がでていない。

柳田「・・おい、明石。」

柳田が呼んだのは7番でセカンドの明石だった。

明石「な、なんですか?」

明石は、2年生。柳田は三年で、明石は後輩になる。

柳田「・・次の球、スピードガンで測ってくれ。」

明石「は、はい。」

明石はすぐにスピードガンを手に持った。

そして、永田の手首からボールが放たれた。

シュウゥゥ―――!!!!!

坂上「な、内角低めだと!!馬鹿な!!」

明石「は、速い!!!!」

柳田「・・・・・」


ブゥゥゥン!!!

ズバァァァ――――ン!!


審判「ストライク!!バッターアウトォ!!」

坂上は大きく空振った。
どうやら内角低めは苦手なようでかなりびびっていた。

坂上「お、俺の嫌いな内角低めをついてきやがったか・・。くそ・・。」

倉野「ふぅ・・。」

永田「っしゃ!まず一人。」


柳田「・・明石、今のは何キロだ?」

明石「・・・あ、あり得ない・・。」

明石は何故か震えていた。

柳田は不審に思いスピードガンに目をやった。
そこにはあり得ない数値がたたき出されていた。


柳田「・・ひゃ・・「128キロ」だとぉぉ!!!」

中学のレベルでは、最高で120キロとされている。
でも、120はでなくても110でればかなり打ちにくい。
だが、目の前にいる永田という投手は128キロを出したのだ。

柳田「あ、あり得ない・・こんなことが・・。もしこのスピードガンが正常ならあんな球、打てるわけがないじゃないか。」


永田のストレートは非常に冴え、2、3番バッターを三球三振に抑え、永田が言ったとおり、この回は三者連続三球三振似終わった。

そして、みんなが守備位置からベンチへと帰ってきた。

真中「な、なg 大野「永田ぁぁぁー――!!!お前ってすごすぎるなぁ!!三者連続三球三振とは!!がっはっはっはっはぁぁ!!!」

真中(わいって、いっつもこれや・・。大野が邪魔してしゃべれへん・・。)

その後、みんなからうざったい祝福の言葉を受け、ベンチへと座った。

そして、寛永のナインも守備位置へと散った。


ついに、麻川中の攻撃!


スコアラー「1番、ショート 矢咲!!!!」


矢咲「僕、絶対出塁してきますから。」

矢咲の目はいつもと違い、燃えていた。

一回裏 0−0 麻川の攻撃

続く

[52] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年07月01日 (金) 18時12分

矢咲「僕、絶対出塁してきますから。」

麻川一の出塁率を誇る矢咲がバットを持ち、バッターボックスへと向かって歩き出した。

〜〜〜 第十一話 絶対出塁してみせる! 〜〜〜

今、グラウンドには相手チームのナインがボールをいじっている。

そして、バッテリー間にはピッチャーの柳田、そしてキャッチャーの内海が投球練習をしていた。

シュパァァァー――ン!!!

シュパァァァァー―――ン!!!

永田「こ、これが要注意人物か?たいした球放らねぇのによ。」

倉野「たしかに球は105,6キロ程度だが、こいつの球によってたくさんの中学がやられてる。しかも、やられたチームのキャプテンは注意しろといっていた。なんかある。」

倉野が真剣な顔でしゃべっている。
よく見ると、額から汗が流れていた。

永田(何であんな投手にびびる必要がある?背もそこまで高くないし球はそこまで速くないのに・・・。)

真中「魔球やろなぁ・・。」

永田「ま、真中!?・・魔球って?」

真中「わいも、昔っつうか一年前までキャッチャーやってたやろ?前、わいとバッテリーを組んどった高1の五十嵐はんは、そこまで球は速ぉなかったが、五十嵐はんにはさまざまなウイニングショットがあったやろ?わいは、ストレートは使わずに変化球を投げさせ続けたんや。そうするとな、球は速くなくても空振りの山を気づくことに成功したんや。つまり、球は速くなくても最高のウイニングショットがあればかなり手強くなるっちゅうわけや。」

※ウイニングショット・・・その投手の最大の武器である変化球のこと。


永田「・・・なるほどね・・。っと、おしゃべりはここらへんでいいか?始まるんでな。」

真中「お、ほんまやな。矢咲!がんばってくれや〜〜!!!」

バっターボックスに矢咲が入る。

そして、審判は手をあげた。

審判「プレイ!!」

永田「・・ん?なんだ、あのピッチャー、サウスポーか。それに矢咲も左・・。これは左と左の勝負か。ま、関係ないかな?」

山口「あぁ、関係ないな。」

永田「な、ないのか・・・。」

うすうすわかってはいたが、こうもあっさり否定されると怒りを通り越えて悲しくなる。


内海(さて・・どうするか・・。構えは至って普通だな・・。特徴がない。が、やや緊張しているな・・。ここは真ん中高めに直球。)

柳田からボールが放たれた。

永田「ほぅ、スリークォーター投法か。それにモーションが速い。」


ビシュウゥゥゥゥ――!!!!


矢咲「・・・・・・・」


パァァァァァー――ン!!!!


審判「ストライクワン!!!」

矢咲はぴくりとも動かず絶好球を見逃した。

倉野「見逃したか、初球は見てきたと言うわけか。」

矢咲(・・やっぱり永田さんの球を見ているから遅く見える。)

内海(・・・・あの球を見逃したか・・。何が狙いだ?変化球か?)

内海はもう一度、矢咲の構えを見た。

内海(・・さっきより微妙に肘を引いているな。打つ気になったのか?・・ま、ここは外角低めにカーブだ。)

矢咲(ここで出塁するぞ!)


パシュウゥゥゥー―!!!


矢咲はすぐさま足を踏み込みバットを出した。

シュッッ!!!

矢咲「ま、曲がった!!!」

ズバァァァ――ン!!!

審判「ストライクツー!!!!」

矢咲「か、カーブだったのか・・。」

永田「おいおい!なにしてんだよあいつ・・。一番なんだから出塁してくれよ。」

谷田「お、おぉぉぉーーーい!!!!矢咲ぃぃ!!!!」

ベンチの谷田の大声が響く。
また、谷田節が炸裂するのか?

矢咲「!!??」

もちろん、いきなりの呼びかけにびっくりして返事がでなかった。

谷田「いいか!!ボールをしっかり見ろよぉぉ!!!」

矢咲「・・はぁ・・はい。」

気づけば、辺りは静かになっていた。

手塚「・・矢咲の出塁は絶対・・。打ってくれたら・・絶対俺も続く。」

ネクストバッターサークルから次の無口なバッターの手塚が声をかける。

なんと言うか、手塚の声には重みがある。
いつも無口だからだろうか?なんか耳を傾けてしまう。
いい事でなくても、全部だ。

矢咲「お、おし!!・・こ、こい!!」

永田「頼むぜ・・。手塚はバッティングは得意じゃねぇんだ。こいつが打たねぇとこの回は終わっちまう・・。」

倉野「何とか初回先制点をとりたい。頼む!」


ドキ・・ドキ・・ドキ・・

矢咲の心臓の音が次第に早くなる。

矢咲「き、きんちょうするな。平常心・・平常心・・・。」

内海(何だよ、このチーム・・。初回から点を狙ってくるのか?・・まぁいい。こいつの構えはさっきより少し引き締まっている。ここは打ってくるか。なら、緩急をつけて真ん中高めにチェンジアップだ。)

矢咲「・・・・・・」

柳田はゆっくり、そして素早く投球モーションに入った。
いつみても投球モーションは早い。

パシュウゥゥゥ―――!!!!!

矢咲「・・・・・」

ヒュッッ!!

矢咲「・・ニヤ・・。やっぱり落としてきた。」



カキィィィー―――ン!!



永田「・・お。」

内海「し、しまった!」

矢咲はチェンジアップを思いっきり芯でとらえた。
方向は、一、二塁間を抜けた。

内海「中継!二塁だ!!速く!!」

矢咲は足が速い。
本当ならアウトになるところをセーフになった。
ツーベースヒットだ。

矢咲「・・や、やったぁあ!!」

真中「よ、よくy 大野「ナイスバッティング矢咲!!!!いいか、この調子で手塚も続けよ!!」

真中(・・またや・・。)

またしても真中の声は大野の大声でかき消された。
が、もう慣れた。

堀田監督「さぁ、登場か。うちのバント職人・・手塚。」

手塚(・・よくやった矢咲。・・お前の苦労は無駄にしない。・・俺も、絶対出塁させて見せる・・。)

手塚は、無言のままバッターボックスへ入った。
が、手塚からは、目に見えない熱いものが感じられた。

一回裏 0−0 麻川の攻撃 ノーアウト二塁

続く

[54] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年07月02日 (土) 10時10分


一回裏 0−0 麻川の攻撃 ノーアウト二塁

バッターは2番、手塚

〜〜〜 第十二話 麻川中のバント職人 〜〜〜

手塚はやはり無口でバッターボックスに入った。

柳田(・・なんだこいつ・・。妙な感じだぜ・・・。)

手塚「・・・・・・・」

手塚はバントの構えをした。

内海(送りバントか?内野を前進させるか・・。)

バントの構えを見た内野陣はバントシフトになった。
やや前進している。

手塚「・・絶対バントを決める・・。」

柳田「・・くぅ・・おらぁぁ!!!」


シュウゥゥ―――!!


手塚「・・・・・・」

内海(・・・!!!!な、なんだと!)

さっきまで2塁にいたはずの矢咲がいない。
そう、盗塁したのだ。
しかも柳田が放った球は外角低めに外したチェンジアップだった。

しかもさっきまで前進していたサードは送球しようとしても塁についていなかった。

矢咲「と、盗塁成功!」

手塚「・・ノーアウトランナー三塁・・か。」

麻川ベンチからは歓声が湧いた。



堀田監督(ここはスクイズしかないな。)


※スクイズ(スクイズバント)・・はじめは打つ構えを見せておいて、走者は球が来たらどんな暴投でも前に突っ込み打者はどんな暴投でも確実にバントを決め、走者を本塁へ確実に送る作戦。
ただし、失敗すると走者が死んでしまうため絶対に決めないといけない。

手塚ははじめは打つ構えを見せる。

内海(・・ここは何で来る?スクイズか?それとも見送ってくるか?・・ここは大きく外してみるか。)

柳田は投球モーションに入った。
すると同時に柳田がバントの構えをする。

内海(しめた!スクイズだった。大きく外してよかったぜ!)

内海の考えどおり柳田は大きく外してきた。

が、矢咲はもう、本塁へ向って突っ込んでいた。

矢咲(き、決めてくれなきゃ僕が死んじゃうんですよ・・。)

堀田監督「頼む!決めてくれ!」

倉野「あ、当てるだけでいいから当ててくれ!」


手塚(・・・大きく外してきたか。・・だが、確実に決める!)

手塚は思いっきりボールに向ってバットを出した。

手塚(・・・当たるか?)

内海(・・ふ、残念あとボール一個分足りないよ。)

矢咲(き、決めてー!)




コツン




!!!!

内海(あ、当てやがった!!)

矢咲(やった!)

あったのはいいが打球はピッチャー前に転がっていた。

内海「ピッチャー!!!トスだ!」

内海は一瞬でブロックの構えを取る。
が、もう遅い。

審判「セーフ!!」

内海「くそ!でもまだ打者のほうを殺せば!・・!!」

そう思って内海が投げようとしたときにはもう手塚は一塁を踏んでいた。


倉野「よっしゃぁぁーー!!!一点先制だ!!」

堀田監督「・・さすがはうちのバント職人。他の奴なら当てれなかっただろうな。」

山口「次は僕か・・。・・ま、見ていろ。ホームランでここへ帰ってくるよ。」


が、山口はセカンドゴロを打ってしまいゲッツーで終わった。

永田「・・ぷ。」

山口「・・・ふ、た、たまたまあのセカンドがうまかったんだよ。」

永田「でもあのセカンド2年だぞ?」

山口「・・う、うるさいぞ愚民のクセに!!この僕にそんな口を利くとは!!父さんに言いつけるぞ!」

永田「言えば?」

堀田監督「お前ら、少し黙っとれ。」

二人「「・・・・・・・」」


その後、谷田はセンターフライに終わりチェンジとなった。

永田「・・さ、いくかな。」


二回表 0−1 寛永中の攻撃

続く

[58] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年07月02日 (土) 16時46分

シュュュゥウウー―――!!!

ズバァァァァー―ン!!!!!!!

審判「ストライク!!バッターアウト!」

回は進んで5回表が終わった。
いまだに永田はノーヒットノーラン

5回裏 0−1 麻川中の攻撃 

バッターは8番、四条からだ。

〜〜〜 第十三話 魔球Sスクリュー 〜〜〜

永田「はぁ・・はぁ・・くそ!だりーー・・」

永田には、右肩の副作用が出始めていた。
そのため、さっきから体中がぴりぴり痺れてくる。

倉野「・・永田・・どうした?顔色が悪いぞ?」

永田「・・な、なんでもねぇよ・・。」

倉野(何を隠してるんだ?俺たちはバッテリーじゃないか。)

倉野「おい、なg 永田「吉光・・ちょっとこい。」

吉光「・・へ?ぼ、ぼくですか?」

いきなり呼ばれたので少しパニクっている。

吉光「なんですか?」

永田「この試合、お前にも投げさせてやる。7回表、その時投げろ。」

倉野「・・な!!!!」

吉光「えぇぇ!!??」

堀田監督「なぜだ?いつものお前なら7回を投げることなど簡単なはず?」

永田の額からじわじわと汗が流れている。
それに、顔色が悪いし息遣いも荒い。
・・なにかある。

永田「ちょっと悪い・・。」

そういって永田はトイレへと向った。

堀田監督「どうしたんだ倉野?永田は何故あんなことを?」

倉野「・・・・・・・」


「うがぁぁぁ!!!!!!」


倉野「・・!!!!!」

審判「バッターアウト!!!」

四条「・・な、何だ今の球は?消えたのか・・?」

倉野「なんだ?どうした四条?」





これはさっき、四条が打席に立っていたときのこと。


四条「絶対打つぞ!!」

柳田は、もうスタミナが切れかけていた。
額からはいくつもの汗が流れている。

内海(こいつはやばいな・・スタミナが切れかけている。)

内海はしばらく考えた末にタイムをとった。

柳田の周りに内野陣が集まる。

柳田「ど、どうした内海?・・おれならまだやれるぞ!」

内海「柳田・・「あの球」、使ってもいいか?」

柳田「あ、あの球をか!?・・でも、負けたくないしな・・。」

柳田はしばらく考えこんだ。

柳田「・・使ってみよう。そして、絶対勝とうぜ!」

みんな「「「「「おお!!!!」」」」」


そして、プレイ再開。

四条は気のせいなのか、柳田からさっきまでなかった何かを感じていた。

四条(何が来るんだ?一体・・どんな球が?)

そして、柳田からボールが放たれた。

四条(ス、ストレートか!?いやシュートの回転!もらった!!)

シュッッ!!!!


四条「!!!!!」

バァァァー――ン!!!!!

審判「ストライー―ク!!」

内海「ど、どうだ!!これがずっと温存していた魔球だ!!」

四条(い、いまのは何だ?回転が横にかかりながらストレートの軌道をしていたからシュートを意識して振りに行ったら突然ボールが消えやがった!)

内海「これぞ、横にスライドしながらをしながらスクリューの変化をする球!S(スリップ)スクリューだ!!!」

四条「ス、スリップスクリューだと!!?」

本来スクリューというのは船のスクリューの回転に似ていることからその名が付いた。
が、こいつのスクリューは横にスライドしながらスクリューの変化をするのだ。

四条「こんなの、打てねぇよ。」

そして、四条は三球三振に終わった。


その後の打者もSスクリューによって三者連続三振に終わった。

永田「よし・・・・いくか!」

永田はトイレから戻ってきていた。
にしても顔色が悪すぎる。

倉野「・・まずいな。これだと次の回が危ない。」

6回表 0−1 運命の寛永中の攻撃!

続く

[59] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年07月03日 (日) 14時21分

〜〜〜 第十四章 永田崩れる 〜〜〜

6回の表で寛永中の攻撃
バッターは2番の村田からだ。

永田「・・はぁ・・はぁ・・。」

永田はかなり疲れている。
というのも、副作用が出始めたからだ。

倉野(これは危ないかも知れんな・・。)

村田(何だあのピッチャー。もうぼろぼろじゃないか。これはいける!)

永田「がぁぁぁ!!!」

シュウゥゥゥ―――!!!

パァァァァ――ン!!!!

村田(何だ?かなり球威が落ちてる。球のノビもないし球速も遅い。)

永田「・・こ、ここまでなのか?」

永田は肩で息をしていた。

倉野「・・・・・永田・・。」

永田の制球力はかなり崩れていた。
これでもう三球連続で暴投だ。

倉野(一体どうしたというんだ!?)


堀田監督「・・く、吉光!」

吉光「は、はい!!??」

堀田監督「次の回は絶対お前が投げろ。」

堀田監督はいつもより重い口調でしゃべっている。

服部「じゃあ、早く肩を作ろう。俺が受けるから。」

吉光「あ、あぁ・・。」

1年バッテリーはベンチの横でキャッチボールをはじめた。


審判「フォアボール!」

倉野(くそ!これで二者連続フォアボールか!次は四番だぞ!?)

倉野はすぐにタイムをとった。

麻川中のナインは只事ではないと思い外野陣もマウンドに駆け寄った。

真中「一体どうしたんや!?なんで急に調子が落ちたんや?」

倉野「そうだ!なにがあった!?」

ナインは永田に必死で声をかける。
が、永田は呼吸が荒く返事は返ってこない。

永田「・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・!」

山口「どうしたというのだ?愚民のクセに無駄な意地など張らんでもよい。お前はもうマウンドを降りろ。」

永田「・・はぁ・・はぁ・・。絶対に・・絶対に降りねぇ・・!!」

倉野「な!なにを・・・・・」

が、永田の目は真剣だった。
でも、額からでる汗の量は尋常ではない。

倉野「・・わかった。じゃあ、この回だけ投げろ。いいな、みんな!!」

みんな「「「「「お、おぉ・・!」」」」」

再びナインは守備位置に散った。


倉野(次は四番の多田か。こいつは討ち取るぞ!)

永田はサインどおりボールを投げる。
が、前のようにボールは伸びず球威は無い。




カキィィィィー――ン!!!!!




永田はもうボールを見る気力はなかった。

審判が腕を回す。


まさかの逆転スリーランホームランだった。









「ゲームセットォォォォ!!」


11−1 コールド負けだった。

一回だけで十一点もの失点を許してしまった。

もちろん吉光は出れずに終わった。


永田の心身はともにボロボロ。

寛永中は決して強い相手ではない。
が、永田はボロボロに打たれた。
それも、すべて「布袋」奴のせいで・・。

復讐する!絶対に!!!

続く

[61] 白い稲妻が描いた軌跡
ジョ〜カ〜 - 2005年07月04日 (月) 17時26分


〜〜〜 第十五章 新入部員 妻夫木登場 〜〜〜

――――あれから何日が経ったんだろう・・。

???「・・ここは!!」

目の前にはどこかで見たことがある風景が広がっていた。

永田「・・ん?あれは・・倉野!?・・ここは・・」


そう、ここはあのピエールが住んでいる病院だ。
俺の目の前には2人の人間がいる。
倉野とピエールだ。
俺は、どうやら変なカプセルに3日間入っていたらしい。
そのおかげで疲れなんかは完治したのだが・・。

永田「・・・おれは・・どうしたんだ?」

倉野「副作用がでて倒れたんだよ。」

ピエール「ったく、あれほど右肩を使いすぎるなと言ったのにぃ・・。何故無理なんかするかのぉ・・。」

倉野「何で俺たちに副作用のこと言ってくれなかったんだ。言ったらそれなりのリードを考えたのに。」

心配されたくなかった。余計な情なんていらない。
同情なんかもってのほかだ。

永田「・・ジジィ、ありがとうよ・・。じゃ、もう俺は帰る。」

倉野「ちょ、か、帰るのか!?」

ピエール「・・・・」

永田は無言でピエールの病院を去った。
倉野はピエールに一礼し永田の後を追った。

悔しかった。
たったあんだけ投げただけで、体中が痺れて投げれなくなった。
そのせいで、決してそこまで強くない寛永中にコールド負けしてしまったのだ。


―――もう、二度とあんな無様な負け方なんかしねぇ。


永田「・・倉野、副作用を出さなくするにはどうしたらいいと思う?」

永田は、後ろについてきていた倉野に話し掛けた。

倉野「え、えーと、極限まで球数を減らすことかな・・?」

永田「やっぱり、いつもどおり投げることはできねぇのか?」

倉野「あ、あぁ・・多分な。でも、なんか方法があると思うぜ。出さなくする方法が・・。」

永田「ま、用は右肩を使いすぎなきゃいいんだろ。・・なんか方法があるはずだ・・。もう、区大会までもう時間がない。早く見つけねぇと・・。」

倉野「・・せめて、あと一人即戦力になる投手が入ってきてくれれば永田の負担は減る・・。」



そんなことを考えながら麻川中学の前まで来た。

グラウンドからは野球部の声がしている。
えらく騒がしいが・・。

永田「おぉ・・どうしたんだ?」

みんなが、ある一人を囲んでいる。



真中「おぉ、永田!よろこべ!新入部員や!!!!!」




倉野「な、なにぃぃぃーー!!!!!」

永田「ほ、本当か・・。」

そこにいたのは、しっかりした顔つきの少年だった。

妻夫木「どうも初めまして。妻夫木と申します。2年で、ポジションはピッチャー希望です。お願いします。」

倉野「ちょ、ちょうどよかった!!お前はすぐに即戦力として使うぞ。」

かなり倉野が興奮してやがる。
おれの代わりにでも使うのか?

永田「落ち着け倉野。即戦力にするって言ったって実力はわかんねぇだろ。」

妻夫木「じゃあ、見せましょうか。あの、倉野さん。キャッチャーですよね?」

倉野「あ、あぁ・・。」

妻夫木「ちょっと受けてもらえますか。見せますよ、僕の力を。」

かなり堂々としたしゃべり方だ。
この威風を見る限りではこいつ、かなりデキる。

永田「面白い、見せてみろ。」

妻夫木はみんなの注目を浴びながらマウンドに上がった。

続く



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