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[53] 雪白姫
デュエル君 - 2005年07月01日 (金) 19時54分

俺はヤスヒコ。通称ヤスだ。俺はちんけな生活の田舎をでて何かを生み出すのにあ
こがれる都会に出てきた。

だが現実は――ちがった。

バイトを点々とする毎日。家に帰れば請求書の山。そして携帯には昔付き合ったま
ま逃げた時の女からの着信、電気会社の着信。そして――俺の事を心配する親父か
らの電話―

今日もコンビニへの就職に失敗した。腹いせに看板を蹴っ飛ばしてみたりする。
帰り道に高校時代の女友達と会い、そっけない返事を返す。
いつもこんな感じだった。

だが事態は急変した。俺の住んでいるアパートの前のゴミ捨て場に女の人が転がっ
ている。死体だろうか?動き出したら困るので
「もしもーし。こんな所で寝てるとゴミ収集車につれてかれちまいますよー。」
とふざけた調子で女の人の顔をべちべち叩いてみる。すると反応があったのか女が
目を開き苦しそうな声でこういった。
「暑い・・氷を・・」
「へっ?」

「はぁ〜・・助かりました。私暑いのだめなんです。今まで住んでいた所追い出さ
れちゃって。」
なんだか恥ずかしい気分で女の話を聞く。なんとなく共通点がある気がする。
「あー・・俺もある。家賃滞納してたたき出された事あるよ。」
なにかどこかで見たことある展開だな。ほら、少女マンガとかである運命の出会い
とか言う奴。いいんじゃないかこの展開。日頃の行いからか神様のプレゼント
か!?俺が浮かれてると女はとんでも無いことを言い出した。

「助けてくれなければ解けているところでした。私、雪女なんです。」



はっ・・・?



今俺は何が起きているのか解からなかった。てかそもそも雪女って昔話のあれだ
な。小さい頃ばあちゃんによく聞かされた奴。そもそもこんな若いのか。いや、そ
れが問題じゃなくて。俺の考えが混乱している間にも女の話は続く。

「今まではお母さんと冷凍倉庫で暮らしていたんですけど持ち主のおじ様の会社が
つぶれてしまって・・お母さんはこの間解けてしまいました。」

何こいつ頭やべぇ。

「故郷の山は万年雪で覆われていて――おじ様に見初められていたお母さんについ
てこなければ今でも暮らしていたはずです。でも良かった。貴方みたいないい人に
あえて。」

もしかしてとんでもねぇ女を拾ったんじゃぁ・・・

はぁ・・家には女と請求書。携帯には例の着信。はぁ・・・嫌になりそうだ。
でも帰る場所もないし、とりあえず帰ろう。
「ただいま。うわっなんだこの部屋!めちゃくちゃ寒っ!」
女はこの寒さにも変わらずうれしそうにこちらに来る。
「お帰りなさい。御飯食べますか?」
「え?飯出来てるの?」
「はい。醤油味のかき氷か味噌味の・・」
そういった瞬間俺は断った。かき氷なんかとても食えたもんじゃない。

「げっ・・18度・・やべぇなこの部屋。」
女は俺の言葉にも気付かず机の上の作り花を見ていた。
「お花ですね。綺麗・・」
前の女が置いていった造花。今の俺にとってははっきり言って邪魔なのだが捨てる
のもめんどくさい。
「・・私、一度でもいいからお花を育ててみたい。」
「育てりゃいいじゃん。」
「・・・・雪女が花に触れるとかれてしまいます。私が触れるのは作り物だけ・・
貴方がうらやましい。人間の手は命を作り出す手ですもの。」

何かを作り出す・・か。俺もそういえば何かを生み出したくて田舎から出たんだよ
な。―――――生む手―――か――俺も少し頑張ってみるか。
俺が太陽に手を翳した瞬間。女の食べていたアイスに当たりが出た。

翌朝、バイトの話をつけてきた。ビデオレンタルの店長が結構いい人だった。
俺はこのことを報告するため、家に急いで帰った。
「ただいまー!バイト決めてきたぜ・・・」

俺は言葉を失った。

「どうした!?何があったんだ!?」
「あ・・ヤスさん・・いきなり電気が止まって・・」
「っの野郎・・滞納の仕返しかチンカス電気会社め!」
女は苦しそうだった。一体電気が止まって何時間経ったんだ。後で覚えてろ電気会
社。しょうがないので風呂に水を張ってやった。
「しかし本当に暑さに弱いなお前。本当に雪女か?」
女は質問に答えず何かを言い始めた。
「お母さんは言っていました。人間皆おじ様みたいに優しいわけじゃないって。で
も貴方みたいな優しい人も居たわ。私溶けたらお母さんに伝えてあげるの。」
「はいはい、解かった・・」

女は何もしゃべらず俺に口づけをした。

「見ないで。」

女は――いや、彼女は―そのまま消えてなくなった。


あれから何週間かたった。俺は彼女が溶けた水を植えた花の種にかけてやった。
その時電話が鳴った。
「・・ああ。8月にそっちに帰るよ。親父にもそういっといてくれ。・・あ?泣く
なよ・・じゃあな。」


ねぇ。私一度でも言いからお花を育ててみたい


来年には雪女の花が咲くだろう― 


終わり



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