アーシェとアッシュとルークたちと。
[134]arshe
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2008年01月16日 (水) 12時17分
(躰が、動かない…) ぴたりと、アーシェは動きを止めた。今まさに本気でルークたちに攻撃しようとしたその時に、である。しかし、それは彼の意志ではなく、何か別のものにアーシェの躰の命令系統が支配されていたからだ。 ――何故、 本来なら、アーシェには見当もつかないはずのことであったのに、彼は直感で理解していた。ずっと、違和感を感じていたのだ。もう一人の自分、アッシュの再構築が始まってから随分と時間が経っていることに気付いていた。 振り返って見ると、黄金の第七音素の光が変わらずアッシュの躰を包み込んでいる。いくら待っても、目覚める様子もなく、彼は横たわり続けるだけだ。 アーシェにわからなかったのは、どうやって、ということだった。記憶を共有するふたりだったが、アーシェはアッシュの構築中のものは共有しない。だが、様子をうかがった途端に、アーシェはその方法を悟った。 ――やってくれる… アーシェの能力は、確かにアッシュによって左右されている。だが、アッシュはアーシェの意識に干渉することはできない。相手の意識に干渉するのはアーシェの方であり、ましてや、そのアーシェであっても、アッシュを操ることはできないのだから、アッシュがアーシェを操ることなど到底出来やしないのだ。 外部から、など絶対に。 がくりと、アーシェの躰がくずおれた。自分の中に確かに別個の存在をアーシェは感じていた。それは元々はアーシェと同じものであったので、嫌悪などあろうはずもなかったが、やはり違和感があった。 離れている時間が長すぎて、もうひとつには戻れないとちゃんとわかっているのに、こんな、わざわざ、思い知らせるような。 アッシュにそんなつもりはないとわかってはいても、アーシェは悲しかった。自分が望まないことばかりするアッシュが嫌だった。拒絶などしたくないのに、ともすれば受け入れることもできないと感じてしまうほど、アーシェはかなしかった。どうしてわかってくれないのか、わかっているはずなのに、どうして邪魔ばかりするのか、わからなくて、憎らしかった。 「くっ…、そ……僕、の中に…入りやがった……、な」 そして何より、アーシェはアッシュに見られたくないものがあった。さらに、アッシュの中にはアーシェが見たくないものばかりある。思考が無理矢理閉じられるのを感じながら、このままでは済まさないと、強く強く念じていた。
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