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徒然日記

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イザアス
[30]jessica [ Mail ] [ HOME ] 2003年12月06日 (土) 00時32分
「後悔するぞ?」
 イザークが押し殺した声で囁いた。
「何されるのかも、わかっていないんだろう?」
 見透かすように、アスランの瞳を見つめるイザークの深い湖の青は、アスランが眼を逸らす事を決して許さなかった。当然、イザークはアスランの瞳が一瞬戸惑うように揺れたのを見逃さなかった。
「その眼だ…」
慈しむように、優しくアスランの頬に触れて、誰に聞かせるわけでもなく、独り言として呟いた。
 普段の死んだ魚のように感情の抑揚も表さない瞳が、ふいに戸惑い、傷つき揺れていることがあるのに気づいた時は、気が狂いそうだった。いつ、どこで、何をしていても、気が付けばアスランのことしか考えていなかった。
 総ては、あの時、アスランが見せた瞳の所為だと、イザークは知っていた。ただ、知らないフリをしていたのだ。何年もずっと。
「その眼が俺を捕らえて放さない」
 まるで眩しいモノでも見るように、イザークは眼を細めた。優しい光が深い湖の底に差し込むように、おそらく、誰も見た事がないであろう、見せた事がないであろう、朝優しい、穏やかな瞳だった。
 数秒間、いや、ほんの一瞬だったのかもしれない。その優しい光が灯った蒼から、アスランは眼が放せなかった。今まで、そんな彼は見た事がなかった。むしろ、何かあれば、自分が何かすれば、いつもイザークはつっかかってくるから、イザークに嫌われているのだと思っていた。
 いや、違う。アスランは今もそう思っている。
 愛される事を知らないのだ。愛して、裏切られるのを恐れている。だから、アスランは感情の抑揚を外にあまり出さなくなったのだということを、イザークは知らない。知るはずがないのだ。
 アスランは眼を背けたかった。瞼を閉じるだけでもよかった。ただ、イザークの瞳に灯っている光を見るのが恐いのだ。愛されているのではないかと、期待してしまう自分が嫌なのだ。
 裏切られるくらいなら、もう誰も愛さないと、アスランは誓っていた。誰にでもなく、自分に。そう、誓っていた。
 と、ふいに、イザークの瞳に灯っていた光が、いつもの彼の、アスランにつっかかるようにしている時の鋭い光に変わった。
 ああ、やっと。と、アスランは眼を逸らそうとしたが、無理矢理視線を絡まされた。
「だから、これで終わりにする…」
 「何を…?」という疑問の声は、そのままイザークの唇に吸い込まれていった。優しいけれど、強引な口づけに自分の身体から力が抜けていくのを、アスランは感じていた。
 やっと解放されたかと思うと、イザークの唇はそのままアスランの日光を知らないような、軍人には有り得ないほど白い首筋、男とは思えないほど細い肩へと移っていった。耳の裏に口づけられ、ぶるりとアスランが身体を震わせるのを見ると、イザークは自分が今、アスランを握っていると思えた。
 それが、この行為でイザークが得たいものだった。そのはずだったのだ。それさえ得られるならば、別に後はどうでもいいと思っていた。
 けれど…
 もっと触れたい、という欲望が抑えられなかった。
 イザークの手がアスランの中心に触れる。アスランは咄嗟に縋るようにイザークを見上げた。イザークはアスランのその視線に気づくと、まるで幼いコドモでも諭すかのように言った。
「ダメだ、そんな眼をしても」
 翡翠の瞳に突き放されたコドモのような悲しみが浮かんだ。それを見ると、ズキリと何かが痛むのをイザークは感じた。
「あの時みたいに、途中で止めてやらない」
 イザークはその感情を振り切るように、アスランの白い首筋に口づけた。
「誘ったのはおまえだ」
 だから、俺が止める理由はない。と、イザークは自分に言い訳をした。





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