【9回裏】
[74]jessica
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2004年08月14日 (土) 12時16分
『四番…サード…長島くん!!!』 球場に、宿敵を呼ぶアナウンスが響いた。耳をつんざくような歓声が球場を満たしている。
――打たしゃせん… 腕折ってでも、ここでこいつを抑えたる…!! 俯いたまま、顔を上げられなかったキャッチャーを、他のナインを見てそう思った。去年ならきっと、そんなこと思いもしなかっただろう。 けれど今は。 チームのために、ナインのために。 絶対ここで負けるわけにはいかない。 そして。 何よりも、あいつに負けるわけにはいかない。 去年の夏に次は沢村栄治ではなく、稲尾一久として。ベーブ・ルースではなく、長島茂雄を倒すと誓ったのだから。 それを果たすのは、先の春の選抜ではない。 ――今、や。 この夏の甲子園でなければ、意味がないのだ。
たった一度きりの、夏の甲子園のことだった。
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