あけおめ・オルザラ・パラレル戦後
[38]jessica
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2004年01月01日 (木) 18時12分
「明けましておめでとう、オルガ」 にこりと、アスランが微笑んだ。
[A happy new year]
(寒い……) 12月31日午後11時45分。何故か急にアスランに呼び出された。内容はいつもの如く、『迎えに来い』だった。大晦日まで仕事をしているアスランもアスランだが、なんで俺は車の中で待ってりゃいいのに、いちいち車から出て待つんだろうとか……すっかり下僕根性染みついてるし……嫌になっちまうぜ………… 53分……呼び出されたのが45分、大急ぎでここに来て、着いたのが48分(おお、俺ちょーはえーじゃん)。もう5分も、こんな寒いっとこで待ってる俺としては早く出てきて欲しいのだが……ってだいたい、呼び出すんなら、仕事終わってから呼び出せよって感じで。 そうこうしてる間に、もう55分。あーあー……年が明けちまう〜〜……!!俺、年越しそば(ディアッカに教えて貰った日本って国の風習。自分の国のは覚えてねぇし、だいたい、自分がどこ出身かもわかんねぇっつの)まだ食ってないし。年明けてからじゃダメかな? (寒い……) 吐く息が白い。手も凍ってるみたいだ。なのに、なんで俺は車の中に入ろうとしねぇんだろ…… ……… どーせ、吐く息白いなら、煙草でも吸おうかね…(ヤケクソ)どーせどーせ、後10分くらい来ねぇって。ばれやしねぇよ。(アスランに煙草禁止にされたけど〜) (カチ、て煙草に火をつける瞬間!これが堪んねぇんだよな〜) フー……と吸い込んだ煙を吹き出しながら、空を見上げると、真っ黒だった。流石プラント。 (地球の空わかってる〜) と、感心してしまった。地球軍に居たときに、夜中に見上げた空も確かにこんな風にすっげー澄んでて、月だけが浮いてるみてーでキレエだった。 (アスランみてー……) いつか、何かの本で読んだフレーズが頭の中に浮かび上がった。
月は無慈悲な夜の女王
(無慈悲じゃないけどな〜) クックックと笑いながら、もう一度深く吸い込んだ……その時………
「早く出してくれない?」 車の助手席から、アスランの声がした…… 「アアアアアアアアスラン???!!」 何時の間に!っていう俺の考えを見通して、アスランが返した。 「動揺しすぎ。やっぱり気付いてなかったんだ」 「い、いつから………?」 か〜な〜り、やばい。煙草噴かしてるの、見られた…… アスランがにっこりと笑って言った。 「54分くらいからかな」 (恐い……) それが素直な感想だった……… 「あ、あの……怒って………?」 「るよ。でも、後で。寒いからさ」 吸わなきゃよかった。今度から、ちゃんと普段から気配を読むようにしとこう……… 遠慮がちに運転席に入り込んで、シートベルトをつけると、すぐさま車を出した。
しばらく…つっても、ほんの2・30秒くらい後に、アスランがいきなり、「止めて!」と言った。 「な、なに?」 まだ怒ってるようで、アスランの口調は機嫌が悪そうだった。 「あのさ、もう煙草吸わないって、前約束したよね?」 助手席から躙り寄るように顔を近づけてきた。 「あ、ああ……」 俺は内心ビクビクで曖昧な相づちを打った。つーか、アスランのキレエな顔がすぐそこでいやに緊張した。 「もう吸わない?今年は吸わない?」 アスラン、ぼけたのか?今年っつても、後、1・2分…もしかしたら30秒くらいしかねぇだろ……(アスランが躙り寄って来てるせいで時計が見えないから憶測だけど。っつうか、アスランの目から視線を逸らせなかった。) 「返事は?」 「……ん、わかった」 どーせあと数分か数秒かで今年は終わるんだから楽勝♪とか考えたのが間違いだった…… 突如、目の前からアスランのキレエなエメラルドの目が消えた。つーか、これは、つまり………さっきより近い位置にアスランの真っ白な肌が見えるってことはつまり………………!!!! アスランが離れていく頃には耳まで真っ赤にしてた俺はこの動悸の激しさから言って、アスランに聞こえてるんじゃないかって思うくらいだった。ほんの数分前まで、寒い寒いと思っていたのが、嘘のように熱かった。顔が熱かった。 そんな俺の状態を見てか、アスランは満足そうににっこりと、今まで以上に綺麗に微笑んで言った。 「明けましておめでとう、オルガ」 ついでに最後に「約束、ちゃんと守ってね」というおまけ付き。弾かれたように時計を見ると………
1月1日0時1分
だった……………
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