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徒然日記

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心象のはいいろはがね
[113]james [ Mail ] [ HOME ] 2007年05月11日 (金) 23時55分
▼心象のはいいろはがね(パラレル気味/オリジキャラ注意)
 『真夜中になると、秘密の部屋の怪物が騒ぎだす。』
 たしかに、世界中の怪奇をしらみつぶしに調査するとは知っていたが、まさかそんなひとつの学校のみで伝わるいわゆる七不思議まで調べていたなんて。
 コムイか任務の話をきいていたアレンもラビも、同じことを思っていた。コムイとリーバーもそれを察してか、苦笑する。
「ふたりとも、馬鹿らしいと思うかもしれないけれど、あやしいと思ったから行ってもらうんだよ?」
 コムイが柔和に言い聞かせるような口調で言った。わかってる、とまたしても苦い気持ちでふたりは同じことを思った。

 それは、1000年以上の歴史を持つ、由緒正しき寄宿学校の昔からの謎のひとつだった。その学校は四人の創始者が集まり、才能豊かな子供たちを、わけ隔てなく育てるという校風を掲げていた。しかし、四人のうち一人は、純血の者のみにするべきだと言って、あとの三人とは袂を分かった。しかし、その創始者はいつか現れる自分の後継者のみが操ることのできる怪物を、学校内の秘密の部屋に残して行ったというのだ。
 大きな校舎だ、いや校舎というよりは、城か、もしくは教会かもしれない。全校生徒が集う大広間にいたっては、まるで大聖堂のようだった。どうも掲げている校風通りに、わけ隔てなく才能ある子供を、教育してはいなさそうだ。貴族階級ばかりの気がする。
 ざわざわと静まらない生徒たちだったが、教授席からの、スプーンでグラスを鳴らす音にたいして、一瞬で口をつぐんだ。ある意味、壮絶な光景だとアレンは思った。
「さて、集まってもろうたのは他でもない。少々季節外れじゃが、新しい仲間を迎えることになった。ふたりの寮分けはすでに行われておるでのう」
 どうやら、この白い髭を豊かに蓄え、半月型の眼鏡の奥で、星のようなきらめきを瞬かせる老人が校長らしい。さして大きな声をだしているわけでもないのに、彼の声は不思議に大広間を通っていた。
「アレン・ウォーカーは獅子寮へ、ラビ・ブックマンは蛇寮へ」
 促されて、ふたりはそれぞれの寮席についた。なんだか、変な気分だ。アレンはそう思ってラビの方をさりげなくうかがった。ラビも戸惑っているのだろうか。彼はたいして気にした風もなく、隣の席の同じ年ほどの生徒と話している。さすが、環境への順応が早い、とアレンは一種の感嘆を覚えた。
「あんまり見ない方が良いよ」
「え?」
 ふと隣からかけられた言葉は、どうやら忠告のようだったが、何故なのかわからなかったアレンは、隣に座る同じ年頃の少年に問いかけた。
「蛇寮と獅子寮はいちばん仲悪いんだ。向うから因縁つけられるかもしれないし、先輩たちにも目つけられるかもしれないしで、いいことなしだからさ」
 入学早々でそれは嫌だろ?と茶髪の少年は笑った。それほど整った顔立ちというわけではないのに、ひとなつっこい笑みが印象をよくさせる。
「でも、そうなると残念だね、あのブックマンって人、知り合いなんだろ?」
 つるむならばれないようにしたほうがいいよ。
「あ、ありがとう…」
 へえ、派閥があるだろうとは思ったけど、そんなにもきっぱりと分けているのかと驚嘆を隠せずに礼を言う。
「僕、ネヴァ・ライヒっていうんだ。よろしく」
「アレンです、よろしく」
 
 鐘の音が響く、それを合図に、それぞれ席を立って大広間を出ていく。ラビも同じ寮の生徒に連れられて出て行った。
「アレン、寮に戻る時間だから」
 あんなに食べたのに、まだよしとしないのか、とネヴァが苦笑気味に促す。
「あ、すみません」
「見掛けによらず大食いだなぁ」
 あはは、とアレンも苦笑してネヴァの後についていく。長い廊下と階段を通るうちに、アレンは心配になってきた。迷子になりそうなほど、なのだ。古城の迷路といえるだろう。廊下には多くの肖像画、絵画が壁にかけられている。ところ狭しと。
「アレン、気をつけろよ」
「え、何がですか?」
 ネヴァが一枚のふくよかな夫人の肖像画の前で立ちどまった。
「入ったら、多分”歓迎”が待ってる」

「よしなよ」
 大きな声ではなかった。だがその声にあれほど騒がしかった談話室が沈黙に包まれる。





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