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徒然日記

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「要約すると二文字になるが、」
[159]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月26日 (土) 16時40分
「ちょ、ちょっと待てよ!」
 放っておけばつらつらと話し続けそうな兄をサスケは遮った。何が言いたいのか、全く話は見えてこないし、達者な口は語彙が豊富で詩的な表現も多く、そういう芸術的な、文学的感受性を重視しないサスケにとっては異界の暗号にも等しい。
 幼い頃の記憶のままに、どこまでも澄んだ漆黒の瞳が、自分の言葉を遮った弟の言葉を待っている。
「それは、どういう…」
 サスケにはイタチの言わんとするところは図りかねる。まさか、そんなことはあるまいと浮かんだ予想を振り払う様も、真摯に向き合ってくる兄の前では意味を成さない。
「要約すると二文字になるが、」
 まだわからないか、とイタチは首を傾げた。これは修行ばかりさせずに、いくらか本を読ませた方がいいかもしれない。兄が大真面目にそう考えていることなど知るはずもなく、また今構っている余裕もない弟の頭の中はパニックを起こしかけていた。
 そんな様子も、その成長を見てきたイタチには手にとるようにわかる。予想の範疇を越えると思えば、こうも予想を裏切らない。弟の根はどこまでも純真だ。
「好き。」
 最初からこうすればよかった。器から滴って言溢れ出すのを止められるわけではないが、言葉にすることで出口を見つけた。
 少し後悔もしたけれど、ただ見開かれた瞳が愛しい。それだけで充分だ。


兄ちゃん編です
[160]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月26日 (土) 16時41分
兄ちゃんはヴァッシュみたいなイメージあります、
恥ずかしげもなく告白するみたいな。
開き直ってるんじゃないですよ、素なんです。



常よりも前へ
[157]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月15日 (火) 13時51分
 扉を開けたのは可愛らしい少女だった。豊かに蓄えた黒髪を柔らかく結い、左の肩から前に流している。結わえ込まれた真紅のリボンが艶やかで、少女はまだ12、3だろうがそれを二、三は上に見せている。どこか沈んでいるようでも、明るく無邪気な表情は訪問者がルークたちだと気付くと、目に見えてこわばった。
「何か…?」
 それは外周の者が外の者に対する時の当然の動作だったが、ルーク達には辛い(ジェイドは気にしてないようだが)。ルーク達が応える前に少女の向こうから、ルークたちに気付いた青年が言った。
「中に入ってろ」
 少女が道を譲り青年は部屋を出てくると、扉を背にしてきっちりと閉めた。少女が奥の部屋に入るのを耳で確認してから、青年は口を開く。それまでルーク達に一言も許さなかった。
「随分とお久しぶりですね、ご一行様?そうそうたる顔触れを拝見できて、恐悦至極に存じますが、こんなところに何の用があるっていうのか」
 相変わらずひねくれた皮肉気な言い方でアーシェスは言外に会いたくなかったと示した。しかしルーク達にとってはそんなわけにいかない。
 ローレライとの大爆発の後、二年の歳月を経て帰還した英雄、ルークだが、その理由は謎に包まれたままだ。ベルケンドでジェイドが検査したが、これとぴったりはまる答えは出そうにない。ジェイドほどの頭脳をもってしても、ローレライの恩恵としか言いようがないのだ。体はルークのもの、つまりレプリカのもので被験者のものではなく、解離した音素は補充されてはいるし、人格もレプリカ・ルークと確認した。しかし、補充された音素の結合は弱く、いつまた解離を起こすともしれない危険な状態であることに代わりはない。
 そこで、ジェイドがアーシェスに会おうと提案した。
 エルドランドでの戦いで、ルーク達と戦い、アッシュが死んだことで流れ込む第七音素により、ローレライの力が増しさらに強力になったヴァンを抑える封印術を施していたアーシェスは、その代償として自身も死を免れない程の解離を起こしてしまっていた。エルドランド攻略後、誰もがアーシェスは死んだと思っていたが、しかし彼は生きていたのだ。初め、アーシェスが生きているという噂を掴んだジェイドは柄にもなく、疲れているのかと我が耳を疑ったほどだ。
 こうして目の前にしている今も、ルーク達は自身の目を信じられない。
「……幽霊でも見るような顔、しないでほしいね」
 はあ、と沈黙を溜め息で破ったのはアーシェスだった。再び扉を開け、出掛ける旨を少女に伝えると、ルーク達にアパートメントを出るよう示した。

 道を歩きながら、実のところルーク達が自分を訪ねてくるなら、その理由の検討はついていた。二年前旅した時と同じくジェイドに説明役を押し付けられたものの、すっかり板についた様子で話すガイの説明を聞いて、アーシェスは用意していた言葉で返す。
「残念ながら、俺の帰還は役に立たないと思うよ」
 存外に優しくアーシェスは応える。エルドランドで、憎悪を露にルーク達の前に立ち塞がったのが嘘のように穏やかだ。
「役に立つ立たないは私達が決めます。その様子では貴方は自分が何故生還できたのかはっきりとわかっているようですし、今後の参考のためにも、是非話してほしいですね」
 ジェイドの真紅と見合ったアーシェスの紫電が一瞬揺れる。
 赤い瞳は苦手だった。アーシェスは母親譲りの瞳だが、母の瞳は時々赤く燃えていたことを思い出す。彼女も二年前までのアーシェスと同じように自分のものではない愛憎にもてあそばれていたのだ。
 誤魔化すようにアーシェスは瞼を閉じた。それにより蘇る深紅は2年も前だと云うのに、絶対的な記憶力を持つアーシェスには何とも鮮やかだ。
『死ぬの?』
 出会った頃と同じ幼い声。しかし言葉遣いは達者で、アーシェスの知る存在もそうだった。今にも絶えそうな息の中、かすれながらも死なないと応えれば、そうだね、と呟いていた。
『まだ、死なないよ。誰も、ね』
 薄れ行く意識の中、ああ、死ぬのか、と最後まで死を受け入れないまま、アーシェスは瞼を閉じた。自分の死をいつも予知できたからこそ、生きることに貪欲で、死を覚悟するほどの想いも失われていたから、仕方ないことだったかもしれない。

『ずっと昔、みんなどろどろだった、砂漠の砂粒にも過ぎない、ひとつだったんだもの』
 無邪気に面白がる声は、強い決意を秘めたまま、アーシェスの意識を引き上げた。どうしようもないほど瞼が重くて、これまでかと、二度と目を開くこともないと思っていたアーシェスも、ただただ驚くばかりだ。持ち上げた掌に染み込んだ血は乾いてこびりついている。その手を傷口にもっていっても、痛くなかった。痛いと感じたのは幻痛で、傷口は見る陰もなく塞がっていて、最初からそんなものはなかったかのように、血の跡も肌には残っていない。攻撃を受けて切り裂かれた服と、染み込んでいる血痕だけが、そこに確かに傷があったと訴えている。

――生きている、

「多分、気まぐれだよ。」

――生きてるんだ。
 感覚の素晴らしさ、どうして世界が輝いて見える。綺麗だと、紅が幼さを残す声で囁くように呟いた。その時アーシェスは否定したが、その通りだと知った。確かだ、世界は美しい。

「言ったろ?動いてるのは俺達だけじゃないって。」
 エルドランドで、刃を交える前にアーシェスはそう吠えた。
 後悔にしろ、懺悔にしろ、もう何も届きはしない、引金を引いたのは、他でもない、滅ぶべくして滅ぶ人間たちなのだ。
 もう戻らない、希みが叶うことはない、絶望が心を支配してアーシェスは死に急いだ。悔いてはいないが、自分勝手で浅はかだった。

『綺麗な花にはトゲがある。………完璧なものなんて、何もなかった。』
 確かだ、紅には棘があった、威嚇のための牙も、切り裂くための爪もあった。使うことはなくても、持っていた。
 使えば、傷つかずに済んだのに、使わなかった。
――だからこそ、おまえを人間だと思えなかった。自分を優先できない人間を認めたくなかった。

「ヴァンでさえ、真の望みは預言の崩壊だった。だけど、世界を、全ての崩壊を望んでる奴がいるんだよ。」
 彼らが、真っ直ぐ見すぎて道を誤ってしまったのだとしても、世界を救いたかったのはルークたちと同じだ。だからアーシェスは彼らを否定したくない、優しいと知っているから。

『死にたいわけじゃない』

「俺を助けてくれたのは、ついでみたいなものだろ」
 気まぐれ以外の何物でもないだろう、彼が自分を特別に思っているなどとアーシェスには考えられなかったし、有り得ない。

――死にたくない、ってそう言えよ、イオンみたいに、言葉にしろよ。
 口に出さなきゃ、余計に辛いのに、強情な奴だ。

 でなければ、らしくない、自然とアーシェスは破顔した。自嘲があまりにも穏やかな笑みになったものだから、ルークたちは驚いてしまった。感情を出さないようにしていたアーシェスがさらけだしている、それだけで驚愕に値するのは確かなことだ。
――生きている。
 こんなに無駄なことを考えるのは、生きているからだ。なんでもないことなのに幸せで、それをわかってほしいと思えたことはアーシェスにとっても進歩だった。

「これは俺の推測だけど、」
 根拠もなにもない、ただの想像で感情論かもしれないけれど、そう断ってからアーシェスは切り出した。
「子爵様が帰ってきたのも、ついで、かもね。俺を助けた時も、面白がってたからさ。やってみたかっただけ、ってのも有り得るよ。」
 この話はこれで終り、言外に示してアーシェスは一行を外周の外へ連れていく。静かな海のように穏やかな気分は目の前に赤がちらつく度に揺らいだ。見ていられない、見ていたい、紅ではないのに、それが悲しい。紅以外は有り得ないのに、嫌いではないことに気付いてしまって、衝撃を受けたことがまた衝撃だ。

 外周の外れに着いても、ルークたちは立ち去らなかった。アーシェスの発言には謎がありすぎる。問いただしたいとルーク達の顔は描いてある。同時にあまりにも清々しいアーシェスへの戸惑いがはっきりと伝わってくる。アーシェスは肩を疎めて苦笑した。
「俺はあんたら嫌いじゃないよ。」
――自分でも驚くほどに、憎んでいるのに、嫌いではない。
 恨んではいるけどね、と表と裏では全く違うようで、表裏一体だ。アーシェスが溢した言葉に嘘はなく、ルークは申し訳なさそうに、目に見えて落ち込む。
「生還しても変わってないみたいだね。子爵様はあいつに勝ったんだから胸張ってなきゃ失礼だよ」
 ルークから外周の町並みへと視線を移して、アーシェスは歩き出した。


タイトルは暫定です。
[158]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月15日 (火) 13時53分
視点がころころ変わりますね、流石俺だ。ははは!(やけくそ)

アビスはどんどん自分の中で設定変わっていきます。
ゲームって自由にやれるんだなー、じゃなくて!
たぶんアビス自体がルークの成長の物語であって、アッシュに焦点を当てられてないから好き勝手に妄想できることが多いんでしょうね。



兄弟でなかよし。
[155]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月15日 (火) 13時43分
「ほらそこ。」
 ぐい、と繋いでいた手を引いてイタチはサスケに注意を促した。
「段差がある、気を付けないと転ぶよ。」
 まだイタチから見ると頼りない足取りの幼い弟は、ぷくりと頬を膨らませて呟く。
「わかってるよ。」
「そう?昨日はけつまづいてたじゃないか。」
 揚げ足とりの、意地の悪い言い方だとはイタチも自覚していた。しかし、この弟は同じ年頃の子供と比べれば随分と達者に話す利発な子どもだが、どうもからかいたくなるし、からかう隙を与えるところがある。機嫌を損ねた弟はさらにむくれて、むう、と唸った。
「なんならだっこしてやろうか?」
 笑いながら屈んでイタチが囁くと、サスケはむきになって言い返した。
「もうそんなに子どもじゃないもん!」
 怒っては見せるものの、実のところ、すねているだけだ。いろいろと背伸びをしたい年頃で、イタチもそれはわかっている。けれど、イタチにとってはいくつになろうとサスケは小さな弟だ。つい世話を焼きたくなる。
 サスケはすねたまま、謝るイタチに、許さない、と言い続けていたが、夕陽に写し出される影は手を繋いだままだった。


一ヶ月ぶりですね…
[156]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年07月15日 (火) 13時45分
なんかネタが降って来ないんです。
(一週間前までは。)

テスト前だからかな、今は書きたくてしょうがない。
それよりレポート書けよって感じですけど!



サッケには兄ちゃんが必要です。
[154]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年06月10日 (火) 13時47分
「我々は蛇を脱した。これより“鷹”と名乗る。」
 しおさいもいっそ清々しいほどに湿っぽくて、寂しい。何がこんなに寂しいのか、わからないのに。
「目的はただひとつ、」
 海は嫌いだ、山も、森も、小道も街も。
「木の葉を潰す。」
 この眼は何を見ていたんだろうか、それももう思い出せない。

 あの、手は、誰のものだったか。



菊と桜
[152]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月29日 (木) 14時04分
 はらはらと舞い散る桜の花びらの、壮絶なまでに美しきこと。
「ないているようです」
 桜吹雪に目を奪われていた妹が呟いた言葉に、同じく魅了されていた兄が返す。
「だいじなひととのわかれをおしまないものが、いずこにあられましょうや。あなたとおなじ名をもたれるかたも、かなしんでいるのですよ」
 真実、兄と同じ気持で妹は頷いた。その大きな瞳から絶え間なく溢れる涙はすべらかな頬を伝う。頬に走る雫こそないが、兄の瞳も涙を湛えて揺れていた。

「ごあんしんめされませ」
 兄は沈黙を破り、妹と向き合うとその涙を自らの袖で拭う。
「ちちうえさま、ははうえさま、なきいま、わたくしがあなたさまを、おせわもうしあげます」
 顔を上げた妹は震える兄の腕に触れた。今にも決壊しそうな兄の眦に留まる雫を、今度は妹が自らの袖で拭う。
「いのちにかえても、あなたさまをおまもりいたします」
 そうして、示しあわせたように掌を合わせて、秘め事を交した。戦いあうためにひとつがふたつに分かれたのだと、わかっているからこそ、叶わぬ誓いだからこそ、想いは頑なほどに強く結ばれた。
 この先を、二人は知っている。


台詞を、
[153]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月29日 (木) 14時10分
ひらがなにしたのはまだまだちっちゃい子どもな2人を表現したかったからなんですが…
微妙だな。
菊も桜もお互いに敬語で話します。
これはなんか、あれだよ。
高校の古典の授業のときに、清少納言の随筆…あれ?なんだったけ?枕…『枕草子』!あーよかった思い出せて!
で誰だかしらないけど左大臣が自分の娘に敬語で喋ってたからです。(たぶん産まれたときから入内させるって決めてたからだろうけど!)



藤原とオネスト?
[150]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月16日 (金) 13時30分
「正直な(オネスト)…」
 ぼくの名前は優しいってことで、だからオネストの意味も知りたくて辞書を引いたんだ。優しいのは好き、嘘は嫌いだから、オネストの意味がそんなのじゃなくてよかった。
 お父さんとお母さんがくれたオネストのカードはきらきら輝いて見える、ぼくは本物に会えたんだ。忙しいから、いつも一緒にいれない二人の代わりに、オネストがいつも一緒にいてくれる。でもお父さんとお母さんには見えないみたい。だから言っちゃだめだなんだ。見えないものが見えるのは変なことだから。
 でもオネストはいるんだよ、ぼくだけにしか見えないなんて、そんなの悲しい。きっとぼくが他の人にも見えるようにしてあげるんだ。


正直、
[151]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月16日 (金) 13時31分
このネタはもっと暖めたい。なんたって不完全燃焼だから!



吹藤!
[148]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月16日 (金) 13時29分
「何言ってるんだよ、藤原。僕たちはずっと仲間じゃないか!」

 永遠(ずっと)、なんて、甘美な響き。

 こいつはそれを本気で言ってるから、信じてみたくなる。
 罪なやつ。
 普通、誰にでも優しいのは本気じゃないからなのに、こいつはいつでも真剣なんだ。いつか後ろから刺されるぞ、自分だけを愛して欲しいってやつに。そうなりそうなのがごろごろいる。
 馬鹿め、それが僕だったらどうする気だ。

――それはそれで、笑って許しそうで怖い。


でも、
[149]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年05月16日 (金) 13時30分
私は吹雪をわかってないですよwww
GX始めから見てないからね!
っへ!ストーリーもわかってないぜ!



日本とイワレヒコノミコト、何番膳じの命名ネタ。
[147]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年04月30日 (水) 10時39分
 見事に咲き誇る花は、多趣味で器用な男が手間暇かけて育てたものだ。汚れを知らないほど純真に、花開いている。
「上手いものだろう」
 意図せず魅入っていた少年に男は話しかけた。幾分か成長したその姿が自らが育てた花に重なって、自然と男の顔に笑みが浮かぶ。初めは抱き上げた重みも感じなかった。
 男も年月が経った分、体は成人のそれに近付いているので、今でも楽々と少年を持ち上げられるが、少年の成長がただ嬉しいのだ。その目の前にある花のように、咲き誇る時が楽しみだった。自らが生きている間には叶わないだろうとわかっていても。
「とてもきれいです」
 少年は上気した頬で振り返った。まだまだ舌たらずな発音が讚美の純粋さを証明している。微笑んだ男はその手を伸ばして指先で優しく花びらを撫でた。
「花はね、手をかけるばかけるほど美しく咲く」
 花びらの内側で結露した雫がぽたりと流れ落ちる。反動で花全体が揺れる様さえ美しく、少年の目を引く。
「菊、」
 息を吐くような優しさで男は呟いた。
 少年が声の方へ目を向けると、男はいつの間にか少年と同じく屈んでいた。肩が触れるほど近くに腰を下ろしている。
「名だよ、」
 名とは大切なものだと男は言っていた。慈しむように呼ぶものだから、少年は羨ましかった、少年には呼ぶ名すらない。
「ずっとおまえにふさわしい名を考えていたんだよ。きっと花の名が合うと思っていた、菊にしよう。」
 少年は驚いて目を見開いた。花を見つめていた優しさで満ちた瞳が少年を捉える。黒々とした光彩は黒燿石の光を秘めて輝いていた。この人は夢を見ている、はるかな夢を。
「おまえは美しい国になる」
 きく、と男が名を呼ぶ。呼ばれた名を心のなかで少年は繰り返す。不思議なことに、それはずっと前から自分の名だった気がするほど馴染んだ。何度も何度も、何度でも呼んで欲しい、と菊は願う。
 これから、何度でも、ずっと。



日本とあの方。出会いは必然であり偶然だった。運命なのだから、当然だ。
[145]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年04月23日 (水) 11時45分
「おまえはまだできたばかりなのだね」
 そう言って男は屈んで少年と目線を会わせた。少年から男の顔は見えない、男は背に光を背負っていた。
 少年は体こそ少年の類だったが、真実生まれたばかりだった。男に声をかけられて、初めて自分が存在していることを知ったのだ。
「おいで、わたしがおまえをつれていってあげよう」
 男の差しのべた手を少年は迷わずとった。恐れはない、この人は暖かいだろう、と少年は根拠もなく思っていた。その通り、男の手は熱いほどで、あっと言う間に少年を軽々と抱き上げた。
 抱き上げられたことではっきりと男の顔が見えた。彼が自分と同じ、少年のくくりを出ないとようやく気付いた。決して力強いとは言えない、細い腕はまだ青年のものにはほど遠い。それでも、少年にはもうこの腕以外は考えられなかった。


何番膳じだというネタをやっていきますよ!
[146]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年04月23日 (水) 11時50分
日本捏造、自分の偏った知識でやっていきます、はい。

っていうか、瑞日もえ。独日とか仏日とか伊日とかもやばいけど、やっぱり英日は一番すきだよ、最近瑞日にとってかわられそうだけど。っていうかもうとってかわってそうです。米日も露日も好きですよ、波がかわいすぎる病。西は受けです、ロマ西。



月の赤い紫空に望む砂丘のアテムはこんな感じ。
[144]arshe [ Mail ] [ HOME ] 2008年04月14日 (月) 17時13分
 男は王に罵声を浴びせると同時に自らの魔物を王に襲いかからせた。その攻撃
が王に届くかという瞬間、人々は全ての時が止まったかと思った。未だその身に
合わぬ大きさの玉座にゆったりと腰かける王を守るように、一瞬にして巨大な竜
が現れたのだ。神々しい気配を纏う赤い竜は王に牙を向いた男へと襲いかかる。
恐ろしいほどの速さだった。
「よい」
 王は華奢な手を気だるげにあげて、自らに暴言を吐いた男に迫る赤き竜を制し
た。今まさに恐れおののく男をひと呑みにしようとしていた竜は、王の言葉に動
きは止めたが、退こうとはしなかった。
「その男は吠えただけだ、構うな。」
 王は左肘をつき、己の右手の爪を眺めている。きらきらと指の黄金が光るが、
王の興味をひきはしなかった。
「余は今気分が悪い、この上その男の悲鳴で害されたくない」
 王がどこまで本気か、周りの者には量りかねた。ついこの間まで王子だった王
は年相応に幼く内に秘めたる激情をもて余してはいるが、聡明で王者にふさわし
い冷酷な一面も持っている。ゆっくりと残念そうに男から離れる赤き竜に、王は
手をあげてその身を撫でる。その体で玉座の周りにとぐろを巻いた竜は、釜首を
もたげて男を注視し続けていた。
「連れていけ」
 王の言葉でようやく時が動いた。男が見えなくなっても、竜には見えているの
か、視線を動かしもしなかったが、王がもう一度なだめるように撫でると首を下
ろした。







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