アラブ・イスラム世界およびアフリカでは昨今、風習化されて現代まで受け継がれている女性の割礼についての議論が活発化している。
エジプトの著名なイスラム学者モハンメド・セリム・エルアワ博士は、アルアハラム紙上で、女性は、イスラム法の下では割礼する必要がないと語り、割礼は女性にとっての崇高な行為ではなく、病気による手術以外で体を傷つけることはイスラム法によって禁じられているとの見解を表明した。
同氏によれば、割礼の習慣はファラオ(古代エジプト王)時代の社会習慣から受け継がれたものが、エジプト社会や複数のアフリカ諸国に広まったもので、イスラム教やキリスト教とは関係がないという。
同氏は、マホメット預言者時代やイスラム教の聖地メッカやメディナ、現在のサウジアラビアにも同様の習慣はないとして、自身の学説の正しさを強調している。
イスラム教スンニ派の最高学府アズハル大学の見解も、「宗教上まったく意味がない」というもので、「土着的な女性差別に満ちた悪習である」としている。
女性割礼の実態把握は、この風習を持つ諸民族などの秘密主義でかなり困難なもようだが、須藤隆也・前駐エジプト日本大使は、「エジプトでは女性の割礼が禁止されてから5年がたつが、いまだに95%の少女および女性が行っている」と報告、女性の割礼を奨励する誤ったファトワ(宗教令)が出回っているとも指摘している。
米国際開発局(USAID)が行った初の大規模調査では、エジプト人女性の97%が割礼されており、理由は、良い慣習だから(58%)、衛生に良い(36%)、イスラムのおきてだから(30.8%)などとなっている。60%がダイアーと呼ばれる助産婦によって、3%は街の散髪屋が行っているという。
↑The World News Mail@2004.2.24 No.450より