■垂直のバリア
「水」の話を続けます。
「ゴラン高原」、「ヨルダン川西岸」といえば、イスラエルとヨルダン、シリアなどの係争地域です。1967年の戦争でイスラエルが占領した土地で、現在イスラエル人が入植しています。
なぜ
イスラエルは、この2つの地域をヨルダンとシリアから奪っているのか、です。
それは、やはり「水」に関係しています。
一般に、中東は雨の少ない地域ですが、その中でも降雨量のある地域もあります。
そのひとつ、レバノンは、地中海から吹き上がる雨雲からの降水量に恵まれてきた地域です。今では2000本程度が残るだけといわれる「レバノン杉」が自生しますが、レバノンの象徴として国旗にデザインされてもいます。
このように、シリアの「ゴラン高原」、ヨルダンの「ヨルダン川西岸」も、そうした水に恵まれた一帯なのです。
そういった地域は、雨の少ない地域に住む人々から羨望の眼差しで仰ぎ見られてきたのでしょうね。
「雨が降る」ことは、いろいろな意味で豊かさを表しています。
イスラエルは、この「ゴラン高原」と「ヨルダン川西岸」を占拠して、ユダヤ人の入植をしています。
ですから
アラブ、パレスティナの人々、ヨルダン、シリアの人々は、自分たちの豊かさを象徴する地域を奪われて、さらに対立を深めているのだと思われます。
モーゼがアッラーから託された土地はイスラエルのものだと主張して、イスラエルは占拠して入植しているわけですが、
現実には、水の豊富なイスラム圏の豊かな農業可能地域を独占しているわけです。
なぜこうした土地戦争になるかといえば、イスラエルが工業国ですから必然的に工業用水を大量に使用するため、どうしても「水源」を確保しなければならないということもあげられます。
そして、欧米各国の先進諸国のライフスタイルを中東の地で再現しようとしますから、圧倒的に水が足りないわけです。
また、イスラエル国内の主な水源である「ティベリア湖」に流れ込む水は、主にシリアのゴラン高原から流れ込むのだそうです。
ですから、イスラエルにとっては、国の安全保障が「核」ではなく、「水」なのです。水源をシリアに握られては、イスラエルの国の制生殺与奪権をシリアに委ねるようなものだからです。
イスラエルは、この中東における「水」を、パレスチナや他の中東諸国と共同管理しようとはしていません。
その逆に、
パレスチナの人々の地下水の汲み上げを制限し、深い井戸を掘ることを禁止し、既にあった深い井戸を潰してしまい、安全な深い帯水層からの水の汲み上げを自国で独占しているというのが実態です。
パレスチナ人が深い井戸を掘れないように禁止し、水の使用を制限しています。
ここまでして、相手の生殺与奪権を握る「水」をコントロールしようとしています。
これでは、
いくら、欧米が政治解決しようとしても、相手に「水」を与えないというのですから、パレスチナも文字通り命がけになるしかないと、思いつめるわけです。
この中東へ、カスピ海から、アラビア湾から真水を精製してパイプラインで引き、各国共同で使うという構想もあるそうですが
関係国はどの国も、自国がこのプロジェクトを仕切るのだと言い、学者間の交流もほとんどなく、共同研究が成立していないのだそうです。
ここまで書いてきたら、何やら、少々、滑稽な感じがしますね。
ですから、
中東の政治家が何か外交をしていたら、それは、武器か水の獲得の交渉をしているとみて間違いないないようですね。
日本が最先端の技術で、真水を大量に供給するプロジェクトをまずイラクを手始めに中東地域へと提供できたらどうでしょうね。案外、第3者ならうまく行くのではないでしょうか。
この辺にも、、ユダヤ、イスラム共に自分たちで問題解決しようとしない甘さがあるようです。
来週は、水平性の話に戻ります、お楽しみに