スマトラ沖地震から26日で1カ月を迎える。最大の被害を受けたアチェでは、政府が策定する復興3期のうち、「救済期」から「復旧期」、その後の「再建期」に向けた動きが始動している。政府が救済期を地震後3カ月目となる3月26日で終了すると決定し、国際協力機構(JICA)は緊急復興に向けた調査を25日に開始している。
ユドヨノ大統領は、国家開発企画庁(バペナス)、国家官房、内閣官房に復興を指揮する特別機関(BOK)の設立準備を指示した。3月26日に予定されているBOKの設立は、バペナスが世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、国際開発協力銀行(JBIC)などとアチェの損害額の試算を実施するという段階から、復興計画の実施へと移行することを意味する。
政府と独立派組織「アチェ自由運動」(GAM)との和平交渉も今週末の開催が決定しており、復興を和解へと結びつける気運も高まっている。また被災地の学校が26日に再開されることも、被災1カ月を経て日常生活復帰への意欲の表われと見られる。
■死者30万人も
保健省によると、これまで判明した死者数は25日時点で、22万8,164人に上った。回収された遺体は9万5,992体。13万2,172人が行方不明で、多くは死亡したと見られる。
地震は1883年のクラカタウ山噴火以来の大災害とされるが、同噴火による死者は3万6,000人余りとみられており、今回の地震が未曾有の災害をもたらしたことを示している。
また、経済面でもアチェの損失は州総生産の97%に当たる。ここからの復興には、地域に則した復興計画が必要になる。
長期の復興について、JBICなどは2〜3カ月をめどに調査を行う予定だ。日本政府は、この調査結果を受けた本格的な復興事業に対しては円借款を供与する可能性が高い。
一方、復興のうちでも緊急の課題についてはJICAがバンダアチェに緊急復興支援調査団を派遣する予定で、25日には予備調査を行う「プロジェクト形成調査団」の8人がバンダアチェ入りしている。今月末までに同市の調査を行い、ニーズを図る。調査の活動としては、地図作りや都市再開発計画の策定などが予想されており、バペナスとの協議を行う。
これまでに同様の調査が行われたアフガニスタンなどでは、調査と平行して道路の修復作業などが行われたが、今回もこれらの作業を含むかどうかなども予備調査で測る。
バペナスのスリ長官は、19〜20日のインドネシア支援国会合(CGI)で発表した初期報告でアチェの損害額45億米ドルの中に再建費用が含まれていないとしていた。
■運輸再建に1億5,000万米ドル
インドネシア支援国会合(CGI)で発表された211ぺージのリポート「再建報告書」の中には、費用の部分が記載されていない分野が多いが、インフラ部門では、運輸部門のインフラの復旧、再建費用として、それぞれ4,500万米ドルと1億5,000万米ドルとしている。このほか、住宅の復旧、再建費用はそれぞれ1億1,500万米ドルと3億4,470万米ドルとなっている。
電力・通信部門では、費用は記載されていないが、電話についてはこれまでの固定回線ではなく、CDMA方式を利用した固定無線アクセス(FWA)を導入する可能性を挙げている。リポートは初期調査の結果で、今後の調査で変更する可能性が高い。
このほかリポートは行政面の復旧として、◇救援活動費用の支払い機能回復◇避難した公務員の復帰優遇◇公的記録の回復――を挙げ、再建期間には、◇インフラ整備◇施設の再建◇透明性・説明責任の向上◇公務員に対する災害管理、防止のための研修実施――を提示した。
また再建期の法執行分野では、◇災害時の犯罪を捜査する特別機関設置◇非政府組織(NGO)と地方政府の協調による執行強化◇司法関連機関のインフラ、建物再建―を挙げた。
ハミド法務・人権相は24日、最高検察庁内に被災者支援の特別機関を設置する意向を示しており、身分証明書、土地登記簿、銀行口座、納税番号再発行などのサービスを行うと語っている。