↓「YOGYA滞在記-SENYUM-vol.248」より
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トイレの花子さんに口裂け女・・・日本には数多くの都市伝説が存在するが、インドネシアにも都市伝説は存在する。2003年11月から約4カ月間、首都圏を震撼さ
せた妖怪「コロル・ヒジャウ(緑のパンツ男)」だ。
黒い肌に赤い目、そしてなぜか緑色の半ズボンを身にまとうコロル・ヒジャウは、部屋で1人で寝ている女性に乱暴を働く。最初にコロル・ヒジャウ情報が寄せられたのはジャカルタの東にあるベットタウン、ブカシ。このニュースは大衆紙で瞬く間に庶民の間に広まり、各地で目撃情報や被害情報が続出した。2004年になると騒ぎはジャカルタ市内にまで波及し、首都圏のカンプン(集落)では、女性たちを1カ所に避難させ、男たちが毎夜総出で巡回に出たり、祈祷師を呼んでお祈りをするようになった。
日本の都市伝説に出てくる妖怪たちには決まって「ある呪文を唱えると退散する」といった逃げ道があるけれど、それはインドネシアも同じ。なぜか、コロル・ヒジャウは黄色い竹とからしの葉っぱが嫌いらしく、住民たちは競って軒先に黄色い竹とからしの葉っぱを飾る。こうして竹屋は大繁盛、ついには竹が品薄になり、竹価格は暴騰した。
TVも大衆紙も連日、コロル・ヒジャウ騒ぎを報道し続け、騒ぎが過熱した2004年1月、ついにコロル・ヒジャウに乱暴を受けたという女性がTV局に名乗り出た。しかも1人ではなく3人も。彼女たちは一様に「コロル・ヒジャウに乱暴された証」として、コロル・ヒジャウにひっかかれたという腕や足のミミズ張れや傷、コロル・ヒジャウに破られたという服を見せる。これで騒ぎが最高潮に達し、ついに半信半疑だった警察が捜査に乗り出した末、ついにコロル・ヒジャウの正体が明るみに出た。
まず、被害者に名乗り出た女性たちはすべて、自作自演だった。最初に被害者として名乗り出たロサダさん(47)は「テレビで被害を訴えれば、同情した市民か
ら見舞金が集まり、テレビの出演料ももらえると思った」と自供。残る2人もロサダさんのニュースを見て「2匹目のどじょう」を狙った輩であることが判明した。クシや自らの爪でみみず張れを作り、ハサミで服を破き、カミソリで傷を作っていたのだった。
そして2004年2月、騒ぎの張本人と目されるブカシ在住の暴行魔オタン容疑者(20)が逮捕される。彼は緑の半ズボンを履いて女性を暴行した事件を6件自供した。
しかし、このオタン容疑者、精神的に不安定ならしく、緑の半ズボンを履いて犯行を行った理由について「強盗を受ける講習会に出て、絶対捕まらないというまじないをかけた半ズボンをもらったから」と供述。さらに「超能力で自分の身を隠すことができる」「講習で緑の半ズボンをもらった人物40人で構成されるコロル・ヒ
ジャウ軍団がいる」と次々と供述し、しばらくの間、コロル・ヒジャウ騒動の余韻として大衆紙をにぎわせた。
結局、騒ぎが過ぎれば忘れ去られる日本の都市伝説と同様、コロル・ヒジャウ関連のニュースも徐々に減り、住民の話題に上らなくなっていった。しかし、誰もが忘れそうになったころ、「コロル・ヒジャウ再び出没」といった見出しが時々、大衆紙をにぎわしている。消えてしまうようでなかなか消えないインドネシアの都市伝説、僕はインドネシア人も怪談が好きなこと(これは万国共通なのかも知れませんが)を認識すると共に、竹や葉っぱを競って買って巡回することに代表されるように、まだまだインドネシア人に残る純粋さのようなものを見た。
あなたの住んでいる国にはいったいどんな都市伝説があるだろうか? 都市伝説を聞いてみると、きっとその国や地域の特徴のようなものが分かるかもしれなませ
ん。