「コットンボール」
作:長房聖子
ケセランパサランみたいなボール
薬玉みたいなボール
8mm大のコットンボール
目の前にあるコットンボール
ボクはボールを見るたび優しいキミを思い出す
キミがいないと何にも出来ないなんて
当たり前の事どうしてキミに伝わらないの
ボクにはキミがただひとり
キミとの時がどれほど大切かキミに伝えたい
8mm大のコットンボール、
キミとボクの幸せの種かな
キミに会いに行った日曜の午後
海の見える丘で小さな男の子がくれた
(想像してみようか)
小さな小さなふくふくの手の指先でつまんだ
落っこちそうに見えた小さなコットンボール
その仕草を見た瞬間どれほど幸せを感じたか
きっとあの子には羽が
そっとボクに渡した後ふわりと行った
8mm大のコットンボール、
手の平にのせて願いを空に
キミと当たり前に暮らす日々
早く普通にボクに訪れますよう
(なのにどうして)
思わせぶりなキミはボクの哀しみの元
いつかのあの日みたいにボクだけを見て欲しいのに
あたりソコイラ中張り付いた笑顔を振りまいて
ボクの気持ちは空の下
いつからキミに届かなくなったんだろう
ケセランパサランみたいなボール
真白で小さなコットンボール
ボクにくれた男の子の元飛んで行く
しだらかな風に気をとられた隙に