| No.1004 金属五輪 5 TGS, |
投稿者:冥王星人
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「おやや、鉄仮面さん、なんだか顔が余計に鉄ですね」
「そうなのです。私フルメタルフェイスこと鉄仮面は、フルチタンフェイスことチタン仮面に変わりました。改造されました」
「なに?フルチン?」
「フルチタンです」
「なるほど、ところで佐々木さん、先程から銃撃が凄いですね」
「ええ…それ本名ですね…そうなのです!なにせ我々突撃中継クルー一同は現在ロシア側とアメリカ側の火力集中地点の真っ只中におります。おい、カメラでグルっと撮って」
「おお、すごい迫力ですね」
「ええ、さすがにありすぎですね。おお、見てください。包囲された一号機の援護にアメリカ側が救援の装甲部隊を送り込んできました!」
作戦指令本部は敵部隊接触との報告の後、情報錯乱の場となっていた。作戦地域の中東地区から遠く離れたタクラマカン砂漠の一角で、戦闘情報が集積し、処理されていた。
「予想以上にうまくいっているようだ」 「そうか。敵の誘導作戦を警戒する必要があるな」
指令本部の一角に用意された会議室で二人の参謀は冷たいコーヒーを飲んでいた。作戦発動前に用意させたものだが、さすがに作戦中の部下にコーヒーを注文することは出来なかった。彼らはただでさえ出動部隊からの注文で手一杯なのだ。
「敵の誘導作戦の対処はどのプランだったかな」 「プランB35だ、連絡を入れよう」
参謀の一人が手元にあるコールボタンを押した。
「プランB35の優先度を上げろ」 しばらく慌ただしい雑音が続いた後オペレーターが悲鳴を上げた。 「もうやってます!」 「あ、そ」
参謀はそっけない返事をして通信を切った。二人は互いのコーヒーカップを眺めた。もう残り少ない。 場違いな叫び声が聞こえる。
「見てください!見てください!ほら!対物ライフルが僕の後頭部を抉り取りました!」
「鉄仮面さん!なんてことですか!よく会話が出来ますね!会長、解説をお願いします」
「はい。今回は金属五輪を視聴する皆様のために新しい視聴方法をご提案します。今現在 鉄仮面さんは新型の神経伝達操縦を用いた偵察ロボットの改良型を使っています。これは簡単に言えば視覚、聴覚、この2感を機械についないで操縦しているということです。とうぜん本人が競技場にいるわけではありません。鉄仮面さんの操縦する機械は一般の視聴者の方には操縦こそ譲れないもの、今回はお手元に対応している機器があれば視覚と聴覚を共有できます」
「なるほど!って見た目が思いっきりターミネーターだから気づいてましたけどね。鉄仮面さんは自分の臨場感を犠牲にして視聴者の方々にそれを提供しているのですね」
「情報伝達が並列だから自分ひとりの犠牲を多くの喜びに増大させていることになります」
「実際、私、鉄仮面は重苦しい機械に囲まれた部屋に軟禁状態であります。あぁ喉渇いた」
モニターにはその開始から中継放送が流れていた。
「対応機器ってなんだ?」 「ほら、オンラインで接続するやつあったろ。みんな持ってるぞ」
参謀二人は暇だった。彼らの二人は完璧な作戦を構成することにあった。幾重にも巡らしたプランを不眠不休で練った彼らに与えられる休日は、作戦当日だけであった。作戦は彼ら自身を必要とせず、彼らが構成したプランの組み合わせを必要としていた。後は命令書とオペレーター、膨大な計算処理機が作戦を自動で動かしてくれる。彼らの仕事は戦場をプログラムすることにあり、実際組み立てるのも実行するのも他人だった。立案能力のないものが作戦に口を出しても意味が無い。それは逆の場合も同じだった。彼らは責任を果たし、報酬として貸切の会議室(もう使う必要がなくなっただけだが)と冷めたコーヒーを与えられていた(当然元々冷たいわけではない)
「ああ、この部屋には無いのかな?」 「なんだ?敵の放送だぞ」 「情報収集だ」 「リーダーがいなくて良かったな。俺はコーヒーを取ってくる」
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2006年09月22日 (金) 23時04分 |
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