【広告】楽天市場から大感謝祭を開催中エントリーお忘れ無く

メタルギア小投稿掲示板
HOME
□ メタルギアに関する内容の小説を投稿して下さい。
□ 人に迷惑をかける行為禁止。
□ ここに投稿された小説の著作権は投稿者にあります。無断転載禁止。
□ルールの守れない記事は無断で削除することがあります。
※優秀な作品は「小説優秀作品」にいれます。

名前
Eメール
題名
内容
URL
削除キー
項目の保存


【全文消去】
この記事に返信する場合は上のフォームに書いてください。
No.979 金属五輪 投稿者:冥王星人

「さぁいよいよやってまいりました!今日から始まる四年に一度の巨大行事。金属五輪。司会の広島長崎です。ゲストは日本軍需産業総会会長を務める××××さんです。よろしくお願いします」
「よろしく」
「視聴者の皆様すでにご存知かと思いますが、軍産総会の役員情報は極秘扱いとなっておりまーす。氏名は伏せさせていただきます。全身もSクラスの光学モザイク加工を施しマース」
「ご迷惑をおかけします」
「いえいえ…大事な役職ですので。さて!記念すべきだ一回目の開催地は、中東の某区でーす。テロ等の危険を防ぐため開催地は極秘でーす。荒廃した砂漠のどこかで寂しくやってまーす。スミマセン」
「安全のためです」
「でもダイジョウブ。衛星回線世界中継!一般人も傭兵もお偉いさんも関係無し!みんなで熱く観戦しよう。でも最低限映像媒体は持ってようなーそれなきゃ見れないぞー。さて、今回の金属五輪、いまや国際軍産複合経済の要ともいえる世界企業日本軍需産業総会が多額の出資を行っており、戦争保障理事会の国連予算を上回っているとのことです。これは最低でも今回の予算の半分を軍産総会が出資していることになります。会長さん、具体的にはどれだけの資金を出したのでしょうか」
「秘密です」
「そこをなんとか。自慢だと思って」
「極秘です」
「ハイわかりましたー気を取り直して行ってみよー。では会場のすぐ外にいるリポーターの鉄仮面さんに渡します。佐々木さん?」
「はい」
「聞こえますか?」
「良好であります」
「現地の様子を伝えてください」
「アイサー。フルメタルフェイスこと鉄仮面であります。自分は今、第一回金属五輪会場のゲート前にいるわけであります」
「なるほど!」
「今回の会場はテロの危険を考慮し、砂漠の某地区に巨大なドームと各国のテクノベースを建設されました。周囲は深刻な化学兵器汚染と電磁的な混乱が長い月日を経てなお続いており、環境整備が特別に行われた会場より数キロ離れると、化学防護服無しでは活動できません。関係する全ての施設が高い壁に守られ、汚染地区と合わせて会場への許可されていない者の侵入を難しくしています。現在、中の様子を窺がうことは出来ませんが、開催まで一時間と迫り各国の広報より情報が届けられております。現在198ある参加国の内すべての担当から準備はほぼ完了したとの連絡が入りました。各国のテクノベースにはそれぞれの国の部隊が警備を自主的に行い、会場全体の警備は公平を意識し世界の軍事経済を支える日本軍需産業総会の傭兵部隊が担当しています。軍産総会の兵力はテクノベースを警備する各国の部隊を合わせても全体の70パーセント近くに達し、開催資金の面から見ても実質軍産総会が全体を掌握しての開催となりました。これは昨今の軍産総会の資金力の低下という噂を覆しており、いまだ世界の軍事経済が安定していることを意味しています」
「ゲートの外の様子に変化はありましたか」
「はい。機材搬入用と思われる輸送トラックの往来は序所に減り、約十分前に軍産総会の警備部隊追加が行われた模様です。月光と同型と思われる新型無人兵器を3台確認しました。我々は開催まで安全地区で待機する以外ないため、警備の強化に開催が近づいている事を感じています」
「分かりました。会場でのレポートを期待しています。有難うございました」
「アイサー」
「さぁて特に目新しい情報はないものの、警備部隊の強化は開催が着実に近づいていることを意味しています。会長、新型兵器というのは?」
「今回は万全の警備体制を敷くため、総会は出来る限りのことを実行しました。新型の投入はその一つです」
「性能はどのようなものなのでしょうか。鉄火面のレポートでは月光と同タイプではないかと言っていましたが」
「その通りです。新型は商品名を雷電と言い、性能の面においては自然環境への汎用性を更に向上させています。そのため輸送トラックを必要とせず、単体で危険地帯を、パイロットの防護服なしで移動できます。稼働時間も向上させることに成功しました。その他の性能については総会に各国より直接お問い合わせください」

2006年09月10日 (日) 20時50分
この小説へのレス


No.982 金属五輪 2 投稿者:冥王星人 HOME

「しかし会長!月光は無人兵器じゃありませんか」

「確かにその通りです。初代月光は人口知能によってプログラムされた戦闘行動をプログラムどおり完璧にこなすことが出来ました。我が総会の前身である、PMCもその機能によって局地戦闘で圧倒的優位に立っていました」

「有人タイプにしたのにはそれなりの理由があるのですね」

「はい。総会はこれまでの、主に中東を主軸とした戦闘に対するデータを様々な角度から解析しました。その結果、無人兵器はその眼をセンサーに頼るしかなく、それは機能の面から必然的に外部に設置せざるを得ず、防御面での不安定さが残っていました。当然電子的な混乱も弱点となりました。この弱点をつかれたため、歩兵の支援無しとはいえ、たった一人の兵士に月光一個小隊が易々と行動不能に陥ったのです。もっとも歩兵の支援があったとしても敵の戦力次第では予測以上の被害を与えられました」

「伝説の傭兵達ですね」

「そうです」

「しかし、今世紀最大のテロリストと評されたソリッド・スネークも最後は追い詰められ中東で自害したとか」

「それは事実です。我々は彼がもたらした局地的混乱のなか、部隊を再編成し、彼を捜索しました。結果、死体は中東の某地で無事発見されました」

「現在でも反メタルギアを掲げるテロリストが活動を続けていますね」

「彼らはもはや亡霊です。非核などという理想を掲げているものの、その活動はもはやただの犯罪集団です」

「先月の総会亜細亜支部の爆破テロもフィランソロピーの仕業とか」

「その通りです。彼らはこうしている今も新たなテロ計画を練っています。今回の五輪開催にもテロの危険は充分に考えられます」

「何か具体的な例として一つ警備体制を教えていただけますか。未然にテロの発生を防ぐために、堅牢さを見せ付けるのも方法だと思います」

「いいでしょう。現在我々は会場警備のほかに迷彩を施した監視部隊を他の地区にも置いており、詳細な所在や編成は言えませんが危険地帯にも部隊は巡回中です」

「会場警備のほかにも周囲を取り囲むとは、高い防護壁を含めた警備部隊と、危険地帯、更には予備の部隊まで、これならテロリストは一人たりともは入ってこられませんね」

「ええ、まぁそうですが」

「何か?」

「あるいは単独潜入なら…まさかな」

「単独潜入だなんて、ナンセンスですよ」

「とにかく、総会は万全の体制を敷いております。参加国の皆様には安心して余すところ無く全ての技術を投入して開催に望んでください」

「さて、いよいよ…いよいよ…いよいよ!開催まで10分を切りました。リポーターの鉄仮面さんに渡します。佐々木さん?」

「アイサー。フルメタルフェイスこと鉄仮面であります。自分は今、第一回金属五輪会場のゲート前にいるわけであります。どうでもいいですが広島さん、本名でさりげなく呼ぶのは止めてください」

「なるほど!」

「…ゲートまえの休憩所にいた私達スタッフ一同に先程移動許可が下りました。これより我々は、警備兵に監視、いや守られながら報道関係者専用のゲートを通ってドームの中へ入ることになります。それでは移動します。もう時間ギリギリです」

「それが執行委員会の目的です」

「その通り!鉄仮面よ、さっさと移動せい」

「アイサー」

2006年09月11日 (月) 20時56分

No.990 金属五輪 3 投稿者:冥王星人 HOME

砂漠の冷気が化学防護服を叩く。外部からの空気を完全に浄化できても、気温の著しい低下までは防ぐ事が出来ない。幾つかの大規模な戦闘を繰り返すうち、砂漠は二度と太陽の光を浴びることが無くなった。有害物質を含んだ雨が降り注ぎ、過酷な自然環境を耐え抜いていたわずかな生物も砂嵐に吹き飛ばされてしまった。水はけの良い砂漠は有害物質を地下深くに溜め込み、上から降り注ぐ毒と地下から溢れ出る毒とで化学反応以外何も無い世界になってしまった。
ふいに、体が温かくなった。

「暖かい」

「いかん!全速で突っ切れ!」

 兵員輸送トラックの荷台で部隊長が叫んだ。
トラックは湯気の吹き出る砂を撒き散らして速度を上げた。
また、冷たくなった。

「寒い」

「見ろ、危ないところだった」
 
 部隊長に促がされて兵士はトラックが通り過ぎた地点を見た。もう通り過ぎてしまったが、あそこは暖かく気持ちよかった。兵士は過ぎ去った楽園を興味なさげに見つめ続けた。疲れて一度回した首を戻す気にもなれなかった。

「疲れたか。だがな、覚えておけ」

 兵士は上目遣いに部隊長を見上げた。

「あの湯気の中では複雑な化学反応が渦巻いている。俺はいきなり空気が燃えるのも見たことがあるし、何の前触れも無く人が窒息したのも見た」

「車体が安定しません!」

 運転席から叫び声が聞こえた。

「こんな地形じゃ当たり前だろうが!下らん弱音を吐くな!」

「違います!そんなんじゃありません!」

「おい!前に進んでねぇぞ」

「アクセル全開です!」

「停車しろ!全員降車後散開して周囲を警戒しろ!」

 トラックは完全に停車した。
 兵士達は低い段差を半ば転げ落ちるようにして降車し、有毒な砂の海を掻き分けながら散開した。

「どうなってる」

「やられました。溶けてます。恐らく先程の湯気が原因です」

 砂漠走行用のタイヤは泡を吹き出すようにしてとろけていた。部隊長は思わず自分の防護服を確認した。腕の辺りを入念に擦ってみる。異常は無いようだった。

「敵襲!」
 
 一人の兵士が叫んだ。

「うるさい!マイクで充分聞こえている。敵の編成は!」

「どうやら歩兵の偵察部隊です」

「よし!全員敵が射程内に入るまで動くな」

「待ってください!」

「なんだ!」

「こちらにも敵を確認!」

「南か!」

「敵の歩兵小隊です」

 次々と敵兵発見の報告が部隊長に届けられた。そしてそれはマイクを通じて全員の耳に入っていた。

「応援を要請する。援護部隊の到着まで耐えろ!」
 
 部隊長はマイクのチャンネルを本部へ繋いだ。

「こちら斥候部隊!フィランソロピー作戦指令本部へ。敵の守備隊に発見された応援求む!繰り返す…」

「諒解した」

 応答は思ったより速かった。

「こちら作戦総司令のスネークだ。敵部隊の発見ご苦労だった。救出部隊と併せて攻撃部隊も投入する。戦線を統制しつつ後退せよ。遊撃部隊は側面を攻めろ。敵の第一波を完全に制圧する」

2006年09月15日 (金) 21時46分

No.998 金属五輪 4 投稿者:冥王星人 HOME

「おおっと登場!合衆国代表チーム。会長の目からみて今回の部隊編成はどうですか」

「まずは市街環境での戦闘競技です。アメリカ代表は持ち前の情報解析能力を駆使して正確に敵にダメージを与える作戦のようです。局地戦闘官制機は最新式のものを用意してきていますね」

「対してロシア代表は、おや、なんだか大所帯ですねぇ」

「戦力の基準は重量で裁定されています。ロシア代表は出来るだけ軽量の兵器を用いて数での優位を戦闘に生かすつもりのようです。精密攻撃には有効な戦術です」

「解説をお願いできますか」

「アメリカ代表部隊は索敵能力を生かした少数の装甲部隊です。移動能力に優れるMGシリーズを官制機の情報を元に敵の弱点へ投入します。対してロシア代表は対戦車歩兵を中心とした大規模部隊。歩兵を競技場の端から端まで配備し、敵を発見し次第総攻撃を開始する。複雑な立体環境を利用した典型的な奇襲戦法です」

「しかし、歩兵で装甲部隊に歯が立つでしょうか」

「そこは指揮官と兵士の能力によります。技術力で劣るロシアは有り余った軍事力をこのような形でしか生かせないのです」

「伝説の兵士を再現すれば勝機はあると」

「いえ、そこまで求める必要はありません。中東での悲劇を繰り返さず、冷静に取り囲んで弱点を重火器で攻撃すれば勝機はあります」

「ちょっとロシア有利に聞こえますが」

「いえいえ、理想ですよ。所詮兵器と人間です」

「なるほど。さて、両チームに大きな動きが出る前に映像を放送席の鉄仮面さんに移します。笹木さん?」

「アイサー。フルメタルフェイスこと鉄仮面であります。ちなみに自分の本名は佐々木であります」

「なるほど」

「…さて、こちらは金属五輪競技場放送席であります。というか競技場そのものであります。信じられません。何故私達は戦場のど真ん中にいるのでしょうか。極悪非道。正に権力濫用と大衆快楽の餌食。非人道。非人道的扱いであります!」

2006年09月16日 (土) 23時45分

No.1004 金属五輪 5 TGS, 投稿者:冥王星人 HOME

「おやや、鉄仮面さん、なんだか顔が余計に鉄ですね」

「そうなのです。私フルメタルフェイスこと鉄仮面は、フルチタンフェイスことチタン仮面に変わりました。改造されました」

「なに?フルチン?」

「フルチタンです」

「なるほど、ところで佐々木さん、先程から銃撃が凄いですね」

「ええ…それ本名ですね…そうなのです!なにせ我々突撃中継クルー一同は現在ロシア側とアメリカ側の火力集中地点の真っ只中におります。おい、カメラでグルっと撮って」

「おお、すごい迫力ですね」

「ええ、さすがにありすぎですね。おお、見てください。包囲された一号機の援護にアメリカ側が救援の装甲部隊を送り込んできました!」

作戦指令本部は敵部隊接触との報告の後、情報錯乱の場となっていた。作戦地域の中東地区から遠く離れたタクラマカン砂漠の一角で、戦闘情報が集積し、処理されていた。

「予想以上にうまくいっているようだ」
「そうか。敵の誘導作戦を警戒する必要があるな」

指令本部の一角に用意された会議室で二人の参謀は冷たいコーヒーを飲んでいた。作戦発動前に用意させたものだが、さすがに作戦中の部下にコーヒーを注文することは出来なかった。彼らはただでさえ出動部隊からの注文で手一杯なのだ。

「敵の誘導作戦の対処はどのプランだったかな」
「プランB35だ、連絡を入れよう」

参謀の一人が手元にあるコールボタンを押した。

「プランB35の優先度を上げろ」
しばらく慌ただしい雑音が続いた後オペレーターが悲鳴を上げた。
「もうやってます!」
「あ、そ」

参謀はそっけない返事をして通信を切った。二人は互いのコーヒーカップを眺めた。もう残り少ない。
場違いな叫び声が聞こえる。

「見てください!見てください!ほら!対物ライフルが僕の後頭部を抉り取りました!」

「鉄仮面さん!なんてことですか!よく会話が出来ますね!会長、解説をお願いします」

「はい。今回は金属五輪を視聴する皆様のために新しい視聴方法をご提案します。今現在
鉄仮面さんは新型の神経伝達操縦を用いた偵察ロボットの改良型を使っています。これは簡単に言えば視覚、聴覚、この2感を機械についないで操縦しているということです。とうぜん本人が競技場にいるわけではありません。鉄仮面さんの操縦する機械は一般の視聴者の方には操縦こそ譲れないもの、今回はお手元に対応している機器があれば視覚と聴覚を共有できます」

「なるほど!って見た目が思いっきりターミネーターだから気づいてましたけどね。鉄仮面さんは自分の臨場感を犠牲にして視聴者の方々にそれを提供しているのですね」

「情報伝達が並列だから自分ひとりの犠牲を多くの喜びに増大させていることになります」

「実際、私、鉄仮面は重苦しい機械に囲まれた部屋に軟禁状態であります。あぁ喉渇いた」

モニターにはその開始から中継放送が流れていた。

「対応機器ってなんだ?」
「ほら、オンラインで接続するやつあったろ。みんな持ってるぞ」

参謀二人は暇だった。彼らの二人は完璧な作戦を構成することにあった。幾重にも巡らしたプランを不眠不休で練った彼らに与えられる休日は、作戦当日だけであった。作戦は彼ら自身を必要とせず、彼らが構成したプランの組み合わせを必要としていた。後は命令書とオペレーター、膨大な計算処理機が作戦を自動で動かしてくれる。彼らの仕事は戦場をプログラムすることにあり、実際組み立てるのも実行するのも他人だった。立案能力のないものが作戦に口を出しても意味が無い。それは逆の場合も同じだった。彼らは責任を果たし、報酬として貸切の会議室(もう使う必要がなくなっただけだが)と冷めたコーヒーを与えられていた(当然元々冷たいわけではない)

「ああ、この部屋には無いのかな?」
「なんだ?敵の放送だぞ」
「情報収集だ」
「リーダーがいなくて良かったな。俺はコーヒーを取ってくる」

2006年09月22日 (金) 23時04分

No.1013 金属五輪 6 投稿者:冥王星人 HOME

状況はアメリカに不利。複雑な市街地環境に追加して、ロシア側の統制の取れた歩兵部隊の動きはアメリカ軍の情報処理機能に著しい負荷を与えていた。
競技時間は残り約15分。それまでにより多くのダメージを敵に負わせた側が勝利となる。
「まだだ。まだこれから」
会長は観覧席から競技場を見下ろしていた。映像は現場に回っていた。
ポツリともらした一言に、司会がチラリと視線を投げかけ
「イベントはまだありますからねぇ」
と気力の無い声でいうとスタッフとの打ち合わせを再開した。
観覧席の扉が開いて情報担当官が入ってきた。先程から小まめにやってくる担当官にテレビスタッフ達はもう振り返ることもしなかった。
担当官は口を会長の耳元によせた。どんな報告が入っているのか、ただ会長は無言でうなずくだけだった。そのやり取りの最中、今度は別の担当官がやってきた。こちらの男はスタッフ達も初めてだったが、同じ担当官には違いないのだからやはり見向きもしない。やはりこの担当官も会長に何事か耳打ちした。
司会は、この担当官の報告だけ会長が指示をだすのを視界の隅でとらえていた。

2006年10月13日 (金) 22時23分

No.1018 投稿者:冥王星人 HOME

 二人目の担当官、西崎は今現在某地区で真っ最中の戦闘の情報報告を受けた。
それがどのような情報であるか、西崎には興味がない。どうせこちらが優勢なのだ。絶対的な意味で。
西崎が敵勢力との接触を会長に報告したさい、与えられた指示は一つ。

「次の情報を待て」

現状は放置しろ、ってことなのか?
西崎は自問した。

敵の遊撃部隊は確実に側面に出現する。その後交戦中の味方部隊は壊滅する。
確かに先行部隊は偵察を兼ねた囮だ。旧式の、さび付いたカラクリ兵団。逆にスクラップにする手間が省ける。
そうだ。俺が納得出来ないのは敵に何の対処も出来ないことじゃない。この作戦においてこの先のプランが俺に与えられていないってことだ。
次の情報を待て、だと?どんな情報を、いつまで待てば良いんだ。このままでは、砂漠で旧式機械がスクラップにされただけで作戦が終わってしまう。

どういう仕組みか知らんがヒョコヒョコ出てきた敵を小兵力で突っつく、敵の主力が展開したところで次の情報を待つ。次の情報を待つ?気に入らないぜ。何でこんな正体不明の作戦が行われているんだ。そもそも敵は何故あんな辺鄙なところに主力を出してきた。敵も味方も納得いかないぜ。

2006年10月25日 (水) 22時34分

No.1021 金属五輪 8  投稿者:冥王星人 HOME

「さてロシア対アメリカの試合は戦力の消耗にともない規模こそ低下しているものの、まだまだ白熱しております」
 
 散発的に起こる銃声。特別観覧席は一応防弾ガラスが張られ競技の全体を見渡せるようなつくりになっているが、肉眼による観察で戦場の興奮が伝わるに不十分だった。特にゲリラ戦の様相を呈している現状は遠巻きに眺めていて面白いものではない。観覧席の競技場に対する高低差も競技場そのものの広さも歩兵の動きでは消化しきれない。やはり観覧席からの眺めに相応しいのは鋼鉄で出来た巨体と重量だった。アメリカ側の歩行戦車はときおり建物を吹き飛ばす。または歩兵の対戦車兵器によって吹き飛ばされる。
 遠くでちまちまとそんな争いを繰り広げるメタルギアシリーズを眺めながら「会長」と呼ばれる男はゾクゾクとした感触を味わっていた。
 
「おおっとアメリカチーム完全に包囲されましたぁ!」
「…これまでロシアは包囲網に巧みな穴をつくることによってアメリカの装甲部隊をゲリラ戦に都合の良い廃墟地区に誘い込んでいました。その穴を塞いだということはこの攻勢で決着するつもりでしょう」
「うあぁアメリカ絶対絶命! おや?」

 アメリカ側の歩行戦車から一筋の光が上空に打ち上げられ炸裂した。炸裂した何かは燃えカスとなった破片を無数に飛び散らせ、落下する破片は七色の光の筋を残した。そして何秒かで完全に燃え尽き、何事も無かったかのような静寂が訪れた。

「花火?」

 司会の広島はそう一言いっただけだった。
 恐らくほとんどの観戦者が何か起こるのを待っていた。それらの人々の注視を受けながら、戦場は静寂を保ち続けた。
 そして広島の我慢の限界に達しても、まだ戦場は動かなかった。

「そうだ。中継カメラ。中継まわして!鉄仮面カモーン!」

 映像が防弾ガラス兼モニターに映る。灰色と茶色のグシャグシャ。ではなく90度傾いた廃墟だった。鉄仮面の応答は無い。
 広島は横に座る会長の方を向く。口が半開きで目が説明を求めていた。そして何があったのか、会長と呼ばれる男は知っている。会長はモニターから目を離さなかった。
 そして灰色と茶色のグシャグシャに直線がゆっくりと差し込まれ始めた。紅色の直線は気づくと画面の上から下へ完全に引かれていた。血液であることは明白だった。
 腕は突然画面左端から出現した。五本指がある。形状から判断してもまず人間のものだろう。だが何か異物である印象を広島は受けた。あくまで第一印象としてだ。それを人間の腕と認識する以前である。

2006年11月11日 (土) 22時23分

No.1049 金属五輪 9 投稿者:冥王星人 HOME

 何か異様なものを見ている気がする。出身地である沖縄の大自然で養われた彼の本能が警戒している。千切れた腕などもう見慣れた。異様の原因はそのグロテスクさにあるのではない。
 ぷつぷつぷつぷつぷつ。
 あんぐりと口を開けて呆然としている間にも、異変は進行している。そんな気がする。
 ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ。
 銃声は、しない。この静けさは、おそらく死の静寂。広島長崎(以後、広長と呼称)は何かを求めて観覧席から競技場を見下ろした。アメリカチームの機甲部隊でさえ、まだ動く気配がない。
 ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ。
 静寂。
 ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ。
 静寂?
 ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ。
 気色の悪い音が低周波で観覧席に広がりつつある。広長は体をガクガクと震わせながらモニターを振り返り見る。モニターはその全面をつかって異様を映し出していた。

2007年02月05日 (月) 18時14分

No.1082 金属五輪10(虐殺器官記念) 投稿者:冥王星人 HOME

 とうとう自称小島原理主義者である伊藤計劃さんが本を出しました。書籍名は「虐殺器官」作中メタルギアファンを似たりとさせる部分もあり、また氏の非常に豊かな知識をフルに使った現代的な作品となっております。SFファン、小島ファンの方々、是非購読なさってください。


 瓦礫の砂塵が舞う戦場に死体の海が広がっている。地平線に目を細めるようにしてそれを眺めれば、一面にひしめくそれらは確かに海のような雄大さがあるかもしれない。
 
 死の海だ。

 かつて沖縄ですごした少年時代。海が広がっていた。適当に歩けば海が見えた。山に上っても海しかなかった。小さな島だったが、情報は本州と平等だった。米軍が駐留しているだけ、特殊な情報が集まる地域とも言えた。沖縄といっても、沖縄本島に住んでいたわけではなく、もっと小さな島。

 戦場の死体はどれも表情というものは無い。筋肉が緩みきっているのだろうか。そもそも顔が無いのものもあるが、別段顔が見えなくても表情が無いと印象を受けるのに苦労しない。無論、文字通り表情、顔が無いと言い切ってしまってもいいだろう。どれもこれも寂しげだ。たとえどれほどの数の人間が傍にいようとも、それが死体であれば意味は無い。まして本人が死体であればなおさらだ。

 時たま米軍機が空を飛行するのが見えた。ビーチでノートPCを広げるのが贅沢だと知っていた。ビーチでPCを広げながら、時々ちゃぷちゃぷと音を立てる波打ち際や水平線から立ち上る入道雲を眺めることがある。PCの壁紙もまた、砂浜の風景だ。

 持ち主から千切れて迷子になった腕は一つ、戦場に起立している。五本満足の手が、花の花弁のように垂れている。弱弱しいその姿勢は、切断面が熱っせられた金属の破片に焦げ付いていることで保たれている。指差された方角に主がいるのかどうか、確かめようも無い。

 海は、壁だった。長い、長い壁だ。どこまで言っても壁の中で、この世界から脱出することなど出来ない。上空を飛行する米軍の輸送機、戦闘機、ヘリコプター、電子偵察機。それらはまったく別の世界に住む怪物達なのだろうか。世界の情勢は、いつでも知る事が出来た。世間では、実生活の精力を喪失させる類のものとして、ゲームや映画、小説が批判の対象となっていた。そしてそれは着実に高ぶりつつあった。反面、孤島にいる自分にとっては、それらが海の向こうを体験的に知る貴重な製品だった。そもそも、この孤島自体、この世とは思えなかったが。

 腕は着実に汚染されている。表面には赤い疱疹が無数に出来ていた。それは腕だけに限ったことではなく、戦場にある肉すべてに発生していた。疱疹は、出来上がるたびに一回「ぷつ」と音を出した。ちょうどビニールの上に雫を落としたような音だ。始めはささやき声だったが、次第に高まり、今では群衆のざわめき、激しい雨となっていた。

 結局、孤島での認識は外の世界に移住しても変わらなかった。海の絶望はどこへ行っても普遍だった。海はどこまで進んでも尽きる事が無かった。

 「空中に散布したナノマシンによる攻撃か。北米支部はなかなか気の利いた花火を考え付いたものだ。もっとも、祭りの日付を気にするような連中ではないが」
 
 会長はそう言った。なるほど。ナノマシンですか。そりゃすごいですねぇ。面白い武器ですねぇ。

 「メタルギアとどちらが凄いでしょうかねぇ」

 会長の顔が曇る。モニターを見つめ、深くため息をつくと部下に解析率を上げるように命じた。

 皮膚を食い破って何かが出てきている。ダニの一種に人体の皮膚に寄生し、充分に吸血して成長すると、大きくなって皮膚を破り自然界に戻るものがある。皮膚を食い破って出てくるものは何か、さらに解析率は上げられた。

 「メタルギア…」

 そうつぶやいたのは、会長だった。そのとき広長は、その声を「悲哀」だと感じた自分を不思議に思えていた。

 

2007年09月14日 (金) 00時14分



ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場から大感謝祭を開催中エントリーお忘れ無く
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板