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RELAY NOVEL
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[37] 青空の下に広がる絶望。 投稿者:ベル MAIL (2008年02月14日 (木) 06時55分)
 多くの人間の乱暴な足音が森に響く。
 ぱたぱたと軽い音や、がしがしと重い音。
 まるで怒りをあらわにしたように、ざわざわと木の葉の音が響く中を、ジャスティンたちはひたすら駆けていた。

「凍らせたのが随分効いたみたいだね」
「油断はできません。ほんの僅かな勢力を凍らせたに過ぎないでしょうから。それに……凍らせた蔦も直ぐに追いかけてくるでしょう」
「さっき、僕たちがキャンプした広場を通り抜けた。……このまま一目散に走れば出口だ」
「………………」

 最後尾を走るジャスティン、ラファエル、ジンの三人。
 後ろを振り返ってみても、あの不気味な蔦の姿は確認できない。
 ものすごいスピードで後ろへ遠ざかる巨大な根っこと大木の姿だけが目に映る。
 自分達の直ぐ前を走っているゼーレ、ファル、ラキスの三人。
 彼らの足止めのおかげで、あの厄介な蔦の群れは随分と後れを取っているらしい。
 無事に逃げ切れそうだと、ジャスティンが思ったその瞬間だった。

「……っ! 左右から来るっ!」

 クロスが叫ぶと同時に、沢山の蔦が左右から一行に覆いかぶさるように襲い掛かってきた。
 ジャスティンは咄嗟に剣を振るい、蔦を切り払う。
 確かな手ごたえを感じると、蔦には見向きもせず再び駆け出した。

「遅れていたんじゃない……奇襲を狙っていたのか!?」
「本能だけで動いているかと思えば……知恵も備えているようですね」
「……ちっ、面倒だ」

 足を止めるわけには行かない。
 くるりと華麗に自分の身体を一回転させ、それと同時に下段の切り上げを繰り出し、襲い掛かってくる蔦を斬り飛ばしたラファエル。
 ジンも華麗とはいえないが、根っこを飛び越え、地面に引き戻そうと掛かる重力の勢いに任せ、豪快な太刀捌きで容易く蔦を斬り潰す。
 前にいる面々も、同じように走りながら何とか応戦をしていた。

「もう一度凍らせます!」
「わかった!」
「了解です!」

 ゼーレのその言葉で何をすべきか。
 ファルとラキスは既に悟っていた。
 走りながらのため完全な集中には至らないが、それなりの大きさの水球を作り出し、それを後方に飛ばす。
 水球はジャスティンたちの頭上を超えて、そして弾けた。
 根っこを力強く蹴って、ゼーレが大きく跳ぶ。
 そして、破裂して無数の飛沫へと形を変えた水に向かって掌を向け。

「ア・カートル・メーン!」

 再び氷の役割を持たされた魔力弾が放たれた。
 水を被った蔦があっという間に青白いオプジェへと姿を変えていく。

「っ!?」

 しかし、最初のように進行は止まることが無かった。
 凍った蔦の後ろからあふれ出るようにして、新しい蔦が現れたのだ。
 重力に引かれ、地面へ着地しようとするゼーレに一気に群がろうとする。

「危ないっ!!!」
「王子っ!」

 咄嗟にジャスティンがゼーレに飛びついたため、蔦は明後日の方向へ通り過ぎたのだが。

「つっ……!」

 二人とも根っこの間に落ち込み、嫌と言うほど身体を叩き付けてしまう。
 痛む身体を擦る暇もなく、ジャスティンもゼーレも何者かにつまみ上げられた。

「……急げ」

 安定した足場に二人は降ろされる。
 ジンだった。

「すまないっ!」
「助かりました……」
 
 彼が懐から、あの奇妙な爆発物を取り出したのを目にした二人は、彼がこれから何をするかを悟り、短く礼を言うと再び走り出す。

「ちっ……うぜぇ」

 ピンを口でくわえ一気に引き抜き、ジャスティンたちの後を追うように駆け出したジンは、手榴弾を後方にぽいと投げ捨てた。
 すぐさま響く強烈な爆発音。
 耳を塞がなかったため、耳鳴りが少しだけした。



 
「しつけぇな……!」
「出口は近いわ……」

 先頭を、馬を引いて走り続けるラウル、ヴァール。
 ラウルは片方に馬の手綱、もう片方には、ルクラを小脇に抱えていた。
 迎撃に参加したいところだが後方にいる仲間のような遠距離攻撃をラウルは持ち合わせていない。
 走りながらではヴァールの弓も使えないため、せめて荷馬を守ろうと手綱を引き、併走している。

「昨日寝た広場はとっくの昔に通り過ぎたからな! もう少し頑張れよヴァールちゃん!」

 重装備なのに、相当な速度で走っているヴァールに驚き、やっぱりイイ女だ、などと今の状況にそぐわない考えを持ち出したりしているラウル。
 ふと、自分の小脇に抱えている少女が奇妙な叫び声をひっきりなしにあげ続けているので声を掛ける。

「……で、お前も平気かおチビちゃん?」
「こここれががが、へへ、へいきにみ、みえますかああ!?」

 足場の悪い場所を走っているわけだから、当然アップダウンが激しい。
 そうなると、抱えられている人間への振動が凄いのも当然であった。
 せめて帽子が落ちないよう手で押さえているのがやっとといった様子で、がくがく震えるおかげで可笑しなイントネーションで返すルクラ。
 そんなルクラの返答で、ラウルは。

「しっかり捕まってろよおチビちゃん!」

 軽々とルクラを、荷馬の背中の空いたところに乗せて、手綱をしっかりと握らせていた。

「しっしっかりってこここんなっ!」
「舌を噛むわよ……。……魔術師の端くれなら、詠唱の一つでもしなさい……」
「そそそんなむ――」

 ルクラは言いかけて、パニック状態だが必死に考える。
 自分が何のためについてきたのか。

「……!」

 足手纏いにならないと誓ったのではなかったか?


 ――このぐらいが、なんだ。やれば、できるんだ。


「やや、やってみます!!!」
「……いい子ね……」

 目を閉じて、手綱を握る手に力を込めて集中する。
 そして思い描く。
 風を操り、鋭い刃へ変えて、その数を増やし、どんな軌道を描かせるか決めて、そして。

「風よ……切り裂けっ!」

 ルクラの言葉と同時に、風が唸った。
 一行の両脇に強烈な風が吹き荒れる。
 それは襲い掛かってきた蔦を無理やり引きとめ、そして切り裂いていった。
 それでも向かってくる蔦が更に風に巻き込まれ、絡まっていく。
 再び蔦の進行が、止まった。

「急ごうっ!」

 剣をすばやく鞘に収め、ジャスティンが叫ぶ。
 絡まったのを解くのに手間取る蔦を尻目に、一行は距離をどんどん離していった。




「……逃げ切った……ようだね」
「流石に森の外まで追っては来ないでしょう……」

 闇の帳が常に降りている森を抜け、太陽の光が降り注ぐ大地へ抜け出したジャスティン達。
 走り続けで息切れが酷いが、何とか脅威となる存在を振り払ったことに皆安堵する。
 しかし、皆の頭の中にはある悩みが芽生えていた。

「でもよ……どーすんだアレ」
「アレを何とかしないと、神殿へ向かえないってこと?」
「真正面から、立ち向かうのは、愚の骨頂だろうし……燃やすわけにも、行かないし」

 額に光る汗を腕で拭い去るラウルに、大きく息を吐き出しながら、ハンカチで汗をふき取っているラキス。
 ファルはまだその余裕も無いようで、ただただ深い呼吸を繰り返している。

「でもあんな大量の蔦を、どうやって倒したらいいんでしょう……?」
「火を放つこと以外で処理する方法は……思いつきません」
「……蔦を操る存在は間違いなくあの壁の向こう……困ったものね……」

 地面に座り込んでいるゼーレ。
 ヴァールは近くをゆっくりと歩きながら、息を整えている。
 あまり走っていないルクラは、周りの人間に水を配りながら思案顔。
 
「あ、あぁ、ありがとう……」

 水を受け取り、軽く微笑み返すだけで再び難しい顔をするジャスティン。
 あの蔦を突破しなければ神殿にたどり着くことなどできないだろう。
 一度手を出してしまったのだ、最初のようにすんなりとあの壁まで通してくれるとも思えない。
 

 ふと、傍で揺れている花を眺める。
 周りに同じ花は無い。
 たった一人でそこに咲いていた。
 こんな健気な花と、あの蔦が同じ植物だとは、到底信じられない。

「………………!」

 ジャスティンの脳裏に、幼い思い出が蘇った。
 

「ねぇ、なにをしているの?」
「あ、王子様。この雑草の群れを片付けるために薬を撒いているのですよ」
「そんなこなをまくだけで、これがかたづいちゃうのかい?」
「それはもう、バッチリでございますよ! ……放って置いたらお城の景観が悪くなりますしね、彼らも生を授かった存在なのは承知しておりますけれども……ごめんなさいっ」

 ある日妙な粉を生い茂る雑草に振りまいていた侍女に何気なく聞いた事。
 雑草に謝りながら手際よく粉を撒き散らしていた侍女を、好奇心も手伝いずっと眺めていた記憶がジャスティンにはあった。
 そして数日もすれば、その雑草の群れがすっかりからからに乾いてしまっていたことも。


「……植物には違いないのだから、枯らしてしまえば何とかなるんじゃないか?」
「枯らしてしまう……?」
「植物を除去するような薬が無かったかな。僕が小さい頃に見たことがあるんだが……」

 ジャスティンが何を考えているのかラファエルは気づいたようだった。

「あります! それこそ、あのような植物に効果覿面の薬が!」
「でもよ、規模が違いすぎるんじゃネェの?」
「一瞬で全部枯れてしまうわけでも無いだろうしね……」

 と、ラウルとファル。
 確かに彼等の言うことは尤もであり、ラファエルも頷くが。

「流石に一瞬は無理ですが、それでも相当なダメージを与えることのできるレベルの薬もあります。私が考えるに、あの植物に対抗する唯一の手段ではないかと」
「火が使えないんだから……わ、わたしもその案が一番だと思います」
「……だめだったらもう一度引き返せばいいんだしね」

 ルクラの言うとおり、火が使えない状態であの植物を打ち倒すことが難しいことは、誰もが悟っている。
 少々投槍な感じが気になりはするが、クロスの言うとおり失敗したらまた全力で逃げればいい話でもあった。

「それでは、一度街へ戻ってその薬を手に入れる事になるのですね?」
「……あの森に何が巣食っているかもわかったから……個人個人で対策を立ててくることもできるわね……」

 すっと立ち上がり、服の裾に付いた土を叩き落とすゼーレに、水を飲み干し、容器を返すついでにルクラの頭を撫でているヴァール。

「幸い……といってもいいのかわかりませんが。食料品や乗り物以外の生活雑貨や、治療に関係の無い薬はただ同然で手に入る状況です。直ぐに手に入れられるでしょう」
「街に戻って品物を探して、それからまた森へ戻っても十分な時間がある、あれだけ走り続けてきたんだから、皆無理をせずゆっくり街へ――」

 厄介な植物への対策が決まり、何時もの調子を取り戻したジャスティンが皆に声を掛けたそのときだった。




 突如地面が大きく揺れだしたのは。




「うぉっ!?」
「何……っ!?」

 立っていられないほどの揺れに、皆は地面に膝を突いたり、盛大に転んだりする。

「お、王子……!!!」

 ぐらぐらと揺れる視界を辺りに向けていたラファエルが、焦った様子で声を掛けた。
 目は見開かれ、ある方向に釘付けになっている。
 ジャスティンも何事かと、同じ方向を向き。

「なっ!?」

 その光景を見て驚愕した。
 他の仲間達も次々と同じ方向を向き、そして誰もがその光景を呆然と眺める事になる。

「サントシームが……!?」
「う、浮いてる……!!!」

 先ほどまで静かに佇んでいたはずのサントシームが、宙に浮かび上がっていたのだった。

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[36] Obstruction 投稿者:聖龍 光神 (2007年12月31日 (月) 21時32分)
「・・・掴まってろ」

呟くと共に嘉邑ジンがルクラを抱えて先頭の方へと走っていく。

――なかなか、いい所もあるようで――

その様子と、それを冷静に考えてしまう自分に思わず仮面の下で笑みを浮かべてしまう。
しかし、何時までも笑ってはいられない。
後ろ、右、左、上、下、様々な方向から蔓が襲いかかる。

「数が多いね・・・」
「蹴散らそうか――!」

クロスが放った風の刃が、ファルが放ったかまいたちが襲いかかる蔓をまとめて迎撃する。
しかし、全ての蔓が撃退できるわけではない。
刃の弾幕を潜り抜けた蔓が襲いかかってくる。

――いけませんね・・・――

迎撃するために蔓の前に踊り出る。
それとほぼ同時にもう一つ影が出てくる。
先ほど前に出たジンが後ろに戻ってきたのだ。
何か合図するわけでも無く、同時に腕が動く。
硬質化した拳が鞭のように、握られたナイフが牙のように生き残った蔓を一斉に食らい潰す。

「流石ですね」
「ふん・・・」

少し褒めてみたがそっけなく返されてしまった。
そしてバックパックから手榴弾を取り出そうとするが、それを手で遮る。

「何故止める」
「少し、考えが。」

とりあえず、暫くは投げることは無いだろう。
次はあの二人だ。

「ファル様、ラキス様」
「なんだい?」
「なんでしょうか」
「後方の木々に水属性の魔術を。」
「水の・・・?」
「何をするつもりですか?」
「動きを止めます。発動直後、すぐに離脱を。」
「・・・わかったよ」
「了解しました」

二人が詠唱に入る。僅かとはいえ、隙は隙。
魔力をチャージしつつ、襲いかかってくる蔓を鞭となった腕で叩き潰す。
直後。

「水弾!」
「ソウルスプレッド!」

多数の水の弾が、降り注ぐ水流が木々に降りかかる。
発動すると同時に、二人が前へと走っていく。
それを確認すると同時に。

「ア・カートル・メーン!」

氷の力を持つ魔力弾が大量に、水を浴びた木々へと放たれる。
着弾と同時に凍結が木々を侵食し、瞬く間に白い林へと変わっていく。
凍りついた木々は動きを止め、蔓の進撃は一時停止した。

しかし、これで全てが片付いたわけではないだろう。
下手すれば、相手はこの森全体かもしれないのだ。
・・・流石にどこぞの腑海林とまではいかないとは思うが。


さあ、逃走を再開しよう。
終点は、まだまだ見えない。



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[35] 命懸けの逃走 投稿者:卯月 (2007年12月27日 (木) 20時33分)
「・・・・・・面倒だ。」

ジンは最後尾を走っている。すぐ後には蔦が蠢いている。
襲い掛かってくる蔦に苛々したのか何気なく手榴弾を取り出す。

「火使ったらマズイですって・・・」」

近くに居たファルが言う。
この樹海の中で火なんか使ったら大惨事が起きる。

「・・・耳を塞げ。」

「え?」

火薬の量を減らし破壊力を上げる為に鉄片を限界まで詰めた手榴弾。其れを自分の後ろに投げると同時に銃を抜き手榴弾に向けて発砲。

爆音が当たりに鳴り響く。因みにこの爆音に対して使った本人が一番驚いていた。
同時に蔦を幾らか吹き飛ばす。
多少の足止めにはなるだろう。

「・・・ザマねぇな・・・」

其れだけ呟いて再び走り出す。
少しばかり距離が開いた。
急がなければ。

そして、手榴弾第二段の準備に取り掛かる。
手榴弾を分解し火薬を抜く。
其れに鉄片を詰めてメタルジャケットを外した銃弾を一発だけ入れる。此れで完成。
重量は在るものの威力は対戦車地雷並。

だがすぐに使うと言うわけでは無くバックパックに仕舞っておいた。次に使うのは逃げ切ってからだ。

そろそろ蔦が動き出す。
速度を上げなければ。


「・・・っ!」

前でルクラが木の根に躓き転ぶ。

本来ならば見殺しにしていただろう。
忌むべき人間なのだから。

「・・・タオルと飯の礼だ・・・」

そう呟いてルクラを担ぎ上げる。
見た目どおり軽かったのか、片手で持ち上げていた。

「ありがとうございます・・・」

「・・・フン。」

正直驚いていた。
ルクラはジンなら見殺しにすると思っていた。
先のウルフ達の襲撃の際に冷血な人だと思っていたからだ。
見てしまったのだ。弱ったウルフの頭蓋をゴミを見るかの様な目をして踏み潰す所を。
だが、先の行動で意外と人間らしい所があると言う事が分かった。

「・・・掴まってろ」

その声が聞こえた途端に速度を上げる。
一気に先頭まで到着するとルクラを降ろしジンは再び後方に戻って行く。

さてと、逃げようか。

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[33] 行く手に立ちふさがる緑。 投稿者:ベル MAIL (2007年12月26日 (水) 22時34分)
 ラキスとゼーレの二人に起こされ、ジャスティンは最後の見張りを努めていた。
 少し涼しい風が頬を撫でる。
 出発の時刻を考えると、日が昇り始めている頃だろうかとジャスティンは思った。
 
「………………」

 僅かな休息ではあったが、その間にジャスティンは様々な疑問を生み出していた。
 幸いこの森は静かで、不振な物音は直ぐに気づく。
 音だけに神経を集中させて、目を閉じてジャスティンは考え始めようとした。
 そのとき。

「王子」

「……ラファエル?」

 小さい声だったが、誰であるかははっきりとわかる。
 目を開けてみれば、傍に腰をおろしかけていたラファエルの姿が目に飛び込んできた。
 服装はすっかり整えられており、一旦起きただけではないことはわかる。
 その理由も、ジャスティンには直ぐにわかった。

「大丈夫だよ、見張りなら僕一人でも問題無い。僕を思う気持ちはありがたいが、ラファエルが参ってしまっては意味が無いだろう?」

「いえ……もう十分に休息は取りました。私も自分自身に負担が掛かるような無茶はしておりません」

「そうか……わかった」

 長年の経験から、これ以上言っても無駄なのは、ジャスティンは百も承知している。
 そして自分が抱く疑問の答えの足がかりは、この聡明な従者と共に考えれば見つけることができるのではないかと思い、話を切り出す。

「……ラファエル」

「何でしょう?」

「城が堕ちて……暫く何も考えられなかったが、今は少し落ち着いた」

「それは何よりです。……焦りは失敗を生みます。今この状況だからこそ冷静な思考が必要だと私も思います」

「その通りだ。……一つ、聞いてくれるかい?」

「は、何なりと」

 再びジャスティンは目を閉じる。
 じっくりと頭の中で言葉を作り上げてから口に出すように。

「どうして父上は……これを使わなかったんだろう?」

 ジャスティンの言うこれ、とは勿論宝剣アフトクラトルのことである。

「と、申されますと……?」

「聖印を刻み込んだこの剣がジョーカーを倒す唯一の手段……僕たちにこれを託して逃がす時に、父上はそう仰った」

「………………」

「ジョーカーの襲撃も、父上はお見通しだったはずだ。そうでなければあの状況から生きて出られたとは思えない」

 ラファエルはあの時の光景を思い出す。
 確かに二人が逃走する手はずは十分すぎるほど整えられており、ジャスティンが負傷をしたもののほぼ五体満足で脱出できたことは、些か妙であった。
 ジャスティンの言うとおり、クラウゼル王はジョーカーの襲撃を見通していたに違いない。

「このアフトクラトルのことを知っており、ジョーカーの襲撃も知っていた。……じゃあ父上は何故聖印を刻まなかったんだろう?」

「それは……」

 考えれば考えるほど奇妙に思えてくる。
 そこまでわかっていながら何故クラウゼル王はジョーカーを倒す手段を用意していなかったのか。
 幾ら考えても満足のいく答えは出ない。

「……すまない、過ぎたことを考えても仕方が無いな」

「……いえ」

 暫くの沈黙。
 もう一度ジャスティンが口を開く。

「……神殿には、一度だけだが行った事があったね」

「えぇ。王子や私、数人の兵士と共に、でしたね。あの時はこの森も、道に迷いやすいという危険があるとはいえ綺麗な場所だったのですが……」

 一年ほど前、神殿の警備と言う名目で、数人の護衛を引きつれジャスティン達は神殿へ赴いたことがある。
 ラファエルの言うとおり、ジャスティンの一年前の森の記憶は、今の状態とはまるで違うものだった。
 
「この変貌ぶりはどう考えても可笑しい。……もうジョーカーは行動を起こしていると見て間違いないだろうね」

「私もそう思います。……急ぎたいところですが、こうも地形が変化していては神殿を見つけることすら困難だと……」

「いや、そうはならないよ」

 何処までも続くような闇を見渡し困った風に頭を振って見せたラファエルに、ジャスティンは意外にも自信のある口調で答えた。

「忘れたかい、ラファエル? 一年前どうやって神殿へ訪れることができたのか?」

「……!」

「如何にジョーカーといえども、ここにある森を完全な支配下に置くことなんてできないよ。……しっかり、ここに最初から居た【住民】は根付いている」

「苔生した巨木を目印に、でしたね……」

「ここに来る途中何本か見かけた。……それに、この近くにも一本ね。足場が悪いから苦労はするだろうけど、道に関しては問題ないよ」

 気が付けば枝は僅かを残して燃え尽きている。
 ジャスティンは立ち上がり、大きく伸びをした。

「さぁ、そろそろ皆を起こそう」

「畏まりました」

 二人は眠りに落ちているほかの人間達を起こしにまわる。
 静かな森に、だんだんと賑やかな声が混じりだした。




「……よし、準備はできたね。出発しよう!」

 ジャスティンが号令をかけると、休息に使った広場に別れを告げて、再び深い森の中へ一行は歩みを進めていく。
 皆十分休息も取れた上、足場にも慣れてきたようで、進行のスペースは早い。
 
「一応聞くが、がむしゃらに歩いてるわけじゃねぇよな?」

「そこは心配しないでほしい。ちゃんと目印があるんだ」

「目印ィ?」

 ラウルが怪訝そうな顔をするが、ジャスティンは傍ある木に手を触れる。
 それは巨大で、苔生していた。
 周りの木もそれに負けないぐらい巨大なのだが、些か綺麗過ぎる。
 それを考えると、この巨木は本来この森にあり、長い年月を過ごしてきた木であることが伺えた。

「一年前、神殿に訪れたことがあるんだ。その時にこういう木を目印にしたんだよ」

「そんなんで辿り着けたのか?」

「不思議なことにね」

 へぇ、とラウルは意外な顔をして、その苔生した巨木をまじまじと眺めた。

「道に関しては安心しても良さそうだね」

「じゃあ後は、さっきみたいな広場がまたあるよう祈っておこうか。……こんな場所で休息するとなると、逆に疲れが溜まりそうだし」

「確かに」

 ファルは何気なしに辺りを見回して、それから欠伸をした。
 クロスも欠伸はしないまでも、表情は眠たげである。
 ココアが見事に仇になったらしい。
 足場が悪いのに、足元の注意を逸らしたファルは。

「うわっ……?」

 見事に躓いて転びそうになってしまった。
 咄嗟にクロスが服を掴んでくれたおかげで、痛い目に遭う事態は避けられたが。
 
「っと……ありがとう、助かったよ」

「どういたしまして」

「……やっぱりココアなんて飲むからですよ」

 ルクラの鋭い指摘が飛んできて、二人は苦笑いする。

「………………」

 ファル、クロス、ルクラの三人の直ぐ前を歩くジンは、何かを探しているのか時折上を向いていた。
 
「ジンさん?どうかしましたか?」

「……なんでもない……」

 ルクラの問いに、何時も通りの調子で返してしまうと、速度を速めて先に行ってしまう。
 不自然な行動に、先ほどの答え、今度はルクラが不思議そうに上を眺め始めた。

「上に何かあるんでしょうか……?」

「何かが潜んでいる気配は無いけどね」

「そのまま歩いてると転ぶよ?」

「転びませんよ!」

 ファルのからかいに少し顔を赤らめつつ、ルクラは慌ててそれをやめて再び足元に注意を向け始めた。


「………………」

 速度を歩め先頭に近い場所を歩くジンは、一人考え込んでいた。
 休息のとき、自分が見張りをしていた中で見た夜空についてだ。
 あの時は確かに星が瞬いていたのを見たはずなのだが、いざ出発のときになると、あたりは真っ暗で光が差す隙間も無い。

「(幻覚……?……まさか。【視る】のは死者だけで十分だ)」

 考え込んでいるジンだが、傍から見れば普段どおりの姿なので誰も不審に思わない。
 寧ろその方が邪魔されずにすむ、などと思いつつジンは歩みを進めていっていた。
 

 初日のように狼達の襲撃も無く、順調に進んでいく一行。
 神殿に辿り着くのも、後は時間の問題だと皆が思い始めたそのときだった。

「……?」

 一行の目の前に、巨大な【壁】が現れたのだった。


「これは、一体……?」

 目の前に現れた巨大な壁に、一同は歩みを止めざるを得ない。
 ジャスティンがカンテラを掲げる。
 赤い光に照らされた壁は、気色悪い文様を曝け出した。
 
「……根っこだ!」

 その巨大な壁は、植物の根っこが複雑に絡み合い形作られたものだった。
 脈打つその姿は不気味としか言いようが無い。

「おいおい……!?異常発達しすぎだろうが!」

「……貸して……」

 ジャスティンからカンテラを受け取ると、ヴァールは素早く壁に近づいて、調べ始めた。
 
「……何かわかりましたか?」

 ラファエルの言葉を背に受けて、ヴァールはゆっくりと戻って来る。

「……根っこじゃないわ」

「え?」

「……蔦ね……」

 それだけ言うと、カンテラをジャスティンの手にしっかりと握らせて隊列に戻ってしまう。
 
「……回り込むか……?」

「疲労が溜まるだけだよ。……この壁、とてつもなく広い範囲にできてる」

 目を閉じて集中していた――風の流れを読み取り、あたりの地形を探っていたのだろう――クロスが告げる。
 
「よ、よじ登るとか……?」

「無理よ……一本一本が滑りやすいから……」

「クロス、壁の厚さはどれくらいある?」

「ちょっと待って……。……1.5、ってところかな。……センチじゃないよ。キロでもない」

「回り込むのもだめ、登るのもだめなら……残された手は少ないでしょうね」

「………………」

 ジャスティンはもう一度壁を見てから、振り返る。

「時間は掛かるかもしれないが仕方が無い、破壊しよう」

「やっぱそうなるわな」

「了解……」

「火は使わないで下さい。理由は昨日も言いましたが」

 それぞれが獲物を構え、術の詠唱を始め。

「……行くぞっ!!!」

 ジャスティンの掛け声と共に、一斉に攻撃が壁に放たれた。
 風の刃と剣が壁となっている蔦を切り裂き、拳が潰し、大きく壁が抉れる。
 大した強度は持っていないようである。

「……っよし!案外楽に突破――!?」

 抉れた様子を見て思わず笑みを浮かべたジャスティンの言葉が遮られる。

「王子っ――!?」

 次の瞬間、ジャスティンは後方に倒れこんだ。
 頬には真新しい切り傷ができている。

「……っ!?な、なんだこりゃ!?」

「壁が……!」

 壁が動き出した。

「つっ……!」

「王子っ!」

「大丈夫だ!」

 すぐさまジャスティンは立ち上がり、剣を構えた。
 壁の一部の蔦が、結びを解いて一行に立ちはだかっている。
 その殺傷能力は、ジャスティンにできた頬の傷が物語っている。

「……きゃっ!?」

 ルクラの悲鳴があがる。
 足元を見たまま、彼女は硬直していた。
 何事かと数名が足元を見やると。

「……蔦が……」

「動いてやがる……!?」

 足元に張り巡らされた蔦が、不気味に蠢いていた。
 
「まさか、ここ一帯の植物が全部……」

 ファルの嫌な予感は的中した。
 次の瞬間、波の様な音があたりを包み込む。
 それは葉っぱが擦れ合わさって発せられる音。
 まるで森が怒号を上げているかのように、乱暴な音が響く。
 周囲から次々と蔦が立ち昇り、一行にその鋭い先端を合わせた。

「くっ……!」

 どう考えてもこちらが劣勢である。
 壁を睨みつけていたジャスティンは、撤退という選択を迫られ、悔しさに邪魔されながらもそれを受け入れた。

「皆!一度退こう!」

「逃げるったって……!」

「こっちだ!」

 ジャスティンがもと来た道を駆け出す。
 それに一行が付いて行く形で撤退は始まった。

[34] ベル > 非常にお待たせしました。
事情により大幅に遅れてしまいました。ごめんなさい。
今回は撃破が目的ではありません、逃げてください。
どのような形で追っ手である蔦の群れを撃退していくか、そこを書くようになります。 (2007年12月26日 (水) 22時47分)
名前 文字色 削除キー

[32] 大森林の謎。 投稿者:ベル MAIL (2007年12月26日 (水) 22時31分)
「(ふう……情報収集に時間をかけすぎた……)」

 内心冷や汗をかきつつも、それを悟られないように焚き火の中の枝を眺めてみるラキス。
 ゴーストとの会話が可能である彼は、勿論この森に居るゴーストを片っ端から問い詰めて、現在の森についての情報を集めていた。
 傍から見れば虚空と一人話している危険人物なので細心の注意を払い、誰にも見られずに何とか事を終えることができたのだが。
 少々熱中しすぎたようで、見張りの番が回ってきているのに気づかず、慌ててコートを羽織って、寝坊した風に装いつつゼーレの前に現れた、と言うわけだった。
 幸い彼女は機嫌を悪くしたようでもなく、微笑んでくれたのが救いである。

「(……しかし……)」

 焚き火を眺めつつ思考する。
 あるゴーストから得た有力と思われる情報の整理のためだ。


「何時からこんな状態に?」

「死んだ身のあたしが言うのもなんだけどね、信じられないよ。……そうだね、異変が起こったのは丁度一週間も前さ。初めは気のせいかと思ったんだけど、一日立つごとにどんどん木々が生長して巨大化していたんだ。一体何が起こったのか……」

「異変の前に何か変わったことは?」

「そうだねぇ……。……あぁ、ここから……見えるかい、苔生した木が。あの先を真っ直ぐ行けば……そこに遺跡があるんだ」

「遺跡……?」

「そう。随分古い遺跡だよ。散歩したことがあるけど、何かお宝があるってわけでも無いんだけどね。……そうだね、異変が起こる前に、ヘンテコな奴が遺跡に入っていくのを見たよ」

「ヘンテコな奴……?」

「なんていうんだろうねぇ……。……あぁ! ピエロだねピエロ! 例ならそれがぴったりだ!派手な化粧をした男が、一人ニヤニヤ笑いながら遺跡に入っていったのさ! 何をしに入ったかは、流石にあたしもわからないよ」

「そうか……。うん、ありがとう」

「どういたしまして。……まぁ、疲れもしないし腹も減らない、こんな地形はどうってことないんだけどさ。やっぱり見た目が悪いよ。坊やに任せるのもなんだか間違っている気がするんだけどさ、どうにかしてこの森を元に戻しておくれ。……小動物がさっぱり居なくなっちまって飽き飽きしてきたんだよ」




「(ピエロのような……男、か)」

 異変の前に目撃された奇妙な男、その人物がこの異変に関わっている可能性は大きい。
 恐らくその遺跡とやらは、聖印が眠っている神殿だろう。

「(クラウゼル城の浮上に連動している……?)」

 クラウゼル城が浮いてまもなく確認された異変。
 確証は無いが、やはりこれも可能性が大きいのではないか。
 
「(……ジョーカーか)」

 森全体をこんな状態にできる人間など限られている。
 今の状況を考えると行き着く人物は一人。
 とてつもなく強大な存在に立ち向かっていることをラキスは改めて実感する。
 そのとき。

「……どうされました? 先ほどから、焚き火を眺めてばかりで」

「え? あ、いや……」

 考え込んでいる姿を不審に思われたのか、ゼーレに声をかけられた。
 咄嗟の返事ができず、答えに詰まったものの。

「ふふ、眠いのはわかりますがもう暫く頑張りましょう。与えられた役目はしっかりとこなさなければいけませんから」

「すみません……」

 特に彼女は咎める事も、追求することもせずに微笑んでいる。
 どうやら完全に寝坊したと思われているらしい。
 苦笑いして、ラキスは何気なしにゼーレに視線を向けた。
 
「……?」

 ふと、ゼーレの姿に違和感を感じる。
 服装がどこか乱れているというわけではない。
 しかし何か、何かが可笑しい。
 まるで中途半端な何かを見ているような気分にラキスは陥る。


 それがまさか、ソウルオペレーターとしての視点から見た違和感とは、流石に彼も気づけなかった。
 また深い思考に陥ってしまったものだから。

「……ラキス様?」

「……あ」

「ふふ、黙っていてはやはり眠気が襲い掛かってきますものね。……そうですね、取って置きの話題がありますが、如何でしょう?」

 またやってしまった、と心の中で反省しつつ。
 ラキスはゼーレの言う話の先を促す。

「……この森、ラキス様はどう思われますか?」

「……普通の森ではないことは確かだ。百年掛かったとしてもここまで立派な大森林にはなれないと思う」

「同感です。……普通に成長していては、こんな姿になるのに気が遠くなるほどの年月が必要でしょうね」

「そうなると、こうなった原因は一つしか思い浮かばない」

「えぇ。……何者かが手を加えたのでしょう」

「僕も同じ考えだよ」

 ラキスの答えに満足したのか、またゼーレは微笑んだ。
 そしてラキスの瞳をしっかりと見据えて話を続ける。

「ところで……ラキス様はお気づきですか? ただ木や根っこが巨大なだけではないことを」

「………………?」

「静か過ぎるのです。……動物の声も、虫の動き回る微かな音さえも聞こえない。このような森は初めてです。……動物といえば、私達が戦ったあの狼の群れが居ましたけれど……、ここに来るまでの間、それ以外の動物を私は見かけていません。ラキス様は何か、お見かけになりましたか?」

「いや……見かけていないよ」

「……狼達の異常な数については、ラキス様もお気づきかと思います。……ではこの森の何処にあれだけの数に増やせるほどの餌があるのでしょうか?」

「………………」

「手を加えた何者かは……私達の進行の邪魔をするだけのためにこのような状態にしたわけではないのでは、と私は考えています。……もっと他に意図がある……そのような気がいたします」

 まさか彼女も、自分のようにゴーストから情報を仕入れられるわけではないだろう。
 今まで経験した事を基に、仮説を組み立て推理する。


――……小動物がさっぱり居なくなっちまって飽き飽きしてきたんだよ――


 ゴーストがぼやいたことで初めて、この森のもう一つの異常な面に気づいたラキスにとって、ゼーレの洞察力、推理は驚くべきものだったといえる。
 
「なるほどね……。言われてみれば、確かに静かだ。静か過ぎる……」

「お互い、気をつけましょう。闇の中を手探りで進む事になるのですから……」

「……そうだね」

 いつの間にか、枝はすっかり燃え尽きていた。

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[31] 紅い光を絶やさぬように。 投稿者:ベル MAIL (2007年12月26日 (水) 22時29分)
 ゼーレはふと顔を上げて、目の前の焚き火の中で燃える枝に視線を移した。
 まだまだ枝は、その役目を終えるには随分と時間が掛かることがわかる。
 先ほど見張りを頼んだ影からの連絡は何も無い。
 異常が無いのは勿論結構なのだが、一人きりというのはどうにも暇を持て余す。
 もうすぐ、ペアで見張りをすることをクジで決めた少年、ラキスが訪れるのだろうが、その間の時間をどう使うか、ゼーレは少々考えていた。

「………………」
 
 キョロキョロと辺りを見回すと、好みの場所に身を預け眠りについている仲間の姿。
 あまり好ましいことではないかもしれないが、彼らの観察をゼーレは始めた。
 

 まず目に付いたのが、木に寄りかかったまま目を閉じているジン。
 あれで本当に疲れが取れるのだろうか、とゼーレは首を傾げる。
 声をかけてやろうかと思ったものの、そこは踏みとどまった。
 どうにも口数が少なく、いわゆる人間嫌いのオーラが出ている(ような感じ)なので、ゼーレも正直どう声をかけてよいのかわからなかったからだ。
 本人はあれが一番寝やすいんでしょう、と自分の心の中で結論を出し、視線を彼から外す。


 他の人間は、皆焚き火の付近で寝ているため、特に視線をあたりにやらずとも全員の様子が確認できる。
 二つ前の見張りを努めていたヴァールはというと身動き一つせず、まるで死んでいるように眠っているという表現がぴったり当てはまる状況だ。
 三つ前の見張りを努めたお調子者ラウルも、普段の騒がしさからは想像出来ないほど静かに眠っている。
 彼は自分の受け持ちが終わっても何故かそのままヴァールと一緒に見張りをしていた。
 無論その理由が、ゼーレにもわからないわけではない。
 元気なものですね、と思いつつ僅かに笑みを浮かべる。
 幾ら彼が、彼の言う大人、であったとしても、戦闘や道中の疲れが溜まった状態で、長時間の見張りはさぞ眠気を誘うことだったろう。

「………………」

 ルクラは手荷物の中の分厚い辞書に柔らかな布を巻いて、それを枕にしてぐっすり眠っている。
 大きなつばの三角帽子は傍らに丁寧に置いてあり、普段は隠れてしまって見えない彼女の顔が焚き火の光に照らされよく見えた。
 その寝顔は本人には悪いが、その身体の小ささも手伝って本当に何処にでも居る幼い少女のもの。
 長い旅になることを予測しているゼーレには、果たして彼女に耐えることができるのか甚だ疑問であった。
 かといって、どう言えばいいか見当も付かない。
 せめて大事が起きないよう、そっとゼーレは祈りを捧げる。
 
「…………あら」

 ルクラの両脇に寝ているファルとクロスは、今まで見てきた面々とは違っていた。
 何度も寝返りを打ったり、頬をかいてみたり。
 明らかに眠りにつけていない様子。
 
「……あぁ、そういえば」

 見張りを交代したときに微かに香っていたココアの匂いを思い出す。
 なるほど、とゼーレは微笑む。
 そして少しでも早く眠りにつけますように、とそこそこに祈りを捧げてみた。

「すみません、遅くなりました」

 祈りが終わった丁度そのとき、コートを羽織ながら現れたラキス。
 ぺこりと頭を下げた彼に、いいんですよと微笑み返す。
 丁度向かい側にラキスは腰を下ろして、焚き火の中の枝を眺め始めた。

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[30] Maneuver 投稿者:聖龍 光神 (2007年12月03日 (月) 23時38分)


「――――報告は以上です。」


暗い森の中、その中でより暗い場所からかすかに声が聞こえる。

しかも、一つではなく、二つ・・・

一つの主は小さい、妖精。もう一つの主は、闇に溶けるような黒い修道服を着こんだ一人の少女。


『――はい、OK。随分と苦労してるのね』

「仕方ありません。人員が人員ですし、地形が地形です。幼い人達も多いですし。」

『白面も見た目だけだとそうだけどね』

「ふふ、一言多いですよ? それと、報告にもあったことですが・・・」

『この森のことでしょ? 私なりに調べてみるよ。』

「お願い致しますね。・・・この位ですね、私からは。」

『わかった。それじゃまたね。』


声と共に小さな影は痕跡も残さぬほど完全に消え去った。


「・・・さて、そろそろ私の番ですね。」


前の面子が見張りについてからそれなりに時間が経つ。そろそろだろう。

それと申し合わせるように火の側から衣擦れ音が聞こえる。

恐らく、三本目の松明が燃え尽きたのだろう。

見張りをしていた彼らと入れ替わるように火の傍らに座り込む。

暫くすれば、もう一人の見張り番の少年もやってくるだろう。

その前に――


「エール、ベヴェークター、デリバレイト、来て下さい。」


ゼーレの背後の闇の中に三つの影が姿を見せる。


――主、命、何か?――


一際大きい影が言葉を発する。しかし、その声は少女の中にのみ響き渡る。


――周囲の索敵を。
   エールとデリバレイトはこの周辺の森の中を。
   ベヴェークターは上空での警戒と索敵をお願いします。――

――御意。――


その返信と共に三つの影はそれぞれの持ち場へと散っていった。


「さて、そろそろ始めないといけませんね。」


時間を計るための薪に手に取り、火をつける。

次の見張り番との交代まで、まだまだ先は長い。



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[29] 星振る夜の激闘 〜少女捕縛中〜 投稿者:ま〜 (2007年12月02日 (日) 21時35分)
「おやおや。アルデバラン、君ほどの人が苦戦するとは、珍しい。」
「ジョーカーっ!?」
「何だって!?」

奥の間から、不気味なほど静かに現れたのは。他でも無い、ジョーカー本人。
自らの首を狙ってきただろう侵入者の下に、わざわざ姿を見せに来た。

「・・・ジョーカー、でしゃばってんじゃねぇ。こんな小娘、俺1人で十分だ!」
自分のボスに対して、臆面も無く悪態をつくアルデバラン。しかし、ジョーカーはまるで気に留めない様子で降りてくる。
このアルデバランに対して、そして、それを迎撃する手強い侵入者に対しても、警戒すら抱いていない。
それほど、このジョーカーの持つ力は強力なのだろうか。その首を狙ってきたはずの侵入者は、その余裕を前にして
即座に行動ができなかった。

「そう言うな。私も、ただ座してみているだけではつまらぬ・・・・それに。」
それに・・・?と言いかけて、ジョーカーは言葉を止めた。
今、何を言おうとしたか判らない。しかし、ここに来た目的は、今目の前に居るジョーカーをここで仕留める事。
わざわざ聞いてやる義理は無い―――気圧されていた頭がようやく思考を再開した。
そしてその瞬間、侵入者はその瞬発力でジョーカーの首を取らんと飛び掛っていた。

「ジョーカー、その首貰った!」
だが、その突き出した拳は、ジョーカーに届かなかった。少女の体は、飛び掛った空中で止まったのだ。

「あ・・・れ・・・??」
体を動かそうとも、動けない。なにか強力な力で、体を縛られているような感触。
何が起こったのかわからない。しかし、これが目の前に居るジョーカーの力だということは確かだった。
そして、ジョーカーが軽く腕を振り上げると。

「うわぁっ!!」
少女の体は空中で×の字に開かれ固定され、そのまま勢いよく壁に叩きつけられた。
無防備な体勢で叩きつけられた少女はぐったりとうな垂れる。

「せっかちな子だな。話の途中だと言うのに・・・せめて、名前くらい教えて欲しいものだ。」
少女を軽くあしらったジョーカーは、余裕に満ちた表情で問いかける。
その余裕は、自分が今襲われたという自覚すらないような、今の行動を、五月蝿い蝿でも叩いたくらいにしか考えて無いほど落ち着いている。
「・・・ルーシー。俺の名前だ・・・覚えておけ。」
その余裕が気に食わないのか、ルーシーと名乗った少女は、両掌をジョーカーに向ける。またも「あの技」を放つ姿勢―
だがそれを見ても、ジョーカーは繭一つ動かさない。いよいよ苛立ちを覚えた少女は、残った力を全て搾り出すように掌に集め、渾身の一撃を放つ!
眩い光を放つ波動に飲み込まれるジョーカー。

やった!―――確信した少女の顔がほころぶ―――

しかしその顔は、次の瞬間には絶望の顔に変わった。
確かに直撃したジョーカーには、傷一つ・・・その服すら、汚れの一つすら付いていなかったのである。


そしてジョーカーは、先ほど言いかけた台詞の続きを言い放った。


「その娘には使い道がある、君に任せたら、それを壊して使い物にならなくしてしまうだろう?」


――――背筋に、悪寒が走る。
ここに至って侵入者の少女は、目の前の相手の力。そして、自分の置かれた状況を理解する。
アレは、捕食者。 ココは、その巣。 私は今、それに捕まっている。
必死に拘束を振りほどこうともがく。しかし解けない。元より、何に捕まっているかも判らないものを、解きようも無い。
血の気が引いていく。どうしようもないとわかって、なおもがく。
ジョーカーが腕を振ると、再び壁に打ち付けられた。意識が、遠のく―――


―――「この娘、上手く使えば面白いものが―――処置は、テトラにまかせ―――」
意識が薄れてゆく中、その言葉を少女は、最後まで聞き取れなかった。



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[28] 星振る夜の激闘 〜少女激闘中〜 投稿者:ま〜 (2007年12月02日 (日) 21時34分)
ジャスティン一行が森中で休息を取っていたその夜。北の空に、一筋の流れ星が落ちる―――

森の中で、空の見えない彼らはそれを見ることはなかったが、サントシームの街にする人々の目からはしっかりと見ることが出来た。
南の空より、宙に浮くクラウゼル城に向かって落ちていったそれは、街の人間には流れ星にしか見えなかった――が。

「流れ星・・・・?」
城の渡り廊下から外を見ていたミネルバも、最初はただの流れ星だと思った。しかし数秒後、異変に気付く。
流れ星が、こちらに向かってくる。進路を変え、城の上部―――玉座の間のある階に一直線に飛んでいく。

―――――曲者だ!!
何者で、どういう手を使って来たのかは分からないが、それが自分の主、ジョーカーを狙っていることはすぐに分かった。
すぐさまミネルバは城の階段を駆け上がる。曲者から主を守るために。

「オラァッ!」
最上階、勇ましい声が響く場内。流星のように城に侵入した曲者は、操られた城の兵士を蹴散らし玉座の間に向かっていた。
階段の上にミネルバが捉えた侵入者は、その猛勇ぶりからは想像もつかない―――華奢な体格の、女だった。
階下から見上げる形で正確には掴めないが。おそらく身長160に届かず、体重も50にも足らないような体格。
女戦士といえば自分のような体格優れた屈強な者しか知らないミネルバにとっては信じ難い光景であったが、
主の危機にその疑問はすぐ棚に上げ、侵入者を仕留める為に階段をかけ上げる。が。

階下から迫る気配に気付いた侵入者は、階段に手のひらを向ける。魔法か何か撃つ気だろうか。小賢しい、打ち落としてくれる。
だがその時、侵入者が笑みを浮かべた。その瞬間、その手のひらから、何か強力な力が放たれた。
しまった。狙いは私じゃない。その攻撃は、ミネルバが駆け上がろうとした階段を撃ち落したのだ。
足場を砕かれ、階下へ落ちて行くミネルバ。これでは、侵入者より先回りすることは不可能。
追跡経路を封じたことを確認した侵入者は、悠々と玉座の間への進行を再開する。だが―――――

「・・・やっぱり、そこまで都合よくはいかねぇってか。」
侵入者が愚痴を漏らす。目の前に、三魔将の1人。アルデバランが立ち塞がっていたから。
「ゲハハハハ、城の兵士どもがこんなに情けねぇとはな。たかが小娘1人にこのザマとはよぉ!」
笑い飛ばすアルデバラン。それは久しぶりの獲物が、こんな「壊しがい」の無い相手とは、という不満も混じっているように聞こえた。
「へっ。見た目で判断してると痛い目見るぜ?」
対する侵入者は、それで油断してくれるならしめたものと言った様子。こちらは油断せず、戦闘態勢を取る。
アルデバランは、改めて侵入者の装いを確認する。丈の長い黒ワンピースに、何故かひらひらのエプロンなどつけている。
髪は綺麗な金髪で2つに結んであり、顔立ちも悪くない。やはり、兵士数人を瞬時に仕留め、ミネルバの追跡まで振り切る猛者にはとても見えない。
そう考えていると、先に侵入者から仕掛けてきた。

―――――速い!!
侵入者の、予想外に速い踏み込みに、とっさに右腕で相手の拳を防御するアルデバラン。
だが、油断していたその予想外に速く鋭い拳のラッシュ。結果、二周り以上も小さい相手に巨体が圧されていく!
押し返せないアルデバランは、一度防御を解きあえて攻撃を受け、後ろに飛ばされることで距離を取る。それと同時に、棺を開く。

開かれた棺から湧き出てくるのは、無数の死者の兵士。
「このクソガキがぁ・・・!捕えてジョーカー様に差し出そうと思ったが、止めだ!」
こんな小娘に攻撃をされたのが許せないと言うのか、怒りを露にするアルデバラン。
しかしそこは、屈強な兵士を瞬時にしとめた相手。アンデットの動きなど止まってるも同然と、視線すら向けずに跳ね除けアルデバランに肉迫する。
しかし―――その突進は、アルデバランのなぎ払う右腕によって阻止された。
見ればその右腕は、先ほど攻撃を受け止めた右腕とはまるで違う、形容しがたい異形の武器を纏っていた。

異形の変化をした腕を警戒し、足を止める侵入者。
「てめぇ、その腕は一体なんだ?」
「聞かれて答えるバカがいるぁ!ゲハハハハァ!」
言うや否や、右腕を振り回し襲い掛かる。侵入者はなんとかかわしているが、こう長いリーチで振り回されては拳が届く間合いに入れない。
気がつけば、すでに壁際。逃げ場が無い。とっさに両手を前に突き出す。
「死ねぇ!!」
アルデバランが、歓喜の笑みとともに右腕を振り上げる、絶体絶命その瞬間。

少女の両手から光の波動が放たれる――それは、この城に飛び込んできた流星の光と似ていた。
右腕を振り上げ無防備だったアルデバランの体を直撃し、反対の壁際まで押し返し叩きつける。
「なん・・・だ・・今のは?」
今度はアルデバランが逆に問う。
「へっ・・・聞かれて答えるバカがいるかってんだよ!」
そして、その返答も同じであった。そして、アルデバランは再び立ち上がる。

アルデバランの表情は、さらに怒りが満ち溢れている。
こんなチビの女に、これほどに手傷を負わされることが、この男にとってはたまらなく許しがたい事なのだろう。

だが、侵入者の少女も息を切らしている。おそらくは、今放った技は相当に体力を消耗するのだろう。
それを今の1発に加え、階段を破壊したときにも1発。そして、突入時。おそらく今の技の反動を利用して城に飛び込んできたのだろう。
このまま戦えば負ける―――侵入者がそんな思考をめぐらせている時。


戦いは、思わぬ闖入者によって閉じられた。

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[27] 炎囲む三人の子供達 投稿者:水鏡 聖牙 MAIL (2007年12月01日 (土) 00時34分)

 見張りの番が回ってきて早二十分。あの薪は半分ほどまで燃えていた。
ラウル曰く“ちみっ子達”による、ある意味運命のくじ引きの結果、ファルはクロス、ルクラと組んで見張りをしている。

 因みに昼時の戦いでファルはラウルといい具合にコンビネーション攻撃をしていたが、
実はこの少年、二回ほど狼に踏みつけられていたのだった。
その時に強く泥濘に打ち付けられて、コートがずぶ濡れになっていたのだった。
幸いな事に泥は沈殿していて、軽く濡れただけで事無きを得た。
今はコートを替えて、先程まで着ていたものは火の傍に掛けて乾かしている。

「―無様だったなぁ」

 宵の口なのか、真夜中なのか、牛三つ時なのか、明け方なのかは分からないが、視線を天に向ける。
自分の故郷だった森も、大体このような景色だったか。いや、もう少し夜空が見えたか。

「本当にね。あれは、見るに堪えなかったな」
「…そう言われても反論が出来ない所が痛いね」

 火の向かい側にいるのは昼時の戦いで助太刀に現れたクロス。
その言葉にファルは苦笑しながら頭を掻いた。恐らくこの少年、開き直っている。

「あ、あの!」

 黒いローブを羽織った少女、ルクラが若干遠慮がちに声をあげた。
その声に二人は一斉に顔を向ける。

「どうして…ミルクココアなんて飲んでるんですか?」

 ファル達が片手に持っていたマグに目をやると、確かに中身はミルクココアだ。
ルクラが言いたい事は二つ。何故牛乳が密林であるここにあるのか、何故このタイミングで飲むのか。
あまり考えず、ファルは言った。

「…牛乳はサントシームで買って水筒に入れてきた。当然、僕の財布からだけど」
「で、それを僕が少し頂いているわけだね。この借りはきっと返すよ、ファル」
「それと、どうしてこんな真夜中に飲む必要があるんですか!眠れなくなりますよ?」

 ファルとクロスは互いに顔を見合わせながら、少し微笑んだ。
そして同時に言った一言は。

「大丈夫、僕はカフェインに耐性あるからきっと眠れる」
「寧ろ、僕等が眠らない方が周りには迷惑掛からないからね」

 残念ながらバラバラだった。
ルクラは一瞬、頭痛がする感覚を覚えた…気がする。
その様子をただ見ているルクラに、気を遣うつもりなのか、からかうつもりなのかは知らないが、ファル達は言った。

「あ、飲む?」
「いりません!」
「じゃあホットミルク」
「…頂きます」

 少し肩をすくめながらルクラはこくりと頷いた。
幸い、使い捨てのコップは何個か持っていたのですぐに取りだし、注いだ。
それを少しずつと飲みながら、彼女が気づいたことが一つ。
このコップは、“サントシームの風”からファルが拝借したものであること。
コップですらもれなく頂いてくる辺り、彼に抜かりは無いようだ。


「…ところで、この森にはどうやら不穏な空気が流れているようだ」

 コップで手を暖めながら、クロスは言った。ここまで育った、育ちすぎた木の根と言い、ひしめきあう枝と言い、
大人が十人程で囲んでようやく一回りすると思われる木の幹と言い、時々響く怪鳥にも似た鳴き声と言い、
…確かに、どこをどう取ろうと異常である。

「…僕もそう思う。聞いていた話では、もっと美しい森だった」
「はい、わたしもこの前、薬草摘みの手伝いでこの森を訪れたのですが…その時に摘んだ草が、見当たりません」

 ファルとルクラもそのことに同意をした。
ファルはそもそもこの森のことは噂でしか聞かなかったので実際に訪れるのは初めてだが、
ルクラは過去に訪れたことのある森なので、その変化は著しいものだったことを示していた。

「さて、焼け落ちるまでに僕は身支度をするかな」
「え?…行っちゃうんですか?」
「違うよ、朝早くに行動を開始するなら準備は夜のうちに済ませないとと思ってね」

 そう言うと、クロスは手短に持ち物の整理を始めた。
途中まで一人で戦闘していたからか、薬品の消耗が激しかったらしい。
それが言えるのは、何度も持ち物の出し入れをしていたせいで鞄の中身が芋を洗うような状態になっていたからである。
 ファルはその光景を見ながらマグの中身を飲み干した。

「…僕は剣の手入れでもするかな」

 剣を抜き、刃こぼれが無いかを確認する。
どうやら異常は無いらしい。この剣の硬度は、狼達の爪よりかは勝っているようだ。
刀身の血を拭き取り、すぐに剣を片付ける。
 ルクラはその間、本を読んでいた。本は本でもそれは魔道書、時々辞書を引きながら読み進めていく。


 ―それから暫く時間が過ぎた後。
ファルはおもむろに立ちあがり、火の側で乾かしていたコートが乾いたことを確認すると、

「どうやらあの薪も燃え尽きたらしい。僕等“ちみっ子達”はおねむの時間だ」

 ラウルの言葉をそのまま引用し、ファルは伸びをしながら言った。
クロス、ルクラも出していたものを片付けて、待機場所へと戻った。
 そして、ミルクココアを飲んでいたファルとクロスが眠れたのかどうかは、彼らのみぞ知る―

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