[36]
Obstruction
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投稿者:聖龍 光神
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(2007年12月31日 (月) 21時32分) |
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「・・・掴まってろ」
呟くと共に嘉邑ジンがルクラを抱えて先頭の方へと走っていく。
――なかなか、いい所もあるようで――
その様子と、それを冷静に考えてしまう自分に思わず仮面の下で笑みを浮かべてしまう。 しかし、何時までも笑ってはいられない。 後ろ、右、左、上、下、様々な方向から蔓が襲いかかる。
「数が多いね・・・」 「蹴散らそうか――!」
クロスが放った風の刃が、ファルが放ったかまいたちが襲いかかる蔓をまとめて迎撃する。 しかし、全ての蔓が撃退できるわけではない。 刃の弾幕を潜り抜けた蔓が襲いかかってくる。
――いけませんね・・・――
迎撃するために蔓の前に踊り出る。 それとほぼ同時にもう一つ影が出てくる。 先ほど前に出たジンが後ろに戻ってきたのだ。 何か合図するわけでも無く、同時に腕が動く。 硬質化した拳が鞭のように、握られたナイフが牙のように生き残った蔓を一斉に食らい潰す。
「流石ですね」 「ふん・・・」
少し褒めてみたがそっけなく返されてしまった。 そしてバックパックから手榴弾を取り出そうとするが、それを手で遮る。
「何故止める」 「少し、考えが。」
とりあえず、暫くは投げることは無いだろう。 次はあの二人だ。
「ファル様、ラキス様」 「なんだい?」 「なんでしょうか」 「後方の木々に水属性の魔術を。」 「水の・・・?」 「何をするつもりですか?」 「動きを止めます。発動直後、すぐに離脱を。」 「・・・わかったよ」 「了解しました」
二人が詠唱に入る。僅かとはいえ、隙は隙。 魔力をチャージしつつ、襲いかかってくる蔓を鞭となった腕で叩き潰す。 直後。
「水弾!」 「ソウルスプレッド!」
多数の水の弾が、降り注ぐ水流が木々に降りかかる。 発動すると同時に、二人が前へと走っていく。 それを確認すると同時に。
「ア・カートル・メーン!」
氷の力を持つ魔力弾が大量に、水を浴びた木々へと放たれる。 着弾と同時に凍結が木々を侵食し、瞬く間に白い林へと変わっていく。 凍りついた木々は動きを止め、蔓の進撃は一時停止した。
しかし、これで全てが片付いたわけではないだろう。 下手すれば、相手はこの森全体かもしれないのだ。 ・・・流石にどこぞの腑海林とまではいかないとは思うが。
さあ、逃走を再開しよう。 終点は、まだまだ見えない。
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