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RELAY NOVEL
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[26] 星と森と旅人達と 投稿者:卯月 (2007年11月26日 (月) 20時55分)
「・・・最初か・・・」


どうやら最初の見張りはジンだった様だ。
彼は明かりも付けずに辺りを見る。人間離れしている為に闇の中でも目が効く。ただ、余計なものも見えてしまう事もある。
地獄だのなんだのと関わっている者の性なのだろう。
生者ではない者が時折見えてくる。


今もジンが見据える方向には数名居る。
恐らく近くに遺体があるのだろう。
もう骨になってるだろうが。


だが、そんな事は関係ない。
勝手に死んで勝手に化けて出てるんだ。
勝手に逝く所に逝け。

「・・・来ない事を祈る」

「?」

「・・・何でも無い・・・」

近くに居たクロスに聞こえた様でジンは誤魔化す。まさか、幽霊が居るなんて言えないからな。見張りを続けながら銃の手入れを始める。
と、言っても本当に簡単な整備だけで素人でも出来る様な事しかないが。


整備を終えると銃を威嚇の為に一発だけ撃ちその加熱した銃身に煙草を当てる。煙草を銜えながら見張りを続ける。

「年のクセにそんなモン吸ってると早死にするぜ?」

「・・・これでもまだ二十一だ。」

「嘘ォ?年誤魔化してるだろ?」

「そんなに・・・老けてるか?」

「何つーか落ち着き様がよ。」

「・・・そうか」

自分よりも年上のラウルにそう言われたジンは背伸びをする。
一日一本と決めた煙草がそろそろ終わりそうだ。

だが、まだ見張りの時間は終わらないだろう。

「・・・いっその事徹夜するか・・・」

依頼の関係で不眠不休で動いた事もあるならば三日位は寝なくても平気だ。ただ、その後は死んだ様に眠って動かなくなるが。

にしても、良い星空だ。
昔の事を思い出す。決して良い記憶では無いが。


人間に幽閉され、鬼に疎まれ。
自らの出生を呪い。


―人間を呪え。恨め。殺せ。

・・・黙れ、失せろ

―斬れ、刺せ、撃て、燃やせ。

・・・**

―では、望み通りに。後悔すんなよ?

「・・・鬼め。」

そう呟いて再び辺りは静まった。

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[24] 暗く深い森に浮かんだ、小さく紅い光。 投稿者:ベル MAIL (2007年11月20日 (火) 20時34分)
「はっ!勢いが無くなって来たな……おらぁどうしたケモノヤロー!」
「煽らないで下さい。勢い付いて来られても困るのは此方なんですから」


 飛び掛るフォレストウルフの腹をラウルが思い切り蹴り飛ばし、浮いたところをファルが剣で追撃を仕掛け確実に仕留める。
 なんだかんだでこの二人、なかなかのコンビネーションを見せている。
 ラウルの言うとおり、フォレストウルフ達の勢いは随分と弱まっていた。
 最低四匹、多いとその倍が一度に飛び掛ってきていた最初とは違い、今はその半分来ることが珍しい。
 

「生き物ですから、数に限りがあるのが道理です。……しかし、あまりにも多すぎた感じがしますね」
「……そうね……。……この森に、あれだけの数が繁殖できるほどの餌があるとは思えないわ……」
「前方から三、後方から一。……来ます」


 ラキス、ヴァール、ゼーレの三人は、時たま位置が近い場所に居るときに短く会話を交わす。
 話題といえば、やはりフォレストウルフの数についてだ。
 しかし原因が万が一解ったとしても、この戦闘に何か得が出るわけでもない。
 ゼーレの報告や己の勘を頼りに、次々と襲い掛かるフォレストウルフを各自の獲物で打ち倒して行く。


「……チッ」
「ほら、また怯えてる。目をしっかり開いて、前を見るんだ。眼を瞑ってても百発百中なら別に気にしなくてもいいけどね」
「ごっ、ごめんなさ……!」


 ジンはなかなか終わりの見えない戦闘に苛立ってきたのか、舌打ち一つすると飛び掛ってきたフォレストウルフの脳天に弾丸を叩き込み、足元に食いつこうとしたもう一匹を軽く蹴り飛ばし木に激突させる。
 突然の助太刀を申し出たクロスは、ルクラの傍で風を操り、彼女の魔法が当たりやすいようフォレストウルフを風で押しつぶし動きを鈍らせ、それでも向かってくる場合は弾き飛ばしジンの方へ。
 ジンはめんどくさそうな顔をするものの、文句一つ言わず弾き飛ばれたフォレストウルフを確実に倒していた。
 クロスに守られているおかげで、慌てているものの最大の詠唱まで完了できるルクラは、膨大な数の風の刃を飛ばし、一度に十数匹のフォレストウルフを撃破している。
 

「……向こうは劣勢だね」
「そのようです。……しかし、恐れを抱き退くことを知らないのでしょうか?」
「知っていることを願うよ。……これがまだ延々続くとなると、今度は僕達が彼らの立場になりかねない」


 宝剣アフトクラトルをしっかりと両手で握り締め、大振りな一撃でフォレストウルフを斬り付けるジャスティン。
 まだその腕前は、実戦向きとは言えず、型どおりの訓練で培った技術に頼っている節がある。
 そうなると当然、傭兵のような確実な一撃ではないときもあり、浅い傷で済んで再び立ち向かってくるフォレストウルフも居る。
 ラファエルはそれを魔術、剣術両方を駆使して止めを刺していた。
 ジャスティンの言葉どおり、戦闘が始まって既に半時間。
 いかに戦いに身を置く人間達でも疲労の色が見て取れる。
 終わりの見えない戦い、視界の利かない暗い森という条件も重なり、戦況は芳しく無かった。


 だが。


「……お?尻尾巻いて逃げ始めたぜ」


 一匹を蹴り飛ばし、もう一匹、と構えたラウルが驚きの声を上げる。
 見ればフォレストウルフの群れは散り散りになって、闇の中へと逃げている。
 戦いの終わりを察した人間は武器を降ろし、仕舞い。
 一部のまだ終わりを理解できない人間は、緊張に張り詰めた面持ちのままじっと構えている。


「……願いは適ったみたいだ」
「やれやれ……やっと理解できましたか」


 剣に付いた血を払い、ジャスティンは鞘にしっかりと宝剣アフトクラトルを収めた。
 肩をすくめて、少々狼達を馬鹿にするような調子のため息をついてから、ラファエルもそれに倣う。
 



 ジャスティン一行が始めて行った戦闘は、特に負傷者を出すことなく、無事に勝利と言う形で幕を下ろした。




「……よし、今日はここで休もう」


 戦闘が済んだその後、再び森の奥へ進行を続けていたジャスティン一行。
 何処まで進んだのかわからないが、既に足は疲労を訴え続けている。
 口数は皆少なく、顔には出さないものの疲れていることが伺えた。
 それもその筈、戦闘での疲労に加えて数時間、足場の悪い森を歩き通しだったのだ。
 重い鎧を着けているヴァール、障害物を越えるのに苦戦しているいわゆる子供組達は、やはり皆努めて疲労を顔に出さないようにしているが、大汗をかき、少々顔色も悪い。
 少し無理をさせたかな、とジャスティンは反省する。
 その反省を天は評価したのかはわからないが、根っこが張り巡らされている森の中で、ぽっかりと開けている広場を発見することができたのだ。
  
 
「やーっと休めるぜぇ!お、ヴァールちゃん疲れてないかい?何かあったら頼んでくれよ!俺に!」
「……今は……無いわ」
「今頃空は真っ暗なんだろうな……見えないけど」


 休息と聞くや否や、ラウルは今までの疲労が吹っ飛んだかのようにヴァールに接触を図り始めた。
 それを視界の端に捉え呆れつつも、ファルは葉っぱに覆われてしまって見えない空を見上げながら呟いた。


「ここはまだ、根っこが侵食してないみたいですね。……ずっとあの調子だったらどうしようかと思いました」
「ここなら火も安心して使えそうですね……」
 

 ゼーレが安堵のため息をついて、微笑む。
 ラキスは周りを見渡し広場の情報や、どの程度の事なら行って良いのかを正確に把握する。


「………………」


 無言で適当な場所に腰を降ろすジン。
 ちなみに、鬼の力で暴走をした名残が残っている。
 つまりは血まみれの格好のまま。


「お疲れ様。……怯えてるの?」
「そ、そんなこと……な、ないです……!」


 たまにちらりとジンを見ては慌てて視線を逸らし、少し顔を青ざめさせているルクラに、クロスは声をかける。
 否定はするものの声の調子が不安定で、怯えているのは明らかだ。
 何故か、とジンのほうをふと見てみると、あぁなるほどとクロスは思った。
 そして、ちょっとこの怖がりな少女に意地悪な提案をしてみる。


「はい、タオル」
「……え……?」
「渡してきなよ、血の匂いをさせたままじゃ彼も気分が悪いだろうし」
「!!!」

 
 予想通りの反応を返したルクラに、クロスは苦笑する。
 しかしその後の反応には、少々驚きの表情になった。


「わ……わかりましたっ!わわ、渡してきます!」

 
 奪い取るようにタオルを貰うと、恐る恐るといった様子でルクラはジンへ近づいていく。


「……冗談のつもりだったのに」


 もう一度クロスは苦笑した。




 かちかち、という何か堅いもの触れ合う音が何度か響き、そしてぱちぱちと枯れ枝が爆ぜる音が響き始めた。
 暗闇を追い出し、優しい光が音の中心から生まれる。
 やがて辺りには、香ばしい匂いが広がり始めた。
 女性陣が主な指揮を執り、豪華とはいえないが、空腹を解消すると同時に十分満足できる味の料理が作られ、皆、それをあっという間に平らげられてしまう。
 ちゃんと準備してきたので、初めは作りすぎたと思っても案外残りの食料や水は豊富にある。
 一ヶ月は不自由なく食事ができる、というラファエルの言葉に偽りは無かったようだ。


「保存食って大抵味が淡白ってイメージがあったんだけど……すごいね。とても美味しかった」
「……おいしかったー……」


 軽く伸びをしながら、クロスは料理の味に思い返しながらゼーレやルクラに感想を告げる。
 その隣でぼうっとしているのはラキス。
 すっかり料理を平らげ満足したようで、何時もの冷静な少年の姿はそこには無い。
 それを笑いながら眺めつつ、ゼーレは返す。


「それは良かったです。私達も腕を振るった甲斐があります」
「お母さんから料理のごくい、っていうのを習ってるんです!美味しかったって言ってもらえて嬉しいです!」


 褒められたことがよほど嬉しいのか、ルクラも何時ものおどおどした表情ではなく、喜びに満ちた笑顔だ。
 その勢いで、一人仲間達から離れた場所に座り込んで休息しているジンの所にまで行って味の感想を聞いている。
 

「……あ、あぁ……美味かった」


 血まみれの姿を見せて畏怖の対象になっていたのではないかと密かに悩んでいたジンだったが、そんな様子など微塵も感じさせないルクラに少々押されつつ感想を述べていた。

 
「腹も一杯になったし……さぁヴァールちゃん闇が怖ければ俺が近くに……」
「……見張りを決める必要があるんじゃないかしら……?」


 相変わらずアプローチを仕掛けるラウルを軽くスルーしつつ、ジャスティンに声をかけるヴァール。
 ファルも頷き、続いて口を開く。


「あの狼達がもう来ないという確証はありませんし、見張りは必要だと思います」


 二人に言われ、ジャスティンはしまった、と呟いた。


「その通りだ。……すまない、うっかりしていたよ」
「……あまり、気を張り詰めなくていいわ……。……そのための仲間じゃないの……」


 僅かながら微笑むヴァール。
 仲間、という言葉に救われたような気がしたジャスティンは、ぎこちなく笑い返す。
 ちなみにその後ろでものすごい勢いでジャスティンを睨みつけているラウルが居る事を追記しておく。
 皆を焚き火の傍に集め、ジャスティンは話し始めた。


「うっかりしていたけど、見張りの順番を決めておこう。受け持つ時間は、この枝を燃やし尽くすまで。……どうだろう?」


 ジャスティンは、子供の腕ほどの太さの枝を取り出し皆に見せる。
 各自が頷き、異論はないようなので話を続ける。


「ラウル、ヴァール、ジン、ラファエル、そして僕は一人で見張りを行おう。残りの人間は二人と三人のチームを作って見張りをお願いできるかな」

 
 ジャスティンが名前を出さなかったのは、いわゆる子供組である。
 彼ら一人で寝ずの番と言うのは荷が重い。
 そのため、二人や三人で組ませることで少しでも身体的、精神的な負担を減らそうとの考えだった。
 

「は、はいっ!」
「分かりました」
「えぇ、構いませんよ」
「了解です」
「ま、いいよ」


 反応はまたもや様々だが、こちらも異論はないようだ。


「ヴァールちゃんと一緒に――」
「……小さな子の……負担を増やす気……?」
「だよな、俺達は大人だオ・ト・ナ!ちみっ子達、ぐっすり寝てても全然大丈夫だぜ!」
 

 こんなやり取りがあったことも追記しておこう。
 特に反論もなくほっとしたのか、皆の前だと言うのにジャスティンは苦笑する。


「その……ヴァールやファルに言われなければ、すっかり忘れるところだったんだ。すまない。少し頼りないけれど、これからもよろしく頼む」
「よっしゃ!そうと決まれば順番きめよーぜ順番!クジでいいな!?ちなみにアミダな!俺ここ!」


 ものすごい勢いでアミダクジを地面に作り上げたラウル。
 皆が思い思いの場所に名前を書き入れていく。
 旅に出て初めての野宿は、いよいよ就寝が近づいていた。

[25] ベル > お待たせしました。少しの休息になります。
見張り中の小ネタを書くも良し、夢ネタ書くも良し、それは皆さんにお任せします。
次回進行は来週の水・木曜日予定です。
ちなみに子供組に入っているキャラ
ルクラ・ゼーレ・ラキス・ファル・クロスの五名のチームは好きなように組んでください。
……早い者勝ちであることをお伝えしておきます(?) (2007年11月20日 (火) 20時42分)
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[23] 密林に吹いた疾風 投稿者:水鏡 聖牙 MAIL (2007年11月13日 (火) 02時47分)
 まさか、彼女が十二歳だとは思っても見なかった。
…それにしても、十四歳で立派に成人か…イコール、僕は大人の仲間入りと。そういう訳か。

 そんな事を思っている少年達の目の前には、小型の狼―フォレストウルフの群れが見える。
周りにまだ敵対する存在があるのかどうかは分からない。
だが、敵の群れが現れたとなるとそれは重要な物があることを示す。
そう、心の片隅に自身の勝手なる推測を構築しながら、蒼髪の少年―ファルは近付く狼を確実に楽にしていった。

「邪魔だって!」

 炎は使うなと言われたが、そんな事は彼には関係無い。
理由は簡単、炎を扱うような攻撃方法を持っていないからである。
魔法も詠唱すれば使えなくは無いのだが、反面威力落ちが著しい。
相当な馬鹿か、天賦の才能を持つ・或いは特別優秀な魔道師でなければ使わないのが一般的だ。
彼の見かけは当然普通の少年。魔法に優れたエルフ族とは言え、無尽蔵の魔力を持つような存在ではない。
だから彼は相反する魔法などは使おうとは思わないのだ。

「どけ、マセガキエプロン剣士君っ!」
「前半部が違うっ!そして今はエプロンは着ていません!!」

 ファルが一匹の爪を剣で止める。
すると、背後から突撃して来た男はラウル。このまま飛び蹴りで吹き飛ばすつもりらしい。
このようなラウルの一言に訂正を求められる辺り、彼等にはまだ余裕があるらしい。

「うおらぁっ!」

 ファルが剣で爪を弾き、無防備な状態にさせると、
そこに声をあげたラウルの脚が突き刺さるようにして入った。
狼は真横に飛んでいき、三匹ほどの同胞を巻きこんで行く。
やがて太い木の幹に全身を強打し、暫くして動かなくなった。
それを見ずに、ファルは剣を構え直しながらラウルに言った。

「僕にはファルと言う名前が―」
「悪ぃ、俺は興味のない野郎の名前は覚えねえ主義なんだ」

 そう言いながら、ラウルは別の一匹の頭を踵落としで叩き割った。
勿論、冗談のつもりなので心の片隅にファルの名は留めておく予定らしい。
ファルはその言葉に呆れかえった顔をしながら、敵の群れに水の刃を飛ばす。

(…いいのか、それで)

 近くに居たジンも、ある意味問題発言は聞き捨てならなかった様子だ。
その銃身からは不釣合いなほどの破壊力を持つ拳銃を片手にただ向かってくる敵を撃ち落とす。
時には骨と骨の間をかいくぐり、敵の身を貫通してその背後の敵を撃ちぬくこともあった。

 と、その時だった。

「……!…ぁ……っ!!」

 叫びとならない悲鳴をあげたのは先ほど散々からかわれていた“ファル曰く6歳”の少女―ルクラだった。
背後の気配に気付いた頃には、時既に遅し。
フォレストウルフの一匹が、彼女に飛び掛っていたのだ。
大口を開け、丸呑みにでもしてしまいそうな勢いだ。
彼女の魔術にも間に合わない。ジンの銃弾も今装填中で間が悪い。
ヴァールの弓は土から顔を出している巨大な根が邪魔になって射る事が出来ない。生憎、近くには誰もいなかった。
牙を剥いた。爪が捉えた。その獲物を見る眼は鋭く彼女に突き刺さる。

「                      」

 どこからか何か、声がする。ルクラの耳にはそれが誰の物か、何と言っているかを考える余地は無い。
その声が届くが早いか、彼女の視界に“別の影”が移る。
“それ”は目の前の口を一閃し、断ち斬った。

 斬られたことを認識する前に斬られたのか、もがき苦しむ暇もなくフォレストウルフは動かなくなった。

「…ぇ……?」
「…前はしっかり見ないと、隙ばかり生まれるだろ」

 ルクラが瞑った目を開き、伏せた顔を上げると、そこにいたのは黄緑色の髪を持つ少年―クロス・ティーアが居た。
懐から取り出した布で血のついた剣を拭きながら佇む姿は、一見暇があるように見えて、周囲の様子に気を配っていた。
どこから掛かってきてもすぐに対応できるようにと、また剣を構えなおす。

「…ありがとう、助かった。…ところで君は―」
「助太刀するよ。………勿論、君達が嫌ならしないけどね。」

 ファルが何者かを問おうとした時にクロスはその言葉の先を答えてしまった。
それと同時にファルは感じていた。彼が実力者であることを。
彼からこの森の雰囲気とは大きく違う、穏やかな風が流れることを。
前者は仮にも剣士の端くれである者として。後者は、森の住人であった者として、雰囲気の違いの判別くらいはできるそうだ。
 その背後でジャスティンとラファエルが会話を始める。
目の前に現れた“助太刀”クロスを迎え入れるかどうかを話していた。

「…如何致しましょう」
「良いんじゃないかな、助けてくれるみたいだし」
「人数が多すぎると逆に管理が大変になりますが…今は頭数が欲しいですからね。取り次いでみましょう」

 何故こうも話していられるかと言えば、クロスがフォレストウルフを吹き飛ばしてくれたり、
他の傭兵達が次々と倒してくれたりした為に一段落がついたからだ。
と言うのは、更に増援が来るかもしれないし、これで全滅であるかもしれない。願わくば、断然後者だが。

「ラファエルと申します。クラウゼル城の―」
「ああ、それなら知っているよ。奪還を目的とした傭兵を集めて居るって聞いていたんだけど…」
「それほどまで遠くに届いていましたか」
「いや、風から聞かせてもらったよ。それにしても、子供が多いな…本当にこれで?」

 周囲を見渡しながら、クロスは率直な感想を一言言った。
クロスの目に映る子供は、ルクラ、ゼーレ、ラキス、ファルの辺りだろうか。
そう言う自分も子供だけど、と思いながら続けた。

「私も、まさかこうなるとは思ってもみなかったですから」
「…まあこのご時世だ、僕も一人でいると迷惑な奴に襲われかねないからね。
 …アムニまで、連れて行かせて貰えないかな」

 溜め息気味に、苦労人ラファエルは言った。
苦笑い気味に、クロスは言った。

「わかった、短い間でも人数が多い方が良いからね。一緒に行こう」

 ジャスティンが声を掛けると、クロスは快く承諾した。
この時、クロスは“これで暫くは大丈夫か”と心底安心していたと言うことは、内緒にしておこう。

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[20] カードはまだ、配り終えていない。 投稿者:ベル MAIL (2007年11月10日 (土) 20時57分)
 宙に浮いた城。
 太陽の光を一身に受け、人々を優しく見守っていた輝く城の面影はもう無かった。
 遥か彼方の空の上から、無慈悲な視線をサントシームの街へと向ける。
 それは逃げ惑う人々を嘲笑うようで。


「……以上、報告を終了させて頂きます」
「ご苦労。……ふふ、随分と早い旅立ちだ。よほど強いカードが眠っていたと見える」


 今その城の王座に座るのは、賢王と謳われた男ではなく。
 何が面白いのか、微笑を絶やさない異国の衣装に身を包んだ男だった。
 彼の前に跪き深々と頭を垂れているのは、燃えるような赤の衣装に身を包んだ女性。
 仮面を着けている為顔は見えないが、見事な金髪が腰の辺りまで伸び、輝いている。
 

「だが、まだあの森の奥へ入られては困る。……そうだろう?テトラ」


 異国の衣装に身を包んだ男は、暗がりに居た別の男に声をかけた。
 なにやら紙切れを大量に抱えている、傍から見れば奇抜ともいえるメイクを施した、テトラと呼ばれた男は大きく頭を振って答えた。


「その通りで御座います!まだ我輩のファンタスティック☆ジェニファーが完全な成長を遂げておりません……餌を幾ら増やしても足らず、もう少し時間を頂きたく……。……全くアルデバランの仕事の遅さには閉口する」


 最後の言葉は聞こえないよう吐き捨てるように云って、苦虫を噛み潰したような表情で報告するテトラに、すっと立ち上がりその方へ向き直った女性が一言。


「妙な思い付きをするからだ」
「何をっ!?生と死を司る植物の栽培など滅多にできんのだぞ!?今せず何時するのだっ!」
「狼を無闇に増やす役目を押し付けられた私の身にもなってみろ。……無駄に鎧を使う羽目になった」
「幾らでも鎧は量産できるだろうミネルバッ!貴様が動くわけでもあるまい、ごちゃごちゃ喚くでないわっ!!!」


 ミネルバと呼ばれた女性は、やれやれと肩を竦める。


「ジョーカー様、回りくどいことなどせずさっさと奴らを始末するという手は取らないのですか?」


 ジョーカー、そう呼ばれた王座に座る男は不敵な笑みを浮かべた。


「ミネルバ。確かに君のその迅速確実な行動は素晴らしい物だ。……だが、時には物事を楽しむことだね。そんなつまらない手は取らない」
「しかし、聖剣に力を取り戻させてしまったら、こちらにも大きな被害が出るでしょう。その前に危険な芽を摘み取っておかなければ、ジョーカー様にも危険が及ぶのではないかと……」
「ジョーカー様が手を下さずとも、我輩のファンタスティック☆ジェニファーが奴らを食い尽くしてしまうだろう!戦士を名乗る者が随分と気弱なことばかり言う物だな?」
「研究第一の馬鹿者に現在の指揮を任せているから心配しているのだ。……自己満足のために訳のわからぬ化物ばかり創り出す貴様が大きな口を叩くな」
「なぁにおぅ!?」


 テトラとミネルバ、両者の間に険悪な雰囲気が漂い始めるが。
 その様子を見て笑うジョーカーに、ふと二人は同時に顔を向けた。


「天才とは理解されず孤独なものだ。……一度任せた以上この件はテトラが指揮を取る。彼らを今から消してしまうという手も取らない」
「し、しかし……!」
「物事を楽しみたまえよミネルバ?まだ始まっても居ないんだ……何故なら……」


 くつくつと、音を出さずにジョーカーは笑った。
  
 

[21] ベル > 敵で参加しようと考えている方、お待たせしました!
ジョーカー側を書き上げました。
これで敵側の参加もしやすいものになったと思います。 (2007年11月10日 (土) 21時01分)
[22] ベル > ちょっとだけ追記です(↑のパス設定し忘れました……)
掲示板に今後のリレーの進行方法について一つ提案をしています。
できれば見ていただけると嬉しいです。 (2007年11月10日 (土) 23時06分)
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[18] 風と渡る者 投稿者:雨雫姫 (2007年11月09日 (金) 00時21分)
どうしようも言えない不快な風を感じていた…。


とは、数刻前までのある少年の談である。




「助かった、団体さんがやってきてくれたみたいだね…」



森に溶け込むような深く静かな千歳緑の瞳。
チャートリューの明るく柔らかな黄緑の髪。
鶸萌葱と苔色を中心とするタートルネックの服装。
一見、森と一体化しかねない一人の少年が其処にいた。

やや白めの肌と、留紺のジーンズが目立つように見えるのは、
やはり彼が木々の中にいて、うっそうとしげる葉の緑が視界いっぱいに広がっているからだろう。


彼は、ジャスティン達が来る数刻前よりこの木の上にいた。
肉食の獣や魔物達が異常繁殖し、森を横行していた。
原因は謎だが、其処にさらに旅人狙いの山賊が加わり、この森は今危険きまわりなかった。
一人では決してそれらを相手にすることは出来ないと判断した彼は、木々の上を渡って移動する事で狼やその他の魔物達の目から逃れてきた。

少年の下方で、彼より幾らか年下であろう者達が多数の狼と戦っている。
唸り声、足音、気配、風の囁き。森は視界が遮られ、彼らはまだ気付いていないかもしれない。
でも、其処には明らかに多数の狼の一団がいることが彼には分かる。
吹き抜けていく風が、其れを彼に伝えてくれる。
彼の知りたい事を、風は伝えてくれる。


改めて一行を見た。
先ほど人外の…風が伝えるには鬼であろう人物が疲労によってか後退したのを確かに見た。
2〜3人、いかにも傭兵という出で立ちの人物はいるが、多くは自分と同年代かそれ以下。
狼…フォレストウルフはそう強い魔物ではないというのが救いではあっても………



「拙い、かな?」



音無き声を空へと向ける。
内にある暖かな力と、声に応じて集まった風とがある一つの形を成す。
暗く生い茂った森に、白く純白の…そして水色の透き通った陰をもつ翼はとても映えるものだった。
太く大きな木の枝から、翼を得た彼はふわりと飛び降りる。

空中で狼達の方を振り向くと、静かに目を閉じ此処からは見えぬ空を仰ぐ。
葉っぱが動く音がした。
次の瞬間には、大きな風の流れがあった。
少年から狼達の方へと動いた風速20m程の強い風の流れ。
木々には決して影響を与えずに…その風は多数の狼の抵抗をもろともせずはるか遠くへと吹き飛ばした。
まだ、全て飛ばしたわけでは無さそうだと、彼は感じた。


彼自身は、風を全く気にする様子も無く…一行の方を振り返る。


「助太刀するよ。………勿論、君達が嫌ならしないけどね。」


少年の名前は、クロス・ティーア。
白き魔力の翼をもつ、風と渡る者。


一陣の風が吹いた。柔らかく、暖かい風。
彼の傍らにいつも在る、その彼特有の風は。

彼が類稀なる風術師の才を持つことを、静かに控えめながらも示していた…。


[19] 雨雫姫 > 同行承諾まで行かなかった…!
ある目的の為、アムニまで同行いたします。どうぞよろしくです。 (2007年11月09日 (金) 00時22分)
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[17] 鬼の力 投稿者:卯月 (2007年11月05日 (月) 23時08分)


「邪魔だ。退け。」


大型のリボルバーを構えてジンは撃つ。反動を物ともせずに次弾を発射。其れに当たったフォレストウルフは悲鳴を挙げるまでも無く吹き飛び奇妙なオブジェが出来上がる。返り血を浴びながらもジンは更にウルフを屠って行く。離れて居るモノには銃弾を。飛びかかってくるモノはナイフで切裂く。
だが、思ったより数が多い。此処が森の中で無いのなら焼き払えば良いのだが場が悪い。

次第に一行は囲まれて行く。


「コレは幾らなんでも多すぎじゃねぇの?」


ラウルが言う。これ程にも数が多いと言う事は森の生態系が狂い始めて居るはず。何処にこれ程のウルフの餌が在るのだろうか?飢えて死ぬだろう。


そう言って居る間にもウルフは増えていく。一行は苦戦を強いられる。



「…今から…俺に近づくな…」

そうジンが呟く。聞こえたのは近くに居たジャスティンとラファエルのみ。聞こえた二人は早急にジンから離れる。異様な程の魔力が漂い始めたからだ。それに続き殺気も出る。次の瞬間、一行は目を疑う。ジンの背後に鬼の上半身だけが写っているからだ。



「取り合えずもっと離れましょう。」


ラファエルがそう言うと一行はジンと距離を開ける。20m程、離れると耳を劈く様な咆哮が森中に響く。恐らくジンのモノだろう。こんな大きな咆哮を上げる生物は森の中には居ない。

ラファエル達は自分の周りにいるウルフの相手をし始めた。



「…バラシテヤルヨ。」

瞳孔の開いた目でジンはウルフを見据える。其れと同時にウルフが飛びかかりジンの姿を隠してしまう。再び咆哮が響くと先程のジンが言った通りのウルフの死骸が飛び散る。あるウルフは輪切りにされ、あるウルフは木に突き刺さり変わったオブジェを作り出し緑の森の中に一瞬で血の池を作り出す。


その光景を見た雇い主であるジャスティンは恐怖を覚えた。
只者では無い雰囲気があったがこれ程の化物だとは思って居なかったのだ。


そんな事も知らずにジンはウルフを屠っていく。それでもまだウルフは減った感じはしない。

「…チッ…」


思わず舌打ちをする。魔力の限界が近づいている。鬼の力も消え始めて一撃の威力が無くなって来ている次第に鬼が消えていくのが解る。此処で消えてしまったら近距離で戦う得物はナイフしか無い。

このままでは危険だと判断したジンは鬼化を解き仲間の元へと駆け出した。
生憎、足には自信がある。ウルフに追いつかれる事は無いだろう。



「おっ?怪物のご帰還だ。」


ラウルがおどけて言う。そんな余裕を見せるのはやはり場数を踏んだ傭兵なのだろう。血だらけのジンを見たルクラはビクッと身震いしウルフに向かって行った。

「…不気味か?」
「あぁ、かなりな。」

正直な感想。不気味。


そんな事を言われても気にする素振りも無くジンは再び戦い始めた。やはり、不気味だ。

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[15] 深淵の佇む森へ。 投稿者:ベル MAIL (2007年11月04日 (日) 22時21分)
「よし、皆準備は出来たね?」


 ジャスティンが後方に居る、雇い入れた人間達に声をかける。
 軽く片手を挙げて応答する者、笑みを浮かべる者、緊張で大げさに頷く者、様々な反応が帰ってきた。
 それを見たジャスティンは満足げな笑みを浮かべる。


「よし、出発だ!」


 言葉に従い、一行は森へ向かって歩き出す。
 真ん中の当たりには、立派な荷馬が二頭歩みを進めていた。


「おチビちゃん、馬に乗ったって別に構わねーぞ? 軽いんだし」
「ち……チビじゃないですっ! わたしにはルクラって名前がありますっ! そ、それにこのぐらいの道、歩けますよっ!」


 見事な転身を見せたお調子者、ラウルがルクラをからかう。
 それにむきになって反応する彼女を、余計に面白がって眺めている。
 そしてそれを呆れ顔で眺めていたラファエルは、ふと二頭の馬を眺め回想に浸り始めた。




 物価が不自然に高騰している現在の状況にも関わらず、十分な量の水や食料、そして荷馬を手に入れることができたのは、奇跡に近かった。
 その奇跡を引き起こせたのは、今一緒に歩いている多種多様な傭兵達のおかげだろう。
 サントシームで働いていたファルとルクラ、この二人のおかげで店主への交渉は順調に進み、普段どおりどころか、格安とも言えるべき値段で食料や水を譲ってくれた。




 問題は馬であった。




 もしルクラやファルが居らず、多少の値段が張っていようが食料や水は十分揃えられる程度の金額はあった。
 しかし馬となれば、その値段は思わず桁を数えなおしてしまうほどに酷く高値だったのだ。
 

「皆早く逃げたいから、足が欲しいのよ。良いじゃない、お金で自分の安全を買うようなものよ? あたしだって逃げたいのを抑えてこうやって他の人に馬を分けてあげてるんだから、感謝して欲しいぐらいだわ。……荷馬が欲しい? 生憎だけど、これも馬には変わりないの、そういって安い値で仕入れようったってそうは行かないわよ」


 いけしゃあしゃあと述べる店主の話にも確かに尤もな点がある。
 低く低くこちらが切り出しても、突っぱね返されるだけで万事休すかと思われた時だった。
 あのお調子者、ラウルが馬屋の女主人の前に躍り出て何事かを囁き始め――。




「(あまり好ましい交渉では無かったですが……眼を瞑りますか)」


 ラファエルは苦笑する。
 あっさりとラウルの話術に落ちてしまった女主人は、矢張りあっさりと馬を売り渡してくれた。
 桁の数が随分減ったなと、表情には出さなかったものの驚いたものだった。
 

「あーはいはい、小さいのに偉いでちゅねー?」
「ばっ……ばかにしないでくださいっ! たっ、確かに背はちい……さい……ですけど! あと二年もしたら、わたしの大陸では立派な成人の扱いなんですからね!」


 放って置けば良いものを、さっきから顔を真っ赤にして反論するルクラに、笑うラウル。
 ふと彼女が最後に付け足した言葉に、ファルが悪意は無い物の彼女の見た目から予想する年齢に二歳プラスした歳を頭の中に思い浮かべて。


「……八歳から成人?」


 などといったものだから、更に彼女は顔を真っ赤にして反論する。


「十四歳から成人ですっ!!!」
「十四……であと二年……今十二歳!?」
「……僕より年上だ」
「なにぃっ!?」


 最年少と(見た目からして)思われたルクラだったが、大人びた雰囲気を纏った少年、ラキスが実は最年少だったことに一同驚愕。
 それを見たルクラが更に腕をぶんぶん振りながら怒るものだから、思わず一行の顔には笑みが浮かび。
 賑やかな旅は始まったばかりであった。




 やがて一行の目の前に小さく映っていた森が、いつの間にか大きく其処に存在するようになる。
 帰らずの森、そう呼ぶのに相応しい大森林だ。
 一度そこで歩みを止め、じっくりと森を眺める。


「ここが……帰らずの森だね?」
「えぇ。名前の通り、深く暗い森です。はぐれないよう注意してください」


 森の入り口は、入り込む人間を飲み込むかのように暗く、深い。
 木々が光を遮っているため、入り口であっても闇の帳が下りたようになっている。


「それで……目的の聖印……それはどこにあるのでしょう?」
「森の奥に神殿があるそうです。聖印はその中だと。……神殿の詳しい場所はわかりません。ですから、一ヶ月は不自由なく食事ができる程度の水と食料を用意してあります」
「とにかく歩いて探すしかない……か……難儀だ……」


 ポツリと呟いたジンの言葉に、一瞬言葉に詰まってしまう。
 しかしそれをフォローするかのようにジャスティンが口を開いた。


「難しいことだとは思う。……だが、必要なことだ。皆で力をあわせて、頑張っていこう」
「案外近いところにあったりしてな! ボヤくより動こうぜ!」


 更にラウルが後押しして、一同は頷いてみせる。
 そして、森の中へ向けて力強く歩み始めたのだった。




 森の中は、地面に幾つもの木の根っこが張り巡らされ、暗いのも手伝って非常に歩きにくいものだった。
 馬は器用な足捌きでこともなげに通過していくのだが、人間達……つまりジャスティン一行は何度も足を取られそうになる。
 手に持ったカンテラを落としたら事だ。
 明かりが無くなって迷うか、もしくは明かりは新しくできるかもしれないがそれが最後の光景になりかねない。
 風が木の葉を揺らす音に、自らが出す足音意外は全くの無音。
 不気味であった。


「こんなに……歩きにくかったかな、この森は」
「一年ほど前に、兵士と一緒に訪れたことがありましたね……しかし、ここまで酷い地形だったとは思わなかったような覚えがあります」
「成長期なんじゃネェの?」
「それは妙です。木々はそんな短い時間で急成長など、できませんからね」


 ジャスティンやラファエルが首を傾げるのも無理は無い。
 何しろ彼らの記憶とは程遠い姿の森になっていたのだから。
 大きく膨らんだ木の根っこは複雑に絡まりあい、地面を隠しているのだ。
 ラウルも冗談を言ってみるものの、どこと無く可笑しな森に警戒心を抱いている。
 ゼーレは時折周りの木々に触れて見たりして、矢張り首を傾げていた。


「……足元、気をつけるんだよ」
「は、はいっ」
「大変だね……」


 手をついてまたがないと、引っ掛かって転んでしまいそうなルクラの姿を見て、乗り越えるのが、とは喉まで出かかったがラキスはこらえる。
 

「それにしても、この森……?」
「如何されました?」
「いや……よくわからないんだが、何か変だ……」
「そりゃ変だろ、木々が腹いっぱいになるまでパーティ開いてこんな事になってんだからよ。……ったく、ウザッてぇな……」


 根っこの様子は勿論だが、他にも何か可笑しな箇所を、ジャスティンの頭は感じ取っていた。
 それが何かは、わからないが。
 しかしそれをじっくり考える間もなく。


「……!」


 何かが集団で、森の中を駆け回っている。
 カンテラを掲げて辺りを照らすと、一瞬だけ小型の犬のようなものの影が見えた。
 気づいたときには、辺りから凶暴な唸り声が響き渡っている。
 餓えた動物の、獲物を見つけたときの喜びの声。
 一行はそれぞれの武器を構え、自分の足元と辺りに注意を配る。


「来ます!」
「雑魚が群れても無駄だぜ? かかってきやがれ!」
「炎は使わないで下さい! 火災になってはいけません!」


 ラファエルの忠告が終わると同時に餓えた狼、フォレストウルフが一斉に飛び出してきた。 

[16] ベル > お待たせしました、進行です。
そして初戦闘。
敵はフォレストウルフだけの予定ですが、何か追加したいと言う方はどうぞ。
助っ人をして加入を狙っている方もお待たせしました。
ジョーカー側はもう暫くお待ち下さい。ごめんなさい。 (2007年11月04日 (日) 22時24分)
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[14] 傭兵 投稿者:OD (2007年10月23日 (火) 23時54分)
「煩いわねぇ………」
それまで一行の前では一度も口を開かなかったヴァールが文句の言葉を口にした。
「それはすみません、何分こちらも取り込んでいるものですから…」
ウホッ、いい声…と言っているラウルを押しのけてラファエルが言う。

彼女はしばし沈黙の後、一行のほうに視線を向ける。
「そこのあなた………」
その視線はジャスティンの方を向いていた。
「僕……ですか?」
ヴァールは頷くと席から立ち上がり
「ちょっと廊下に来なさい……」
と、そのまま廊下に出て行った。

「王子、私が行きます」
彼女がアフトクラトルを狙ってきた刺客でないとも限らない。
それなのにホイホイついていくのは愚者のすることではあるが
「いや、僕が行く」
「しかし王子……」
「あの人は刺客かもしれないというんだろ?こんなことでいちいち引いていたらこの先進めないさ」
念のために、剣がすぐに抜ける事を確認してから廊下へと歩いていった。

「ちゃんと来たわね……」
ヴァールがジャスティンの方を向き直る。
「傭兵だの何だの騒いで居た様だけれど……何なの……?」
「それは………」
ジャスティンが口ごもる。
「私だって………」
ジャスティンの方へと歩みよる。
「………傭兵よ?」
「……え?」
彼女の容貌からそれはとても想像できない。
戦いなど到底似合わない、下手すれば儚ささえ感じさせる美女である。
「信用してないようね……」
当然である。
「それなら………こういうのはどうかしら?」
ジャスティンが一瞬不思議そうな顔をした。
だがその顔が次の瞬間、一気に険しくなった。
「うふふ…………」
ヴァールが微笑む。
しかし彼女から発せられる雰囲気は彼女の表情にそぐわぬものであった。
体に絡みつくような殺気がジャスティンを襲う。
その殺気に思わずジャスティンは剣に手をかけるが。
「ここでそれを抜いちゃだめじゃない……」
先にヴァールがジャスティンの剣の柄頭に手をかけていた。
驚いた表情でヴァールの顔を見るジャスティン。
「………これで信用してもらえたかしら…………」


ジャスティンはヴァールに今までのこと、そして現在の状況を話した。
その内容はヴァールが盗み聞いたものと同じである。
「嘘はついていないようね………」
ジャスティンに聞こえないように小声でつぶやく。
「それで………」
「わかったわ………」
「え」
「貴方に雇われてあげるわ……」
「い、いやいやいや」
「報酬は当分そっちの言い値でいいわよ……」
ヴァールが手をジャスティンの顎の下に置く。
「それで満足かしら………?」
蠱惑的な瞳でジャスティンを見つめた。


「ああ……」
ラファエルはその場をぐるぐる回っていた。
「王子ははたして大丈夫なのだろうか…」
「過保護だな……」
そのようなやり取りと同時にジャスティンが戻ってきた。
後ろにはヴァールが居る。
「貴方たちの仲間になることになったわ…………」
「え?」
突然の発言にラファエルが戸惑う。
そしてそれを聞きつけとっさに行動を起こす者が一人。
「やあ!俺はラウル、フリーの傭兵さ!俺もここで頑張るから一緒に頑張ろうぜ!」
見事な変わり身であった。

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[13] 悪夢 投稿者:卯月 (2007年10月20日 (土) 23時01分)
ジンは煩くなり始めた食堂から抜け出し自分の借りた部屋で旅立つ準備をしていた。ベッドの上に刃物や銃器が散乱している。如何やらベッドが物置になって居る模様。普段はどうやら椅子に座りながら眠っている模様。普通ならもう体のあちこち痛んで眠る所では無いがジンの場合はすでに慣れてしまった。

「・・・・・・チッ。」

とだけ舌打ちをして散乱したベッドの上を片付け始める。シーツの裏から銃弾が出てきたりした。途中で面倒になり餓鬼を使役して片付けさせた。
そして、ジンは窓を開けて身を乗り出す。
風が快い。後、少しでこの街から出なければ成らないと思うと名残惜しい気もしたがアレだけの大金を貰ったんだ。報酬以上の仕事をしなければ。
完全な鬼になったとしても。

そう決意し窓をしめると自分の顔が窓に写る。髪が伸び放題だと思ったが今更、切るのも面倒だと思い放置した。
振り向くと丁度、餓鬼共も片付け終わった様で奇妙な声を上げながら部屋中を飛び跳ね回っていた。ジンが見ると鬼門を開き勝手に帰って行ったが。

「行くか・・・」
そう呟くと髪を結いなおしながら部屋から出て行く。早く結わないともし連中に見られたら呪いの人形だとか言われそうだ。そうこうしている内に食堂に到着する。まだ、中から声がする。
あのラウルとか言う男の声が一番大きく聞こえる。まぁ、どうでも良いが。

「・・・入るぞ。」
其れだけ呟くと前、居た席には座らずにまた壁に寄りかかり腕を組むと俯き目を瞑る。端から見れば立ったまま眠っているかの様。
実際・・・かなり眠い訳だが。どうも最近は睡眠不足気味で・・・な。
暫らくするとジンは立ったままを寝ていた。



夢を見た。
自分が死ぬ夢を。目の前には小柄な男が不気味な笑みを浮かべながら突っ立っている所を。くたばった俺の抜殻を今まで使役していた餓鬼共が喰らう様を。そして、仲間が死んでいく様を。


「・・・・・・!・・・夢・・・か。」
嫌な夢だった。最近、と言うか傭兵として雇ってもらった時からこの夢を見始めた。幾ら死と隣り合わせの仕事をしているからと言っても仲間の死を見るのは耐え難い。敵の死ならば喜んでやる。

「顔色悪いですけど、どうかなさいました?」
ラファエルがテーブルからこっちを見て言う。

「何でも・・・無い。」
そう言って誤魔化すと壁に寄りかかりジンは立ったまま眠り始めた。

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[12] その男猥雑につき 投稿者: (2007年10月16日 (火) 23時59分)
「ふー、満足満足!」

ベッドに横たわる2人。熟睡している女性の腰に手をまわし、ラウルはご満悦げに笑った。







……よう、お待ちどう! 俺ァーラウルってもんだ。


さてさて、ここ数日までは上り調子で良かったんだが……その後がよくねーんだな。
まず、軽くそのあたりの経緯を整理しとこうか。


俺がこの磯くせー街に来たのはもちろんただひとつ。
サントシームには可愛いオアたくましいオア清楚素敵な女性で賑わってるってウワサ!
可愛い子に弱い俺は、遠路遥遥とホイホイやって来たワケだ。


噂通り、潮焼けしててたくましいー美人ちゃん(ブスは無視だがな)をいっぱい発見。
ついでに補足しとくと、商店も繁盛してるみたいだな。店周りの娘は色白が多い。

で、俺のカリスマで順調に5人目をげーっつ。お互い良い気持ちさせてもらったワケだが、その矢先――



例の、城浮き事件よ。一息ついた翌朝にその娘から教えてもらった。
ま、正味俺はどうでもいいことだと思ってたが、それから数日で街が
目に見えて閑散としてきやがった。
女の子も目に見えて減っちまったし……じゃあ帰るか。

と思っても、しばらくここに居座って、テキトーに日銭稼いでうはうはしようと思ってた矢先だ。
帰る金もねェし、かと言ってもうここにメリットも無い。
とりあえず女の子と別れて、ブラブラその辺を散歩することにした。



と、これがここまでの経緯だな。
しかし、そこは流石の俺。
街中で面白い情報を手に入れたわけだ。


『王子の側近が、人材集めに走り回っている。既に何人かの有志が募っているらしい』


ふーん。どうやら、城が浮いたことと関係がありそうだな。
それにしても、クサい。王子といやあ、確かパンフに顔が載ってたよーな気がするな。
……ま、どうでもいいか。むしろ気になるのは後の話だ。

何人かの有志。仮にも王子の下に従う人間が集まるなら、ちったあ腕利きの奴もいるだろうな。
むさい野郎しかいないのはゴメンだが、最近は女手の傭兵もいるもんだし――と?
いや、待て待て、王子の仕事を手伝ったとなりゃ、金もザクザクは当たり前。綺麗所もよりどりみどりじゃね?

どうせ金も無けりゃ女っ気も無い、素寒貧の俺にゃ行くアテ無し。
目の前にぶら下がった餌を逃がしていいのか? いや、絶対にノーだな。


――そうと来まりゃ、早速下見にいきますか!









元来噂ってのは広がりやすいものだからな。結局、もう少し情報を
集めてみりゃ、「サントシームの風」とか言う宿に滞在していることが分かった。

で、今俺は例の宿の前にいる。
年季の入ってる戸をくぐる。食堂の方から声が聞こえるな。ふーん、複数だ。
多分ここだろ。



腹が決まりゃ、さっさと行動! 食堂へ入った。



「ういーす」

「はい?」

あ、いつもの調子で入っちまった。ま、いいだろ。
なりゆき、大半の視線がこっちに来た。
まず目に入ったのが一番傍で、ぽかんと口を開いたエプロンを着た子供。次いで貴族っぽいのが二人。
間違いなくこの二人がアレだな。

で、後は……ん? 子供、子供、子供……。やけにガキばっかりだな。後は見向きもしてないのが一人。
それで、奥にいるのが、――うおお!!

両手をポケットから抜き出して、ズカズカと歩む。
一直線にテーブルの横を通り抜け、目標の一席の前で止まった。
途中、連中が何か言ってた気がするが、無視だ無視。まずは据え膳だ。





う〜む、美人だ。まじまじ見ると実に美人だ……。
寄るとよく分かる、鼻に届く芳香。髪の間から覗く涼しい表情。


「よし、グッドだ!」


思わず口に出てしまった。ま、本当のことだしな!
やっぱり、来てみるモンだな。この娘がいるなら多少の厄介ごと、屁でも無い。
ふっふっふん、道中に篭絡して……後はウハウハだー!!


「――すみません!」

「うお! ……なんだァ?お前」

ぐりっと振り返ると、目の前にさっきのエプロン君がいる。
ヘッ、この声は野郎だな。どんなに可愛く見繕っても、俺の目はごまかされん!
ふーん、何回も呼びましたが返事されていませんでしたし、と。


「失礼ながら、あなたは何者ですか?」


むむ、マセたことを言やがるガキだ。しかし、そいつも仕方ないか。
見回す限り、他の奴も歓迎って言うか警戒のムードだな、こりゃ。
だがこいつ等は別にどうでもいい。それより、この娘だ。


「あァ? 決まってるだろ。アンタ等に加勢しにきたんだよ」

「……なるほど」


再度、さっきから黙りこくったままのお嬢ちゃんへ視線を下ろす。
うーん、じっくり見てると変な想像が出て来そうだな。
あ、そういや昼飯。食べてなかったな。ついでに腹ごしらえもしとくか――。


「無理ですよ」

もう一度視線を戻すと、最初に見たメガネの方の貴族がいた。いつの間に来やがった。
何が無理なんだ、と口にする前から言葉で塞がれた。

「そちらの方は、私達の仲間ではありません」

「…………何だとー!?」


一杯食わされた!ってやつだ。俺はこの娘がいること前提で意気込んでたっつうのに……。
さあ、どうするよ。それならそうで、もう帰りゃいいが、金も無ェし。
でも、女っ気も無いガキグループに誰が入るかっつーの!


「チィ、それ、ほんとかよ……むむむ」

……結局俺は、この場でうろたえるしかなかった。
願わくば、この美人が加入してくれることを祈りつつ。

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