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ヴァールの憂鬱
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投稿者:OD
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(2007年10月09日 (火) 21時10分) |
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サントシームの風、三階。 その一室に一人の女が泊まっていた。 彼女はベッドに腰掛け、窓の外からクラウゼル城を見た。 そしてその後ため息をついた。
彼女、ヴァールは傭兵である。 クラルゼル城陥落の情報を聞きつけ、相棒のヴァーリとともにこの大陸へと渡ってきたのである。 だが、その相棒は今隣国のアムニ王国に滞在している。 クラウゼル城を陥落させたジョーカーとやらの動向が予測できない以上、このように分散させて情報を集めるしかない。 しかし彼女は暇であった。 上半身をベッドに横たえ、思索するように目を閉じる。 彼女が暇であるのには二つの理由がある。 一つは情報がまったくといっていいほど入ってこないこと、そしてもう一つは彼女の欲望を満たす相手が存在しないということである。 町の大部分の人間が逃げ出しているこの状況下では彼女の欲望を満たせる人間などいない。 この状況が続けばそれは苛立ちに変わりそうだということは彼女も気がついていた。 とはいえこのまま部屋の中に居ても何も変わらない。 彼女は体を持ち上げるとそのまま廊下へと歩き出す。 そして同じ階のとある部屋のドアの前で足を止めた。 彼女にとって興味のある話が聞こえてきたからである。 そのまま彼女はドア越しに話を聞いた後、廊下の端に移動して、金髪の男が部屋から出て行くのを見た後、鍵穴から部屋の中を覗いた。
どうやら自分の欲求は一度に解消されそうね、と彼女は心の中で微笑を浮かべた。
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