エンディングノート (6338) |
- 日時:2012年01月26日 (木) 06時15分
名前:伝統
(3)“死”を問いかける事件や作品が話題に~平田容疑者が呼び起こした社会不安の記憶
まず、世間を見渡すと、 ここに来て「死」を考えさせられる作品や事件が注目されていることがわかる。
がん宣告を受けた父親が亡くなるまでを娘がカメラで追ったドキュメンタリー映画 『エンディングノート』(砂田麻美監督)が話題となり、
葬儀屋を舞台にしたドラマ 『最高の人生の終り方~エンディングプランナー~』(山下智久主演、TBS系)も スタートした。
昨年末には、17年もの逃亡生活を送っていた元オウム心理教幹部の平田信容疑者が、 突然出頭した事件も話題になった。
「震災で罪のない人が亡くなったことを受け、考え方が変わった」 という主旨の説明を、弁護士にしているという。
一部では、元教祖の麻原彰晃死刑囚をはじめ、 教団関係者の死刑執行を延期させるための 出頭だという見方もあるため、断定はできないが、
平田容疑者もまた、震災によって大きな心理的影響を受けた可能性は十分にある。
地下鉄サリン事件が起きた1995年は、阪神淡路大震災が発生した年でもある。 当時と同じ社会不安が蔓延する今、人々の記憶を呼び起こすかのように オウム関係者が表舞台に出てきたことには、因縁めいたものさえ感じられないだろうか。
(4)“ぬるい”死生観が吹き飛んだ!~突きつけられた「諸行無常」の現実
では、足もとで人々の死生観はどのように変化しているのだろうか。 ある団塊の世代の男性はこう語る。
「3.11はやはり衝撃的でしたよ。 60年以上生きていて、それこそ色々なことがありましたが、 一番と言えるくらい人生観が変わりました。
自分の親父は戦争に行った世代なので、 人間が自分の都合とは関係なく唐突に死ぬということを経験していたのだと思います。
しかし、私より下の世代はおおむね同じ“ぬるい”死生観を持って、 生きてきたのではないでしょうか。それ自体は悪いとは思いませんし、 これからもそうであって欲しいと思いますが……」
この男性は、震災後にエンディングノートを書くなど、特別な行動を起こしていない。 しかし、震災関連のドキュメンタリーや雑誌をチェックし、 「どのような判断が人々の生死を分けたのか」について詳しく調べている。
「もちろん、病気だって自分ではコントロールできない。 でも、自然災害は突然やってくるんです。普段から、そういう大きな力によって 命を失う可能性を意識することで、死へのリスクをある程度は軽減できることを、 忘れてはいけません」(前出の男性)
死を強制する出来事を「常に起こり得ること」と想定し、それに抗っていく。 「死を身近に感じていなければ、よもやのときに対応できない」ということに、 この男性は改めて気がついたのだ。
平和を享受していた我々が、忘れがちな教訓である。
「それは戦争も同じで、起こらないと思ったことが起こってしまうのが、 人生だと思った方がいい」(前出の男性)。
大災害や歴史の流れに対して、人間が1人でできることは少ないが、 心構えだけは持って日々を送っていくべきだと考えているのだ。
一方、ある20代の女性は、震災後の4月に家族や友人、大切な人への手紙を書き、 今も自宅の小物入れに保管しているという。
「震災を機に、『人間、いつ死ぬかなんて誰にもわからないんだな』ということを 実感しました。周囲の人に、感謝の気持ちを伝えずに死ぬことだけは嫌だと思い、 手紙だけは書いておくことにしたんです。
と言っても、『すぐに死ぬかも』というリアリティを持っているわけではありません。 でも、やっぱり万が一のことがあったら後悔しそうだし、 もしものための準備のつもりです」
実際に、女性のように考えている人は多い。
「エンディングノート」の書き方を学ぶ講座が各地で開催され、 人気を集めているのがその一例だ。
エンディングノートとは、人生の終わりを迎えるに当たり、 本人の希望やメッセージを親族や友人に伝えるために書き残すノート。 「2011年ユーキャン新語・流行語大賞」の候補語にも選ばれている。 いったい、どんなものなのだろうか。
(5)「エンディングノート」は死に支度だけのもの? ~ゴールを考えれば見えてくる人生の意義
エンディングノートに関する講座を開催する行政書士の生島清身氏によると、 遺言状との違いは法的拘束力がないこと。
一方、形式に囚われず自由に書けるため、執筆者の個性が出しやすく、 残された遺族や知人などに思いが伝わりやすいというメリットがあるという。
そのため、決まったフォーマットはないが、 一般的には以下のような内容を記すのが定番だ。
①自分のこれまでの歴史 ②医療・介護への希望 ③葬儀・お墓についての希望 ④財産・相続に関すること ⑤大切な人へのメッセージ
「医療・介護への希望」については、「寝たきりになったときはどうするか」 「延命措置はどうするか」「脳死の場合の対応」 「余命宣告はしてもらったほうがいいのか」
などを、予め記しておくことも含まれる。 突然このような状況に陥った場合、決断する家族の負担を軽減させるためだ。
「葬儀」については、出席して欲しい人の連絡先リストのほか、 なかには「連絡して欲しくない人のリスト」を作る人もいる。
さらに重要なのが、「大切な人へのメッセージ」だ。 形式張った遺言状では書けない自分の思いを周囲の人に伝えるため、 十分に趣向を凝らしたいところである。
エンディングノートの主たる目的は、 「自分にもしものことがあったとき、家族や周囲の人が戸惑わないように、 必要なことを書き留めていく」ということにある。
つまり、「死に支度」というわけだ。 しかし生島氏によると、目的はそれだけではないという。
「エンディングノートの目的の1つに、死を意識することによって 『残りの人生をどう生きるか考える』というものがあります。
一度、自分の人生を整理し、 周囲との関係性や自分が大切にしてきたことを振り返ることで、 日々の過ごし方について見つめ直すきっかけになるんです」
つまり、「死を人生のゴールだとしたら、死後に焦点を当てて書くのではなく、 残りの人生に焦点を当てて、どのようにゴールするかを考えるのが エンディングノート」(生島氏)なのだ。
「震災があって、『明日どうなっているのかわからない』という感覚を、 皆さんが持たれたと思うんですね。『絆』という言葉が象徴するように、
『今を大事に生きよう』『周囲にいる人を大切にしよう』と 考える人が急速に増えてきたし、これからも増え続けるでしょう。
人生を振り返り、残りの時間を有意義に過ごすためにも、 エンディングノートは役立つんです」(生島氏)
<感謝合掌 平成24年1月26日 頓首再拝>
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